トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

日本人とブランド その②

2008-04-18 21:51:54 | 読書/ノンフィクション
その①の続き
『ブランドビジネス』の中で、最終章「日本人とブランド」は文字どおり、日本人のブランド志向を探っている。マスコミも海外ブランドに熱を上げる風潮を盛んに取り上げ、欧米崇拝、横並び志向、マスコミに踊らされやすい、自分なりの価値観がない…など圧倒的に否定的な見解が多い。ブランド志向を煽ったマスコミの責任はまず触れられないが。
 欧州の例を挙げブランド好き日本人を糾弾する意見もあり、この主張も支持を得ている。ブランドを持つに相応しいライフスタイルの持ち主でなければ、ブランドを持つのは恥ずかしい…という意見で、三田村氏はマークス寿子氏の著書『自信のない女がブランド物を持ち歩く』(草思社)の一部を引用していた。

 マークス氏は欧米では皆ブランド品をたまにしか買わない、ブランド品を頻繁に買う日本の女はおかしいと言う。突き詰めれば、ブランドに相応しい背景もないくせに日本の女性、取り分け若い女がブランド品に狂うのはケシカラン、という主張である。これに対し、三田村氏は痛烈な皮肉交じりに反論する。イギリスのマークス男爵と結婚、離婚した(しかも短期間で)後もずっと「元男爵夫人の肩書きで生きるマークス寿子も相当なブランド志向ではないかと思うが、ブランド好きの日本女性に向けられる意見とはおおよそこんな内容だ、と。

 1960年生まれ、マークス氏より24歳年下の三田村氏はマークス氏のような意見には「階級社会」「階級差」に対する視点がないと言う。欧米でブランドを買う人たちとは、結局上流階級の人間であり、ブランドと階級がセットとなった欧州は厳然たる階級社会だ。ヴィトンもエルメスも欧州では上流階級御用達ブランド、下のクラスにとってははなから遠い存在となっている。たとえブランド品を買う余裕があったにせよ、「ブランド品は上流階級限定のもの」と考えており、仮に持てば上の階級はもちろん同クラスからも冷たい目が向けられる。つまり、身分不相応な者は社会的なプレッシャーを否応なく受ける。アメリカはアメリカで、所得による社会的な階層が確立しており、低所得者がブランド品に手を出すことはまずない。欧米と比較し、日本人のブランド志向を叩くのは大いなる勘違いと氏は批判する。

 さらに三田村氏は、所得格差が広がったといえ基本的に階級というものがなく、その気になれば誰もが社会的なプレッシャーを受けずブランド品を買い、使える日本の環境は素晴らしいと言う。特定のクラスに属していなければブランド品を買うことが許されず、厳しい目を向けられる社会に生きるよりは遥かに幸福で、階級社会など御免こうむりたい。生活がブランド本来のレベルとかけ離れていても、こつこつとお金を貯めれば自分の好きなモノが買え、自由な着こなしが出来る社会というのは貴重だ、と。
 全く三田村氏の鋭い反論には喝采を送りたい。 何かと言えばイギリスを讃えるマークス氏だが、そもそも日本に出戻って暮らしていること自体、いかに日本は居心地がよい国なのか知れる。

 ただ、三田村氏は現代のブランドブームを全て肯定しているのではない。誰もがブランド品を手に入る環境にあることと、一部のブランドに人気が集中するのは別の話だと書く。せっかく自由にブランド品を買うことが出来るのに、何故特定のブランドに向かってしまうのか、疑問を呈している。それは日本の消費者が識別眼があるからという、もっともらしい説明を三田村氏は否定する。限定品発売前、ブランドショップ前での長蛇の行列客の光景から、到底「識別眼がある消費者」像は感じられないそうだ。

 日本でブランド品の人気がバックに集約されている事実から、三田村氏はブランド志向を読み取る。こうもバックが売れるのは、見てすぐどのブランド品か分るからに他ならないと指摘する。どのブランドでも好調なのは、ブランド名をあからさまにアピールするバック、要するにロゴを大量にあしらった物ばかり。しかもバックの価格はお手ごろ。ブランドの高い服は毎日着られないが、バックなら使い回しが効く。バックに限らず腕時計やアクセサリーでも、分りやすいデザインのブランドが売れるらしい。

 ブランド名を外にアピールしたい欲求は手っ取り早い「帰属意識」に起因すると氏は書く。自分はブランド品を持つリッチ属に属し、それも買えない様な貧乏グループではない、或いはファッションに敏感な集団に属している、と。こうした帰属意識を満たすための効率的な方法こそ、ブランド名のアピール。どこかのグループに属しているとブランドで表現することが、自己実現に繋がっていると氏は見ている。確かなモノ、間違いないモノを時間をかけず求める時、ブランド品はありがたい選択肢でもある。

 消費者ばかりでなくブランドの送り手もまた、手っ取り早い結果を求める傾向があると三田村氏は言う。自分たちの手で一からブランドを育てようとせず、海外からの有名どころを持ち込むことに明け暮れ、取引先への依存度が高く、売場の自主編集能力を培うことも出来ず、速攻で売上を上げるためブランド頼み、やたらとライセンスブランド品を増やす…こうしたビジネスもまた即効性を求めた挙句の結果であり、偽ブランド品が氾濫するのも、本物を持つことより本物に見えるかどうかを重視する傾向に付け込まれたからだとする。
その③に続く

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2 コメント

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