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自爆テロリストの正体 その①

2006-07-02 20:25:27 | 読書/ノンフィクション
 貧しく純粋なイスラム教徒が、やむにやまれぬ思いに駆られてテロに走る―。自爆テロにはしばしば、こうした「美しい物語」が付いて回る。しかし、これは事実だろうか。

 上の文章は『自爆テロリストの正体』(新潮新書、国末憲人 著)のカバー裏からの抜粋。さらに紹介文はこう続く。
現場を歩いてみると、自爆テロが「貧困」とも「イスラム教」とも関係がなく、「中途半端な若者たちの自分探し」の結果だった姿が見えてくる。「テロリスト」に対する甘い幻想を全て打ち砕く画期的ノンフィクション
 著者の国末氏はパリ特派員を勤めたこともある朝日新聞記者である。

  国末氏が9.11その他のテロ事件の自爆犯の生い立ちや人生を調査していくと、「貧しく純粋なイスラム教徒」とはおよそかけ離れた実態が浮かんでくる。貧 しいどころか周囲よりもずっと恵まれた生活を送り、敬虔なムスリムどころかかなり世俗的な暮しをしていたのだ。しかし、何か就職や失恋など個人的な挫折で 精神的に不安定になり、カルトや過激派に引き入れられた結果、自爆テロリストに変貌した、というのが国松氏の結論だ。ムスリムといえば狂信的なイメージが まつわるが、一足飛びにテロリストになったわけでもないようだ。
 
 国松氏はフランスのアラブ系移民を取材しているが、移民の若者が特に挫折感を味わうのは就職や失恋だという。それなりの教養があっても望みどおりの就職が出来ず、白人女性との失恋はいたくプライドを傷付けられる。「アラブのお坊ちゃんが西欧に行って、現地の女性から冷たくされ、『これはアラブ人差別だ』とひがむのはよくあることだ」とルモンド紙の記者は指摘する。
 “現 地の女性から冷たくされた”と書くと、いかにも高慢な白人女が純朴なアラブ青年に肘鉄砲を食らわすところを想像されるかもしれないが、必ずしもそうとは限 らない。男優位社会で男女交際の場がまずないアラブと、女でも自己主張が強い西洋では文化摩擦に近いが、失恋の原因に習慣の違いは大きい。来日したムスリ ムと日本女性の間でもかなり交際のトラブルがあるほどだ。その結果、「これは差別だ」と被害者意識を膨らませるようになる。

 イスラム過激派を研究するモハメド・ダリフ教授によると、普通の若者がテロリストになるまでの変化を五段階に分析している。
①テロを計画する人物が若者を勧誘する
 勧誘の場として知られるのはモスクの中、或いは出入り口で、真面目そうな若者を狙い「真のイスラムはここにはない。私たちと一緒に追求しないか」と問いかける。
②組織の重要性を強調し、服従するよう叩き込む
 勧誘にはビデオが使用され、時には残酷な映像で恐怖と緊迫感をかき立てる。カルト宗教が会員を確保する手法にも似ている。
③死の重要性を吹き込む
 コーランを都合よく引用しながら、「イスラム社会を守るためには殉教を恐れてはならない」と言いつつ、次第に「良きムリスムでありたければ殉教せよ」との論理にすり替える。理想に舞い上がるのはむしろ非宗教的な環境で育った若者だという。
④自分たちの組織以外の人への憎悪を植え付ける
 「組織以外のムスリムは不信心であり、真の教徒ではない」と説き、外部との交流を避け、自分らの組織だけで固まるように仕向ける。
⑤「組織以外の人は殺していい」との倫理に導く
 何故なら“真のムスリム”を守るためには“偽の教徒”を排除する必要があるからだ。

 フランスの著名な評論家ギ・ソルマン氏は、自爆テロリストに共通する点をフィガロ紙でこう指摘した。
自 爆テロリストで、大学者や知識人といった指導者層に属する人はいない。逆に百姓や労働者といった貧しい階層に属する人もいない。19世紀のアナーキストか らスリランカ、アイルランドのテロリストに至るまで共通しているのは、そこそこの教養を受けたものの、その後社会で進むべき道を見失った人々だ。彼らは個人的な失敗を暴力で購おうとしている
その②に続く

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4 コメント

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カ○ト (Mars)
2006-07-03 22:54:31
こんばんは、mugiさん。



>「中途半端な若者たちの自分探し」の結果だった姿

仰るとおりですが、この姿はオ○ムの実行犯にも当てはまりますよね?また、人よりもよい生活をし、オ○ニー的良心で、二者択一になるのはサ○クと同様ですね。mugiさんのブログを面汚して申し訳ないですが、このような者には、とても同情できません。



モハメド・ダリフ教授の分析は、まさしくカ○ト教団、そのものですね。また、ギ・ソルマン氏が仰るとおり、そういった者を利用するのもそうでしょうね(ビ○・ラ○ィン容疑者といい、それを利用するのは、金にも裕福で、自由にできる者でしょうね)。結局、一般民衆の生の生活を知るものは利用され、知らないものこそ、一般民衆の血を見ることを厭わないのでしょうね。



マ○に限らず、人は人の血の上でのみ、生活ができるものなのでしょうか?

サ○ク (mugi)
2006-07-04 23:39:04
こんばんは、Marsさん。



著者の国末氏もイスラム過激派とわが国のカルトや暴力団との類似性を強調してました。イスラム圏にもヤクザはおり、彼らはムジャヒディーン(聖戦士)を自称しても、実際は暴力の輩そのもので、案外イスラムやコーランさえ満足に知らない連中も少なくないのです。

「貧乏、暇なし」と言いますが、自爆テロ犯よりずっと貧しい者はテロなどやっている余裕がないのです。



非常に手前勝手の屁理屈で舞い上がっている点では、サ○クと同然。実際にわが国のサ○クも冷戦終結後イスラムに傾倒して、元からイスラム寄りだったにせよ、ついに改宗した者さえいます。

イスラムに改宗した元サ○クのジャーナリストがいますが、彼も学生時代身を持ち崩したり、就職先でくびになったりしていました。この類の人物に語るイラスム事情は到底中立性を欠いていますから、信用できません。



マ○は極端ですが、何らかの犠牲が求められるのは人間社会の悲しい側面ですね。
お邪魔しました (佐久間象川)
2006-07-22 22:41:12
mugi様

大分、時代離れのTBを入れて失礼しました。

私共の仲間は戦中派の老人共で、近頃は視力の衰えの関係で読書も遠ざかり、情報の吸収が減っています。

mugi様の記事のお陰で、貴重な情報が得られ、我々なりに納得の出来る処に到達できたのは、有難く思います。
TB&コメント、ありがとうございます (mugi)
2006-07-23 20:42:25
佐久間象川 様

TB&コメントをありがとうございました。

私のような若輩者のブログを読まれて頂いて、うれしく思います。



私も上記の本を読んで、自爆テロリストへのイメージがかなり変りました。わが国のカルトに走る若者と大差ないと。

以前の記事にコメントをされた方によりますと、大学紛争時、大学教授の中にも講義の中で革命を煽っておいて退官後には「昔のことですからね」と笑っている老学者がいるとか。本気になってハイジャックまでやった連中がいたのに、彼らはマスコミより悪質です。

http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/423c09ac758c1c6682b405e956f18d4d

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