トーキング・マイノリティ

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海外就職の落とし穴 その②

2010-10-16 20:36:01 | マスコミ、ネット
その①の続き
 私は海外在住も、IT系企業に勤めた体験もないため、日本人の海外就職事情は全く知らない。しかし、海外在住者の北岸ズクナ師さんはその体験と見聞から「IT系専門学校への留学は慎重に」を書いている。この記事への感想は様々だろうし、NZ以外の国や外資系企業なら事情も多少は違ってくるかもしれない。実は私の従妹の夫はIT系企業に勤務しており、残業が増えて過労が続いたためか、網膜剥離になってしまい、2年ほど前に別の職種に転職している。従妹夫婦には子供はいないが、教育費のかかる年齢の子供がいたら大変だったろう。

 不況を反映してか、最近はマスコミのみならずネットでも海外留学若しくは就職を呼びかける意見を結構見かける。だが、北岸ズクナ師さんも書いているように、「WEB上には、うまくいっているエンジニアの話が目に付くかもしれませんが、そうでない人達の話はあまり表に出てこない」有様。それも当然だろう。「日系メディアへ広告を出してくれる企業」も存在するし、マスコミやWEBとは広告で成り立っているような媒体である。何かをブームに仕立て上げ、視聴者にモノを買わせ、ある方向に向けさせるという本来の目的もあり、誇大広告が常習化している。そんな中で耳触りの悪い失敗例などまず載せないし、海外留学または就職してうまくいかなかった体験談など、広告業界とは無縁の一個人でも自己弁護や体裁もあり、まず話したがらない。そのため、デマまがいの成功例ばかりがWEB上を飾ることになる。

 ただ、北岸ズクナ師さんの記事だけを読むと、NZでの職種を問わぬ日系企業のあこぎさや労働基準を完全に無視した酷使ぶりが浮かび上がる。もちろん海外進出先でも悪質な日系企業も少なくないだろうし、現地に疎い日本人エンジニアに付け入り、二束三文で雇おうとする会社もあるのは想像に難くない。記事を見て、社員を酷使する日系と違い外資系なら大丈夫、と思った人もいるかもしれないが、こちらも疑問である。北岸ズクナ師さんは日系の問題は指摘しても、外資系に勤めた場合の日本人エンジニアのトラブルは何故か紹介していない。夫の職業上、差し障りがあるのか不明だが。

 とかく海外に弱い日本人は外資系と聞いただけで妙な憧憬を抱いてしまい、日系企業とは違い能力主義で社員を大切にする…等のイメージが根強い。だが、これも誇大広告から生まれた神話に近いものではないかと、私は考えている。外資でもピンキリだし、大企業でもない限り福利厚生も保障されない可能性もある。ズクナ師さんの書くように、「相手が高く評価してくれそうなスキルかコネ、海外赴任経験があれば話は別」だが、ろくなスキルもない外国人を雇おうとする企業など何処にある?未だに海外に行けば何とかなる、と考えている浅はかな日本人も一部いるのだろうか?

 今年3月、「海外就職」や「海外留学」を考えているような人物から、コメントがあった。コメントから浮かび上がる性格やものの見方も興味深いが、以下はその全文。

この手の問題は意固地になる人が多いと思う (ももんが)
2010-03-16 23:22:43
(前略)
私は若い研究者です。
世間一般、ネットの若者が海外に目を向けたり、日本の労働状況に不満を持つのは仕方がないことでしょう。
現在の日本の労働環境はネガティブイメージが多すぎるんですから。
私は「海外就職」や「海外留学」には否定的にはなれません。なぜなら「海外ニート氏」と同じ様な事を体験、発言している身近な人を知っているからです。

現代日本の労働慣習により不幸になる人がいるならば「海外就職」という手段があることは素晴らしいと思います。他人の幸福は祝福すべきもので、「祖国を捨てた」と言うような発言は馬鹿馬鹿しい。(この手の発言をよく見かけます)
ネットのように相手の顔が見えない状況では他人の意見に過剰に攻撃的になったり相手の意見を聞かないようになったりしやすいものですね。

ネット上で労働環境の問題になると対立する双方の人間が意固地になるのをよく見ます。
彼らは悲しいくらい日本人なんだなと思えます。

その③に続く

◆関連記事:「若者に告ぐ
 「海外留学を呼びかける人々

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