トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

人体の不思議展

2006-08-28 21:23:41 | 展示会鑑賞
 仙台で開催されている「人体の不思議展」を見た。グロいもの見たさに前売券は既に購入していたが、その後街で、「大紀天時報」のビラを目にし、券を買ったのを後悔した。ビラには「人体標本展の疑問」と題して、この展示会を取り上げていのだ。

  ビラは今年5月25日付けのもので、人体標本を製作する遺体は全て中国から来ていると記載されていた。「展示されている人体プラストミック標本は全て生前 からの意志に基づく献体により提供された」との決まり文句に疑問を投げかけ、本当に献体の同意があったのか、と指摘する。確かに大量にある人体標本の出所 は不透明だ。これらの遺体は弾圧された法輪功の人々かもしれないと「大紀天時報」では推測していた。中共を弾劾するビラなので鵜呑みには出来ないが、中国本土では充分あり得ることだ。

 展示会に行き、人体標本を見たが、いかに加工されているといえ、筋肉から遺体は皆若いのは分かる。仙台の展示会では中国の南京大学からの提供とあるが、早々若い者が死亡するのだろうか。股間を見ると、標本のほとんどが男性だった。
 夏休みのため、結構子供連れの方も多かった。人間には気味の悪い見世物を見たがる心理があるが、自分自身や自分の家族、友人の遺体が加工され、見世物になっているのを想像したら、どうだろう。所詮は死者と死体への冒涜以外の何者でもない。

  会場では人体標本を展示するばかりでなく、実際に触れられる標本まであったのだ。見に来た人々で私も含め、触れなかった者はまずいない。私は標本の手や腕 を触ってみたが、プラスチックの冷たく固い感触に、かつて人間だったのに異国でさらしモノとされた人物は、どのような人生を送ったのか、つい思いを巡らし たくなる。
 若いカップルも来ており、彼女の方は腕や腿を触っていたが、彼氏はやはり同性のモノに関心があるのか、しきりに性器に手を伸ばしてい た。生前この遺体に恋人や妻がいたのなら、その器官を彼女らに愛撫されただろうし、それで彼女たちを喜ばせたかもしれない。男性として最も大切なところを 異国人の男にいじられているのだから、何ともひどいものだ。

 私が一番ショックを受けたのが、胎児も何体か展示されていたことだ。三ヶ 月、四ヶ月、五ヶ月他のもの、十ヶ月の標本まであった。標本は一体を除いて皆女児だった。これらの胎児は一見プラスチックの作り物のように見えるが、既に 産毛が生えているものもあり、かなりリアルだが、これほどまがい物の方がよかったと思える展示はない。どんな経緯で胎児は摘出されたのか。一人っ子政策の ための堕胎か?

 「人体の不思議展」の主催団体に“日本アナトミー研究所”なるところがある。だがネット検索してみても、この研究所はどうも実態が明らかでなく、研究所としてのサイトを持っていない怪しげな組織だ。遺体加工産業とは闇の世界に通じるのか。
  それでもこの種の展示会は世界各地で好評なのだ。人間の飽くことのない残酷な好奇心と、死者への尊厳皆無のビジネスには大いに奉仕する催しである。今後も グロテスクな見世物見たさに券を買う、私のような軽はずみ者がいるのは明らかなのだから。そして、「不思議展」を主催した河北新報社は大々的に新聞に広告 を掲載していた。同じ時期に仙台市博物館で催された古代ポンペイ展は、スポンサーでなかったためかほとんど記事にもならなかったが。

人間の良心というものは、どんな場合にも、やりたいと思うことに他愛なく調子を合わせるものだ」-J.ネルー

よろしかったら、クリックお願いします

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人間の倫理 (Mars)
2006-08-30 17:05:32
仰る通り、人権のない支那の事ですから、生前に献体になる事を了承したか怪しいですね。また、事実であったとしても、倫理的な問題もありそうですね。(他人が生きる為に、死後臓器提供するのであればよいと思いますが、提供側の同意に関しても、支那では問題ありそうですね。)



オカルトな話で申\し訳ないですが、助産士の従姉妹曰く、胎児でも○霊が出るそうです。日本でも堕胎は認められているとはいえ、現場は複雑なようです。(日本の場合、避妊もしないで、やる事だけはやってので、事が多数なので、こちらも、倫理観が問われるでしょう。)
返信する
臓器ビジネス (mugi)
2006-08-30 21:28:05
>Marsさん

私も中共の公式発表なので、事前に了解を取ったとは疑問視しています。

「大紀天時報」のビラにも、法輪功信者から臓器摘出の実例があるとの写真入の記事が載ってました。死刑囚の臓器ビジネスがあるといわれる国です。



胎児でも○霊が出るとは知りませんでした。水子供養の商売が繁盛するわけです。

私も母体保護や強姦による堕胎には賛成しますが、避妊もしない火遊びなら、エ○ズも増えそうですね。
返信する
はじめまして (柿の木)
2006-09-08 01:41:37
ヒューストンの科学館で同様の展示会をこの夏みました。

バイオロジー専攻の娘達二人とも冷静に見て回ってましたが展示されてる人体標本の一体一体に人生があった事を考えて胸が痛みました。



中国の・・そうですね。何故か気がつきませんでしたが今はもっと沈痛の想いです。



ところでTBさせて戴きました。

バージニア先住民関係のHPをこの春開設しました。ブログはもっと日本の人に彼らのことを知って欲しくて最近始めたばかりです。

よろしければ一度いらしてみて下さいませんか。ご意見を伺えれば何よりです。
返信する
コメント、ありがとうございます (mugi)
2006-09-08 21:16:00
初めまして、柿の木さん。拙ブログにようこそ、お越し下さいました。



人体標本展は世界中で好評を持って、迎えられているようですね。

私もエジプトのミイラを見るような感覚で前売り券を買ったのですが、遺体の出所を思えば中国と予想がついたはずでしたが、うかつでした。エジプトのミイラもまさか後世博物館で、見世物になるとは思いもしなかったでしょう。



アメリカ先住民に関しては、西部劇以上のことはよく知らないので、早速あなたのブログを拝見させて頂きます。
返信する
ちょっと怪しい (LME)
2006-09-14 18:19:08
はじめまして。日本で開催されている「人体の不思議展」は、海外で行われているそれとちょっと違うみたいですよ。詳しくは以下をご覧ください。



http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/alphanet/eid/93955/



詳細を書き込めなくて申し訳ありませんが、個人的に知っている主催者の人的関係などから考えると、確かにちょっと怪しいです。上記URLの考察は結構あたっているかも。
返信する
いかがわしいビジネス (mugi)
2006-09-14 22:07:14
初めまして、LMEさん。

他のブログ記事の紹介をありがとうございました。



海外での「人体の不思議展」の実態もよく分かりませんが、いずれにせよ極めていかがわしいビジネスですね。

これ程大量に遺体が入手できる組織とは、どんなものなのか疑問だし、マスコミが全く取り上げないのも不可解です。
返信する