盤上の悪魔

囲碁、哲学(人間原理、相対主義、プラグマティズムとか)、ラノベなんかを中心にしてます。

信用取引はギャンブルに足を突っ込んでいる

2015年03月31日 23時40分33秒 | 投資

通常、人間は不確実な結果を嫌います。


確実に1万円もらうか、2分の1の確率で2万2千円もらうか選べ、と言われたら、半分以上の人は前者を選ぶといいます。


投資をする人間なら、額が少ないためにリスクが低く、10%も期待値が高いのでほぼ後者を選ぶと思いますが、確実に1万円もらうか、2分の1の確率で2万円もらうか選べと言われたら、やはり前者を選ぶ人は多いでしょう。


確実に1万円もらうか、2分の1の確率で1万8千円もらうか、と言われて後者を選ぶのは、相当なギャンブルジャンキーと見られても仕方ないでしょう。


しかし、株式投資の世界にはこのギャンブルジャンキー向けの取引方法である、信用取引があり、かなりの人が取引を行っています。


信用取引は要するに証券会社から金を借りて株を自己資金以上に買う、レバレッジをかけた取引ですが、この際コストがかかるため、たとえば自己資金の倍の株を買えば、リスクは倍になりますが、リターンは倍以下になります。


これは、通常の株取引よりも、同じ量のリスクに対してリターンが少なくなるわけで、明らかにリスク回避的でも、リスクに中立でもなく、リスク選好の判断です。


これは常識的には擁護するのが難しいのではないでしょうか。

信用取引に手を出そうとする人は目先の利益にとらわれ、リスクから目をそらしていないか、たんなるギャンブルの快感に囚われていないか、自分に問いかけてみる必要があるでしょう。


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「0ベース思考」感想

2015年03月30日 20時58分55秒 | その他の本

ヤバい経済学で一躍有名になった、経済学者とジャーナリストのコンビの新作です。

中身はヤバい経済学の延長線上で、サッカーのPK戦でのもっとも優れた選択や、豊かな人ほど自殺するのはなぜか、交通渋滞を規制したら大気汚染が悪化した、など、意外で興味深いトピックにデータに基づいた、説得力のある結論を出す、というものです。


ろくに実証データが出てこない、抽象的で、哲学や数学じゃないんだから、と言いたくなる(人のことは言えませんが)経済書にうんざりしている人には特におすすめでしょう。

ヤバい経済学、続ヤバい経済学を両方読んでいると、ややマンネリ感はありますが、十分面白い内容だといえます
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投資信託の恥知らずな解約条件

2015年03月29日 21時35分09秒 | 投資

親の投資について、意見を聞かれたんですが、投資信託の中身をチェックしたら妙な条件がついていました。

5年満期、初期手数料ありの投資信託なのに、運用成績が10%を超えたら自動的に解約するというものです。


今後の市場の動きを予測するのはほぼ不可能であることは、数々の実証研究でほぼ明らかとなっている以上、利益が出ることを期待して投資をする、と判断した場合、単にポジションを取り続けるというのが妥当なものでしょう。


単に一時的に利益が一定額になったから売却や解約を行う根拠はないといっていい。


むしろ、市場の値動きがべき乗則に従うなら、大きな上昇があった、ということはさらに大きく上がる可能性が高いということを示しているといえ、むしろ持ち続ける根拠が増えたともいえます。


また、勝手なタイミングで利益を確定されると、税金をコントロールするのが難しくなる、というはっきりした不利益もあります。


要するに、購入者にとって不利にしかならない、つける意味のない解約条件です。


察するに、銀行は初期手数料で儲けているので、できるだけ早く投資信託を解約させて、次の投資信託に乗り換えさせ、何度も初期手数料を払わせようとして、こんな条件を付けているのでしょう。


高齢者に、お金を無意味に余計にむしり取る条件を付けて、投資信託を販売しているわけで、銀行もだいぶ(もとから?)恥知らずになったものだな、と感じてしまいました。

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先物のオプションのオプションの先物

2015年03月28日 22時36分28秒 | 投資

先物は例えばガソリンのような現物を決められた日時、例えば来年の1月1日に10リットル1300円で売ります、という約束、オプションは決められた日時、例えば来年の1月1日に10リットルのガソリンを1300円で買うかどうか選ぶことができる権利で、ともに金融派生商品、デリバティブと呼ばれています。


現物のガソリンの取引以上にこのガソリンのデリバティブが活発に取引されていることが、実際の商品の売買で動く金額よりもはるかに大きい金額が金融の世界で動く一因になっています。


ガソリンの実際の取引の上に、ガソリンの先物やオプションの取引が広がっており、実際のガソリンの価格よりも多くの金が収納され、動きうるわけです。


しかし、考えてみると、先物やオプションは別に現物だけを対象にする必要はありません。先物は価格のつくある種の商品とみなせるので、その先物を何月何日にいくらで買う約束をすれば先物の先物ができます。


同様に先物のオプションや、オプションの先物、オプションのオプションも原理的には考えられます。


これは、別に2次で終わりにならなければならない理由もないのでオプションの先物のオプションや、先物のオプションのオプションの先物なども考えられるでしょう。


そして、それぞれのオプションの先物のオプション市場や、先物のオプションのオプションの先物市場に、先物市場やオプション市場のように資金が投入され、取引が行われるわけです。


この市場の数は理論的にはオプションと先物を0と1とした2のn乗の指数関数と考えられるわけで、資金が指数関数的に成長しても、いくらでも資金の投資先がある、というわけです。

もちろん、先物のオプションのオプションの先物はいったい何を扱っているのか意味不明で、さすがにこんなものが取引されることはないでしょうが、金融市場の馬鹿馬鹿しいほどの肥大をみると、絶対にあり得ないとまでは言えないんじゃないか、と思えてきます。
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法人税はすべて消費者に転嫁されるし、消費税はすべて企業に転嫁される

2015年03月27日 23時29分50秒 | Weblog

ウィキの法人税の項を読んでいたら、どこかの経済学者の法人税は賃金低下や値上げなどで結局すべて消費者に転嫁されるんだから、無意味だ、みたいな主張が載っていて、ポジショントークっぷりに笑ってしまいました。


そんなこといったら消費税だって賃上げや消費の低下、投資の減少ですべて企業に転嫁されるわけです。


そういえば、NHKの討論番組で企業の会計は単なる箱で、賃金や配当、投資に分けられるだけだから税金をかけても意味ない、みたいな事を言っている人もいましたが、そんなことを言ったら家計だって単なる箱で消費と貯蓄、投資にまわるだけの事でしょう。


ただ、この手の詭弁は初見だととっさに反論できないことも多いのである程度効果はあるんでしょうね。

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織田信長は存在したか

2015年03月26日 22時19分37秒 | 哲学ネタ

カール・ポパーが指摘したことですが、情報が伝わる速度が原理的に光速を越えないとすると、その外側の情報は得ることができないわけです。


光が10分間に進む範囲、光円錐の範囲の中の物事は、10分後の出来事に影響を与える可能性があるわけですが、原理的に10分後以降にしか、その情報をすべて得ることはできません。


従って、量子力学を持ち出すまでもなく、原理的に未来を正確に予測するのは不可能であり、ラプラスの悪魔は存在しえないというわけです。


これは未来だけではなく、過去についても言えます。


我々は織田信長という人物が、ほぼ確実に450年前の日本に存在していたことを知っていますが、その人物を現在の情報から逆算して再構成するために必要な情報の一部は光の速さで飛び去り、原理的に我々の手には届かないところに消え去っています。


物理学の手法では、織田信長が存在したということを証明することは、原理的に不可能なわけです。


我々が織田信長が存在したことに確信を持てるのは、文書記録や考古学的な情報など歴史学の成果によるものですが、これにより再現される過去は、物理世界とはかなり異質で人間の脳の手法にあった形で整理され、再構成されており、当然物理世界のもつ情報のほとんどは抜け落ちています。


こういった過去の再構成に我々がまったく違和感を感じないのは、要するに我々が現在の世界も同じ方法で把握しているからでしょう。



だから何なんだ、ということになりますが、5分前世界創造説に関係ありそうな事を考えてみたけれど、結局うまく結び付けられなかった、というわけです。

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ハートネットTV「生きるためのテレビ2 第二夜」 やはりアクシズ教は正しかった

2015年03月25日 23時18分44秒 | Weblog

結果を他人のせいにせず、責任を自分で引き受けて、自分が変わることで状況を良い方向へ変えていく。


これは自立した大人の一つの理想の形だとは思いますが、今日のハートネットTVで、自殺未遂をした人がやたらと自分を責めるのを見て、普通の人間はあまり理想を追わない方がいいんじゃないか、という気がしてきました。


結局のところ、自分はうまくやれる、という自信は、仕事にしろ何にしろ、高いパフォーマンスを上げるうえで、不可欠な資質でしょう。

失敗したのは自分のせいだ、非難されるのは当然で、真摯に受け入れ、反省しなければ、と思いすぎると、その大切な自信が削られることになります。


そうなると、何をやるにしてもうまくいかなくなり、さらに自己否定する、という悪循環に陥ってしまう。


要するに我々のように心の弱い人間はあまり自分のせいにしては危険なわけです。

アクシズ教じゃないですが、とりあえず社会や他人のせいにしておいてほうがうまくいくんじゃないでしょうか。


アメリカでの調査になりますが、人口当たりの自殺率は社会の底辺で生きる人たちよりも、中流以上の人たちのほうが多いそうです。


底辺の人たちは自分の苦しさを社会のせいにできますが、中流以上の人たちは自分で引き受けてしまう、というわけです。


まあ、人のせいにして何もしない、となったら本当にダメ人間ですから、社会や周囲のせいで、ひどい状況になってしまっているけれど、社会が変わるのを待っているわけにもいかないので、その中で最善を尽くして多少マシな結果を目指そう、ぐらいに思っておくのがベストではないでしょうか。


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収穫逓減は名前がひどすぎる

2015年03月24日 20時39分39秒 | Weblog

収穫逓減にしろ、効用にしろ、意味内容はシンプルなのに、やたらと硬い訳語で印象が悪い。

ウィキをみると、英語だと、ディミニッシング・リターンズとユーティリティなので、これで試してみます。


「資産家が外国にもう一軒の別荘を買うことで得られるユーティリティと、貧困に陥っている家庭が、十分な食事を買ったり、子供を高校へどうにか進学させる費用をつくりだせたときに得られるユーティリティよりもはるかに低くなるが、これはディミニッシング・リターンズ効果による。


すなわち、資産家がより豊かになる形での経済成長は、形式的には高いGDPの伸びを示すとしても、ユーティリティの面ではそれほど大きな伸びを示していない可能性があり、仮に低所得層の購買力が低下しているなら、下手をすると、ユーティリティの低下をもたらしている可能性がある。


そもそも経済成長に意味があるのはユーティリティを向上させるからなので、経済成長は、ディミニッシング・リターンズを考慮に入れなければ評価できないだろう。」

なんとなく、さらに意味が分かりにくくなった気もしますが、収穫逓減などと言い出すよりは多少マシかもしれませんね。
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沖縄独立の可能性は?

2015年03月23日 23時22分17秒 | ニュース

沖縄県知事、辺野古沖での作業中止を指示 NHK NEWSWEB


昨年スコットランドで、イギリスからの独立を問う住民投票が行われたことは記憶に新しいですが、独立運動を抱えた国というのはさして珍しくありません。


スペインのバスク地方、イタリアの北部、中国のチベットなどがすぐ思い浮かびますし、ウクライナ危機も一応独立運動が引き金になった形です。


では、日本はどうか。

仮に日本で独立運動が起きるとすれば、もっとも可能性が高いのは沖縄ではないでしょうか。

歴史的には戦国末期に薩摩藩に支配されるまでは独立国で、日本の一部になってからは400年ほど。


第二次世界大戦では、ほとんど捨て駒のように扱われ、日本国内で唯一地上戦が行われ50万人ほどの犠牲がでており、戦後も米軍基地のほとんどを引き受け、負担軽減を求めても、政府からはほぼ0回答の状態です。


基地に反対の知事が生まれるとすぐに補助金が減らされるあたり、沖縄を助けるというより、金でいう事を聞かせようとしていると見られても仕方ないところでしょう。


経済力は日本の中でも低い地域ですが、平均年齢は全国でも最も若く、合計特殊出生率も2に近いため、高齢化問題があまり深刻にはなりにくいと思われます。


今現在ですら返すことがほぼ不可能な莫大な借金を抱え、高齢化に伴いさらに急速に経済的負担が増え続けることが予想される日本の中で、比較的活力がある地域になっていくことは間違いないでしょう。


今現在はともかく、将来的には日本とともに沈没するのを避けようとする人たちが出てきても不思議はありません。


要するに沖縄独立運動は完全な絵空事とは言えないでしょう。


もし沖縄が独立しようとしたら、常識的に考えて、米軍基地がいくつか日本のどこかへ移るなどとは比べ物にならないほどの安全保障上の問題ということになるんじゃないでしょうか。


今日の菅官房長官の沖縄県の行動など何の意味もない、と言わんばかりの相手の面子をつぶす発言を聞いて、危機感が足りなすぎるんじゃないか、と感じてしまいました。

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嫌われる勇気、孤立する勇気、結婚しない勇気、ひきこもる勇気

2015年03月22日 20時25分57秒 | Weblog
「嫌われる勇気」、書店の目立つところに置いてあり、いやでも目にはいってくるベストセラーですが、この題名を見るたび、西尾維新の物語シリーズのネタが浮かんで来るのは私だけではないでしょう。


まるで相手の成長を促すためあえて自分を犠牲にして、嫌われ役を買ってでているかのようだ、そんなことは一言も言っていないのに、という阿良々木の声が聞こえて来てしまう。(この内容はアドラー心理学とは何の関係もありません。題名のみの感想ですので悪しからず。)


嘘をつく勇気、人を叱る勇気、友を裏切る勇気、孤立する勇気、仕事をやめる勇気とか、なんでもまるでいいことのように変えてしまう素敵ワードなので応用範囲は広そうです。


残念ながら、結婚しない勇気とか、就職しない勇気とか、引きこもる勇気、まで行くとさすがにこの言葉でもカバーしきれない感がありますが。


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9割の労働者を雇用する産業から、人がいらなくなっても大失業時代にはならなかった

2015年03月21日 22時17分52秒 | Weblog

現代は予想以上に多くの分野で、機械による人の置き換えと効率化が始まろうとしていますが、過去の歴史にも、主要な産業の雇用が少なくなった事は何度もありました。


そのもっとも印象的な例が農業でしょう。


農業は人類の歴史のほとんどの期間で、人口のほとんどを雇用する最も重要な産業でした。その製品である食糧も人間にとってもっとも重要なもので、消費支出のほとんどの部分も食糧に充てられていた、とみなすことができるでしょう。


しかし、農業の効率化が進み、1人あたりの食糧生産力が増えると、当然農業に必要な雇用も減っていきます。


そうなると、大失業時代が訪れたのか、といえばそんなことはなく、食糧以外の工業製品の生産が盛んになり、不要になった労働力は工業に吸収されていき、食糧の値段がさがることにより消費支出に占める食糧の割合は減り、衣服などの工業製品に対する支出が増えていったわけです。


似たようなことがこれからの時代に起きるとすれば、人が機械に置き換えられ、雇用が減った分野の製品やサービスにの値段がさがって、それに対する支出も減り、芸能や、スポーツ、政治といった人がやる必要がある分野が予想外に拡大して雇用を吸収し、その製品やサービスに対する支出が大きく増える、ということになるんでしょうか。


自分で書いておいてなんですが、ちょっと想像しがたい未来です。


しかし、おそらく、農業が中心の社会に生きていた人間にとっても、食糧のような重要なものではなく、必ずしも不要不急な工業製品の生産がこれほど拡大し、雇用も、その製品に対する支払も増える社会というのは想像しがたかったでしょう。


そう考えるとあながちこの未来図もあり得ないとは言えないのかもしれません。

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感情の支配する世界が到来する?

2015年03月20日 22時50分22秒 | Weblog

機械が人間に匹敵するパフォーマンスをあげられるようになったとき、個々の分野から人が駆逐されるか、その職がなくなるかどうか、大きな鍵を握るのはどのような要素でしょうか。


人が競い合い、勝者と敗者が分かれるドラマティックな姿を見たい、人並みはずれたヒーローの誕生に歓喜したり、敗れてさる人の悲哀に共感したい、という感情を人が持ち続ける限り、プロスポーツはなくならないでしょう。


機械に指図されるより、押し出しがよくパワーに溢れるリーダーについていきたいという感情がある限り、機械の下す政治判断が、人間の下す政治判断よりも優れていたとしても、人が政治や企業統治の世界から追い出されることはないでしょう。


やや逆説的ですが、機械が人を越えた時、社会は人の感情がより重要になり、支配的になる方向に変わっていくのかもしれません。

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人に並びつつある囲碁ソフト

2015年03月19日 22時42分41秒 | 囲碁


25世本因坊治勲vsコンピュータソフトは1勝1敗【第3回電聖戦】 日本棋院
http://www.nihonkiin.or.jp/news/2015/03/25vs113.html


3月17日に行われた、コンピュータ囲碁ソフトと趙治勲25世本因坊のハンデ対局は4子でコンピュータが勝ち、3子で負けの1勝1敗に終わったそうです。


趙治勲といえば言わずと知れた最多タイトルホルダー、全盛期にはプロアマ本因坊戦で、アマ本因坊を3子まで打ち込んでしまった置き碁の名手としても知られています。


58歳の今も衰えはあるにせよ、レーティングは国内16位、まだまだトップ棋士の一人といえます。

ガチの趙治勲と4子で勝負できるアマなど、碁打ちの中でも一握りでしょう。


トーナメントプロまではいかないにせよ、今やコンピュータは囲碁においても、人と互角の力を得つつあるといえるでしょう。


もっとも、仮にトッププロを倒すレベルまでコンピュータが強くなっても、囲碁プロ界は多少の打撃はあるにせよ、囲碁棋士はプロスポーツと同様、人がやることに意味がある職業なので、プロが成り立たなくなるような深刻な影響は受けないでしょう。


逆に、将棋などでは、ソフトを利用することで、そこらのアマもトッププロの対局をより深いレベルまで把握しながら観戦する、新しい楽しみかたも生まれています。


単なる強さよりも、「魅せる」打ち方を追求するようなスタイルも増えるかもしれません。


囲碁プロ界にとって、ソフトが強くなることは、必ずしもマイナス面ばかりでもないでしょう。


しかし、ほかの多くの職業にとっては、そうはいかないでしょう。


囲碁が攻略されつつある今、自分の分野は大丈夫だよ、と確信をもって言える人は少ないのではないでしょうか。


今は激変の時代の幕開けなのかもしれません。

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「東大卒プロゲーマー」感想

2015年03月18日 22時58分23秒 | Weblog

「東大卒プロゲーマー」感想


実はこれまで、オリンピックの泡沫競技やゲームのプロなど、本当にプロレベルといえるのか、とよく知りもせず、内心疑っていました。


発売されて数年のゲームなど、うまい人でもせいぜい囲碁の県代表レベルではないか、俗に8時間を10年、囲碁を覚えたのが中学ではプロになるには遅すぎる、という囲碁棋士のレベルには到底至っていないんじゃないか、というわけです。


しかし、この本を読んで、その疑いがいかに根拠がないものだったか、思い知らされました。

著者のときど氏は、小学校3年で格闘ゲームにであい、子供の頃も1日5時間、30歳の今は1日8時間ゲームの訓練をし、気分転換に別の格闘ゲームをし、余った時間はジムで体を鍛え、国際大会を連戦する体力をつけるそうです。


タイプは研究型、新しく発売されたタイトルを系統的に解析し、戦術を組み立て急速に強さを手に入れる。

対戦相手の手法を研究し、事前準備で勝利をもぎとるタイプ、将棋でいうなら、研究が仕事、対局は集金といいはなった森内九段タイプでしょうか。


さらにはそれまでプロが存在しなかった世界で、プロとして生きる道を試行錯誤で切り開いていく。

これだけの人は囲碁のプロの中にもどれだけいるか、と思わされます。


さらに集団研究の重要さも強調しており、多くの人と刺激しあい、協力してこそ強くなれる、コミュ力がなければ強くなれない、との指摘はなかなか耳がいたい。


ここまでやれば確かにプロの名に値する、と思うとともに、ここまでやらなければプロになれないのか、とも思わされた一冊でした。

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人類滅亡のリスクを0.01%あげる代わりに3億円あげましょうと言われたら?

2015年03月17日 21時10分06秒 | 悪魔

ある日あなたの家に、黒いスーツを着て顎鬚をはやした悪魔が訪ねてきて、こう言います。


「おめでとうございます。

あなたは素晴らしい幸運により、わたくしの取引相手として人類の中から選ばれました。

わたくしとの取引を受けてくださるならば、三億円を差し上げましょう。

まさに人生を変えるチャンスです。ぜひお受けください。


もちろん、まったく代償なしとはいきませんが、わたくし共悪魔も、最近は競争が激しく、昔のように魂をくれ、などと乱暴なことは申しません。

なに、ごくわずかな代償です。


取引を受けてくださるなら、今後50年以内に人類が滅亡する確率がたった0.01%あがる、ただそれだけです。


まあお考えください。交通事故だけで年間6000人死亡する時代ですよ。あなたがこの取引を受けたせいで死ぬ確率は、交通事故で死ぬ確率の30分の1程度にすぎません。

まったくたいしたことはない。


どうせ人間いつかは死ぬのです。限りある人生、チャンスを生かして大金をつかみ、楽しく過ごしてはいかがですか?


もちろん人類滅亡の原因を作ったとなればあなたも良心が咎めるかもしれませんな。

しかし、よく考えてみてください。

0.01%ですよ。

誰もリスクが上がったかどうかわかりませんし、要するにほんのごくわずか運がよければ、何の問題もなく人類は存続していくんです。

まったく気に病む必要などありませんよ。


どうやら、ご理解いただけたようですな。では、こちらの契約書にサインをお願いいたします。」


話を単純にするために、あなたは悪魔の話が本当であり、悪魔はだましたり、ごまかしたりせず、まともに契約を実行しようとしている、と判断したとしましょう。

はたしてあなたは悪魔とこの契約を結ぶでしょうか。


人類の滅亡確率が0.01%上がるというのは非常に重大な問題で、単純に死者の期待値だけでも60億人の0.01%で60万人増えることになります。

また、人類が滅亡するということは、単に人がたくさん死ぬというだけではなく、将来生まれるべきすべての人の可能性を奪い、過去、営々と築き上げられてきた人々の遺産を無に帰し、その生の意味を奪うことにもなります。


人類という立場に立つ限り、3億円ではまったく割に合わないことは明らかでしょう。


一方、個人の立場に立った場合、悪魔も指摘していることですが、全部で0.01%の死亡率の上昇はそれほど大きな問題ではありません。

0.01%の死亡リスクの上昇は、我々の統計的な検出限界を越えており、リスクとして扱うことすらできないレベルです。


常識的に考えても、人生を1万回繰り返して出会うかどうか、といったまれな危険など無視しても何の問題もないでしょう。


それよりも目の前の三億円のほうが魅力的なのは、これも明らかでしょう。

はたして人類のためを思ってこの契約を断れる人間はどれだけいるのでしょうか。


この悪魔の契約は、単なる思考実験にすぎませんが、ある意味核兵器に関わる政治判断をするリーダーはこの契約と似た判断を迫られることになります。


違うのは、利益が自分だけでなく、多くの自国民に与えられることと、人類滅亡のリスクがどの程度増えるかはっきりせず、言い訳がはるかにたやすいことです。


つまり、単に成り行きに任せて、指導者は一般人よりも視野が広く、倫理的にも優れていて、人類を本当に滅亡させるようなリスクはとらないだろう、とたかをくくるのは非常に危険な事だといえます。



ついでですが、この悪魔の契約は、受ける人が10000人近くいれば、100%人類が滅亡してしまうので、個人の立場としても受けるべきではないかもしれません。


しかし、この契約を断らない人が多いのは目に見えており、人類滅亡はほぼ確実なので、どうせなら自分が受けて三億円をもらい、人類滅亡の日まで楽しく過ごそうという判断もあるかもしれません。

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