日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - タキギヤ

2017-12-12 21:20:26 | 居酒屋
忘年会で呑み屋が混み合う十二月、ほとぼりが冷めるまでやり過ごすのも一案のところ、年内に挨拶がてら寄っておきたい店がいくつか残っています。今夜はその一つにやってきました。訪ねるのは荒木町の「タキギヤ」です。

職場の近くに、いつ行っても行列ができているトンカツ屋があります。あまりの繁盛ぶりに最近増床され、少しは入りやすくなるのかと思いきや、状況は全く変わりませんでした。極論すればたかがトンカツ、店により決定的な大差がつくようなものではありません。しかるに何故ここだけがという疑問をかねてから抱いていました。
その謎がようやく解けたのはつい最近のことです。ミシュランガイドで取り上げられたと聞き、さもありなんと納得しました。価値を大して分かっていない人々までが、ミシュランの名に釣られて並んでいるのかと思うと、その時点で天の邪鬼は興ざめです。ごく稀に待ち客がいない場面を目にしても、入ってみようという気は一切起きなくなりました。
それはもう済んだ話なのですが、より深刻な問題がありました。同じミシュランガイドに「タキギヤ」が載ったというのです。教祖の番組、著作で紹介されるだけならまだしも、この手の媒体は影響力がありすぎていけません。掲載された途端、客層が一変してしまった店を何軒も見てきました。先月の盛況ぶりも、その影響だったとすれば説明がつきます。前回訪ねた時点でさえ、客層がやや俗化している様子が窺われただけに、これがとどめとなりはしないかと懸念した次第です。しかし、その懸念は幸いにも杞憂に終わってくれました。

返り討ちも覚悟しつつ、恐る恐る縄暖簾の隙間からのぞき込むと、カウンターの手前が空いているのが見えました。出迎えてくれたのは、女将とは違う初見のお姉さんでした。老練さが感じられる立ち居振る舞いからして、一時しのぎの代役でないのは一目瞭然。カウンターの一番手前に着席し、まずは一安心という状況です。
先客はカウンターの奥の方に二組と小上がりに二組。店の収容力からして半分強といったところでしょうか。その多くが常連と見え、あからさまな一見客の姿はありません。先客が去った後も、常連の一人客が電話一本入れてから訪れるなど、手慣れた常連客を主体にした店内は、草創期を彷彿させるものがありました。
それとともに連想するのは京都の聖地「赤垣屋」です。幾多の先人によって紹介された全国区の有名店だけに、開店直後こそ争奪戦の様相を呈するものの、時間を選んで立ち寄れば常連客が必ずいるところが、どことなく似ているとでも申しましょうか。彼等が名前で呼ばれるところも同じです。年に一度か二度訪ねるのがせいぜいの自分が、名前で呼ばれるまで通い詰めるのは難しそうですが、本来の姿が保たれたのを幸いに思います。

タキギヤ
東京都新宿区荒木町7 安藤ビル1F
03-3351-1776
1700PM-2230PM(LO)
日祝日及び第一・第三・第五土曜定休

白菊・京の春
お通し二品(出汁・かぶら煮)
穴子の煮こごり
さより風干し
温奴
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