高校野球の地方大会について、久方ぶりに綴ってみると昨日申しました。気が変わらぬうちに早速始めます。題して「全国大会展望・私の場合」です。
内容は読んで字のごとし、マスコミ各社が繰り広げる「全国大会展望」を、自分なりの視点から綴るというものです。もちろん、優勝候補を予想するなどという陳腐なことをするわけではありません。blog開設以来六年間追い続けた結果、大会ごとの特徴であったり、毎年blogの話題を提供してくれる、「強豪校」とは全く異なる意味での「常連校」がある程度はっきりしてきたため、それを一通りさらうというのが趣旨です。
以下の内容には、過去の焼き直しも少なからず含まれます。というのも、数万単位の試合を追い続けた結果、自分にとっての高校野球の楽しみとは、つまるところマンネリズムに他ならないと気付いてきたからです。それでもなんだかんだで飽きないのは、組み合わせの運不運、勝負のあやといった野球本来の要素が加わるためなのでしょう。同じ名所で花見を繰り返しても、天候、開花状況といった偶然の要素に少なからず影響される結果、毎年訪ねても飽きないのと同じ理屈です。これは見方を変えれば、ある程度までが定型化されてきたということでもあります。その定型化された部分を取り出してみようというわけです。
前置きはこのあたりにして、まずは北海道から順に見ていきます。
北海道の高校野球の特徴といえば、なんといっても「地区予選」という独自の仕組みではないでしょうか。他の都府県とは桁違いに広い北海道だけに、南北に分割するだけでは対応できず、北に六つ、南に四つある支部ごとに予選を行い、それぞれの支部から選ばれた代表が、北北海道、南北海道の各大会を戦うというものです。支部ごとに代表枠の数が違い、最大となる札幌地区には7枠が割り当てられる一方、最小である小樽と名寄は2枠のみというのが、目下世間の注目を独占している「2014FIFAワールドカップ^TM」に似ています。
その地区予選を、最短の名寄地区はわずか三日、最長の札幌地区でも十日足らずで戦い、そこから半月の中休みを経て、一週間そこそこの本大会で南北の両代表が決まります。甲子園まで最大8勝を要する全国屈指の激戦区で、短期決戦の極みというべき緊迫した戦いが繰り広げられているわけです。広い大地でのびのび白球を追いかけるという先入観とは裏腹に、北国の球児たちは過酷な転戦を繰り返すことになります。
それでは、各大会の注目校を見ていきます。もちろん世間の評判とは何の関係もない、自分自身の趣味的見地から選んだチームです。
★北北海道
繰り返し語ってきた通り、自分にとって高校野球の原点とは、新聞に載るたった一行の試合結果から、旅した土地に思いを馳せることにあります。かような観点からすると、最も心惹かれるのが北海道、とりわけ北北海道の地区大会に登場する小さな町のチームです。
北海道に渡ったとき、文字通りに何もない道を延々走っていると、時折現れるごく小さな町にも、人々の生活の臭いが感じられて、やけに懐かしく思えることがあります。そんな町の名前を冠した高校が、紙面の片隅にさりげなく登場しているのを見つけ、その町を訪ねたときの記憶をしみじみと振り返るのがよいのです。
旭川、釧路、帯広、北見といったある程度大きな町の高校はさておき、北北海道の高校は多かれ少なかれそのような一面を持っています。その中からあえていくつか絞るとすれば、やはり北海道らしい響きの地名でしょう。それも、字面からして美しい地名というのはとりわけ心惹かれるものがあります。白眉といえるのは何といっても霧多布、他にも訓子府、女満別、興部、美幌、足寄、音更、鹿追、弟子屈など枚挙に暇がありません。佐呂間、阿寒に羅臼といった、北海道の大自然を連想させる校名もまた秀逸です。
宿命といわなければならないのは、これら郡部のチームは地区予選でおよそ姿を消すということです。昨年も、北北海道大会に進出した16強のうち、郡部のチームはわずかに3つでした。過去の代表校を振り返っても、北海道大会が南北に分割されてから昨年までの55回のうち、郡部のチームが出場権を獲得した例は30年前の広尾と24年前の中標津しかありません。郡部から選手権大会を勝ち上がるのは、それほどまでに難しいことなのです。長く雪に閉ざされ、練習相手を探すのも容易でないという環境からすれば、それも致し方のないところでしょう。いかにも北海道らしい地名が、年に一度か二度紙面に現れ消えていくという儚さは、ある意味北北海道ならではの見所といってよいかもしれません。
そんな中、郡部としては別格の強さを誇るのが遠軽です。このチームが四度にわたって代表の座に王手をかけながらも、その都度涙を呑んできたことについては、過去に綴った通りです。その健闘ぶりが認められ、昨年の選抜大会で甲子園初出場を果たしたことについても記しました。しかしながらそのとき感じたのは、「21世紀枠」なる余計な注釈がついたことによって、初出場初勝利の価値がわずかに減じられてしまったという歯がゆさでした。自力で出場権を勝ち取るだけの実力がありながらも、常にあと一歩及ばないところは、相撲にたとえるなら稀勢の里のようなものといえばよいでしょうか。
しかし、このようなチームであればあるほど、判官贔屓の心情に強く訴えるものです。高校野球の勝ち負けには本来無関心ながら、彼等の戦いぶりには今年も一喜一憂することになるでしょう。
★南北海道
話題の豊富な北北海道に比べ、南北海道にそれほどの見所はありません。六つの支部に比較的偏りなく散らばる北北海道に対し、南北海道は全出場校の半数近くが札幌地区という一極集中型だけに、校名も「札幌」を冠したものが非常に多く、悪くいえば無個性です。倶知安、寿都、真狩、壮瞥など、北海道らしい地名がないわけではないものの、数が全く違います。
そんな中、南北海道ならではの見所を挙げるとすれば、函館、小樽の伝統校ではないでしょうか。函館ならば函館中部、函館西と函館商、小樽ならば小樽潮陵に小樽桜陽といったところが代表格です。
自分流の高校野球の楽しみ方として、「伝統校に注目する」というものがあります。ある程度大きな街には、我が国の教育制度の黎明期から続いてきた高校が必ずあるものです。そのような伝統校の名前を紙面の片隅に見付け、先人が作り上げてきた歴史と伝統に思いをいたすのが、場合によっては試合結果を追いかけるより楽しいのです。
かような観点から見た場合、そもそも他の都府県に比べて歴史の浅い北海道には、見所がほとんどないようにも思われます。実際のところ、江戸時代の藩校を出自とする創立三百数十年の名門に比べれば、北海道の伝統校などたかが知れてはいるのです。しかし、そんな中でも別格といえるのが函館と小樽です。今や名古屋に次ぐ大都市となった札幌も、道内最大の都市となったのは昭和10年代のことであり、それ以前は函館、小樽の方が上でした。旧制中学、高等女学校、商業学校を出自とする三校が揃い、そのどれもが一世紀を超える歴史を有するのは、道内では函館、小樽の二都市しかありません。小樽商に野球部はありませんが、それはそれとして…
風格こそ上記二都市に譲るものの、東西南北の道立四天王を擁する札幌も、伝統校の数にかけては道内随一です。中でも春夏合わせて47回の全国大会出場を誇る北海は、明治18年創立という道内最古の私立校でもあります。道内での圧倒的な強さと裏腹に、全国大会ではなかなか勝てない内弁慶ぶりもこのチームの特徴で、選手権に歴代最多タイの35回出場しながら17勝で.327の勝率は、出場回数20回以上のチームとしては、次点に一割以上の差をつけられての最下位ですorz
ちなみに、北では16ある本大会の出場枠が、南では15という半端な数になります。以前は南北どちらも16強で戦っていた本大会において、南だけ1枠減ったのは三年前のことでした。それまで4枠だった室蘭地区が3枠に減らされたためです。
これにより、代表枠に対する倍率に関して地区ごとの格差が大きくなったばかりか、南北海道の組み合わせで余った1チームは、その時点で8強以上が確定するなどの不公平が生まれました。去年の例でいうなら、14チームが2枠を争う小樽地区では、シードされれば2勝で本大会に進出でき、さらにくじ運がよければそこから3勝で甲子園です。ところが25チームに対して3枠の室蘭ならば、地区予選で最大4勝、本大会で原則4勝しなければなりません。しかも、同じ地区にはあの駒大苫小牧を筆頭として、北海道栄、鵡川といった強豪がひしめき、無名校がそれらの壁を乗り越えるのは至難の業です。かくも理不尽な仕組みがなぜ導入され、今なおまかり通っているのかが、自身にとって北海道の高校野球に関する最大の謎でもあります。
東北まで進むつもりが、結局北海道だけで終わってしまいました。どうやら開幕までに列島を縦断するのは難しそうですね…
内容は読んで字のごとし、マスコミ各社が繰り広げる「全国大会展望」を、自分なりの視点から綴るというものです。もちろん、優勝候補を予想するなどという陳腐なことをするわけではありません。blog開設以来六年間追い続けた結果、大会ごとの特徴であったり、毎年blogの話題を提供してくれる、「強豪校」とは全く異なる意味での「常連校」がある程度はっきりしてきたため、それを一通りさらうというのが趣旨です。
以下の内容には、過去の焼き直しも少なからず含まれます。というのも、数万単位の試合を追い続けた結果、自分にとっての高校野球の楽しみとは、つまるところマンネリズムに他ならないと気付いてきたからです。それでもなんだかんだで飽きないのは、組み合わせの運不運、勝負のあやといった野球本来の要素が加わるためなのでしょう。同じ名所で花見を繰り返しても、天候、開花状況といった偶然の要素に少なからず影響される結果、毎年訪ねても飽きないのと同じ理屈です。これは見方を変えれば、ある程度までが定型化されてきたということでもあります。その定型化された部分を取り出してみようというわけです。
前置きはこのあたりにして、まずは北海道から順に見ていきます。
北海道の高校野球の特徴といえば、なんといっても「地区予選」という独自の仕組みではないでしょうか。他の都府県とは桁違いに広い北海道だけに、南北に分割するだけでは対応できず、北に六つ、南に四つある支部ごとに予選を行い、それぞれの支部から選ばれた代表が、北北海道、南北海道の各大会を戦うというものです。支部ごとに代表枠の数が違い、最大となる札幌地区には7枠が割り当てられる一方、最小である小樽と名寄は2枠のみというのが、目下世間の注目を独占している「2014FIFAワールドカップ^TM」に似ています。
その地区予選を、最短の名寄地区はわずか三日、最長の札幌地区でも十日足らずで戦い、そこから半月の中休みを経て、一週間そこそこの本大会で南北の両代表が決まります。甲子園まで最大8勝を要する全国屈指の激戦区で、短期決戦の極みというべき緊迫した戦いが繰り広げられているわけです。広い大地でのびのび白球を追いかけるという先入観とは裏腹に、北国の球児たちは過酷な転戦を繰り返すことになります。
それでは、各大会の注目校を見ていきます。もちろん世間の評判とは何の関係もない、自分自身の趣味的見地から選んだチームです。
★北北海道
繰り返し語ってきた通り、自分にとって高校野球の原点とは、新聞に載るたった一行の試合結果から、旅した土地に思いを馳せることにあります。かような観点からすると、最も心惹かれるのが北海道、とりわけ北北海道の地区大会に登場する小さな町のチームです。
北海道に渡ったとき、文字通りに何もない道を延々走っていると、時折現れるごく小さな町にも、人々の生活の臭いが感じられて、やけに懐かしく思えることがあります。そんな町の名前を冠した高校が、紙面の片隅にさりげなく登場しているのを見つけ、その町を訪ねたときの記憶をしみじみと振り返るのがよいのです。
旭川、釧路、帯広、北見といったある程度大きな町の高校はさておき、北北海道の高校は多かれ少なかれそのような一面を持っています。その中からあえていくつか絞るとすれば、やはり北海道らしい響きの地名でしょう。それも、字面からして美しい地名というのはとりわけ心惹かれるものがあります。白眉といえるのは何といっても霧多布、他にも訓子府、女満別、興部、美幌、足寄、音更、鹿追、弟子屈など枚挙に暇がありません。佐呂間、阿寒に羅臼といった、北海道の大自然を連想させる校名もまた秀逸です。
宿命といわなければならないのは、これら郡部のチームは地区予選でおよそ姿を消すということです。昨年も、北北海道大会に進出した16強のうち、郡部のチームはわずかに3つでした。過去の代表校を振り返っても、北海道大会が南北に分割されてから昨年までの55回のうち、郡部のチームが出場権を獲得した例は30年前の広尾と24年前の中標津しかありません。郡部から選手権大会を勝ち上がるのは、それほどまでに難しいことなのです。長く雪に閉ざされ、練習相手を探すのも容易でないという環境からすれば、それも致し方のないところでしょう。いかにも北海道らしい地名が、年に一度か二度紙面に現れ消えていくという儚さは、ある意味北北海道ならではの見所といってよいかもしれません。
そんな中、郡部としては別格の強さを誇るのが遠軽です。このチームが四度にわたって代表の座に王手をかけながらも、その都度涙を呑んできたことについては、過去に綴った通りです。その健闘ぶりが認められ、昨年の選抜大会で甲子園初出場を果たしたことについても記しました。しかしながらそのとき感じたのは、「21世紀枠」なる余計な注釈がついたことによって、初出場初勝利の価値がわずかに減じられてしまったという歯がゆさでした。自力で出場権を勝ち取るだけの実力がありながらも、常にあと一歩及ばないところは、相撲にたとえるなら稀勢の里のようなものといえばよいでしょうか。
しかし、このようなチームであればあるほど、判官贔屓の心情に強く訴えるものです。高校野球の勝ち負けには本来無関心ながら、彼等の戦いぶりには今年も一喜一憂することになるでしょう。
★南北海道
話題の豊富な北北海道に比べ、南北海道にそれほどの見所はありません。六つの支部に比較的偏りなく散らばる北北海道に対し、南北海道は全出場校の半数近くが札幌地区という一極集中型だけに、校名も「札幌」を冠したものが非常に多く、悪くいえば無個性です。倶知安、寿都、真狩、壮瞥など、北海道らしい地名がないわけではないものの、数が全く違います。
そんな中、南北海道ならではの見所を挙げるとすれば、函館、小樽の伝統校ではないでしょうか。函館ならば函館中部、函館西と函館商、小樽ならば小樽潮陵に小樽桜陽といったところが代表格です。
自分流の高校野球の楽しみ方として、「伝統校に注目する」というものがあります。ある程度大きな街には、我が国の教育制度の黎明期から続いてきた高校が必ずあるものです。そのような伝統校の名前を紙面の片隅に見付け、先人が作り上げてきた歴史と伝統に思いをいたすのが、場合によっては試合結果を追いかけるより楽しいのです。
かような観点から見た場合、そもそも他の都府県に比べて歴史の浅い北海道には、見所がほとんどないようにも思われます。実際のところ、江戸時代の藩校を出自とする創立三百数十年の名門に比べれば、北海道の伝統校などたかが知れてはいるのです。しかし、そんな中でも別格といえるのが函館と小樽です。今や名古屋に次ぐ大都市となった札幌も、道内最大の都市となったのは昭和10年代のことであり、それ以前は函館、小樽の方が上でした。旧制中学、高等女学校、商業学校を出自とする三校が揃い、そのどれもが一世紀を超える歴史を有するのは、道内では函館、小樽の二都市しかありません。小樽商に野球部はありませんが、それはそれとして…
風格こそ上記二都市に譲るものの、東西南北の道立四天王を擁する札幌も、伝統校の数にかけては道内随一です。中でも春夏合わせて47回の全国大会出場を誇る北海は、明治18年創立という道内最古の私立校でもあります。道内での圧倒的な強さと裏腹に、全国大会ではなかなか勝てない内弁慶ぶりもこのチームの特徴で、選手権に歴代最多タイの35回出場しながら17勝で.327の勝率は、出場回数20回以上のチームとしては、次点に一割以上の差をつけられての最下位ですorz
ちなみに、北では16ある本大会の出場枠が、南では15という半端な数になります。以前は南北どちらも16強で戦っていた本大会において、南だけ1枠減ったのは三年前のことでした。それまで4枠だった室蘭地区が3枠に減らされたためです。
これにより、代表枠に対する倍率に関して地区ごとの格差が大きくなったばかりか、南北海道の組み合わせで余った1チームは、その時点で8強以上が確定するなどの不公平が生まれました。去年の例でいうなら、14チームが2枠を争う小樽地区では、シードされれば2勝で本大会に進出でき、さらにくじ運がよければそこから3勝で甲子園です。ところが25チームに対して3枠の室蘭ならば、地区予選で最大4勝、本大会で原則4勝しなければなりません。しかも、同じ地区にはあの駒大苫小牧を筆頭として、北海道栄、鵡川といった強豪がひしめき、無名校がそれらの壁を乗り越えるのは至難の業です。かくも理不尽な仕組みがなぜ導入され、今なおまかり通っているのかが、自身にとって北海道の高校野球に関する最大の謎でもあります。
東北まで進むつもりが、結局北海道だけで終わってしまいました。どうやら開幕までに列島を縦断するのは難しそうですね…