開幕から40日目を迎えた昨日は5大会で、41日目の本日はトリを飾る愛知で決勝が戦われ、全49代表の決定とともに地方大会が終わりました。それと同時に、全国各地の戦いぶりを追いかけてきたこの話題も否応なしに終幕となります。最後の最後は視点を変えて今大会を振り返ると昨日申しました。題して「大会講評・私の場合」です。
「講評」といえば、全国大会の閉会式で高野連のお偉方から賜るものです。しかし、対象を地方大会にまで広げた講評はなかなかありません。甚だ僭越ではありますが、このblog独自の視点から地方大会を総括するのも一興かと思い立った次第です。早速地域別に振り返ってみたいと思います。
★北海道
北北海道の遠軽が8強止まりに終わる中、今季最も楽しませてくれたのは南北海道の浦河でした。予選突破でさえ60年ぶり2度目という郡部の小さな町のチームが、あれよあれよという間に勝ち上がり、準決勝でも白熱の打撃戦を繰り広げて、あわや逆転勝ちというところまで攻め込んだのは見事というほかありません。その浦河を下した伝統校の小樽潮陵が、決勝で惜敗したのは残念でした。
★東北
私立の強化校の天下となり、ともすれば興ざめしがちな東北地方にあって、青森大会の見所を再発見した大会でした。津軽、下北、三八上北の各地域にほどよく町が散らばり、それに合わせて球場も県内各所に分散し、しかも地形の関係上直線移動がしづらいため、遠く離れたチーム同士の対戦が毎日のように出現するのは、青森大会ならではの愉しみと気付きました。くじ運によっては初戦からいきなり三連戦という、都会の激戦区にさえ存在しない過密日程も独特。決勝でも県立の伝統校青森が八戸学院光星を相手に健闘するなど、最後まで楽しませてくれたことに感謝しています。
青森に比べると他県の印象はやや希薄ながら、宮城の双璧が4強にすら残れずに敗退したこと、白河と喜多方のラーメン対決などは印象的でした。
★関東
前橋育英が二戦目で敗退し、選手権無敗の記録を保持したのが個人的には最大の出来事でした。霞ヶ浦が過去五年中四度目の決勝敗退を喫するという悲劇的な結末も印象に残ります。今季は二松学舎大付が11度目の挑戦で初の全国大会出場を決めましたが、霞ヶ浦が決勝戦の壁を乗り越える日は来るのでしょうか。
★甲信越
またしても屈折した視点ではありますが、松商学園の出場辞退は特筆すべき出来事でした。これによって六年間全国大会から遠ざかり、同校にとっては戦中戦後の混乱期を除き最も長い空白期間となったからです。その長野大会で4強進出と大健闘したのが上伊那農です。無名校の快進撃という話題性もさることながら、校庭の桜並木が印象的な、個人的に思い入れのある同校が健闘したことに価値があります。
新潟大会では、「ご近所同士の練習試合」と酷評してきた組み合わせが大幅に改善され、シード校を中心にした他県並みの組み合わせとなったのが特筆されます。これにより初戦早々出現した新井対村松の一戦が、延長15回の引き分け再試合となったのは、同大会で今季一の名勝負と個人的に思っています。その一方で残念な話題もありました。佐渡の相川が今季限りで大会から撤退することです。少子高齢化の波はとどまるところを知らず、離島の無名校は年々数を減らしています。同校の撤退により、新潟大会の数少ない見所の一つが失われてしまいました。
★東海
古豪静岡が全国大会出場を決めたのもさることながら、静岡大会で特筆すべきは「オイスカ」なる風変わりな校名が登場したことです。愛知では、大毎山内を生んだ起工と、南海杉浦の母校挙母改め豊田西の直接対決が実現し、取っては取られの打撃戦という試合内容を含めて見応え十分でした。
三重大会では、全国屈指の弱小校として取り上げたあけぼの学園が、初戦敗退とはいえ一桁失点で7回まで戦い抜いたのが印象的でした。同校を破った稲生がその後4強に進出したことを考えると、相手によってはさらに健闘できたのではと仮想させられます。
残念な話題としては、天竜林業が統廃合によって今季から姿を消し、鳥羽商船も部員不足のためか不出場に終わったことが挙げられます。離島勢だけではなく、風変わりな職業高校も少しずつ退潮傾向にあるようです。
★北陸
月並みな話題ではありますが、9回裏に0対8からの大逆転となった石川大会決勝戦の印象があまりに強すぎ、それ以外の話題が思いつきません。仮に全国大会だったとすれば、末永く語り継がれる伝説となったであろうこの試合ですが、何分地方大会の決勝だけに、3年後でも覚えている人々がどれだけいるかについては未知数です。しかし、少なくとも高校野球好きにとっては後年まで記憶に残る出来事となるでしょう。
★近畿
白眉だったのは、予選皆勤記録を保持する山城の4強進出、智辯和歌山を下して全国大会出場を果たした市和歌山の殊勲、初戦でいきなり実現した兵庫と神戸による皆勤校同士の対戦といったところでしょうか。しかし、それ以外の話題がなかったわけではありません。錚々たる古豪が揃い踏みする大阪と兵庫、古式ゆかしい地名に彩られた京都と奈良など、今年も期待通りに楽しませてくれた近畿地方の各大会でした。
★中国
藩校を発祥とする岩国が全国大会に進出し、同じく旧藩校の福山誠之館も8強に進出。予選皆勤記録を保持する大社の決勝進出など、伝統校と古豪の活躍が光った今季でした。
★四国
今季の四国地方といえば、何といっても愛媛大会で実現した松山東対小松という旧藩校同士の決勝戦でしょう。高知大会の初戦で出現した室戸対清水という極地同士の対戦も秀逸でした。個人的には、MOSの店名になったこと「だけ」で注目していた高松桜井が、4強進出という思わぬ快進撃を果たしたのが印象に残っています。
★九州・沖縄
他の地域と違い、今季ならではというべき名勝負や珍事は特段なかったものの、鹿児島の離島勢は今年も楽しませてくれました。その一方で沖縄の離島勢が開幕早々全滅し、見所がほとんど失われてしまったのは残念でした。
以上をもって、一月半にわたった高校野球の話題は完結となります。一日平均でざっと三千字、多いときには五千字を超すという長文を、我ながらよく書き連ねたものだというのが、完結を迎えるにあたっての実感です。
自分自身でも読み返すのを面倒に感じるほどなのですから、読者の方にとってはなおさらでしょう。実際のところ訪問者数は目に見えて減り、最盛期の二割から三割程度で推移しました。とはいえ、興味のない人には見向きもされない反面、受ける人には受けるというのがこの話題の特徴でもあります。もとより万人受けを狙ったblogではなく、自身の日常を記録するのがそもそもの目的です。あまりに話題が膨らみすぎてblogにまとめきれないという状況が、過去三季にわたって続いただけに、心行くまで書き尽くしたという点では満足しています。
最後はもちろん、長きにわたって楽しませてくれた球児たちへの感謝で締めくくります。また来年…
「講評」といえば、全国大会の閉会式で高野連のお偉方から賜るものです。しかし、対象を地方大会にまで広げた講評はなかなかありません。甚だ僭越ではありますが、このblog独自の視点から地方大会を総括するのも一興かと思い立った次第です。早速地域別に振り返ってみたいと思います。
★北海道
北北海道の遠軽が8強止まりに終わる中、今季最も楽しませてくれたのは南北海道の浦河でした。予選突破でさえ60年ぶり2度目という郡部の小さな町のチームが、あれよあれよという間に勝ち上がり、準決勝でも白熱の打撃戦を繰り広げて、あわや逆転勝ちというところまで攻め込んだのは見事というほかありません。その浦河を下した伝統校の小樽潮陵が、決勝で惜敗したのは残念でした。
★東北
私立の強化校の天下となり、ともすれば興ざめしがちな東北地方にあって、青森大会の見所を再発見した大会でした。津軽、下北、三八上北の各地域にほどよく町が散らばり、それに合わせて球場も県内各所に分散し、しかも地形の関係上直線移動がしづらいため、遠く離れたチーム同士の対戦が毎日のように出現するのは、青森大会ならではの愉しみと気付きました。くじ運によっては初戦からいきなり三連戦という、都会の激戦区にさえ存在しない過密日程も独特。決勝でも県立の伝統校青森が八戸学院光星を相手に健闘するなど、最後まで楽しませてくれたことに感謝しています。
青森に比べると他県の印象はやや希薄ながら、宮城の双璧が4強にすら残れずに敗退したこと、白河と喜多方のラーメン対決などは印象的でした。
★関東
前橋育英が二戦目で敗退し、選手権無敗の記録を保持したのが個人的には最大の出来事でした。霞ヶ浦が過去五年中四度目の決勝敗退を喫するという悲劇的な結末も印象に残ります。今季は二松学舎大付が11度目の挑戦で初の全国大会出場を決めましたが、霞ヶ浦が決勝戦の壁を乗り越える日は来るのでしょうか。
★甲信越
またしても屈折した視点ではありますが、松商学園の出場辞退は特筆すべき出来事でした。これによって六年間全国大会から遠ざかり、同校にとっては戦中戦後の混乱期を除き最も長い空白期間となったからです。その長野大会で4強進出と大健闘したのが上伊那農です。無名校の快進撃という話題性もさることながら、校庭の桜並木が印象的な、個人的に思い入れのある同校が健闘したことに価値があります。
新潟大会では、「ご近所同士の練習試合」と酷評してきた組み合わせが大幅に改善され、シード校を中心にした他県並みの組み合わせとなったのが特筆されます。これにより初戦早々出現した新井対村松の一戦が、延長15回の引き分け再試合となったのは、同大会で今季一の名勝負と個人的に思っています。その一方で残念な話題もありました。佐渡の相川が今季限りで大会から撤退することです。少子高齢化の波はとどまるところを知らず、離島の無名校は年々数を減らしています。同校の撤退により、新潟大会の数少ない見所の一つが失われてしまいました。
★東海
古豪静岡が全国大会出場を決めたのもさることながら、静岡大会で特筆すべきは「オイスカ」なる風変わりな校名が登場したことです。愛知では、大毎山内を生んだ起工と、南海杉浦の母校挙母改め豊田西の直接対決が実現し、取っては取られの打撃戦という試合内容を含めて見応え十分でした。
三重大会では、全国屈指の弱小校として取り上げたあけぼの学園が、初戦敗退とはいえ一桁失点で7回まで戦い抜いたのが印象的でした。同校を破った稲生がその後4強に進出したことを考えると、相手によってはさらに健闘できたのではと仮想させられます。
残念な話題としては、天竜林業が統廃合によって今季から姿を消し、鳥羽商船も部員不足のためか不出場に終わったことが挙げられます。離島勢だけではなく、風変わりな職業高校も少しずつ退潮傾向にあるようです。
★北陸
月並みな話題ではありますが、9回裏に0対8からの大逆転となった石川大会決勝戦の印象があまりに強すぎ、それ以外の話題が思いつきません。仮に全国大会だったとすれば、末永く語り継がれる伝説となったであろうこの試合ですが、何分地方大会の決勝だけに、3年後でも覚えている人々がどれだけいるかについては未知数です。しかし、少なくとも高校野球好きにとっては後年まで記憶に残る出来事となるでしょう。
★近畿
白眉だったのは、予選皆勤記録を保持する山城の4強進出、智辯和歌山を下して全国大会出場を果たした市和歌山の殊勲、初戦でいきなり実現した兵庫と神戸による皆勤校同士の対戦といったところでしょうか。しかし、それ以外の話題がなかったわけではありません。錚々たる古豪が揃い踏みする大阪と兵庫、古式ゆかしい地名に彩られた京都と奈良など、今年も期待通りに楽しませてくれた近畿地方の各大会でした。
★中国
藩校を発祥とする岩国が全国大会に進出し、同じく旧藩校の福山誠之館も8強に進出。予選皆勤記録を保持する大社の決勝進出など、伝統校と古豪の活躍が光った今季でした。
★四国
今季の四国地方といえば、何といっても愛媛大会で実現した松山東対小松という旧藩校同士の決勝戦でしょう。高知大会の初戦で出現した室戸対清水という極地同士の対戦も秀逸でした。個人的には、MOSの店名になったこと「だけ」で注目していた高松桜井が、4強進出という思わぬ快進撃を果たしたのが印象に残っています。
★九州・沖縄
他の地域と違い、今季ならではというべき名勝負や珍事は特段なかったものの、鹿児島の離島勢は今年も楽しませてくれました。その一方で沖縄の離島勢が開幕早々全滅し、見所がほとんど失われてしまったのは残念でした。
以上をもって、一月半にわたった高校野球の話題は完結となります。一日平均でざっと三千字、多いときには五千字を超すという長文を、我ながらよく書き連ねたものだというのが、完結を迎えるにあたっての実感です。
自分自身でも読み返すのを面倒に感じるほどなのですから、読者の方にとってはなおさらでしょう。実際のところ訪問者数は目に見えて減り、最盛期の二割から三割程度で推移しました。とはいえ、興味のない人には見向きもされない反面、受ける人には受けるというのがこの話題の特徴でもあります。もとより万人受けを狙ったblogではなく、自身の日常を記録するのがそもそもの目的です。あまりに話題が膨らみすぎてblogにまとめきれないという状況が、過去三季にわたって続いただけに、心行くまで書き尽くしたという点では満足しています。
最後はもちろん、長きにわたって楽しませてくれた球児たちへの感謝で締めくくります。また来年…