日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

汽車旅in北海道 番外編

2012-12-27 23:27:33 | 東北
さて、青森からの帰りに背伸びをして乗車したグランクラスでしたが、結論としては大方予想通りでした。その予想とは、「金持ちの金持ちによる金持ちのための車両」だということです。
たしかに、内装もシートも現代の鉄道車両にしては珍しいほど高級感があります。しかし、内装に関していえば、JR九州なら普通車でもこの程度のものは造ります。シートにしても、どんなに立派なものを造ったところで、当然ながら人間の体格は変わらないわけで、結果的には背もたれと肘掛けが大きくなるだけです。背もたれ、座面、レッグレストを無段階に調節できる電動シートも、結局どこがベストポジションなのかが分かりません。少なくとも自分にとっては宝の持ち腐れでしかありませんでした。
一方で、軽食のサービスは予想以上のものでした。軽食とはいいながらその中身は折り詰めで、小さいながらもかなりの品が詰め込まれており、しかもそれがよく考え抜かれているのです。たとえば、おかずには冷めても味が落ちないように濃いめの味付けがなされ、ご飯ものは最後に一口いただく程度の分量に抑えられています。つまり、腹を満たすというより、晩酌の肴にすることを前提にした構成で、こちらにとっては願ったり叶ったりです。
酒は宮城の地酒「於茂多加」の本醸造で、一合の呑みきりボトルがグラスとともに供されます。まずはビールを一本空け、おかずを肴に酒を二本空けたところで、残ったそぼろご飯を日本茶とともにいただけば、晩酌としてはまことに上々です。これなら酒と肴で少なくとも二千円は回収でき、グランクラスの実質的な出費はグリーン車の三千円増しということになります。

結局のところ、グランクラスを選ぶ決め手になるのは、とは、この豪勢なシートと専属乗務員のサービスに三千円払うかどうかだというのが、自分の中での結論です。少なくとも、シートは自分にとって猫に小判でしかありません。思うに、このシートの価値を理解できるのは、高級車の電動シートに乗り慣れた金持ちだけなのではないでしょうか。金持ちのための車両と評するのはそのためです。
往路でも申した通り、自分自身車内で飲み食いするのが好きではありません。よって、同じ出費をするならば、例えば乗車前に青森の寿司屋で一献傾け、グリーン車で帰るというのが最善の選択になるでしょう。とはいえ、車内での晩酌を愉しむ向きには悪くないと思ったのも事実ではあります。かつて新幹線に食堂車があった頃には、そこで飲み食いすることに一つの価値があり、だからこそ平凡なメニューも割高な価格も納得の上で利用していたわけです。それと同様、豪勢なシートで折り詰めを肴に酒を酌むという行為に五千円払うと思えば、不当に高くはないようにも思います。今回のようにいくつかの大義名分があったとすれば、もう一度乗車するのもよさそうです。果たして次の機会はあるのでしょうか?
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