例によって自転車で関門海峡を渡るかというとさにあらず。今回は趣向を変えて古きよきMOSを訪ねます。その名も「下関東駅店」です。
松山フライブルク通り店などと並んで、この店はよい店舗とよい店名を兼ね備えたMOSとして全国屈指の存在です。一見すると平凡にも思えるこの店名の秀逸さは、「東駅」の指し示すものの正体を知ることによって初めて明らかとなります。下関駅の東口をいくら探し歩いてもこの店は存在しません。この店が位置するのは、駅からざっと2kmも北に離れた、中規模スーパーがある以外は何の変哲もない市街地です。それでは何故にここが東駅なのかといえば、この店ができるはるか昔になくなった市内電車の「東駅」なる停留所に由来するのです。例えていうなら、戦時中に存在した飛行場にちなんで名付けられた「飛行場前仮乗降場」のようなものとでも申しましょうか。駅名を冠したMOSは数あれど、今はなき駅の名を名乗る店舗は、全国広しといえどもこの店だけではないでしょうか。そんな由来を知ったなら、決して忘れることのできない店名の一つです。
店名に負けず劣らず店舗も秀逸で、三階建ての小さなビルの1Fに、往年と何一つ変わらぬMOSが盛業中です。狭い間口の右が開き戸、左がレジカウンターにつながるテイクアウト用の小窓という組み合わせは、路地裏出店と形容された時代の典型的な造りで、その上には白いMマークをあしらった赤看板よりさらに一世代前の、長方形の赤看板が誇らしげに掲げられています。店内の造りは、
大井松田店のように目を見張る何かがあるというわけではないものの、狭いスペースをうまく活かした往年のMOSの特徴がよく現れています。店内をくまなく観察しても、POS化されたレジ以外は何もかもそのままではないかと思うほど、全てのものが大切に手入れされつつ使われているようです。この店を初めて訪ねたときでさえ、時代を感じる古めかしい店舗だったというのに、それから10年以上が経った今でも一切姿を変えずに残っているというのは奇蹟というほかありません。紛うことなき中国地方屈指の良モスの一つです。
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モスバーガー下関東駅店
山口県下関市後田町1-8-21
083-234-3750
1000AM-2400AM