早朝、
不意にベランダから、家内の叫び声が聞こえてきた。
「あ"ー、羽化しとる!!」
うか?
何じゃそりゃ?
外にでてみると、
家内が何かを凝視している。
ヤツの視線の先には、オリオンビールのコップがあった。
私のオリオンビールのコップが、いつの間にやらヤツの園芸用になっていたと言う詮索は、ここでは置く。
「オオスカシバよ。昨日まで蛹だったとよ。」
「オオスカシバ?いつの間に、そんなの育てとったとか。」
クチナシの苗に、オオスカシバの幼虫を発見した家内。
(このままではクチナシが消滅する!)
戦慄した家内は、芋虫をつまみ上げ、クチナシの葉と共に、コップの中に隔離していたと言う。
オオスカシバは、蜂に擬態する蛾としても有名である。
「にしても動かんにゃ。」
「うーん。」
羽化の苦しみか、身じろぎもしないオオスカシバ。
このままでは巣立ちはおろか、コップからの脱出すらできないかも。
「コップば倒してみようか。」
「羽が折れ曲がってる。羽化に失敗したとやろか?助からんかも。」
・・・2時間後
あ!
コップの外に出とる。
生きてはいたようだ。
だが、羽は依然として折れ曲がったままだ。
いいか、落ちないようにしっかり掴まっているんだぞ。
落ちたら、
ジョーズが口を開けて待ってるぞ。
『フニャ?』
これが抜け殻となった蛹だ。
果たしてこの若い蛾は、その命を保てるのだろうか。
・・・8時間後、
あ"!
いなくなってる。
鉢植えとその隙間を念入りに探してみたが、その姿はどこにもない。
巣立ったのだ。
ジーーーン (´∩`。)グスン
「また来年も、うちのクチナシに卵を産みに来るんだぞ。」(私)
「来なくていい!」(家内)