ひどい本でした。思いつきを並べただけの根拠のない論理に想像力の欠如。怒りよりも先に呆れがこみ上げてくる本ですので、立ち読みだけで済ませて買わないことをお勧めします。こんな人に印税を落とすなんてそれこそもったいない。
内容について言いますと、この本は血液型性格判断を何とかして科学的に見せようと四苦八苦しています。「~なのです。」と断定することは多々あっても、それの根拠や参考文献を示すことはほとんどしません。まったくもって自分の思いつきを垂れ流すだけの不親切な本です。
血液型性格判断そのものの科学性については、すでに多くの秀逸な記事がweb上にありますのでそちらを見ていただくとして、ここでは人類学とかかわる部分のデタラメを指摘していきます。
P81>クロマニヨン人は食べ物がなくなったアフリカから世界各地に移動し始めました。紀元前三万年頃です。つまりO型の血液型を持つ人間が世界各地に散らばることになったのです。
このことは、世界各地の先住民族がO型であることからもうかがえます。先住民族である南北アメリカのネイティブ・アメリカンとイヌイットは、ほとんどの人がO型です。
いやいや、アメリカ先住民にO型が多いのは単なるボトルネック効果の結果ですから。この時点で集団遺伝学というものをご存じないのでしょう(知っててやったとしたら人類学や集団遺伝学に喧嘩売ってるのか)。
P82~83>穀類、豆類、野菜類などを好む腸内細菌にA型物質を持っている細菌がいて、たまたまその細菌の遺伝子がトランスフィクション(遺伝子移入)を起こした結果、農耕民族の新モンゴロイドにA型人間が誕生したのです。紀元前二万5000年から一万5000年頃だと考えられています。
B型人間は、インドやウラル地方で紀元前一万年頃に誕生したといわれています。
P84>AB型はごく最近出現した血液型です。1000年から1200年ほど前には、AB型の人はいなかったと考えられています。その証拠として、西暦900年以前の墓からAB型の人間が見つかっていないことが挙げられます。おそらく、東方の騎馬民族が東から西へ侵略を続けるなかで、A型人間とB型人間の混血が起こり、AB型が誕生したものと思われます。
つまり、当初、人類の血液型はすべてO型だったものが、農耕民族の一部からはA型が生まれ、遊牧民族の一部からはB型が生まれました。さらに、彼らの混血の結果、AB型がごく最近になって生まれたと考えられるのです。
まぁ、こういうことを言うならそれなりの根拠を出してほしいところですよね。しかし、人類学の研究者の見解とは明らかに異なるようですよ?
>血液型遺伝子の進化:血液型は細胞表面の抗原なので,バクテリアやウイルスなど細胞外からの影響を受けやすく,正の自然淘汰が生じる可能性が高いと考えられます。そこで,ABO式およびRh式血液型遺伝子の進化を研究しています。ヒトのA型,B型,O型の遺伝子塩基配列を比較した結果,それらは500万年ほど前から共存している可能性が強いことがわかりました。アウストラロピテクス(猿人)やホモ・エレクトス(原人)でもA型,B型,O型,AB型があったと考えられます。なぜこのような異なる型の共存が長く続いてきたのかは,まだよくわかっていません。
ある程度自然淘汰がかかるのは確からしいようですが、少なくとも血液型がここ数千~数万年程度で急速に分化してきたものではなく、かなり昔からA、B、Oすべてがそろっていたようです。自分で作った表の中に人間と近縁なチンパンジーがA、B、Oすべて持っているというのにどうして人間が共通派生形質としてそれを備えている可能性に至らないのかも僕には謎ですね。この人、進化生物学もだめなんじゃなかろうか(そもそも集団遺伝学をぞんざいに扱っている時点で何をかいわんやかもしれませんが)。
ていうかね、仮に数万年程度で急速に分化した形質が世界中の人類集団に見られるなんてことがあったとしてそれを人類学者が取り上げないわけがないでしょう?じゃあなんで本職の見解が寄生虫博士と異なるのか。素人の思いつきの検証くらい本職はとっくに済ませているわけでして、ここから先行研究への無理解と侮り、想像力の欠如がうかがえます。
内容について言いますと、この本は血液型性格判断を何とかして科学的に見せようと四苦八苦しています。「~なのです。」と断定することは多々あっても、それの根拠や参考文献を示すことはほとんどしません。まったくもって自分の思いつきを垂れ流すだけの不親切な本です。
血液型性格判断そのものの科学性については、すでに多くの秀逸な記事がweb上にありますのでそちらを見ていただくとして、ここでは人類学とかかわる部分のデタラメを指摘していきます。
P81>クロマニヨン人は食べ物がなくなったアフリカから世界各地に移動し始めました。紀元前三万年頃です。つまりO型の血液型を持つ人間が世界各地に散らばることになったのです。
このことは、世界各地の先住民族がO型であることからもうかがえます。先住民族である南北アメリカのネイティブ・アメリカンとイヌイットは、ほとんどの人がO型です。
いやいや、アメリカ先住民にO型が多いのは単なるボトルネック効果の結果ですから。この時点で集団遺伝学というものをご存じないのでしょう(知っててやったとしたら人類学や集団遺伝学に喧嘩売ってるのか)。
P82~83>穀類、豆類、野菜類などを好む腸内細菌にA型物質を持っている細菌がいて、たまたまその細菌の遺伝子がトランスフィクション(遺伝子移入)を起こした結果、農耕民族の新モンゴロイドにA型人間が誕生したのです。紀元前二万5000年から一万5000年頃だと考えられています。
B型人間は、インドやウラル地方で紀元前一万年頃に誕生したといわれています。
P84>AB型はごく最近出現した血液型です。1000年から1200年ほど前には、AB型の人はいなかったと考えられています。その証拠として、西暦900年以前の墓からAB型の人間が見つかっていないことが挙げられます。おそらく、東方の騎馬民族が東から西へ侵略を続けるなかで、A型人間とB型人間の混血が起こり、AB型が誕生したものと思われます。
つまり、当初、人類の血液型はすべてO型だったものが、農耕民族の一部からはA型が生まれ、遊牧民族の一部からはB型が生まれました。さらに、彼らの混血の結果、AB型がごく最近になって生まれたと考えられるのです。
まぁ、こういうことを言うならそれなりの根拠を出してほしいところですよね。しかし、人類学の研究者の見解とは明らかに異なるようですよ?
>血液型遺伝子の進化:血液型は細胞表面の抗原なので,バクテリアやウイルスなど細胞外からの影響を受けやすく,正の自然淘汰が生じる可能性が高いと考えられます。そこで,ABO式およびRh式血液型遺伝子の進化を研究しています。ヒトのA型,B型,O型の遺伝子塩基配列を比較した結果,それらは500万年ほど前から共存している可能性が強いことがわかりました。アウストラロピテクス(猿人)やホモ・エレクトス(原人)でもA型,B型,O型,AB型があったと考えられます。なぜこのような異なる型の共存が長く続いてきたのかは,まだよくわかっていません。
ある程度自然淘汰がかかるのは確からしいようですが、少なくとも血液型がここ数千~数万年程度で急速に分化してきたものではなく、かなり昔からA、B、Oすべてがそろっていたようです。自分で作った表の中に人間と近縁なチンパンジーがA、B、Oすべて持っているというのにどうして人間が共通派生形質としてそれを備えている可能性に至らないのかも僕には謎ですね。この人、進化生物学もだめなんじゃなかろうか(そもそも集団遺伝学をぞんざいに扱っている時点で何をかいわんやかもしれませんが)。
ていうかね、仮に数万年程度で急速に分化した形質が世界中の人類集団に見られるなんてことがあったとしてそれを人類学者が取り上げないわけがないでしょう?じゃあなんで本職の見解が寄生虫博士と異なるのか。素人の思いつきの検証くらい本職はとっくに済ませているわけでして、ここから先行研究への無理解と侮り、想像力の欠如がうかがえます。