ドングリ運びがもたらすと考えられる野生動物への影響第2弾です。ドングリ(堅果類)というのはクマではなく、リスやネズミ、カケスなどの鳥といった動物に種子を運んでもらいます。今回は山に多数生息するネズミたちについてです。
ネズミといっても日本には多種多様な種類がいます。今回主に扱うのは森林に生息するアカネズミとヒメネズミです。彼らは共にドングリを食べるネズミです。彼らはただドングリを食べるだけでなく、貯蔵します。彼らの貯蔵パターンには大きく分けて2つあります。巣の中にため込む巣内貯蔵と落ち葉の下などに隠す分散貯蔵です。この内、巣内貯蔵ではほとんど種子が発芽することはないとされます。となると、ドングリの散布には分散貯蔵のほうが大きく関わっていると考えられます。
トチノミでのデータではありますが、アカネズミが散布した種子の母樹(運んだ実を付けた木)からの距離は各年の平均で12.2~44.7m、最大値で117mという調査結果があります。トチノミは大きくて重いので、軽いコナラなどであればもっと遠くに運ぶことも可能と考えられます。また、海岸松林でのコナラの分布拡大を促進したという報告もあります。
こういったことを勘案すると、ネズミとはいえ無視はできません。
また、2つ目の論点を提示してみます。ネズミというのはr-戦略という基本的に短命多産の方法で繁殖しています。こういう生物は彼らにとって良い条件のときに一気に増える傾向があります。ドングリ運びによって大量のドングリを山に運ぶことは、ネズミの餌環境を変えている可能性もあります。たとえば熊森はドングリが不作の年にドングリ運びをしていますが、これはドングリが無いか少ないところに運んでいるわけですね。つまり、何が起こるかというと、ネズミが増える下地になりうるということです。増えれば、猛禽類やキツネなどの捕食者によるセーブもかかると思われますが、そういうものはある程度時間がかかります。その間にネズミが食べる昆虫や植物などへの影響が懸念されるのではないかと考えられます。本来ならドングリの量の多少でネズミの個体数が変動するのは、人間が関わらなくても生態系内で起こるという意味で自然なことですが、熊森の行為はその自然な変動を乱しているのでは?という疑問が成り立ちます。
参考文献
森林の生態学 種生物学会編 2006
森の自然史 菊沢喜八郎・甲山隆司編 2000
日本の哺乳類学 ①小型哺乳類 本川雅治編 2008
終わりに
今年一年当ブログをお読みいただきありがとうございました。この3カ月批判ネタばかり書いてきたので、精神的に疲れました。ですので、梨は少し早いお正月休みに入ります。再開は恐らく年明け。じっくり休んでからシリーズの後半に取り掛かりたいと思います。
ネズミといっても日本には多種多様な種類がいます。今回主に扱うのは森林に生息するアカネズミとヒメネズミです。彼らは共にドングリを食べるネズミです。彼らはただドングリを食べるだけでなく、貯蔵します。彼らの貯蔵パターンには大きく分けて2つあります。巣の中にため込む巣内貯蔵と落ち葉の下などに隠す分散貯蔵です。この内、巣内貯蔵ではほとんど種子が発芽することはないとされます。となると、ドングリの散布には分散貯蔵のほうが大きく関わっていると考えられます。
トチノミでのデータではありますが、アカネズミが散布した種子の母樹(運んだ実を付けた木)からの距離は各年の平均で12.2~44.7m、最大値で117mという調査結果があります。トチノミは大きくて重いので、軽いコナラなどであればもっと遠くに運ぶことも可能と考えられます。また、海岸松林でのコナラの分布拡大を促進したという報告もあります。
こういったことを勘案すると、ネズミとはいえ無視はできません。
また、2つ目の論点を提示してみます。ネズミというのはr-戦略という基本的に短命多産の方法で繁殖しています。こういう生物は彼らにとって良い条件のときに一気に増える傾向があります。ドングリ運びによって大量のドングリを山に運ぶことは、ネズミの餌環境を変えている可能性もあります。たとえば熊森はドングリが不作の年にドングリ運びをしていますが、これはドングリが無いか少ないところに運んでいるわけですね。つまり、何が起こるかというと、ネズミが増える下地になりうるということです。増えれば、猛禽類やキツネなどの捕食者によるセーブもかかると思われますが、そういうものはある程度時間がかかります。その間にネズミが食べる昆虫や植物などへの影響が懸念されるのではないかと考えられます。本来ならドングリの量の多少でネズミの個体数が変動するのは、人間が関わらなくても生態系内で起こるという意味で自然なことですが、熊森の行為はその自然な変動を乱しているのでは?という疑問が成り立ちます。
参考文献
森林の生態学 種生物学会編 2006
森の自然史 菊沢喜八郎・甲山隆司編 2000
日本の哺乳類学 ①小型哺乳類 本川雅治編 2008
終わりに
今年一年当ブログをお読みいただきありがとうございました。この3カ月批判ネタばかり書いてきたので、精神的に疲れました。ですので、梨は少し早いお正月休みに入ります。再開は恐らく年明け。じっくり休んでからシリーズの後半に取り掛かりたいと思います。