ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

モンハンで生物の性差について考える

2011-02-24 21:26:42 | モンハン生態学
 warning!!これは管理人である梨が好き勝手、もっともらしく妄想したものです。
カプコンの設定にケチをつける気はありません。
 さて、モンスターハンター3rdも発売されましてハンターの皆様は狩り場に入り浸りの日々を過ごしていることと思います(人によっては火山に引きこもりでしょうか)。今回はそんな我々が狩るモンスターのオスとメスの違いについてです。
モンハンのモンスターにはオスとメスで明瞭に違いが見られるものがあります。リオレウスとリオレイアがわかりやすいですね。彼らはまず、体色が異なりますし、生態も陸と空に少しずつ分かれています。最近の作品ではこのようにオスとメスで差があるモンスターがさらに増えています。ジャギイとジャギイノス、ロアルドロスとルドロスなどは生物学的に同種ですが、形態や大きさに違いがあります。
このように、生殖器以外でオスとメスの差を区別できるものを性的2形と言います。
現実の生き物で言えば、ニホンジカのオスとメスは角の有無で区別できますし、カモのオスが冬にきれいな羽をつけるのも性的2形ですね。このように、性的2形が出来る背景には、オスとメスで子孫を残すのに求められるものが異なることがあげられます。
ロアルドロスを例にしてみましょう。ロアルドロスは立派なたてがみを持ち、複数のルドロス(メス)を従えたハーレムを形成しています。ほとんどの動物では性比は1:1なので、ハーレムを作る生物では、ハーレムを作ることができた者とできない者に分かれることになります。となると、メスをめぐってオス同士で競争が起きることになります。この時、急所を保護するたてがみや大きな体格は武器になります。その結果、たてがみや大きな体格を持つ個体が子孫を残し、その形質が子供に遺伝し、広まっていきます。実際の生物でも、ゾウアザラシのようにオスがハーレムを作る動物では、オスはメスより体が大きくなっていることが多いです。
これは配偶者をめぐる競争で性淘汰と呼ばれるものの一種です。
ところで、それならば、なぜロアルドロスはそれほど大きくないのでしょう?ロアルドロスは海竜種の中でも小型の種で、最大でも20mにも達しません。30mを超えるアグナコトルなみに大きなロアルドロスは確認されていません。体が大きいことがハーレムを作るのに有利であれば、もっと巨大化した方が有利ではないでしょうか?この疑問への答えの一つとして、体やたてがみを成長、維持するのにコストがかかることが考えられます。彼らは得られるエネルギーの一部をそういった器官の成長、維持に回しているわけですが、その一方で健康的に日々を送らなくてはなりません。得られるエネルギーで支えきれないような大きな体やたてがみを持っても、それは本末転倒というわけです。
いくら女の子にモテたいからといって、収入を大幅に超過するようなものを買うのに日々の生活を切り詰め過ぎるのは健康に良くないようなものですね。
そんなわけで、彼らの体の大きさは、現在の環境で投資できるエネルギーと実際に得られるメリットの間で最適化されていると思われます。

モンハン生態学 光蟲の生態を考えてみた

2010-09-22 23:20:45 | モンハン生態学
 久々のモンハン生態学です。本当は1ヶ月に1度のつもりが先月はできず、どうしてこうなったんでしょうね?今回はモンハンで回復アイテムの次に需要が多いであろう光蟲についてです。光蟲は剣士であれば閃光玉に、ガンナー(ボウガン)であればそれに加えて電撃弾の材料になります。ちなみに、P2Gではナルガクルガやティガレックスを始め、多くのモンスターに雷属性の攻撃がダメージを与えやすいので大連続狩猟などで調合分もっていくガンナーはよく見かけますし、リオレウスを相手にするときは閃光玉がないと精神的につらいです(よく飛ぶから)。
この光蟲、閃光玉として使う際は光を放って相手の目をくらますのですが、この時、光蟲は絶命するとされています。つまり、死に際に光を放っているわけですね。これについて考察してみましょう。
死に際に光を放って目をくらませるというのは、おそらく捕食者から仲間を逃すためでしょう。ではどうしてそんな形質が光蟲にあるのでしょう?
ここで光蟲が2倍体(染色体=2n)の生物と仮定してみます。2倍体の生物の場合、自分と同じ遺伝子パターン(血縁度)を同じ両親から生まれた兄弟がもつ確率は1/2です。自分で子供を作った場合は1/2、甥や姪は1/8。子供を作らないまま死んだら、当然自分の遺伝子が残る確率は0。自分が死んで子供を残せないくらいなら兄弟(血縁者)を逃がして子供を作ってくれることに賭けたほうが“遺伝子的に”まし。昆虫なんかだと兄弟も多いですしね。
仮に光蟲がハチやアリのような社会性昆虫であればもう少し説明しやすいです。ハチやアリの場合はオスが半数体(染色体=n)で雌が2倍体(染色体=2n)です。有名なハミルトンの仮説を援用すれば、これらの生物はオスが減数分裂をしないので同じ両親から生まれた場合は血縁度が2倍体の生物より高くなります。めんどくさい計算に興味のある人は「社会性昆虫 血縁度」で調べてもらうとして、結果だけ言うとメスにとって妹の血縁度は3/4に対し娘は1/2。コストが同じなら妹を育てたほうが娘を育てるより“遺伝子的に”お得というわけです。オスの場合は未受精卵から生まれるのでこれはあてはまりません。ですから、働きバチやアリというのはすべてメスです。
アブラムシのようなクローンだったらさらに楽。クローンなので遺伝的に100%同一。
ここまで血縁度に基づいた仮説を立ててみましたが、あまり決定的ではないですね。そもそも前提とした“仲間を逃がすため”が正しいのかわからないし。
しかし、現実の生物における利他的な行動というのは、基本的には血縁度つまり同じ遺伝子パターンを持った確率が高い生物の中で進化しやすいようですね。
できればカプコンさんに次のハンター大全は個々の生物の生態まで網羅していただきたく。

ちなみに梨はいにしえの秘薬の調合分までフルで持っていくチキンハンターです。

モンハン生態学 ティガレックスと雪山

2010-06-20 11:52:11 | モンハン生態学
 前回のやつが好評だったので、これからは「モンハン生態学」と称してシリーズ化していきます。頻度としては月1回くらいを目安にしたいですね。第2回目は初心者のトラウマ、ティガレックスが雪山に来る理由を探ります。
ティガレックスは飛竜種と呼ばれるモンスターの一種で、とりわけ原始的な特徴を残したものとされています。
このティガレックスは主に砂漠(フロンティアでは峡谷にも)に生息し、餌を求めて雪山にも出現します。ただし、ティガレックスは雪山に適した形態ではありません。トライに出てくる雪山と似たようなフィールド、凍土に生息するベリオロスという飛竜は白い体色に滑り止めのスパイクと生息地に適した形態に進化していますが、ティガレックスにそのような適応は見受けられません。砂色に近い体色は一面真っ白な雪山では目立ちますし、体温を保つために毛や羽毛が生えているということもありません。このことから、雪山で餌をとることはティガレックスに対し負担を強いることが予想されます。しかし、生態ムービーでおなじみのように、実際には雪山で餌をとっていますので、負担を強いるだけのメリットがあるのでしょう。
そのメリットとは何でしょうか?一般にはポポの味が好物だからとされていますが、それだけでは少し理由として弱いようにも思えます。ただポポの味が好物というだけで雪山に向かうことが、進化生物学的に考えてティガレックスが生存、子孫を残すうえで有利なのでしょうか?
単純な式にすると、狩りで得られるエネルギー>狩りで消費するエネルギーになっていないと採算がとれません。仮に雪山で消費するエネルギー>雪山で得られるエネルギーだとしたら、いくらポポが好物でも雪山に来ないほうがティガレックスにとっては有利なはずです。なぜなら余計なエネルギーを使わない分、それを繁殖や成長に振り分けられるのですから。雪山に来るようなティガレックスは早晩淘汰されてしまうでしょう。そうなっていないということは雪山に来ることがティガレックスの生存上で多少なりとも何らかのメリットがあるということです。そのメリットとは何でしょう?まずは本来の生息地とされる砂漠と餌を獲りに来る雪山の生物相の違いを見てみましょう。
砂漠でティガレックスの餌になりそうなモンスターと言えば、アプケロスガレオスゲネポスヤオザミあたりでしょうか。ディアブロスモノブロスダイミョウザザミドドブランゴ亜種あたりはその戦闘力から正面切って狩るのは難しいと思われます(亜成体くらいまでならなんとかなるかもしれませんが、ブロス系の成長や子育てのデータがないため不明)。餌になりそうなモンスターにしても、ガレオスやヤオザミは砂に潜るし、アプケロスは個体数がそう多くありませんし(1エリアに2~3体ほど。しかもいるエリアが限られる)、ゲネポスはティガレックスの入ってこれない狭い場所に逃げ込めるしで、砂漠での狩りもそう楽なものではないことが想像されます。
一方、雪山はどうでしょう。餌になりそうなモンスターとしてはポポ、ガウシカブルファンゴ、ギアノス、ブランゴあたりになるでしょうか。フルフルなど大型モンスターは砂漠とほぼ同じ考察なので割愛します。
この中でもポポは獲物として理想的です。雪山でのティガレックスの行動圏のほぼ全域に生息していますし、個体数も多く、かたい鎧を備えているというわけでもありません。また、寒冷地に適応している動物なので皮下脂肪も相当あるでしょう。これはガウシカにもいえそうですね。脂肪はよいエネルギー源になります。さらに魅力的なのはポポの肉は栄養価が高いということです。ティガレックスにとっては、寒さで体力が奪われるというリスクを冒しても、とらえやすい獲物が多い雪山に来るのはそれなりにメリットがあるのでしょう。

モンハンで生物の戦略を考えてみた

2010-06-16 00:11:16 | モンハン生態学
 これは、モンスターハンター(以下モンハン)を使って生物学について考えてみようという趣旨の記事です。基本的に参考資料としてハンター大全Gを使っていきます。ちなみに、僕自身がポータブル2Gしかやっていないのでトライやフロンティアのモンスターについて取り上げる予定は(今のところ)ありません。これは、僕自身がモンハンのモンスターの生態を自分の生態学や進化生物学の知識で解釈、分析してみたというものです。あたりまえですが、製作者のカプコンの発表があったら、そちらが優先されます。個人の解釈なんて聞きたくねえよという方は見ないことをお勧めします。では、第一弾はモンハンでも特に有名なモンスターの繁殖戦略についてです。
モンハンで有名なモンスターといえば、リオレウス(以下レウス)がトップにきますね。キークエストに武器防具のための希少素材にと、狩りまくられるモンスターです。

レウスには生態ムービーがあるので、それを見てみましょう(ムービーに出ているのはリオレイアというレウスの同種の雌です)。これを見ると、子供の数は一度に2,3匹ほどであることがわかります。また、子供に親がエサを持ってきていること、捕食者の来づらい安全な巣の中で育てられていることから、現実の猛禽類と類似した子育て方法をとっていることがわかります。このことから、それほど繁殖速度は早くないことが予想されます。おそらく、早くても1年に1度子供を育てるのが限界でしょう。
この様に、一度に生む子供の数が少なく、その子供の成長に投資して(つまりエサを運ぶなど手間暇をかけて育てる)、ある程度育てた状態で独り立ちさせる生物の繁殖戦略をK戦略と呼びます。大型の動物によく見られる繁殖戦略です。具体的にはゾウやクジラですね。
一方で、一度に子供をたくさん産む半面、子供の成長にあまり投資しない、つまり、子供をほとんど育てずに独り立ちさせる繁殖戦略もあります。こちらのことをr戦略といいます。ネズミをイメージしてもらえるとわかりやすいでしょうか。小型の生物によく見られる繁殖戦略です。
この様に生物には大きく分けて2つの繁殖戦略があるわけですが、どうしてこのような違いが生じるのでしょうか?おおざっぱに言うと、その生物がおかれた環境の違いによるものです。冒頭で話の枕にさせてもらったレウスの例でいえば、成体のレウスを捕食するモンスターはほとんどいません。しかし、レウスが生きていくためには他のモンスターを狩らなくてはならず、それにはある程度の力量がいります。モンハンでいえば、ランポス(小型の肉食モンスター。ゲーム内における雑魚)などは集団でなければアプトノスのような大型の獲物を狩ることができませんが、レウスは単体でそれができます。それは体が大きく力が強いためです。しかし、単体で狩りができるまでに成長するのは時間がかかります。
レウスの場合は、成体を捕食する天敵がほぼおらず、少ない子供の数でも、成長さえしてしまえば育てるだけの価値があるので、子供にたくさん投資するK戦略に進化の過程でなっていったわけです。
・・・・・・とここまでr-K戦略に基づいた仮説を書いてみたのですが、仮に鳥類と類似した生態を持つ場合、成体の大きさではなく、繁殖開始年齢と相関している可能性もあります。この面からの仮説も僕がきちんと勉強してから立ててみたいところです。

参考
これからの進化生態学 Peter Mayhew著 共立出版