みちくさ茶屋

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「身体のいいなり」レビュー

2012-04-04 | book

「身体のいいなり」 内澤旬子著

読書記録が続きます。
いろいろ書き留めておきたいことがあるのですが、
本の感想もどんどん流れていってしまうので。


著者と年齢が近いこと、(著者のほうがちょっとお姉さん)
最近の私のテーマである「女のからだ」について描かれていたこと、
そしてタイトルに魅かれて読み始めました。

著者は38歳で乳がんが発覚し、乳房を摘出しています。
普通にとらえると「闘病記」で、私はこれまで闘病記の類はいっさい
目をそむけて生きてきたので、自分から手にとったのは初めてかもしれません。

ただ、この本は闘病記ではあるのですがあまりにもさっぱりしていて、
何よりご本人が自分の「乳がん(ステージⅠ)」という病を「たいしたことではない」と
言い切っており、実際に読んでいくうちに、
「ほんとだ、彼女の場合は、乳がん自体よりも副作用やアトピーのほうが大変かも」
と思わされるのでした。

著者と自分を比較するのもおこがましいのですが、
私も先月、ちょっと軽い手術をしました。人生初でした。
ありとあらゆる疾患の中で、私なんてホントに特筆するほどのことでもない
ささやかなもんでしたが、それでも、いろいろと不具合があったし、
疾患を治すためのもろもろで「二次災害」の手ごわさを感じたものでした。
一例を挙げると、手術後のテープかぶれに泣かされたり。

内澤さんも、がんそのものとはそんなに「闘っている」という感はなく、
むしろ、その後の「乳房再建」のほうが記述が詳細であったし、
自分の内面での葛藤や医師への怒りが強く伝わる文面でした。

一冊を通して、彼女の「死生観」みたいなものが私のそれととても似ており、
そうそう、そうなんだよね、わかるわかるとうなずきながら読みました。
本文中で、ご自身の死と生に関する考えを述べるとき、
「顰蹙を買うかもしれないが」などといちいち前置きをしながら書かれていたので、
ああ、そうか、私の考えも、はたから見たら顰蹙モノなのかもしれないなあと省みたり。
私も自分の死生観を語るときには相手と言葉を念入りに選ぶことにしよう。


内澤さんは、乳房摘出、再建のあと、大変に元気で過ごされているそうです。
ヨガが相当良かったようです。
この本を読んでヨガを始める人はたくさんいることでしょう。

それにしても、たまに出てくる「配偶者」さん。
内澤さんサイドの話しか聞かずにこんなことを言うのはフェアじゃないかもしれませんが、
あまりにも他人ゴトじゃありませんか? 仮にもだんなさんだよね?
大きなお世話ですが「それって結婚してる意味あるの?」と首をかしげたくなるような点が
いくつかありました。ずっと内澤さんがひとりでがんばっているような感じで。
でもひとつだけ、内澤さんの初めての本の編集を手がけてくれたとあったので、
仕事のパートナーとしていろいろ話せるだんなさんならそれだけでもいいのかな。

それから、内澤さんがご自身を「貧乏、貧乏」と強調していたので
うんうん、フリーランスって大変だよね、なんて、気持ちに寄り添っていたのですが、
うーん、どうだろう、よく読んでみるとフリーランスとしてはかなり売れっこだし、
(仕事があまりなかったという時期の話を読んでも、月15万もレギュラーで稼げてたそうなので、
このご時世、かなり良いほうだと思います)
自宅とは別に仕事場を借りるだけの余裕もあって、
中古とはいえ都心のマンションを全額現金でぽんと買っちゃったりとか、
「なーんだ、お金持ってんじゃん!」ってちょっと肩すかしでした。
1回3000円のヨガスクールに週2回通うというのも、私から見たらセレブですよ。

まあ、そのあたりの私のやっかみは置いといて、読後感はさわやかです。
女ってやっぱり大変だよね、とため息つきながら笑ってしまいました。
婦人科はあるけど紳士科はないもんね。
このめんどうくさい身体の「いいなり」になりながら、意志とバランスをとって
生きていかなくてはならんのだろうな。
共感も、軽い反発も、そして情報収集もできて、いろいろ考えさせられた本でした。

蛇足。内澤さんの描かれたイラストだと思いますが、表紙がえぐい!!(笑)


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