みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

ちいちゃんのかげおくり

2012-11-14 | kid
こうたろうの国語の教科書に、「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ・著)という話が載っている。
宿題で感想文を書くというので、私もこの話を読んでみた。

これは戦時中の物語である。
ちいちゃんは、お父さん、お母さん、お兄ちゃんの4人家族。
ちいちゃんが何歳なのかは明かされていないが、
歩いたり少し話したりはできるので、3、4歳くらいかな?
出征する前日、お父さんが「かげおくり」を教えてくれる。
影をじっと10秒間見つめたあと、ぱっと空を見ると、
その影が空に映って見えるというものだ。
家族みんなでそれをやり、空に映った4人の姿を「記念写真だね」と
お父さんは言う。

お父さんの出征後、戦争は激しくなる。
空襲警報が鳴り、町は火の海に。
お母さんはお兄ちゃんとちいちゃんを連れて逃げる。
最初はお母さんがちいちゃんを抱っこしているのだが、
人ごみの中、お兄ちゃんが転んで怪我をしてしまう。
お母さんはお兄ちゃんをおんぶして、
「ちいちゃん、母さんとしっかり走るのよ」とうながす。

しかしちいちゃんは、お母さんたちとはぐれてしまう。
お母さんを呼びながら泣いているちいちゃんを、知らないおじさんが
抱きかかえて走ってくれる。
橋の下でお母さんらしき人を見かけたちいちゃんは
「お母さんだ!」とさけび、おじさんは「よかった、よかった」と
ちいちゃんをおろして去っていく。

でも、それはお母さんではなかった。
ちいちゃんは、ひとりぼっちで、夜を明かした。

翌朝、近所のおばさんがちいちゃんを見つける。
「ちいちゃんじゃないの! お母さんとお兄ちゃんは?」
そう聞かれて、ちいちゃんは「おうちのとこ」と答える。
おばさんはちいちゃんを家に連れて行ってくれるが、
そこはもう焼け野原。
おばさんに「お母ちゃんたち、ここに帰ってくるの?」とたずねられ、
ちいちゃんはうなずいてしまう。
「じゃあ、大丈夫ね。おばさん、おばさんのお父さんのところに
行くからね」と、おばさんは急いで行ってしまう。

ちいちゃんは、誰も来ないその場所で、2日間を過ごす。
空を見上げ、かげおくりをしてみる。
お父さんもいる、お母さんもお兄ちゃんもいる。

ちいちゃんの小さな命が、空に消えた。



………という悲話である。
私は泣いた。わんわんと泣いた。
こうたろうが近づいてきて肩をなでてくれた。
私が何にそんなに泣かされたかって、「知らないおじさん」や「近所のおばさん」の
善意である。自分のことや、自分の家族のことでいっぱいいっぱいなはずなのに
彼らはちいちゃんをお母さんのところに送り届けようとしたのだ。
なのに、なのに、その善意は、かえってお母さんを遠ざけてしまった。
ちいちゃんの幼い思い込みの真偽まで見届ける余裕はあるはずもなかった。
もちろん、ちいちゃんが悪いのではない。
お兄ちゃんをおんぶして、ちいちゃんを走らせたお母さんが悪いのでもない。
なんというか、間が悪かった。それが本当につらい。

ネットでこの話について検索してみると、あらすじではだいたいにおいて、
おじさん、おばさんのことがはしょられている。
なんでだ!と憤りすら覚えるが、まあ、ここは要じゃないんだろうなぁ。

で、問題の感想文である。
ここで小学3年生が書く感想文としては、
「戦争はいけないことだ、平和な世の中を守らなければならない」
という感じのことが含まれていればマルであろう。

はたして、こうたろうくんはどんな感想文を書いたのか。

楽しみに読ませてもらうと、まず、
「かげおくりという遊びを初めて知りました。
何度もやってみましたが、うまくいきませんでした」
「晴れの日じゃないとだめなのでしょうか、
かげがうすいとうつりにくいのでしょうか」
などと、かげおくりについて250文字ほど語っている。
おいおい、そこはそんなに追求しなくていいところなんだよ…と
思いながら読み進めると、まさかの展開がきた。

「ちいちゃんが死んでしまうなんて、おかしいと思いました。
ドラマでは主人公ぜったいに死にません。映画でも死にません。
ドラゴンボールの悟空は、一度死にますが生き返りました。
お話を読んだお母さんが、ずっとたくさん泣いていたので、
ぼくはお母さんをなでてあげました。おわり」


………あれ?

「戦争」は? 
「平和」は?

かげおくりの信憑性と主人公が死んでしまうことに対して、
疑問に満ち溢れた感想文である。
ピントは明らかにずれているのだが、これはこれで鑑賞のひとつかなと思う。
そのうち「主人公が死ぬ話」も読ませなくてはとも思うけど。

やっぱり、戦争を語り継ぐのって、
大切だけど難しいね、難しいけど大切だね、
としみじみ感じてしまったのでした。


疑惑

2012-11-07 | kid
こうたろうが寝る前に布団で

「サンタクロースってほんとにいるのかな?」

と聞いてきた。

そろそろきたか、サンタクロース存在疑惑。
まあ、小学3年生まで引っ張れたんだから長かったほうか。

「どうだろうね。お母さんも会ったことないから知らないけど、
でも毎年プレゼントが枕元に置いてあるじゃん?」

と答えると、こうたろう、ちょっとほほえんで

「でも、親がやってるうちもあるよね」

とな。
内心すごいウケたが、そこは私が笑ってはいけないところ。
「そうなのかなあ」と答えて寝た。

翌日、
「お母さん、サンタクロースへのプレゼントのお願いは
5000円以内なの? そんな決まりあるの?」
とくる。
「え? 知らない」と言うと、こうたろうの背後で
相方が私に目配せをしている。
どうやら相方がこうたろうにそう言い聞かせたらしい。

「あ、あー…。そういえばそうだったかもな」
と口ごもるダメな私。

こうたろうが、我が家も「親がやってるうち」だと気づくのは
時間の問題……いや、もう気づいてるのかも?