美津島明編集「直言の宴」

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世界経済と中国経済の現状(その2) (美津島明)

2016年01月29日 00時21分13秒 | 経済
世界経済と中国経済の現状(その2) (美津島明)


http://www.asahi.com/topics/word/人民元.htmlより引用

今日も、昨日に引き続き、中国経済をめぐってのコメントを、フェイス・ブックに載せました。それに加筆訂正して、以下にアップいたします。

○【中国の視点】プーチン氏にも弱音「ロシア経済は原油急落と中国にやられた」 (FISCO)
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e3%80%90%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%ae%e8%a6%96%e7%82%b9%e3%80%91%e3%83%97%e3%83%bc%e3%83%81%e3%83%b3%e6%b0%8f%e3%81%ab%e3%82%82%e5%bc%b1%e9%9f%b3%e3%80%8c%e3%83%ad%e3%82%b7%e3%82%a2%e7%b5%8c%e6%b8%88%e3%81%af%e5%8e%9f%e6%b2%b9%e6%80%a5%e8%90%bd%e3%81%a8%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%ab%e3%82%84%e3%82%89%e3%82%8c%e3%81%9f%e3%80%8d/ar-BBoMPaZ?ocid=sf

私は、この記事を読んで、以下のようなことを考えた。

中共は、日米分断を外交政策の基本路線にしている。それゆえ日本側は、対抗措置として、中露分断を外交政策の基本路線とすればよい(日米軍事同盟の堅持・強化は当然の前提である)。安倍首相は、オバマをかき口説いて、親露路線が日米にとって得策であることを納得させ、経済制裁をやめさせ、日本の対露経済援助を認めさせるべきである。オバマには、「日本がロシアに経済援助をするのは、アメリカの覇権の維持のためである」と言っておけばいい。北方領土の「ほ」の字さえも、出してはいけない。アメリカにとって、そういう日本にとっての国内的歴史事情は、関心の埒外であるからだ。野暮はよそう、ということ。

で、中国経済失速と原油価格暴落で経済が弱体化したいまなら、日本の経済援助の申し出を、プーチンは、喜んで受け入れるはずである。つまり、イチコロなのである。

記事にあるとおり、ロシア経済の最大の弱点は、「石油・ガスなど資源の輸出に依頼する体質」である。「愛国者」プーチンの心願は、そういう現状から脱却して自立型国民経済を実現することであると思われる。国民経済の充実による経済成長の経験を豊富に持つ日本にとって、対露経済援助の核心は、そういう心願を抱くプーチンのハートを鷲づかみにするものでなければならない。

そういうことができたならば、日本は、中露の分断を確実に実現できるだろう。それが、日本の安全保障のキモである。

日本は、アメリカに対する属国根性を脱したうえで、属国という現実的ポジションをフル活用すべきなのである。

*とはいうものの、一国の首相が、非公式訪問という形で、のこのことロシアに出かけるのは、絶対にダメである。そんな「北方領土問題の解決をオレの手で」などという底の浅い下心見え見えの行動は、海千山千のプーチンにとっては、飛んで火に入る夏の虫、カモネギも同然である。いともたやすく、お金をむしりとるだけむしり取られておしまい、ということになるのがオチだろう。手順を踏んで公式訪問にこぎつけるまで、じっと我慢すべきである。

○「さよなら中国マネー。三大投資家ジョージ・ソロスも中国を見捨てる」 (MAG2NEWS)
http://www.mag2.com/p/news/142681

日本の仮想敵国は、中共政府が率いる大陸中国です(それに比べれば、北朝鮮の脅威などものの数ではありません)。国際政治経済における中共の地位の向上は、日本の安全保障体制を脅かす主たる要因になります。それは、この数年の対中共体験を素直に振り返ってみれば、ごくふつうの日本人にとって、おのずと明らかなことでしょう。

それゆえ、国際政治経済においてきわめて大きな影響力を持つ国際金融資本が、中共政府にどう向き合おうとしているのかは、日本にとって、国家存亡に関わる重大事です。

その意味で、《国際金融資本の意思を代表するソロス氏が、親中から反中に転じ、中共をつぶしにかかっている》とする当記事は、注目に値します。ましてや、その記事を書いているのが、欧米諸国の「民主主義の衣をまとったプロパガンダ」の洗脳から能う限り自由な立ち位置から国際政治に関する見識を発信しつづけている北野幸伯(よしのり)氏なのだから、なおさらそうです。

小浜逸郎: 日本の対中戦略という観点からは、ソロス氏らの動向が、具体的なロシア支援や、ロシアに対する米の経済制裁緩和への働きかけというように、中露分断に役立ってくれればけっこうなことです。しかし、国際金融資本は金になりさえすれば何でもやるので、北野氏のこのレポートだけではちょっと予断を許さないように感じるのですが、いかがでしょうか。

美津島明 :おっしゃるとおりであると思います。正確に情勢分析をするために、希望的観測はなるべく排するべきですからね。それを踏まえたうえで申し上げると、当記事と、上記の「中共が、アメリカに対して、ドル基軸通貨体制の崩壊を目的とした経済戦争を仕掛けるために、大量の米国債を売りに出している」という趣旨の記事を合わせて読むと、見事に符合する、という事実を指摘しておきたいと思います。むろん、それでも希望的観測はあくまでも慎むべきであるとは思います。中共は、日本に対して、①情報戦(歴史戦)、②経済戦、③武力戦、という三つの戦争を同時並行的に仕掛けてきています。その戦争に勝つために、私たちはあくまでもリアリストでなければならないと、私は考えています。大東亜戦争に続いて、今回の戦いでも敗けてしまうと、今度こそ、日本に関する戦勝国史観は、国際世論において最終的に確定されてしまうでしょう。


○「米国債を大量投げ売り中。中国は一体何を考えているのか?」(MAG2NEWS)
http://www.mag2.com/p/news/141797

記事中の、「バルチック海運指数」なるものを、私はこれまで知りませんでした。世界経済の景気動向を知る有力指標だそうです。それによれば、世界経済の現状は、2008年のリーマンショック時よりも悪い。私は、それを目にして、少なからずショックを受けました。そこまで悪かったのか、ということで。

当論考によれば、このひどい現状を招いているのは、中共政府が、大量の米国債を投げ売りしているからである。つまり中共政府は、ドル基軸通貨体制の崩壊を目指してアメリカに経済戦争を仕掛けている、というわけです(とするならば、世界経済はまだ『底』を見ていないことになります)。もしもこれが事実ならば、中共は、「必敗」です。そう断言して、私ははばかりません。

なぜなら、それは、国際金融資本体制の安定性を著しく損なう振る舞いであって、国際金融資本が、それに対して手をこまねいているとは考えられないからです。国際金融資本の有力者たちは、お金・メディアをフルに活用して、中共政府を全力で潰しにかかるでしょう。先ほどアップしたソロス氏のアンチ・チャイナ発言も、その文脈で受けとめたほうがよいのかもしれません。

中共は、アメリカのみならず、よりによって、国際金融資本を敵に回してしまったようです。習近平は、なんと愚かな指導者なのでしょうか。
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私見 (小浜逸郎)
2016-01-29 15:52:12
FB上でのやりとりをこちらにも載せていただいたので、私への美津島さんの最後のお返事に対して、さらに私見を述べます。

中国が仕掛けてきている三つの戦争は、おっしゃるとおり、まさにわが国も総力でこれに対応しなくてはならない喫緊の課題ですね。そのうち、②経済戦に関しては、二つの記事を合わせてみることで、いささか希望が持てることがよく了解できました。

問題は後の二つ。

①の情報戦(歴史戦)に関しては、ここのところ、完敗の体たらくですね。「南京大虐殺」のユネスコ記憶遺産登録、「日韓合意」における欧米メディアのひどい受け取り方など。

要するにこの問題は、単に中韓相手の話ではなく、かつての戦勝国と、当時まだできてもいなかった中共政府と、日本の統治下にあって日本人として日米戦争を戦ったはずの韓国と、自分たちは反省したが日本は反省していないなどと嘘八百を言い続けているドイツと、じつによってたかって日本に敵対的な包囲網が形成されているわけです。この点では、米中韓は利害が一致していて、だからこそ、「日韓合意」も、あっという間に「日本政府は、日本軍が数十万人のsex slavesの使用と虐殺を行った事実を認めた」という国際認識のかたちで定着しつつあります。国民を裏切った安倍政権の罪深さは計り知れないと思います。おそらく、このデタラメ歴史認識は、よほどのことがない限り、覆ることは望めないでしょう。どうすればこの屈辱を雪げるのか、私には今のところ見当も尽きません。絶望してはならないと思いますが。

③武力戦について。
これも状況はすこぶる厳しいと思います。というのは、中共のスプラトリー諸島における滑走路建設などの露骨な拡張主義に対して、アメリカは一応「航行の自由」作戦などで牽制のポーズを示してはいるものの、本気で対決する気が無いように思えるからです。その証拠に、あの作戦は一回きり、あとは日米韓合同演習の強化程度でお茶を濁しているだけです。中共のやっていることは明らかな侵略行為であり、国際秩序への露骨な挑戦です。もし(旧)覇権国家・アメリカが東アジア・シフトに本気で取り組むなら、日韓豪に(フィリピン、ベトナムにも)強力に合同作戦を呼び掛け、中共を阻止する実力行使に出てもよさそうなはず。しかし一向にその気配はなく、既成事実を拱手傍観しています。日本もアメリカの呼びかけがありさえすれば(なくても)、それに応じて、タンカーにあの「領海」内を通過させ、自衛隊に護衛させるくらいのことはすべきです。これは憲法違反に当たらないはずです。

で、このアメリカのやる気のなさが日本にとって何を意味するかというと、中共が第一列島線までを確保し、次に第二列島線までの進出を企てた時に、それを抑止する有力勢力がなく、この区間に空白が生じ、中共が思いのままに振る舞うのを許してしまうということです。つまりそれを抑止する大国は、日本以外にないのです。もちろん単独では不可能ですから、米豪などとの協力体制を主体的に構築していくのでなくてはなりません。次の米大統領がだれになるのか、今のところ混沌としていますが、誰がなるにしろ、モンロー主義に回帰しつつあるアメリカを何とか思いとどまらせるよう、日本の真剣な対米外交努力が要請されるところです。外務省にその気概と戦略があるかどうか、まったく頼りにならないですね。




返事、遅れました (美津島明)
2016-02-01 09:16:52
小浜さん。危機感に満ちたコメントをどうもありがとうございます。おっしゃることのひとつひとつが身につまされます。

日本国民は、その危機感、すなわち、「中共は日本に対して事実上の戦線布告をしてきた。彼らは、一歩も引く気はない。それゆえ、日本は好むと好まざるとにかかわらずそれに対して応戦するよりほかに選択肢がないのだ」という認識をなるべく広汎に共有すべきであると思うのですが、どうもそうなっていないようです。というか、政府からして、危機感が希薄であるという印象がぬぐえません。

その意味で、今朝配信されたメーリングリストの内容に、私は少なからず衝撃を受けました。それは、国際関係アナリスト・北野幸伯(よしのり)氏の「ロシア政治経済ジャーナル No.1336・ドイツ、超大量【痴漢】事件と日本の未来」です。

年末のドイツでの難民による大量の痴漢事件が、実は想像以上にすさまじい規模のものだったことが判明したことに触れた後、北野氏は、日本にとってそれは対岸の火事ではないとし、時事通信の先月末の29日(金)の「日本国内で働いている外国人労働者は前年同月末比15.3%増の90万7896人」という報道を引いて、次のように述べます。

***

90万人というと、「多くない」と思えますが、前年比、「15.3%増」(!)というのが、非常に気になります。

<国籍別では、中国が最多の32万2545人で、外国人労働者全体の
35.5%を占めた。>(同上)

中国人が一番多いのですね。(中略)彼らが増えれば増えるほど、「平均賃金」は下がっていきます。

つまり、日本人労働者の生活は苦しくなる。

その他、「彼らは子供の頃から『超反日教育』を受け育ってい
る」。彼らの祖国は「日本に沖縄の領有権はない!」と宣言している
ことも考慮に入れる必要がありますね。

さらに、中国共産党政府が、日本国内の中国人を「操ることができる」ことも忘れてはならないでしょう。これは、すでに08年の「北京オリンピック聖火リレー事件」で証明されています。

(引用記事略)

あの事件から8年。

08年時点でも、日本の警察は、中国人暴動を止めることができませんでした。

今、中国人の数はもっと増え、もっと強力に暴動を行える力をつけていることでしょう。

日本政府は、「移民じゃないよ。労働者だよ」などと気楽なことをいっています。実をいうと、欧州政府も昔は、同じこといってたのです。

日本政府も、是非欧州の愚かな失敗から教訓を得て、中国人の流入を止めていただきたいと思います。

そうでなければ、日本は将来、中国の「小日本省」になってしまうことでしょう。

***

中共は、「歴史戦(情報戦)」・「経済戦」・「武力戦」のほかに、日本の財界を抱きこんで「移民戦」をも仕掛けてきているのですね(「経済戦」の先鋭化したものとも言えますが)。「移民じゃないよ。労働者だよ」とうそぶいている日本政府は、愚かにも、無自覚なまま、中共が仕掛けた「移民戦」に加担しているのです。私はこの事実に「も」戦慄せざるをえません。

それもこれも、ひとえに、先ほど述べた「中共は日本に対して事実上の戦線布告をしてきた。彼らは、一歩も引く気はない。それゆえ、日本は好むと好まざるとにかかわらずそれに対して応戦するよりほかに選択肢がないのだ」という認識の、官民における不徹底に起因するのではなかろうかと思うのです(その不徹底も、中共が日本のメディアの事実上の「協力」を得て成し遂げた「戦果」である、という側面があると思います)。

そういう認識が希薄な人の目に、私たちの一連のやりとりそれ自体が、思い過ごし、杞憂としか映らないのではないかと思われます。実際、マスコミの主流は、こういうたぐいの話を報道しませんからね。

で、釈迦に説法のような気もしますが、私たちのやり取りの根にあるものを広く知っていただく意味で、次の事実を提示しておきます。先ほど触れた北野氏がダイアモンド・オンラインに連載している「ロシアから見た『正義』 “反逆者”プーチンの挑戦」の「第10回」(2015年2月4日)から引きます。

***

「尖閣国有化」の2か月後、中国代表団は、(事実上の)同盟国ロシアの首都モスクワを訪問。「日本をいかに破滅させるか?」について、その驚愕の戦略を明らかにした。ロシアの国営放送「ヴォイス・オブ・ロシア」のHPで、その全貌を知ることができる重要部分を引用してみよう。

<中国の著名な専門家は、中国と同様、日本と領土問題を抱えるロシアと韓国に対し、反日統一共同戦線を組むことを呼びかけた。この共同戦線は日本の指導部に対し、第2次世界大戦の結果を認め、近隣諸国への領土要求を退けさせることを目的としている。>(2012年11月15日)

***

中国は、「反日統一共同戦線の構築」を目指しているのです。その目的は、中露韓が足並みをそろえて日本に「第2次世界大戦の結果を認めろ」と要求し、北方4島・竹島・尖閣をすべて放棄することを求めることです。引用に戻ります(< >は、「ヴォイス・オブ・ロシア」から北野氏が引用した部分です)。

***
< 14日モスクワで行われた露中韓の三国による国際会議「東アジアにおける安全保障と協力」で演説にたった中国外務省付属国際問題研究所の郭宪纲 (ゴ・シャンガン)副所長は、こうした考えを明らかにした。(中略)
 郭氏は対日同盟を組んでいた米国、ソ連、英国、中国が採択した一連の国際的な宣言では、第2次世界大戦後、敗戦国日本の領土は北海道、本州、四国、九州4島に限定されており、こうした理由で日本は南クリル諸島、トクト(竹島)、釣魚諸島(尖閣諸島)のみならず、沖縄をも要求してはならないとの考えを示した。>

 北方4島、竹島、尖閣のみならず、「沖縄も日本の領土であってはならない!」。これが中国の主張なのだ。われわれは、このことも決して忘れるべきではないだろう。さらに衝撃の内容はつづく。

<こう述べる郭氏は、中国、ロシア、韓国による反日統一共同戦線の創設を提案している。
 日本に第2次世界大戦の結果を認めさせ、近隣諸国への領土要求を退ける必要性を認識させるために、この戦線には米国も引き入れねばならない。>(同上)

 この戦線には「米国も引き入れねばならない!」と主張している。中国は、「尖閣」「沖縄」を奪うために、「米国と組もう」というのだ。つまり、中国、米国、ロシア、韓国で反日統一戦線をつくる。これこそが、中国の「対日戦略」の基本なのである。

***

最後に、「中国、米国、ロシア、韓国で反日統一戦線をつくる。これこそが、中国の「対日戦略」の基本なのである」とあるのは、きわめて重要です。〈日本と米国とを分断しておいて、孤立した日本をガツンと叩く〉。これが中共のねらい目であることが分かるからです。つまり、日本は、国際社会において孤立したときがいちばん危ない、ということです。日本を孤立させるために、中共は、どうやら歴史戦をフル活用しようと思っているようです。そうして、ここからが、とてもむずかしいというか悩ましいというか、大変なお話しにさしかかるのですが、野放図で無自覚で感情的な脱自虐史観ほど、中共の歴史戦にとっての好餌はほかにない、ということです。

しかし、コメント欄としては、これぐらいの長さが限度かと思われますので、とりあえず筆を置きます。
こちらもお返事が遅れました。 (小浜逸郎)
2016-02-02 20:39:07
北野氏の初めのレポートは私も読みましたが、後のもの(2015年2月4日のもの)については、今回初めて知りました。ありがとうございます。おっしゃるとおり、衝撃的ですね。

問題は二つに整理できるように思います。

①中共が独自の立場で進めている膨張主義が日本にとって持つ意味をどう斟酌するか。

②米露をも巻き込んだ形での戦勝国包囲網によって、日本を孤立化させようとする中共の戦略をどう見積もるか。

いずれの問題に関しても、日本人および日本政府には危機感が欠落しており、まったくのノーテンキを決め込んでいる(不都合な真実を見ないようにしている)と思われます。

①について。

日本人は、尖閣というと直接の領土侵害なのですぐに大騒ぎしますが、私はむしろ、南沙諸島への中共の侵略の方が、日本にとっても大きな危機を意味しているように思います。というのは、ご存じのとおり、この海域は、中東からエネルギー資源を運ぶシーレーンの要衝に当たっており、ここを押さえられたら、ほとんどの原発が停止しているいま、日本のエネルギー安全保障は一気にアウトだからです。

しかし日本政府は、これに対して国際社会に向かって明白な抗議の声も挙げず、責任あるアジアの大国として、ベトナムやフィリピンと連帯することも必要なのに、何らの積極的行動も起こそうとせず、アメリカの「航行の自由」作戦に依存するばかりです(両陛下の先のフィリピンご訪問には、多少の政治的効果も見込まれていたと思いますが)。

もっとも、先の私のコメントでは、「航行の自由」は一回きりで、形ばかりのものだと言いましたが、ついこの間、一応二回目も行いましたね。しかしアメリカのやる気のなさについての私の印象は変わりません。ヒラリー・クリントン氏はむしろ親中派といってよく、トランプ氏に至っては、まったくの未知数です。彼らはおそらくアメリカが抱えるたいへんな内政問題にほとんどかかりきりになラざるを得ず、東アジアに大きなエネルギーを注ぐ余裕がないでしょう。
北野氏のレポートでは、ハリス太平洋軍司令官の「中国が尖閣を武力で占領するようなことがあったら、米軍は必ず撃退する」という発言を、「そういうふうに中共に向けて発言することが抑止効果になるのだ」という意味のことが言われていましたが、私はこれを否定しません。たしかに一定の効果があることは認めます。ただ、「何しろ相手は、あの野蛮な中共」ということを忘れてはいけないと思います。ハリス司令官の言葉にしても、オバマ大統領の「安保条約を遵守する」という発言をそのまま具体化しただけのことで、グレイゾーンにどう対応するかについては何も言っていませんね。私には、アメリカ人の発言を過大に評価することはできないのです。

いったいに、アメリカは、(ヨーロッパはさらにそうですが)、その地政学的な事情から、東アジアの緊張に関する実感を伴った知識が不足しています。これはいまに始まったことではなく、日華事変の頃からそうでした。蒋介石の言いつけ外交の前に屈して、日本が反共の砦であった事実を軽視し、結果的に毛沢東というとんでもない男による中国の共産化を許してしまったのです。

もう一つ付け加えておきたいのは、三つの対日戦のほかに、北野氏の指摘にもあるとおり、安倍政権のバカな政策のために、これから中国移民はますます増えるだろうということ。それに加えて、水源地の買い占めや不動産の買い占めが進むだろうということです。
つい先日知人から聞いたのですが、マンションを売却に出したら、さっそく中国人夫婦が内見に来たそうです。彼等はその物件は買わなかったそうですが、おそらく他の物件を買ったのでしょう。日本を訪れた中国人のなかには、本国に帰りたがらず、居座ろうとする人が増えています。それは日本が、政治的にも環境的にも快適だからなのですが。

もちろん善意の中国人もたくさんいるでしょうが、なかには「便衣兵」がいることも警戒しなくてはなりません。ところが、日本の法律には、不動産の売買に関して、外資規制がありませんね。ここにも日本政府の脇の甘さが丸出しです。

さらに、安倍首相は外国人労働者の拡大策を「移民ではない」などとごまかしてばかりいますが、12カ月間母国を離れて他国に滞在すれば、それは移民であるというのが、国際的に認められた「移民」の定義です。また偽装がばれて不法移民の扱いを受けても、再申請を繰り返せば滞在をいくらでも引き延ばせるように法律がなっているそうです。

これらをまとめて、④領土簒奪戦と呼ぶことができそうです。

②について。

この問題は、ひとえに、いかに孤立を避けて米露外交をうまくやるかにかかっていると思うのですが、安倍政権にその問題意識があるとはどうも思えません。

70年談話にしても、先の日韓合意にしても、外交的深謀遠慮だなどと評価する保守派もいるようですが、実際には、「侵略」を認め「軍の関与」を認めて、戦勝国包囲網の強化にオウンゴールを提供してしまっているのですから、とてもそんな評価は成り立たないでしょう。
外務省も、「南京大虐殺」ユネスコ記憶遺産登録に対して、何の対応もしませんでした。クマラスワミ報告やマグロウヒル社の教科書記述に対しても外務省は抗議したと言ってはいますが、たったの一回きりで、一蹴されて、ハイそうですかで終わり。その内容も明らかにしていません。

「野放図で無自覚で感情的な脱自虐史観」に固執するあまり、孤立に陥ってしまう事態だけは避けなくてはならないという美津島さんの問題意識については、よくわかるような気がします。しかし問題は、アメリカの言うなりになることと、対米外交を通して対等で巧妙な駆け引きを行なって国益を引き出すこととはまったく異なるということです。この区別を明瞭につけない限り、日本は永久に対米従属を通して中国の狙う戦勝国包囲網に取り巻かれてしまうでしょう。

対露外交に関しては、安倍首相の頭にはどうも北方領土問題しかないようで、今回決めた非公式訪問などというのも、それがあるために卑屈外交の典型をなぞっていますね。北方領土問題などは、ロシアにまったくその気がないのですから、いくら話し合っても無駄です。

そうではなく、いまロシアが陥っている政治的経済的苦境と、それでも(それだからこそ)毅然としたナショナリズムを崩さないプーチン大統領の心意をよく見抜き、その弱点をやんわりと突いて支援と協調の態度を示す必要があります。そうして、友好のポーズを示しつつ、彼のアメリカへの対抗意識を和らげた上で、自分が米露関係の媒介者となる役割を演じる用意があることを告げればよいでしょう。これをやらないで、へそを曲げられると、ロシアは中国になびき、中共の思うツボにはまってしまいますね。

長々と書きましたが、美津島さんの次なる展開に大きな期待を寄せています。

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