美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

RCEP、批准される!(及川幸久さんの動画より)

2021年04月30日 19時27分10秒 | 世界情勢


4月28日、国会でRCEPが承認されました。

これで日本は、RCEP参加の15か国のなかで、4番目にRCEPを批准した国になります。すでに批准しているのは、タイ・シンガポール・CCPの3か国です。

RCEPは、アセアンが6か国、アセアン以外が3か国、それぞれ批准したらその60日後に発効することになっています。

RCEPとは、日本・CCP・韓国・オーストラリア・ニュージーランドと東南アジア10か国による、世界最大規模の自由貿易圏です。関税障壁がなくなり、貿易も情報・データも自由にやり取りができるようになります。

CCPがRCEPに寄せる「期待」は大きいようです。それを示す一例を挙げます。日米首脳会談の直前に、王毅外相は茂木外相に電話をかけてきたそうです。その内容は「日本は独立国として、CCPに対して偏見を持っている国にミスリードされるのではなく、理性的な目でCCPの発展を見るべき」といったものだったそうです。これは平たく言えば、「おい日本よ、アメリカにそそのかされて、RCEPから脱退したりしないようにな」と念を押したということでしょう。

CCPは、日本のRCEP参加が、米国依存から「アジア協調」すなわちCCP重視に国家としての日本の路線変更をするきっかけになることを「期待」しているようです。また、RCEPよりも一層高いレベルの自由貿易である中日韓FTAの実現に弾みがついたとも思っているようです。

ややCCP寄りとされる「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、日本のRCEP批准を速報で伝え「次の課題は、CCPのTPP参加の実現」と報じています。それがどうやらCCPの腹づもりのようです。

このように、CCPが(そうしておそらく日本の大企業も)大いに「期待」するRCEPなのですが、及川氏は、RCEPの問題点を6つ挙げます。以下のとおりです。中黒の文の後に私の感想を追加しました。

CCPから安い農産物が大量に押し寄せることになる。そうなると、日本は壊滅的な打撃を受けることになる

ただでさえ脆弱な食の安全保障が、RCEPによって脅かされることになります。日本は、「食」の領域でもCCPの脅威にさらされることになりかねないのです。

反日国の中韓と自由貿易をするのはおかしい

自由貿易とは、主に経済的な側面で、ということは政治的な意味においても、国境の壁をできるだけ低くすることです(規制の緩和は政治以外のなにものでもありません)。敵対意識の強い国に対して国境を開くのははっきり言って愚かなふるまいです。日本の経済界は「政治と経済=金儲けとは別だ」と言うのでしょうが、そういう守銭奴根性が国家主権の危機を招くのです。

日本は、CCPとの間で尖閣問題という国境問題を抱えています。日本がCCPと経済的にずぶずぶの関係を続けることは、CCPの尖閣侵略の進行を既成事実として認めることを意味します。仮に日本の財界が「オレたちはCCPからたんまり儲けさせてもらっているが、尖閣侵略には反対だぁ」と言い放ったら世界中の物笑いです。日本の経済界の面々は、自分ではクールな物言いをしているつもりなのでしょうが、実は、知らず知らずのうちにとびきり頭の悪い冗談を言ってしまっているのです。

財界は、このバカ論法で、ウィグル人権蹂躙問題に対しても頬かむりを決め込んでいるのです。

韓国との自由貿易は、圧倒的に韓国に有利に働く。韓国は、日本から輸入した高度な材料を組み立てて諸外国に輸出する貿易立国である。日本から輸入する高度な材料に対する関税が撤廃されれば、韓国としては、大幅なコストダウンが見込まれ、貿易における日本との競合において俄然有利になることが憂慮される。

・自由貿易に紛争はつきものだが、その解決の手段がほとんどザル状態である。とするならば、圧倒的な軍事力を有するCCPの言いなりになるのではないか。

CCPは、RCEPにおいてデジタル人民元を決済手段にすることを目論んでいるはずである。その実現を通じて、デジタル人民元を世界通貨にしてアメリカから通貨覇権を奪い取る。そう考えているはずである。日本がその片棒を担ぐのは、特に安全保障の観点から非常にまずい。アメリカの凋落は、即、日本がCCPの覇権主義の脅威に丸腰でさらされることを意味するからである。

さて、以上を踏まえて、及川氏は「自分は、日本が、反日国家であるCCPや韓国と自由貿易を始めることには反対である。とんでもないことである」と主張します。私も同意見です。

及川氏も言っていることですが、これほどまでに問題の多いRCEPの危険性を訴えるメディアが皆無に等しいのは、とても奇妙な事態です。中共による静かなる侵略が喉元にまで迫っている、ということなのでしょうか。なんとも不気味です。

では、動画をごらんください。

2021.04.28【日本】本日なんと問題だらけのRCEPが国会電撃承認❗️😱💢日本は反日国家と自由貿易開始…◀️視聴者の皆様のご意見大募集‼️🙌【及川幸久−BREAKING−】
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最近の欧米のエネルギー事情(その9)完結編

2021年04月28日 22時10分35秒 | 世界情勢


今回お伝えしたい内容は、以下のとおりです。

日本の会社が海外の原発ビジネスに深入りするとろくなことにならない。イギリスは、日英同盟のオファの陰に、日本を丸ごと原発ビジネスに引き込んで、そのリスクのすべてを日本に負わせる魂胆を有している。だから日本は、官民ともにイギリスの外交には警戒を怠らないようにしなければならない

以下のくだりはすべて藤井厳喜氏に負っています。

東芝、日立、NEC、三菱電機などは、かつて総合電機メーカーと呼ばれ、世界市場を席捲しました。電気をエネルギーとして活用する強電にも、信号として活用する弱電にも、重電機にも強いオールラウンドプレイヤーでした。

特に東芝や日立は、日本の高い経済力を象徴するエクセレント・カンパニーでした。優れた技術を持ちながら、結局、原発ビジネスへの過剰関与で足元をすくわれ、凋落の道をたどることになってしまいました

特に酷かったのが、東芝でした。東芝は2016年、米ウェスティング・ハウスを英国燃料公社から高値で買わされました。結局、ウェスティング・ハウスは倒産し、東芝は経理上の巨大不正問題も生じて、解体されてしまいました。原発が経理上の巨大不正問題の主因であったことはいうまでもありません。東芝は、ウェスティング・ハウス傘下にあった三菱重工が想定した買値の約3倍の値段で同社を買わされていたのです。一杯食わされたわけです。

そのことに懲りた東芝は、英国での原発新設プロジェクトを清算することになりました。踏んだり蹴ったりとはこのことです。

英国は、第一次石油ショックが起きた1974年以降に日本が英国に20年契約で預けている約20トンのプルトニウムを保管し続けています。契約切れを理由に「お前が預けたプルトニウムを引き取ってくれ」と日本を脅迫したのです。日本には、最終処分場どころか中間処分場すらありません。英国政府は、その弱みを突いてきたのです。

きれいごとの「新日英同盟」提唱の裏で行われているのは、英国の日本に対する恫喝外交に他なりません

われわれは、「大英帝国」の幻想を捨てて、狡知に長けた中国家「英国」を相手にしている現実を直視しなければならないようです。
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ちかごろ思っていることは、こんな感じ。

2021年04月25日 00時28分46秒 | 日記


当ブログは、「ブログ村」にノミネートしています。そこの紹介文を最近、《「正しい情報の共有が日本を救う」が信条です。ニセ情報の跋扈は、日本を滅ぼします。》と変えました。

当方は、そのことを最近とみに痛感しております。

誤ったニセ情報がはびこる結果、解決できる問題がまったく解決できなくなっています。

消費税増税問題しかり。また、緊縮財政問題しかり。そして、2020年の米国大統領問題も、中共問題も、しかり。さらには、コロナ問題もしかり。おまけに、環境問題も。

ニセ情報のはびこりに最も「寄与」しているのは、大手マスメディアつまりMSMといわゆる「学者」「学識者」連中です。彼らが形作る「世論」を、政治権力も無視することができなくなり、解決できる問題がまったく解決できなくなる。

〔いまの私は、いわゆる「学者」とか「知識人」とか「思想家」とか言われてきた人々をまったく信じておりません。彼らは、自分のことを無意識のうちに「ふつうの人よりもオレはちょっと上」と思っていることを自覚できない点が、決定的にダメなのです。だから、事実を率直にまっすぐに観ることができないのです。〕

そういう間抜けな事態を懲りずにずっと繰り返しているのです。

この馬鹿げた連鎖を断ち切るには、さまざまな問題についての「正しい知識」「正しい情報」を国民の一定数が共有することが必須の条件となります。

間違ったニセ情報のはびこりは、冗談抜きで、国を滅ぼします。

そう考えて、近ごろの当ブログは、あれこれと発信をしております。

だから、図らずも間違ったことを発信してしまったら、それを率直に認め、なぜ意見を変えるにいたったのか、その理由をきちんと明示したいと思っております。

どうぞ今後もよろしくお願いいたします。
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最近の欧米のエネルギー事情(その8) 新・日英同盟オファの真相(前)

2021年04月23日 00時47分13秒 | 世界情勢


今回は、前回予告したとおり、イギリスのエネルギー政策との関連で、話題になっている「日英同盟」を再検討します。

私は、4月1日に「 100年ぶりの日英同盟復活のため、日本は親中派を一掃すべきだ」というタイトルの論考をアップしました。イギリスからの日英同盟の申し出を「神風」とさえ形容しました。

しかし、事は手放しで喜べるほど単純ではないようです(手放しではしゃいだことを反省しています)。

というのは、藤井厳喜氏が次のような警告を発しているからです。

EU諸国が、地に足の着いた脱原発の道を着々と歩んでいるのに対して、イギリスはまだ原発推進に期待をかけている。最近、新日英同盟などという声も聞かれるが、そんな浮ついたおだてにのっていると、いつの間にか原発のコストだけをイギリスに押し付けられることになりかねない、と。

藤井氏は、秋元千明氏の「英国は最も日本を重視し、『新・日英同盟』構築へ 始動するグローバル・ブリテン」(ニューズ・ウィーク日本版3月16日配信)を取り上げて、おおむね次のように述べます。

秋元氏は、2017年8月31日、時のメイ首相が日本を訪問し、当時の安倍首相と会談した件を重大事件として取り上げている。確かにそれは、安倍首相と会談するためだけの訪日だった。ただし、日本から原発建設の資金を引き出すのが、その目的だった。すなわち、訪日したメイ首相が安倍首相に要請したのは、英国の原発建設に日本が責任をもってカネを出せということだった。メイ首相は、日立製作所が英国に建設する予定の原発に関して、日本のメガバンクが協力融資の形で建設資金を出し、日本貿易保険がそれを全額保証するという前代未聞の金融プロジェクトを提案したのだった。なぜ「前代未聞」なのか。それは、先進国向け融資案件の貸し倒れリスクを国家がすべて引き受けるのは異例であるからだ。日本貿易保険は公的機関なのである。当時、事業費は、原子炉2基で2兆円超と試算された。紆余曲折を経て、日本側は、メイ首相の申し出を結局は断った。日立も危ういところで踏みとどまり、引き返すことができた。

結論を先取りすれば、藤井氏は、この事例にイギリス政府の対日姿勢の基本もしくは本質が現れている、とします。その基本姿勢から、今回の英国政府による「日英同盟」のオファも読み解かなければいけない、と言っているのです。

この話、先がけっこう長いので、残りは次に回します。
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最近の欧米のエネルギー事情(その7)

2021年04月19日 20時03分57秒 | 世界情勢


今回は、EUで、天然ガスがグリーン・エネルギーに加えられる動きがある、というお話です。

一般にグリーン・エネルギーとは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどから作られるエネルギーのことです。 これらの資源は枯渇せず再利用が可能であり、二酸化炭素の排出量や廃棄物が少ないので、環境への負担が少ないという特徴があります。

さて、欧州委員会の諮問機関のひとつに「持続可能な資金提供プラット・フォーム」があります。同機関は3月19日、持続可能な経済活動の分類法に関する報告を取りまとめ公表しました。

欧州委員会は、その報告書によって、持続可能な経済活動を定義し、そこから具体的な規則を導き出そうとしています。その規則がいわゆる「グリーン・リスト」と呼ばれるものです。

その「グリーン・リスト」の原案を閲覧した英フィナンシャル・タイムズ誌は、3月22日「グリーン・エネルギー」の定義に天然ガスが含まれる可能性があると報じています。

FT誌によれば、EU委員会の提案は次のようなものです。すなわち「天然ガスは、温暖化ガスの排出量が既存の電源より少ない。だから、生産された一キロワットの電力につき、温暖化ガスの排出を少なくとも50%削減できる場合には、発電における天然ガスと他の液化化石燃料をグリーン・エネルギーとして認める可能性がある」というのです。

二酸化炭素を「温暖化ガス」と決めつけている点は気にかかりますが、いまはそれに触れるのは控えておきましょう。

同報告書をもとに、欧州委員会は、最終的なグリーン・リストを4月中に公表する予定です。ちなみに、公表後30日以内に、欧州議会とEU加盟各国はそれを拒否する権限を有しています。

新しいグリーン・リストに採用されれば、天然ガス電力が、正式にグリーン・エネルギーとして認知されることになります。既存の発電法を基準に、「温暖化ガス」の排出量が50%以上削減できれば、天然ガスは晴れてグリーン・エネルギーに昇格するのです。

グリーン・リストに載せられた経済活動に対しては、欧州委員会が準備をすすめるグリーン・ボンド(環境改善のための資金調達債券)の利用が認められることになります。天然ガス産業は、グリーン・ボンドを利用することができるようになるのです。

このようにして、EU諸国が脱原発の着実な現実的な道筋を歩む環境が次第に整ってゆきつつあります。「脱原発による電力減少分を、再生可能エネルギーでなるべく補い、それで補い切れない分を、とりあえず火力発電で補う。そうして、火力発電を順次天然ガス発電に切り替えてゆく」。それが、脱原発の着実で現実的な道筋です。藤井氏は、そう主張しますし、私もそう考える者のひとりです。

次回は、エネルギー政策とのからみで、日英同盟について考えてみます。
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