ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

これが唯一の逆転のチャンス『核の地上配備を沖縄と連帯する形で、日本人全体で拒否する』

2017年10月09日 | 日本とわたし
本日公示された衆議院選挙、いよいよ始まりました。
先月の末から始まった奇怪な解党事件、そして二つの新党の誕生。

矢部氏の『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』より

豊富な資金と全国組織をもつ野党第一党の党首が、事実上独断で、
目前に迫った衆議院選挙での、自党の候補者の公認をすべて取り消し、
できたばかりの小規模政党(希望の党)の党首(小池百合子氏)に、その候補者たちを自由に「選別」する権利を与え、
事実上、党を消滅させてしまったにもかかわらず、自分は100億円以上の政党助成金の分配権を握ったまま、代表の座にとどまり続けている前原氏。


矢部氏は著書の中で、民主党が政権を取っていた時の野田首相が、民主党を自爆解散に追い込んだ事件と、今回の前原氏が起こした事件の共通点を、このようにまとめています。

突然決まった衆議院選挙の混乱のなかで、
最高責任者が意図的に、党を壊滅させるような行動をしたにもかかわらず、
その後、議員辞職もせずに党内にとどまり、実力者としての地位を維持しつづけた。


起こったことは仕方がない。
前を向いて進まなければならない。
選挙はもう始まってしまった。
モリカケの追求の勢いも、すっかり削がれてしまった。
対抗勢力などと騒いでいた希望の党は、自公が弱った際のお助け役であること、自公よりもさらに、極右カルト集団の使命を叶えるつもりであることがわかった。
それにずる賢くくっついて、自分たちの党の拡大を狙う維新も、戦争を仕掛けたくて仕方がないことを、今や隠そうともしない。



けれども、この混乱を経て、立憲民主党という、市民の思いをすくい上げてくれる党が生まれた。
それを良しとして、共産、社民とともに、野党共闘で闘おう。

今日までの2週間あまり、このようなことを毎日毎日考えていました。

156

この数字を頭に叩き込んでください。
今回の選挙で、野党側が、何が何でも獲得しなければならない議席数です。
野党三党(立憲民主党、共産党、社民党)の候補者全員が当選したとしても、156議席には全く届きません。
補完勢力に違いない希望の党の元民進党議員を国会に送り込まなければ、改憲を始め、緊急事態条項などの非常に危ない事柄が、強行採決によって次々に決められていくことは目に見えています。

明日か明後日に、希望の党から立候補する元民進議員の人たちを対象として行われたアンケートの結果を、みなさんにお知らせしようと思っています。
希望の党を応援しようという気持ちは毛頭ありません。
けれどもこの、昭和と平成を通してもなお、最も際どい崖っぷちに立たされている現実を考えたとき、好き嫌いを言っている場合ではないと思うのです。
日々の支援をずっと続けてきた方々にとっては、許し難い裏切り行為だったでしょう。
外から見ても、いくら代表の後押しがあり、ある意味騙されたとはいえ、ヒョロヒョロと得体の知れない家の敷居を跨いで行く姿は、褒められるものではありません。
踏み絵を踏まされ、思想を一律に括られ、内心や意志が変わってしまった人もいるかも知れません。
元々から、そういう思想であった人もいるかも知れません。

けれども、それでも、156という数字を獲得しなければもう後が無いところにきているわたしたちは、
希望の党、そして無所属から立候補する、元民進党議員の人たちを、数合わせのために当選させなければなりません。
ならば、怒ったり、非難したり、陰口を叩くのではなく、アンケートを読んで、もっといえば地域の事務所に行って、
議員一人一人の主張や思いを知ってください。
そして、希望の党だから、無所属だからということは忘れて、数を増やすことに集中して、156以上を目指して投票する冷静さを持ってください。

参考のために、HUFFPOSTさんが昨日9日の夜9時の段階でまとめてくださった名簿を、紹介させてもらいます。
皆さんが投票される地域に当たる候補者がいるかどうか、調べていただければと思います。

■民進前職の公認政党別の一覧(10月9日調べ)

希望の党(52人)


▽北海道2区=松木謙公
▽青森1区=升田世喜男
▽岩手1区=階猛
▽秋田3区=村岡敏英
▽山形2区=近藤洋介
▽福島4区=小熊慎司、同5区=吉田泉
▽茨城1区=福島伸享
▽群馬1区=宮崎岳志、同2区=石関貴史
▽埼玉1区=武正公一、同6区=大島敦、同7区=小宮山泰子、同10区=坂本祐之輔、同14区=鈴木義弘
▽千葉1区=田嶋要、同8区=太田和美、同9区=奥野総一郎
▽神奈川9区=笠浩史、同14区=本村賢太郎、同16区=後藤祐一、同17区=神山洋介
▽東京3区=松原仁、同8区=木内孝胤、同15区=柿沢未途、同21区=長島昭久
▽長野3区=井出庸生
▽岐阜4区=今井雅人
▽静岡5区=細野豪志、同6区=渡辺周
▽愛知2区=古川元久、同4区=牧義夫、同9区=岡本充功、同11区=古本伸一郎、同13区=大西健介
▽滋賀2区=田島一成
▽京都3区=泉健太、同4区=北神圭朗、同6区=山井和則
▽兵庫1区=井坂信彦
▽奈良1区=馬淵澄夫
▽和歌山1区=岸本周平
▽岡山2区=津村啓介、同4区=柚木道義
▽香川1区=小川淳也、同2区=玉木雄一郎
▽愛媛2区=横山博幸
▽福岡9区=緒方林太郎
▽佐賀2区=大串博志
▽熊本1区=松野頼久
▽大分1区=吉良州司
▽比例代表東北=寺田学


立憲民主党(15人)

▽北海道3区=荒井聡、同6区=佐々木隆博
▽埼玉5区=枝野幸男
▽神奈川1区=篠原豪、同6区=青柳陽一郎、同12区=阿部知子
▽東京6区=落合貴之、同7区=長妻昭、同16区=初鹿明博、同18区=菅直人
▽新潟1区=西村智奈美
▽愛知3区=近藤昭一、同5区=赤松広隆
▽大阪10区=辻元清美
▽岡山1区=高井崇志


無所属(22人)

▽北海道8区=逢坂誠二
▽宮城5区=安住淳
▽福島1区=金子恵美、3区=玄葉光一郎
▽栃木2区=福田昭夫
▽千葉4区=野田佳彦
▽神奈川8区=江田憲司
▽山梨1区=中島克仁
▽静岡3区=小山展弘
▽長野1区=篠原孝
▽愛知7区=山尾志桜里、8区=伴野豊、12区=重徳和彦
▽三重1区=松田直久、2区=中川正春、3区=岡田克也
▽新潟2区=鷲尾英一郎、同3区=黒岩宇洋、同4区=菊田真紀子
▽京都2区=前原誠司
▽大阪11区=平野博文
▽佐賀1区=原口一博


そして何より、このひどい投票率の低さを、今回ばかりは高めなければなりません。


こんな低い投票率の国は、民主主義国家ではありません。
有権者の権利を無駄にしないでください。


では、どうしてこの選挙が、とてつもなく大切なのか、そして日本は実は、どのような状況に陥っているのか、
知ることは痛みを伴いますが、ぜひ読んでいただきたいと思います。


誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」
『知ってはいけない』著者の警告

【矢部 宏治】2017年10月8日
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53127

<自民・公明><希望・維新><立憲民主・共産・社民>という、「3極」の構図で争うことになったと報道される、今度の総選挙。
しかし、どのような経緯をたどるにせよ、選挙後に私たちの目の前に姿を表すのは、<自民・公明・希望・維新>による巨大な保守連合体制である可能性が極めて高い

その結果、どんな事態が想定されるのか。

「これから日本は、非常に厳しい時代に入っていくが、たったひとつのことだけ守っていれば、充分に逆転のチャンスはある」

――こう指摘するのは、ベストセラー『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』の著者・矢部宏治氏である。
「戦後日本」最大の曲がり角に直面したいま、私たちが考えておくべきこととは。


◾️あまりにも奇怪だった「前原民進党・解党事件」

最近、本のPRをかねて、ラジオやネット番組にいくつか出演した。
すると、各番組のディレクターたちが、みな口をそろえて、同じことを聞いてくるのである。

「矢部さん、いまいったい何が起きてるんですか?まったくわけがわからないんですが」

もちろん、前原誠司代表が9月28日に起こした、「民進党・解党事件」のことである。
長い日本の戦後政治においても、これほど奇怪な事件はあまり見つからないだろう。
なにしろ、豊富な資金と全国組織をもつ野党第一党の党首が、事実上独断で

目前に迫った衆議院選挙での、自党の候補者の公認をすべて取り消し、
できたばかりの小規模政党(希望の党)の党首(小池百合子氏)に、その候補者たちを自由に「選別」する権利を与え、
事実上、党を消滅させてしまったにもかかわらず、自分は100億円以上の政党助成金の分配権を握ったまま、代表の座にとどまり続ける


ということを、突然決めてしまったのだから。

この出来事を、たとえば国外のメディアや知人に向けて、合理的に説明できる人が、はたしてどれほどいるだろうか。


◾️「野田民主党・自爆解散事件」との共通点

けれども実を言えば、私自身はあまり驚かなかった。なぜならいまから5年前、民進党の前身である民主党のなかで、同じくらい奇怪な事件が起こったことをよく記憶していたからだ。それは2012年11月に、当時の野田佳彦首相が起こした「民主党・自爆解散事件」である。もう昔のことなので、忘れている人も多いと思うが、これは簡単に言えば、

当時、政権公約と真逆の政策(消費税増税)を「命をかけてやりとげる」と公言していた野田首相が、
自党の選挙準備がまったく整わない状況のなか※、野党の党首(安倍晋三・自民党総裁)との国会討論中突然解散に合意し、わずか2日後(11月16日)には本当に衆議院を解散して、230議席から57議席へという壊滅的な敗北を喫してしまった
そして政権を失ったにもかかわらず、野田氏はその後、政界から引退も離党もせず、そのまま党の実力者でありつづけた


という、きわめて不可解な事件である。
そしてこの事件は、

突然決まった衆議院選挙の混乱のなかで、
最高責任者が意図的に、党を壊滅させるような行動をしたにもかかわらず、
その後、議員辞職もせずに党内にとどまり、実力者としての地位を維持しつづけた


という点において、前述の「前原民進党・解党事件」と完全な相似形をなしている。
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※註 
この自爆解散事件の直前には、鳩山由紀夫元首相や、すでに離党していた小沢一郎元幹事長に対して、
「いまは絶対に解散しない」という野田首相からのメッセージが、民主党の主要幹部を介して伝えられていた。
だからこそ、あの「ヤラセの党首討論」(=そこで突然解散が決まったというフィクション)が必要だったわけである。

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◾️2つの奇怪な事件は、なぜ起きたのか

では、この2つの奇怪な事件は、いったいなぜ起きたのか。
その理由については、私などよりもはるかにわかりやすく、しかも、簡潔に説明している人物が存在する。
元航空自衛隊のトップ(幕僚長)であり、対中国強硬派、核武装論者としても知られる右派の論客、田母神俊雄氏である。

彼は、「前原民進党・解党事件」が起こった直後、自分のツイッターでこう述べている。

「希望の党ができて民進党は解散になる。
小池さんも前原さんも、日本の左翼つぶしに是非とも頑張ってほしい。
右と左の二大政党では、国がつねに不安定だ。
保守の二大政党制になってこそ、安定した政治になる。
〔現在の〕日本のおかれた状況で、憲法改正に反対しているような政治家には、国民生活を任せることはできない」
(2017年10月1日、下線筆者)

実にわかりやすい「解説」ではないか。
つまり、安全保障の問題から、左派(リベラル派)の影響力を完全に排除する――。

それこそが、今回の「前原民進党・解党事件」と、5年前の「野田民主党・自爆解散事件」のウラ側にあった本当の目的であり、グランド・デザインだったというわけだ。
実際、この2度の自爆選挙によって、かつて旧民主党政権に結集したいわゆるリベラル派勢力は、ほとんど消滅寸前まで追い込まれてしまった。


◾️「最悪の愚作」

そうした異常な行動を生みだした背景については、理解できないこともない。
私が『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』で指摘したように、安保条約や地位協定にもとづく戦後の日米間の法的な関係は
独立の直前(1950年6月)に起こった、朝鮮戦争のなかで生まれた「米軍への絶対従属体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」であり、
そのなかで日本政府は、米軍からの要求に対して、基本的に拒否する権利をもたないという、つらい現実があるからだ。

けれども、そうした米軍支配の構造のなかで、反対勢力を非民主主義的な手段で壊滅させるのは、これ以上ないほど愚かな行為である。
なぜなら日本の戦後政治には、ながらく、

自民党・右派          (安保賛成・改憲)
自民党・リベラル派(保守本流) (安保賛成・護憲)
社会党他の革新政党       (安保反対・護憲)


という3つのグループが、それぞれ約3分の1ずつの議席をもつという構造のなかで、
①と②が、安保体制を維持しながらも、あまりにひどい要求に対しては、
②と③が、あうんの呼吸で連携して、それを拒否するという政治的な知恵が存在した
からである。

けれどもいま、この②と③の勢力の多くが、一度民主党(民進党)に集められたのち、野田・前原の2度の自爆選挙によって壊滅しようとしている
その結果、訪れるのは、「朝鮮戦争レジーム」の最終形態である、「100パーセントの軍事従属体制」に他ならない

枝野幸男氏が新たに立ち上げた立憲民主党をはじめ、選挙を戦うリベラル系の候補のみなさんに対しては、心からのエールを送りたいと思うが、
今回どのような選挙結果が出たとしても、選挙後に姿を表すのは、巨大な「自民・公明・希望・維新」による保守連合体制であり、
その最終的な目的は、軍事問題についての「野党の消滅」、または「大政翼賛体制の成立」
なのである。


◾️選挙後に必ず起こる2つのこと

では、具体的に、これから何が起こるのか。
選挙後に誕生する巨大な保守連合の、新たな目標として設定されているのは、まちがいなく、

全自衛隊基地の米軍使用
核兵器の陸上配備


の2つである。
いずれも、以前から、アメリカの軍産複合体のシンクタンクで、集団的自衛権とともに日本の課題とされてきたテーマだからだ。

今回の選挙結果がどうであれ、日本の首相に選ばれた人物には、この2つの課題を早急に実現せよという、強烈な圧力がかかることになる

そのときわれわれ一般人は、いったいどう考え、行動していけばいいのか
その手がかりとなる情報を、以下、簡単にスケッチしておきたい。

「自衛隊基地の米軍使用」については、多くの人が知らないだけで、すでに進行中の現実である。
たとえば下の図のように、現在、富士山の北側と東側には、広大な自衛隊基地(富士演習場)が存在する。
ところが現実には、これらはすべて、事実上の米軍基地なのである。


富士演習場の地図(『赤旗』2013年8月26日)


富士演習場で実弾射撃訓練を行う米軍(米海兵隊HP)


というのも、この広大な自衛隊基地は、当初は米軍基地だったものが、1950年代から60年代にかけて、日本に返還されたことになっているのだが、
なんとそのウラ側では、日米合同委員会での密約によって、米軍が「年間270日間の優先使用」をする権利が合意されているのである。
年間270日、つまり1年の4分の3は優先使用できるのだから、これはどう考えても事実上の米軍基地なのだ。


◾️普天間は一度日本へ返還後、また米軍基地になる?

なぜアメリカの軍産複合体が、こうした「自衛隊基地の米軍使用」を、今後すべての基地に対して拡大しようとしているかと言えば、その理由は簡単だ。

「自衛隊基地」という隠れ蓑によって、基地の運用経費をすべて日本側に負担させることができる。
「米軍基地」への反対運動を消滅させることができる。
今後、海外での戦争で、自衛隊を指揮するための合同軍事演習を、常時行なうことができる。


米軍側にとって、いいことづくめなのである。

この「自衛隊基地の米軍使用」計画について考えるたび、私は非常に不吉な予感におそわれる。
なぜなら現在、日本への返還が正式に決定していながら、そこで勤務する米軍の上級将校たちが、
「いや、オレたちはここから出ていく予定はない」と言っている、不思議な米軍基地がひとつあるからだ。

沖縄の普天間基地である。

これからやってくる「大政翼賛体制」のもとで、一度日本に返還された米軍・普天間基地が、民間利用ではなく自衛隊基地となり、
さらには現在の地位協定と密約の組み合わせによって、事実上の米軍基地となる可能性は非常に高い
、と私は思う。

もし本当にそんな事態が起きたとき、われわれ本土の人間が、沖縄と一緒になって、「そこまでバカにするのか!」と、真剣に怒ることができるのか。
そうした事態についても、あらかじめ想定して準備しておく必要があるのである。


◾️「核兵器の本質」とは?

そしてここからが、もっとも重要な問題だ。
戦後日本の「国体」ともいえる「朝鮮戦争レジーム」は、いま最終局面を迎えている。
このまま半永久的に続いてしまうのか。それとも解消へと向かうのか。
実はこれまで、絶対に揺るがないように見えていたその体制が、終わりを告げる可能性が出てきているのだ。

そのことについて説明する前に、読者のみなさんには、ひとつだけおぼえておいてほしいことがある。
それは、「核兵器の本質」が、「置いた国と置いた国のあいだで撃ち合いの関係になる」ということだ。
そして、一発でも撃ち合えば、その被害があまりにも大きいため、両者の間には「恐怖の均衡」が成立する

アメリカとロシア・中国の間には、すでにこの「恐怖の均衡」が成立しており、両者が直接戦争する可能性が消滅して久しい。
そしてさらにいま、少し前まで誰も予想しなかったことだが、北朝鮮とアメリカの間にも、この「恐怖の均衡」が成立(※)しつつあるのである。
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※註 
北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の急速な発展の背後には、ロシアからの技術流出(または技術協力)の存在が確実視されており、現在でも精度はともかくとして、距離的にはアメリカ本土に届く可能性が高いと考えられている。

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◾️バノンが明かしたアメリカ政府の本音

米軍にすっかり支配された日本の言論空間のなかでは、決して語られることのない多くの事実がある。
「朝鮮戦争レジーム」の根幹である北朝鮮問題については、とくにその傾向が強い。
だから、われわれ日本人の常識は、世界の常識とまったく違ってしまっているのだ。

その証拠に、たとえば今年の8月、トランプ政権の本音をバラしすぎて解任された、トランプ大統領の側近中の側近、スティーブン・バノン首席戦略官の問題の発言を見てみよう(いずれも2017年8月16日のニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」より)。

「北朝鮮問題に軍事的解決などない。まったくない。開戦30分で、ソウルの市民1000万人が通常兵器で死亡するという問題を、少しでも解決しないかぎり、(軍事的解決など)意味不明だ」

これはアメリカの本音というよりも、世界の常識だと言えるだろう。
1994年の第一次核危機で、「韓国側に50万人の死者が出る」という予測が出たために、北朝鮮への軍事攻撃を思いとどまったアメリカが、どうしていま、本格的な核の撃ち合いなど容認することができるだろう。
トランプも、もちろん本当はそのことをよくわかっている。

メルケル首相やプーチン大統領が、「北朝鮮問題に軍事的解決などない」とくり返し警告しているのは、トランプや金正恩に対してというよりも、
むしろ自分たちが一番危険であるにもかかわらず、なぜか声高に強攻策を主張しつづける、理解不能な日本の首相へのメッセージなのである。

「中国が北朝鮮の核開発を凍結させ、きちんとした査察を受けさせるなら、米軍を朝鮮半島から撤退させるという交渉もありえる。もっとも、かなり先の話になるだろうが」

バノンのこの発言も、多くの日本人にとっては、非常に意外かもしれない。
米軍が日本や韓国から撤退することなど、絶対にありえないと、ほとんどの人が考えているからだ。

しかし、国際的な常識からいえば、このバノンの発言は、ごく当然の話なのである。
朝鮮戦争(※)を、北朝鮮とともに戦った中国軍は、すでに1968年には、朝鮮半島から完全に撤退している。
休戦から64年もたつのだから、米軍も撤退するのが、本来は当たり前なのである。

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※註 
このときの米軍は、国連安保理で「国連軍旗の使用」などを認められていたため、「朝鮮国連軍」とよばれることもあるが、
軍の指揮権は、完全に米軍司令官がもっており、国連はいっさいそれに関与できなかったため、その実態が米軍であることは明らかである。

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◾️日本の未来を切り開くために

こうして生まれた新しい状況のなかで、私たち日本人が今後注意しておくべきことは、たったひとつしかない。
それは、総選挙後に始まる安全保障の議論のなかで、「核兵器の地上への配備だけは絶対に認めてはならない」ということである。

これから米軍、とくに日本と韓国に軍をおく米太平洋軍は、日韓両国に核兵器を地上配備させようと、猛烈なプレッシャーをかけてくるだろう。
もしもその圧力や巧妙な説得に負けて、日本と韓国が何百発、何千発もの核兵器を地上配備してしまえば、北朝鮮の攻撃対象は当然、日本と韓国へと向く
その結果、北朝鮮とアメリカの間の「恐怖の均衡」は崩れ、アメリカ本土は安全を回復する
結果として、韓国からの米軍撤退の可能性も消え、日本における「朝鮮戦争レジーム」も永遠に続くことになるわけだ。

誰だって、自分が核攻撃の標的になどにはなりたくない。
しかも日本は、世界で唯一の被爆国なのだ。
核兵器の地上配備など、認めるわけがないだろう。
多くの人がそう思うかもしれない。

しかし、そこには大きな落とし穴が隠されているのだ。
というのも今後、核兵器の地上への配備がおおやけに議論されるようになったとき、それがいくら公平な議論のように見えても、結論はすでに決まっているからだ。

それは、核を地上配備するのは、沖縄の嘉手納と辺野古の弾薬庫だということだ。


辺野古の新基地のすぐ隣にある弾薬庫地区。
広大な敷地に、写真のような台形の弾薬庫が40以上あり、最大1000発以上の核弾頭が、貯蔵できるようになっている。
(撮影/須田慎太郎)



◾️本当の平和国家になるために

私も6年前から本に書いているように、本土への復帰前は、沖縄に、最大1300発もの核兵器が地上配備されていた

そして嘉手納と辺野古には、当時それぞれ数百発の核兵器が貯蔵されていた、巨大な弾薬庫がいまもあって
さらにはそれを、「将来必要になったらいつでも使えるように維持しておく」という密約まで結ばれているのだ(1969年の佐藤・ニクソンによる「核密約」)。
黙っていれば、自然にそういう流れができてしまうことは確実だ。

けれども、この沖縄への核兵器の地上配備だけは、本土の人間も一体となって、日本人全員で、絶対に食い止めなければならない。

おそらく、身勝手な本土の人間たちは、
「沖縄なら自分は安全だ。核兵器だろうと何だろうと、配備すればいいじゃないか。オレには関係ない」と考えるかもしれない。
ところが、そうはいかない。

ここが問題の本質なのだが、北朝鮮対策という名目で、沖縄に核が配備されたとき、それは自動的に、中国との間で核の撃ち合いの関係を生み出してしまう、「恐怖の均衡」が成立するのである。
そしていうまでもなく、中国のもつ核兵器は、日本列島全体を瞬時に壊滅させるだけの威力をもっている

今回の「前原民進党・解党事件」でも、よくたとえに登場した、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出してほしい。
「オレだけが助かればいい。ほかの奴らは地獄に落ちてもかまわない」と思った瞬間、われわれ日本人はみな、一体となって地獄へ落ちていくことになる。

同じように、核兵器の配備について「沖縄ならいいか」と思った瞬間、「核大国・中国との間での、永遠につづく軍事的対立」=「永遠の朝鮮戦争レジーム」という、最悪の結果がそこには待ち受けているのだ。

けれども逆に、核の地上配備を沖縄と連帯する形で、日本人全体で拒否することができれば、北朝鮮とアメリカの間で「恐怖の均衡」が成立し、
バノンが予言していたとおり、やがて北朝鮮の核開発の凍結とひきかえに、米軍は朝鮮半島から撤退し、日本の朝鮮戦争レジームも終わりを告げることになる
だろう。

われわれ日本人が望んでやまない、「みずからが主権をもち、憲法によって国民の人権が守られる、本当の平和国家としての日本」という輝ける未来は、その先に訪れることになるのである。


知ってはいけない 隠された日本支配の構造 著者・矢部宏治



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