ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ハンガリーワインを改めてじっくり飲んでみました

2017-01-24 17:12:14 | ワイン&酒
昨日、来日中のハンガリーのワインライター Dr.József Kosárkaさんによるハンガリーワイン試飲会が都内で開催されました。

Kosárka(コサカ)さんとは国際ワインコンクールの審査員仲間として知り合ったのですが、かつて彼が日本に在住していたこともあり、親しくお話しするようになりました。日本語も少しお話します。
久しぶりの再会です!


Dr. József Kosárka from Hungary

ハンガリーは、第二次世界大戦後にソビエト連邦の占領下に置かれ、王政が廃止されます。
以降、1989年に体制転換するまで、共産主義体制(ハンガリー共和国、*第二)となったため、私有財産はほとんど認められることがありませんでした。

ワイン産業においても、1989年以前は、90%が国家のものだったとコサカさんは言います。

ハンガリーワインの歴史を調べてみると、ブドウ栽培は紀元前から始まっていたようです。
本格的なブドウ栽培はローマ人がもたらしたそうですが、紀元前1世紀にはローマ領パンノニアと呼ばれていましたので、この頃だったのでしょうか?

ハンガリーワインというと、世界三大貴腐ワインの「Tokai Aszú トカイ・アスー」が有名で、ワインの教本にもハンガリーを代表するワインとして登場します。
※他の2つは、仏ボルドーのソーテルヌ、独のトロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)

貴腐ブドウからつくられる甘口のトカイ・アスーは、1571年の文献に初めて登場します。
フランスのルイ14世(1638-1715年)は、トカイを“ワインの王”と称賛して愛したという逸話が残っています。



今回は3つの甘口トカイを試飲しました。
左から)Szepsy Szamorodni 2012, Royal Tokaji Aszú 2013, Szepsy Aszú 2008

“サモロドニ”はブドウの状態により、辛口になったり甘口になったりします。これは甘口で、非常になめらかでクリーミー。甘みが凝縮され、集中した味わいで、長い余韻もあります。

“アスー”は蜜のような、という意味があり、貴腐ブドウからつくられます。
2013年は甘みが濃密ですが、酸がしっかりとあり、素晴らしいバランスです。
2008年もまだまだ若さがあり、長熟なワインであることを改めて知らされました。

ワインの色を見ると、以前のトカイの甘口ワインはもっと茶色をしてたと思うのですが、今回飲んだワインの色は、濃淡はありますが、透明感のあるゴールド系です。甘みも、濃厚ですがピュアさがあります。醸造技術の進歩がありそうです。



ハンガリーは、1526~1699年のトルコによる占領後、1699~1918年にはハプスブルグ家による統治が行なわれていました。
この前後のハンガリーの歴史を紐解くと、あまりにも色々なことがあり、ここでは書ききれないので割愛しますが、ブドウ栽培、ワインづくりの歴史も、外部からの侵攻や内乱による影響を受けながら、現在のハンガリーワインへとつながっています。

1989年の民主化以降は、外国からの投資も増え、特に、高名だったトカイは早い時期から外資が投入されたそうです。

コサカさんによると、民主化から30年が過ぎようとしている現在と、かつての30~40年前のハンガリーワインは、味がかなり変わっているそうです。
今回、実際に14本のハンガリーワインを試飲してみましたが、ラベルを隠されたら、言い当てられないなぁ、というのが実感でした。


辛口白ワイン)
フレッシュで軽やかなもの、アロマティックなもの、完熟フルーツのニュアンスのあるメロウなものなど


辛口赤ワイン)
異なるスタイルの伝統品種Kadarkaの赤ワイン、ボルドースタイルの赤ワインなど



現在、ハンガリーでは6400haのブドウ畑があり、年間3000万hlのワインが生産されています。
22の産地があり、さまざまな高品質ワインが生産されています。
中には、低所得者層でも買える低価格帯のワイン(品質よりも価格重視のもの)もありますが、その一方で、国際的に高く評価されているワインもあります。

今回、コサカさんが選んでくれた14アイテムは、国際市場で競争できる品質だそうです。
たしかに、しっかりとした味わいのものが多く、飲んだ後に満足感があります。



ハンガリーで高く評価されているのはボルドースタイルの赤ワインだそうです。
“Cuvée”という名前がついているのが、ひとつの目印だとか。
このワインは、南部の産地でつくられた、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フランのブレンドで、ワイン名は「Meszaros Prince Ohmerops Cuvée 2013」。現地価格は50ユーロと高価!

飲み比べてみて、赤ワインの方がよりインターナショナルな傾向にあるように感じました。




私のイチオシは、フルミント種からつくられた辛口の白ワインです。
ハンガリーといえば、フルミント。
アロマが繊細で美しく、味わいも繊細でエレガント。
アタックは軽やかなタッチで、やさしい味わいですが、うまみがあります。
右の「Szepsy Furmint Uragya 2015」は、なめらかでコクがあり、余韻も長く、素晴らしい!
ハンガリーらしいワインだと思います。
これはベストハンガリーワインのひとつだそうです。




在日ハンガリー大使館 パラノビチ・ノルバード大使も臨席されました


今回の試飲で感じたのは、ワインの世界は動いている、ということです。
昔のハンガリーワインのイメージは、当然「トカイ」があり、濃くて荒々しい赤ワイン「エグリ・ビカベール」だったかと思いますが、今はもう全然違います。
もちろん、トカイという素晴らしい伝統ワインを保ち、でも、進化し、その他のワインも、むしろ新鮮に感じるようなものがあります。

ハンガリーワインは、あえて選ぶ機会が少ないかもしれませんが、先日、ドイツワインの記事も書きましたが、改めて見直したい生産国だと思います。

その際、ワインだけでなく、その国の文化や歴史にも触れると、より味わい深いものになるのではないでしょうか。




コサカさん、ありがとうございました!
また次回、次はどこで会えるでしょうか?


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