ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第52回 Capel Vale @「キャッチ The 生産者」

2009-07-27 09:33:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2008年11月21日)

第52回  Peter Pratten  <Capel Vale>
 
オーストラリアの西オーストラリア州から、
ケイペル・ヴェール・ワイナリー(Capel Vale Winery)の創設者
ピーター・プラッタンさんが来日しました 。


<Dr. Peter Pratten> (ピーター・プラッタン)
米国エール大学医学部教授を務めた後、1974年にオーストラリアのWAにブドウを植樹。
パースで病院を経営しながら、ワイナリーを運営していましたが、2001年からはワイナリーに専念。
2007年にケイペル・ヴェールの経営を息子に譲り、名目上は引退しましたが・・・。


西オーストラリア州で30年以上の歴史を持つワイナリー
                        ― Cape Vale Winery ―

暖かいイメージのオーストラリアの中でも、西オーストラリア州(以下WA)には冷涼なワイン産地が多く存在することで知られています。
特にマーガレット・リヴァーは有名で、現在は多くのワイナリーがこの地でのワインづくりに取り組んでいます。

1974年、このマーガレット・リヴァーの北東に位置するジオグラッフ(Geographe)にブドウを植えたのが、ピーターさんと奥様のエリザベスさんでした。

彼らは1979年にワイナリーを建て、1980年にケイペル・ヴェールの最初のヴィンテージが誕生しました。

ケイペル・ヴェールは、今やオーストラリア屈指の魅力あるワイン生産地となったWAにおいて30年以上も前からのワインづくりをしているパイオニアで、この地を代表する老舗なのです。

ケイペル・ヴェールのワインのラベルには 鳥の絵 が描かれています。これを見て、「あ、これ飲んだことがある!」と思う人も多いのではないでしょうか?

なぜ、鳥ラベルなのでしょうか?

まずは、そこから尋ねてみることにしましょうか。





Q.、ラベルの鳥のことを教えてください。
A.ペル・ヴェール・ワイナリーの近くにはケイペル川が流れていますが、そこにはシェルダックや土着のマウンテンダックなどの水鳥たちがたくさん集まります。そこで、このマウンテンダックをラベルにしようと思いました。

鳥のラベルは、地元の自然や生き物たちへの我々の愛情を表したものなのです。


Q.鳥ラベルでも、可愛い花のイラストのものがありますが?
A.ワインの初心者にも気軽に楽しんでもらえるスタイルのワインです。

フレッシュで、フルーティーで、非常に飲みやすく、価格も手頃で、各品種のヴァラエタルワインとして出しています。



特にシャルドネは“アンウッデッド”(Unwooded)、つまり樽を使わないものにしました。オーストラリアのシャルドネは樽が強いと思っている人が多いのですが、これは樽を使わず爽やかに仕上げましたので、ブドウそのものの味わいを楽しんでいただけると思います。


Q.ケイペル・ヴェールの主力ワインは?
A.リージョナル・シリーズ・ワインです。WAで30年の間に培ってきた経験を活かし、各リージョンに最適なブドウ品種を選んでつくるプレミアムワインになります。

ペンバトンではソーヴィニヨン・ブランとセミヨン&ソーヴィニヨン・ブランを、
マーガレット・リヴァーではシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンを、
マウント・バーカーではシラーズをつくっています。


Q.各リージョンの特徴は?
A.有名なマーガレット・リヴァーは、豪州で最も海の影響を受ける地域といわれています。ブドウの成長期の降雨量は少なく、冷涼ですが年間を通して暖かさが保たれる地中海気候で、どのブドウにとっても良い条件を備えています。特に、土壌を含めたテロワールはボルドーのメドック品種に最適です。

我々の畑はマーガレット・リヴァーの中央部にありますが、南西向きのため海からの冷たい風をこの地域の中で最もよく受け、そのおかげで大変良いカベルネができます。

ペンバトンはマーガレット・リヴァーの南東に位置し、このあたりでは最も降雨量が多くなります。非常に冷涼で、4月に収穫を開始する年もあり、また、午後は雲が出やすく、夏場は雷雨がしばしばある地域です。

しかし、この冷涼気候がブルゴーニュ品種の栽培に適し、ブドウにエレガントなフレーバーを与えてくれます。

マウント・バーカーはグレート・サザンの小区画のひとつで、気候はフランスのボルドーに似ているといわれ、土壌はマーガレット・リヴァーと同様です。

ペンバトンと同様、4月に収穫を開始する年もあり、雲、雷雨などの気候も似ています。


Q.他のラインナップは?
A.シングル・ヴィンヤード・ワイン シリーズがあります。マウント・バーカーの単一畑、ウィスパリング・ヒルズのリースリングとシラーズで、素晴らしいと判断した年にしか生産しません。


Q.これらのシリーズは以前から展開していましたか?
A.07年7月に息子のサイモンがCEOに就任したのを機に、以上を我々の新しいポートフォリオとしました。




Q.ワイン栓はスクリューキャップですか?
A.すべてのワインにスクリューキャップを採用しています。ワインの熟成にも保管にも最も良い栓は何かを考えた結果、スクリューキャップに行き着きました。




Q.あなたのワインづくりの哲学は?
A.WAの中でも素晴らしいと思うリージョンの特徴を生かしたブドウから、可能な限りベストなワインをつくることです。

目指しているのは、バランスが取れ、複雑味があり、エレガントなフルーツのフレーバーのする、ヨーロッパ的なスタイルを感じさせるワインです。


<テイスティングしたワイン>



Capel Vale Varietal Unwooded Chardonnay 2008
フレッシュかつフルーティーで、ほどよいコクもあり、樽を全く使っていないので、フルーツそのままの味わいが楽しめます。オークのニュアンスが強いシャルドネが苦手な人には救世主のような、ほっとできる存在のワインです。

Capel Vale Varietal Cabernet Merlot 2005
カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロのブレンドは定番中の定番。きれいな果実味を持ち、濃すぎることなく、ほどよい飲みごたえを楽しめます。

Capel Vale Varietal Pinot Noir 2007
価格がお手頃だけど、ちゃんと品種の個性を味わえるピノ・ノワールを探しているピノ好きにはうってつけ。バランスを重視したスタイルに仕上がっています。




Capel Vale Regional Cabernet Sauvignon 2007
マーガレット・リヴァーのカベルネ・ソーヴィニヨンを、フレンチオーク樽(一部新樽)で10カ月熟成。

タンニンの力強さ、タバコのニュアンス、熟成感、複雑さを感じ、アルコールは15%と高めですが、しなやかで品があります。

Capal Vale Regional Shiraz 2007
マウント・バーカー産のシラーズをフレンチオークとアメリカンオーク樽(一部新樽)で10カ月熟成。こちらもアルコール15%!非常に凝縮し、ハニーやダークチョコのフレーバーも感じます。

「このシラーズは10年以上熟成する可能性がある」とピーターさんは言います。

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インタビューを終えて


ピーターさんがケイペル・ヴェールの創設者と聞き、気難しい人だったらどうしよう・・・と気になったのですが、それは全くの杞憂に終わりました。

ワイナリーのオーナーというよりも学者的なアカデミックな雰囲気を持っていますが、とても気さくで、ハートフルでヒューマンな温かさを持つ人物でした。



彼は心からワインを愛し、自然を愛し、そして人間への愛情にも溢れていると感じました。

彼と話をしているだけで楽しくなり、飲んでいるワインがより一層おいしいと感じられるのは、彼の温かい人柄のせいなのでしょう。

2007年7月に経営を息子のサイモンさんに譲り、第一線からは退いたピーターさん。

しかし、ケイペル・ヴェールは家族経営のワイナリーです。
ピーターさんは今後もケイペル・ヴェールを大いにバックアップしていく気満々のようです。

なんたって、プロモーションのために自ら日本にやってきたくらいなのですから。


(取材協力)東京木下商事株式会社


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