ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

アルザスのビオディナミといえばマルク・テンペ!

2012-04-12 17:09:19 | ワイン&酒
「第4回 Riesling Ring Tasting」 (4/9、帝国ホテル)の会場に来てくれたワイン生産者がいました。

仏アルザス“ドメーヌ・マルク・テンペ” の当主、マルク・テンペ氏 です。


Marc Tempe / Domaine Marc Tempe

マルク氏はアルザスのSigolsheimの出身で、実家はワイン生産者。醸造専門学校を卒業後、大手メーカー勤務を経てINAOへ。INAO時代は、アルザスのグラン・クリュ制定の責任者でした。その後は醸造コンサルタントなどもしていましたが、1993年にアルザスのツェレンベェルグ村にドメーヌを立ち上げました。栽培面積は8ha、うちリースリングは2ha。

彼はまずビオロジックによる栽培を始め、1993年から1995年までの3年間は協同組合にブドウを売っていました。その間にビオディナミの第一人者ニコラ・ジョリーやマーク・アンジェリらと出会い、1996年からビオディナミに転向(エコセール認証)。
現在、マルク・テンペは“アルザスのビオディナミスト”、“アルザスの巨匠”として国内外ともに知られた存在になっています。

彼のワインはもう何度も飲んでいますが、非常にユニークで、そして、癒されるんです。
今回の来日に伴い、インポーター主催のセミナーが後日開催されたので、これはぜひ話を聞かねば、と参加してきました。



マルク氏は、「素晴らしいワインをつくるには、セパージュに頼らない、テロワールを表現するワインをつくらねばと思った。その方法にはビオディナミが最善。ビオディナミは土をミネラルに変えていくシステム」と言います。

彼の言う“テロワール”とは、土壌だけでなく、気候、天候も含む、“風土全体”のこと。
アルザスは夏暑く、冬が寒く、季節の温度差が大きい気候条件がブドウの生育に大変よく、春がゆっくりであり、パワーをじっくり溜め込めることも良い条件、といいます。

ビオディナミは垂直に力が働きます。ブドウの根は下に伸び、蔓は上に伸びます。通常は剪定を行なって蔓や枝を整えますが、彼はそのまま伸ばしておきます。芽かきも摘房も行ないません。これは驚き!

収穫はすべて手摘みで丁寧に行います。
プレスは5、6時間かけてゆっくりと行ないます。5、6時間とはかなり長い!
その理由は、きれいな酸を出すためにpHを下げるため

ステンレスタンクで自然のままに発酵させ(天然酵母による発酵、24~36時間)、何も加えません。
どのワインも、フードル(大樽)でシュール・リーで最低2年間寝かせてから瓶詰めします。
だから、マルク・テンペのワインは、市場で見る他のワインよりもヴィンテージが古いものが多いんですね。

マルク・テンペでは、村名ワインZellenberg(ツェレンベルク)やSaint-Hippolyte(サン・ティポリット)、グラン・クリュワインMambourg(マンブール)、Schoenenbourg(シュナンブール)などを生産しています。


Riesling Zellenberg 2008 Domaine Marc Tempe

2008年は収穫時に貴腐が付いていたので少々甘さがありますが、酸がしっかりとあります。爽やかな甘さと酸味のバランスがいいので、食前酒としていただくと、食欲が大いに刺激されそうです。


Riesling GC Mambourg 2005 Domaine Marc Tempe

酸の厚み、ミネラル感、ボリュームのあるしっかりとした果実味が渾然一体となり、品格を感じます。さすがグラン・クリュ。

マルク・テンペは3つのグラン・クリュがありますが、日本に入ってきているのは、マンブールシュナンブールの2つ。


右下の楕円、オレンジ色部分がマンブール、左上の楕円、黄色部分がシュナンブール

どちらも、コールマールから少し北に位置しています。
マルクによると、アルザスのグラン・クリュの中で最高の畑はコールマールから半径約15km以内にあるとか。

マンブールはアルザスの平野の中で最も高く突き出した丘陵で、畑の傾斜は非常にキツいものになっています。南向きの畑なので、日照量が多く、真夏の昼間は暑すぎて働けないほどになるため、ゲヴュルツトラミネル(1930年代に植えられた樹がある)に適しています。ただし、マンブールの南西部の丘の横腹の畑は谷を通る風の影響で涼しさが得られ、リースリングに向く微気候となっています。
石灰質礫岩と泥灰土の土壌から、強いミネラル感のあるワインが生まれます。

シュナンブールも傾斜のキツイ丘の斜面にあり、山に非常に近いため、山の冷たい空気が入り込み、冷涼な気候になります。
また、土壌は粘土質が主体なので、より冷涼さが保たれ、よって、ピノ・グリの成熟をちょうどよくコントロールできる畑となっています。


左)Pinot Gris GC Schoenenbourg 2006 Domaine Marc Tempe
右)Gewurztraminer GC Mambourg 2002 Domaine Marc Tempe

シュナンブールのピノ・グリはタッチがデリケートで、品のよい甘さが口の中いっぱいにジワジワと広がります。酸味はやや穏やか。
マンブールのゲヴュルツは、口に含んだとたん、とろけるような甘さがあります。ハチミツのような風味、旨味があり、やさしいワインです。


Gewurztraminer Mambourg SGN 1999 Domaine Marc Tempe

マンブールのゲヴュルツのセレクション・グラン・ノーブル!1999年は貴腐が付きました。
マルクによると、このヴィンテージはマンブールの特徴をよく表現し、石灰質からのミネラル感が反映されている、良質でふくよかで、今、飲み頃を迎えている、といいます。
濃密で丸く、酸、ミネラルの支えがあり、強いけれどまろやかなワインです。これには完全にうっとりさせられました。

マルクのグラン・クリュワインは満足度が非常に高いですが、プライスもそれなりにします。
村名クラスなら、3,000円前後から買えるものもあり、プライス以上に満足できる内容の、しかも個性的なワインなので、まずは村名クラスを飲んでみることをオススメします。


Pinot Blanc Zellenberg 2008 / Pinot Gris Zellenberg 2006/ Gewurztraminer Zellenberg 2008 Domaine Marc Tempe

ピノ・ブランは桃のコンポートを思わせるピュアでかわいらしい甘さがありました。
ピノ・グリはブランよりもボディにやや厚みがあり、凝縮感のある甘さを感じます。2006年は収穫前の霧の影響で貴腐が付きました。
ゲヴュルツは前2つほど甘さは感じさせず、これは方向性が違うように感じました。白桃のニュアンスはありますが、より繊細で、よりエレガントな味わいでした。

どれも甘口につくっているわけではないのですが、貴腐菌の影響で糖度が上がることが大きく影響しています。
品種で飲み比べると、村名でもグラン・クリュでもリースリングが突出して酸の広がりがあり、ミネラルを感じます。より涼しい場所を選んでいること、グラン・クリュにおいては石灰分の多いマンブールを選んでいることの影響をしっかり感じます。




ドメーヌ・ド・クルビサック

なお、マルク・テンペは、2002年から南仏ラングドックのミネルヴォアでもワインづくりを始めました。こちらもビオディナミ農法ですが、つくるワインは

「ルージュ2007」(右)は、シラー40%とカリニャン35%とグルナッシュ25%のブレンド、「パンドラ2005」(中)はグルナッシュ50%にシラー30%、カリニャン10%、ムールヴェドル10%のブレンド、「オルフェ2004」(左)はムールヴェドル40%、シラー40%、グルナッシュ20%のブレンド。
グルナッシュの多い「パンドラ」がピノ・ノワール的に感じられ、酸も残り、今ちょうどいい感じにおいしいと思いました。

マルク・テンペの赤ワインを飲んでみたい人は、ぜひ
(2,000円~3,200円~5,200円)

※マルク・テンペの ロゼワイン も以前紹介しました → コチラ


(輸入元:ディオニー株式会社)



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