ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第34回 Champagne KRUG@「キャッチ The 生産者」

2009-04-20 09:00:00 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

-----------------------------------------------

  (更新日:2007年5月11日)

第34回  Julie-Amandine Michel  <Champagne KRUG>

シャンパーニュ訪問記もいよいよ大詰めです。
今回は、シャンパーニュ好きなら誰もが憧れる「クリュッグ」社
スタッフのジュリーさんに 案内していただきました。



<Julie-Amandine Michel> (ジュリー・アマンディーヌ・ミッシェル)
シャンパーニュ出身。ブルゴーニュで勉強後、再びシャンパーニュに戻り、現在はクリュッグ社に勤務。
ちょっとシャイな、でも、とてもチャーミングな女性です。



神秘のシャンパーニュ   ― KRUG ―

“クリュッギスト” という言葉が生まれるほど、そのシャンパーニュに魅せられ、「最高のシャンパーニュは?」と尋ねられたら真っ先にこの名を挙げる人が多いメゾンのひとつが、ここ“クリュッグ”であることは間違いないでしょう。

それほどまでに愛されるシャンパーニュには、いったいどんな秘密が隠されているのでしょうか?

その神秘のシャンパーニュに出会うため、ランスの町にあるクリュッグ社に足を運びました。




KRUG
1843年、ヨハン・ヨセフ・クリュッグ氏(ドイツ系)によってランスに創業。
現当主は6代目のオリヴィエ・クリュッグ氏(1966年生まれ)。
現在はLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループに所属。





Q.クリュッグには、ノンヴィンテージ・シャンパーニュがないと聞きましたが?
A.ええ、“ノンヴィンテージ”という名前のシャンパーニュはつくっていません。
違った年の違ったテロワールのパーソナリティを尊重し、セレクトしてブレンドしたシャンパーニュは“マルチヴィンテージ”と呼んでいます。
そして当社では、それを“グランド・キュヴェ”(Grande Cuvee)としてリリースしています。
このグランド・キュヴェこそが当社を象徴するシャンパーニュです。

Q.なぜ、一般的な名称を用いず、そのような名前を付けているのですか?
A.クリュッグ社は、他にはないユニークなシャンパーニュをつくろうということでスタートしましたので、それが名前にも表れています。

Q.グランド・キュヴェの特徴は?
A.洗練された最高のブレンド技術を駆使したブレンドシャンパーニュの極み、といえるでしょう。このグランド・キュヴェが、クリュッグの全てのシャンパーニュのスタイルのベースになっています。

リッチでありながらフレッシュで、力強さがありながらフィネスもあり、非常に調和とバランスの取れた味わいが特徴です。

グランド・キュヴェは3つのブドウ品種をブレンドしていますが、6~10の年度が異なるキュヴェ約50種を使い、創業当時と同じ味わいを今日まで保ち続けています。

3品種はピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエです。

ピノ・ノワールがフレッシュさ、デリケートさ、複雑さ、力強さを与え、シャルドネがミネラル感を、ピノ・ムニエがスパイシーさを与えます。

なお、ブドウの摘み取りはすべて手で丁寧に行っています。




Q.畑にも特徴があると聞きましたが?
A.畑は非常に小さなモザイク状の区画になっていて、そこからそれぞれのキュヴェをつくり、ブレンドします。

長年の経験で、どの区画にどのブドウが適しているのか、そこからどのようなキュヴェが得られるのかがわかっていますので、それがブレンドに生かされています。

同じブドウ品種でも、畑の区画によってかなりキャラクターが異なってきます。
ですから、一次発酵後のブレンディングテイスティングが非常に大事です。

Q.醸造でのこだわりは ?
A.当社のこだわりは、発酵にオークの小樽を使うことです。ただし、新樽は使いません。年にもよりますが、だいたい3ヶ月ほど樽に入れます。

小樽を使うことで、細かいレベルでのキュヴェ管理が可能になるのはもちろん、樽がワインに生き生きとした風味を与え、酸化もゆるやかになります。



敷地内に並べられたたくさんの樽


Q.熟成についてはいかがですか?
A.シャンパーニュの瓶熟成期間は法律で15ヶ月以上と決められていますが、当社ではグランド・キュヴェでも最低6年(72ヶ月)以上熟成させています。

また、ボトリング後も1年間は瓶で熟成させ、需要に応じて出荷しています。



セラーの中で静かに眠るボトル



オリを落とすためにピュピトルにセットされます


Q.リザーヴワインについてはどう考えていますか?
A.1990年はとても暖かく、ワインがややフレッシュさに欠ける、ということがありました。それ以来、リザーヴワインは良い年にたくさん生産していこう、という体制になりました。
リザーヴワインが充分あれば、年による収穫状況のバラツキがあっても、クリュッグの味を守れるからです。


Q.クリュッグのラインナップについて教えてください。
A.“Krug Grande Cuvee”、“Krug Rose”、“Krug Vintage”、“Krug の5つのラインナップがあります。

クリュッグでは3品種のブドウをバランスよくブレンドすることを身上としていますが、 “クロ・デュ・メニル”だけは唯一の例外です。
これは、クロ・デュ・メニルという単一畑(1.85ha)から得られるシャルドネ1種類によってのみつくられます。この畑はコート・デ・ブラン地区のメニル・シュル・オジェ村にあり、1698年から石の塀で囲まれている特別な区画で、南東向きのゆるやかな斜面にあります。

Q.最後に、クリュッグの哲学とは?
A.決して妥協せず、職人として持てる限りの技術を最大限に生かし、唯一無二のシャンパーニュづくりに情熱を捧げることです。

ブドウの時からグラスに注がれる時まで、献身的に手をかけて育て上げたものがクリュッグのシャンパーニュです。





<テイスティングしたシャンパーニュ>

Krug Grande Cuvee
外観は輝きのある黄金色。充分な酸を持ち、バランスも絶妙。キメ細やかで余韻も長く、高貴な雰囲気を感じさせるシャンパーニュです。

「シトラス、レモンのニュアンスがあり、フレッシュなのにパワーがあってボディがしっかりとし、複雑な味わいが特徴です」(ジュリーさん)



―食事は何を合わせたらいいでしょう?

「どのシャンパーニュも、いわゆるフランス料理に合いますが、お寿司にも合うのではないかと思います。アラビア料理のようなスパイシーなものに合わせても面白いかもしれません。シャンパーニュの北部地域では、ハム類にロゼシャンパーニュを合わせて楽しんでいます。
シャンパーニュは元々ワインですから、甘すぎる料理や酸っぱすぎる料理とはあまり相性が良くない、と考えていただければ難しくはないと思いますよ」(ジュリーさん)


---------------------------------------

インタビューを終えて

解き明かされた神秘の鍵

クリュッグの訪問で、“クリュッグはクリュッグ、“クリュッグであることの誇り”がひしひしと伝わってきました。
その誇りを支えているのは“徹底した職人気質”です 。

他とは違う最高のものをつくろうという情熱が品質への自信を生み出し、人々が焦がれて止まないシャンパーニュをつくり出しています。

そして、途絶えることなく続いているファミリーの絆も、クリュッグであるために不可欠なもののひとつで、メゾンの個性を左右するブレンドの作業は、1843年以来、必ずクリュッグ家の一員が行っています。

明文化したブレンドのレシピはなく、代々引き継がれている彼らの舌の記憶こそがクリュッグのスタイルを決める鍵となっています。

心がうちふるえるほど高貴で神秘的なシャンパーニュは、連綿と続くクリュッグファミリーの絆の賜物だったのです。



クリュッグ家の家系を表すツリー

これと似た家系ツリーをドイツのワイナリーでも見かけ、やっぱりクリュッグはドイツ出身ということを実感しました。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小さなスティッククーヘン ... | トップ | 第35回 Ch. Gaudet-St-Julie... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

キャッチ The 生産者」カテゴリの最新記事