ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第29回 PIERRE SPARR@「キャッチ The 生産者」

2009-03-15 10:23:12 | キャッチ The 生産者
  (更新日:2006年12月11日)

第29回  Bernard Sparr  <PIERRE SPARR et ses Fils S.A>

ルイ14世の時代から仏アルザスでワインづくりを続けている ピエール・スパー社 から、明るく陽気な9代目、ベルナールさんが来日しました。



<Bernard Sparr>(ベルナール・スパー)
43歳。スパー家の9代目で、営業担当。
営業研修のため渡米し、ニューヨークのデパートで働いていたという経験あり。
TVのレポーターだった奥様と9年前に結婚。


アルザスで長い歴史を持つファミリーワイナリー

スパー家は1680年から続く古い一族で、ベルナールさんで9代目。
現在は、ベルナールさんの父と父の兄(伯父)がピエール・スパー社を経営し(彼らが8代目)、伯父の息子でありベルナールさんの従兄弟にあたるピエールさんがワインメーカーを務めています。
当のベルナールさんは営業担当と、まさに一族フル登場のワイナリーなのです。



アルザス地方

アルザスはフランス東北部に位置し、ライン川を隔てた対岸はもう隣国ドイツ。
こうした地理的状況にあるため、アルザス地方はドイツに属していた時代もありました。
気候は冷涼で、ブドウ品種もドイツ系が多く、ボトルの形もドイツのモーゼルやラインガウのようにスラリとスリムという特徴を持っています。

つくられているのは圧倒的に白ワインが多く、ブドウ品種がラベルに表記されるため、フランスワインの中ではわかりやすく、最も初心者にやさしいワインといえるかもしれません。



Q.ピエール・スパー社のラインナップを教えてください。
A.当社では、アルザスのグラン・クリュ畑から生まれる最上級のワインから、ブレンドワイン、赤ワイン、スパークリングワイン、貴腐ワインと、幅広く生産しています。

Q.アルザスのスパークリングは“クレマン・ダルザス”(Cremant d’Alsace)が有名ですね?
A.はい、クレマンもありますが、“マルキ・ド・ペルラード”というスパークリングワインも生産しています(Marquis de Perlade Brut Blanc de Blancs NV)。

これは、ラングドックからのシャルドネ40%と、アルザスのピノ・ブラン40%、ロワールのシュナン・ブラン20%をブレンドしたヴァン・ムスーで、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵を行っています。

Q.こうしたスパークリングワインには、どんな料理が合いますか?
A.まずはアペリティフに飲んでいただくのがいいと思いますが、たいていの料理と相性がいいですよ。ただし、あまりスパイシーすぎる料理(エスニック系の辛いもの)じゃない方がいいですね。

Q.赤ワインはどんなタイプのものをつくっていますか?
A.ピノ・ノワールからは赤のスティルワインを生産しています。
赤ワインじゃないですが、ピノ・ノワール100%のロゼのクレマンもあります。色もきれいですし、ドライタイプですが果実味があり、特に女性に人気です。


たしかに、このロゼのクレマンは実に色がキレイ!

Q.アルザスには、いくつかの品種を混醸する“エデルツヴィッカー”がありますが、貴社の“アルザス・ワン”もエデルツヴィッカーですか?
A.いいえ、違います。エデルツヴィッカーは低いクラスのローエンドワインですが、当社の“アルザス・ワン”(Alsace One)は、「ブレンドをすることでより美味しいものをつくろう」というコンセプトを持つハイクオリティーワインです。良い品質のブドウだけを使っているのが自慢です。

リースリング、ピノ・ブラン、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリの5品種をブレンドし、シュル・リー製法で仕上げています。


スパー社の自信作、“アルザス・ワン”

Q.それぞれのアルザス品種のワインに合う料理について教えてください。
A.ブドウ品種による味わいの違いもありますが、一般的なAOCワインとグラン・クリュワインといった、クラスによる味わいの違いもかなり大きいものがあります。

アルコール度数、酸度などの違いもありますし、長熟のポテンシャルの違いもありますから、品種だけでなく、こうしたクラスの違いも考慮するといいですね。

Q.アルザスでは、白ワインを肉料理に合わせたりすることもありますか?
A.ごく普通にあります。例えば当社の“トケイ・ピノ・グリ・レゼルヴ2003”などは、白身の肉(鶏や豚)やゲーム(鳥獣類)にもよく合いますし、チーズに関してはほぼ全部カバーできると思います。

Q.日本食とアルザスワインとの相性はいかがでしょうか?
A.日本には何度も来ていますが、寿司、刺身、天ぷらが大好きです。こうした日本食もアルザスワインに合うと思います。タイやベトナムの食べ物、ケイジャン料理、中華料理などとの組み合わせもおすすめです。

アルザスならではの食べ物では、個人的には“オニオンタルト”が大好物です。キッシュと似ていますが別物ですので、アルザスにいらしたら、ぜひオニオンタルトを召し上がってみてくださいね。

Q.海外販売網はどうなっていますか?
A.世界45カ国に輸出しています。第1位はアメリカで、ベルギー、カナダ、スウェーデン、イタリア、フィンランド・・・と続きます。ヨーロッパが80%とやはり多く、アジアはまだ2%です。我々のアルザスワインを、日本のみなさんにもっと飲んでいただきたいですね!



<テイスティングしたワイン>

ヴァン・ムスー(スパークリングワイン)



Marquis de Perlade Brut Blanc de Blancs NV
Cremant d’Alsace Brut Reserve NV
Cremant d’Alsace Brut Rose NV

いずれも軽快な口当たりですが、ほどよい飲みごたえがあります。
特にロゼは果実味が豊かで見た目もキレイ!

3点とも2000円台(インポーター希望価格)ということを考えると、気軽にスパークリングワインを楽しみたい時の良いパートナーになってくれそうです。


ヴァン・ブラン(白ワイン)



Alsace One 2004
Riesling 2004
Gewurztraminer Reserve 2004
Tokay Pinot Gris Reserve 2003

どれも個性豊かですが、
バランスがよく、昼から楽しみたい気分にさせてくれるのはアルザス・ワン。
クリスピーで爽やかな果実味を楽しめるのはリースリング。
エレガントかつアロマティックで、華やかな気分にさせてくれるのはゲヴュルツ。
飲みごたえではトケイ・ピノ・グリ、でしょうか。

いずれのワインも、エレガントな果実味と凛とした酸味が底辺にあり、伝統ある生産地ならではの気品が備わっています。
いつの時代も安心して楽しめる、それがピエール・スパーの最大の特徴といえます。

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インタビューを終えて

“いい大人なのに、超陽気で、少年みたい!” というのが、ベルナールさんの印象。

というのも、インタビューを受けながらも、歌を口ずさみ(オー・シャンゼリゼとかetc…)、果ては踊っちゃいそうな様子だったからです。
ここまで明るい人に出会ったのは初めてのことで、ベルナールさんは、
まさに“歌って踊れる、ピエール・スパーのセールスマン”

ピエール・スパーは320年を超える歴史あるワイナリーということから、ちょっと近寄りがたい雰囲気があるかも・・・、と身構えそうになりますが、ベルナールさんに会えば、そんな先入観は吹っ飛んでしまいます。

たしかに、ワインには歴史の重みがありますが、ベルナールさんを見れば、
「なあんだ、もっと気楽に考えていいんじゃない」と思うこと請け合いです。



また、スパーはワインのラインナップも幅広く、気軽に試せるものから揃っている
今のこの季節の私の個人的なオススメは、“お鍋”とアルザスワインのマリアージュのも嬉しいポイント。

ヴァン・ダルザス(Vin d’Alsace)クラスのワインと、水炊きや薄めのお出汁のお鍋(たらチリとか塩ちゃんことかetc…)の組み合わせなら、グラスもお鍋もどんどん進むこと間違いなし!

爽やかな季節に爽やかなアルザスワイン、というのももちろん素晴らしい組み合わせですが、寒い季節のアツアツのお鍋とアルザスワインのマリアージュは、ぜひ冬の間に楽しまないとね!


取材協力:大榮産業株式会社


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