ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第31回 Billecart-Salmon@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:34:13 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年2月11日)

第31回  Claudia Meigneu  <Billecart-Salmon>

さて、今回も引き続きシャンパーニュからのレポートです。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のマレイユ・シュル・アイ村にある
“ビルカール・サルモン” を、スタッフのクラウディアさんに案内していただきました。



<Claudia Meigneu>(クラウディア・メニュー)
笑顔がチャーミングなクラウディアさんは、ビルカール・サルモンの窓口ともいえる存在。
訪問希望者の受け入れをはじめ、ツアー案内やテイスティングなど、さまざまな対応を行っています。英語もOKです 。


マレイユ・シュル・アイ村へ
エペルネの中心地から北東方向に進み、街中を抜けて東に折れると、日本の田園地帯を思わせるような、なんとものどかな地方道に出ます。右手には太陽の光を反射してキラキラ光るマルヌ川の運河がゆったりと流れ、初冬というのに、車窓に差し込む陽射しもポカポカと暖かです。
この東西に流れるマルヌ川の北側にマレイユ・シュル・アイ村があり、その奥には小高い丘が連なり、斜面から麓にブドウが広がっています。



Billecart-Salmon
  ―7代の歴史を持つ家族経営のシャンパンハウス―

17世紀にまで遡るビルカール家ですが、ニコラ・フランソワ・ビルカールと妻のエリザベス・サルモンがシャンパンハウスを興したのは1818年のことでした。
それ以来7代にわたってマレイユ・シュル・アイ村に居を構え、シャンパーニュをつくり続けています。

現当主はフランソワ・ローラン・ビルカール氏で、弟のアントワーヌ氏がフランソワの右腕となり、ビルカール・サルモンを盛り立てています。

自社畑は10.2haですが、他に35のクリュ、合計140haのエリアからブドウを購入しています。そのうち90%は素晴らしい畑が集中するエペルネ周辺20kmのエリアのものです。

年間生産量は約120万本と中規模。
ちなみに、あのモエ・エ・シャンドン社は年間3000万本ですから、規模の違いがお分かりいただけるでしょう。





花のある季節ならどんなにか美しいことか・・・
と思われる見事なフランス庭園 を抜け、まずはオフィスから道を1本挟んだ醸造所へ。


美しいフランス庭園


樹齢200年のホースチェスナット(マロニエ)


Q.シャンパーニュづくりにおけるビルカール・サルモンのこだわりは?
A.まず、“keeping only Cuvee”、つまり、最初に搾るキュヴェしか使用しないことです。

シャンパーニュの場合、4000kgのブドウからまず2050リットルのキュヴェ(Tete de Cuvee)を搾り、そこからさらに“プルミエール・タイユ”と呼ばれる500リットルの搾汁を得ることができますが、ビルカール・サルモンでは、最初の2050リットルの部分しか使いません。

Q.温度管理はどうしていますか?
A.フレッシュさを保つために、12~13℃という低めの温度で3週間かけて発酵を行います。温度はタンクごとにコンピュータで管理し、セラーマスターが毎日チェックします。


右は各タンクの温度を管理するパネル。各々温度表示されてます。

Q.リザーヴ・ワインの使用比率は?
A.約25%です。ブレンド作業は、だいたい1月から6、7月頃にかけて行っていま 」

Q.瓶熟成の期間はどうなっていますか?
A.法律上ではノン・ヴィンテージもの(NV)で15ヶ月以上、ミレジメもの(収穫年記載のもの)で3年以上の瓶熟期間が必要ですが、当メゾンでは、NVは3~4年、ミレジメは8~10年瓶熟させます。この期間は年によっても異なります。



Q.動瓶(ルミアージュ)は手作業ですか?
A.今は機械(ジャイロパレット)があるので便利になりましたが、ミレジムシャンパーニュや、特殊な形をしているボトルは動瓶のバスケットに入りませんので、職人の手によって行います。

手作業の場合は毎日同じ職人が同じラインを担当し、3ヶ月かけて行っています。


ジャイロパレット用のバスケット

Q.貴社のラインナップは?
A.シャンパーニュで9のキュヴェを生産しています。赤ワインも醸造していますが、ロゼシャンパーニュのブレンド用のみに使い、スティルワインの“コトー・シャンプノワ”としてはリリースしていません。

Q.自慢のキュヴェはありますか?
A.醸造所の裏の畑のブドウからつくられる、ピノ・ノワール100%の“クロ・サン・ティレール”(Clos Saint-Hilaire)です。1964年にブドウを植え、1995年ヴィンテージを初めてリリースしました。
わずか1haの単一畑ですが、スロープがいいボディをワインに与え、素晴らしい品質のものができます。この単一畑の個性をしっかりと出すために、門出のリキュールは1gたりとも加えません。ドサージュは0gの、ノン・ノゼです。リリース後20年は楽しめるシャンパーニュだと思います。

Q.クロ・サン・ティレールの生産量はどのくらいですか?
A.年によっても違いますが、だいたい3500本から7500本の間です。今までリリースした年は1995、1996、1998、1999、2000、2002年です。毎年つくれるとは限りません。

Q.ドサージュの量にはこだわりがあるのでしょうか?
A.当社のラインナップの中には、ひとつだけ甘口(ドゥミ・セック)がありますが、それ以外はすべて辛口です。ミレジメものは3~4g、NVは10~12gを目安としています。

Q.主な輸出先は?
A.アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、日本、香港などです。同じアジアでも中国市場はまだまだ難しいですね。




<テイスティングしたシャンパーニュ>

Brut Reserve NV
ピノ・ムニエ40%、ピノ・ノワールとシャルドネは年によって30~35%ずつのブレンドとなるようですが(基本的にはピノ・ムニエ50%、シャルドネ30%、ピノ・ノワール20%とのこと)、1945年以来変わらないスタイルを持つ、ビルカール・サルモンのクラシカルキュヴェ。
コンセプトは“ハーモニーとバランス”

非常に口当たりがよく飲みやすいシャンパーニュで、「アペリティフなどはもちろん、どんなシチュエーションでも気軽に楽しんでください」と、クラウディアさん。


Brut Blanc de Blancs 1998
シャルドネで有名なコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュ畑(Avize、Cramant、Mesnil-sur-Oger)のシャルドネを使ってつくられています。Avizeは力強さを、Cramantはフィネスを、Mesnil-sur-Ogerはストラクチャーと長い寿命を与えます。
コンセプトは“生き生きとしてデリケート”

酸がキリリと素晴らしく、ボディはしっかりしているのに、繊細さも持ち合わせています。

クラウディアさんのおすすめマリアージュは、オイスターや魚料理、クリーミーなソースをかけたものなど。

Cuvee Elisabeth Salmon Rose 1998
濃いオニオンカラーを持つ美しいロゼ。これはロゼのプレスティージュで、創設者夫人の名(エリザベス・サルモン)を冠し、1988年に誕生しました。まずシャルドネとピノ・ノワールから白ワインをつくり、マレイユ・シュル・アイ村のピノ・ノワールでつくった赤ワインを少量(8%ほど)加えてロゼ色に仕上げます。
コンセプトは“力強さと複雑さ”

口に含むとものすごいブリュット!酸がとても豊かですが、全体の印象が華やかで、非常にバランスの良いシャンパーニュです。

10~15年ほど寝かせておくことができ、白身の肉料理(チキンなど)からデザート、赤い果皮のフルーツにまで幅広く合わせることができるとのこと。


 
左から、Brut Reserve、Blanc de Blancs 1998、Cuvee Elisabeth Salmon 1998

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インタビューを終えて


マレイユ・シュル・アイ村の畑の格付けはプルミエ・クリュ。グラン・クリュとして有名なアイ村のほんの少し東に位置し、アイ村同様、東西に流れるマルヌ川がブドウにとって非常に良い条件を作り出しています。

テイスティングルームでは、アントワーヌさんともご一緒しました。非常にインテリジェンスを感じさせる、存在感のある人物で、かなりの“切れ者”と見受けられました。彼はすでに次期社長の席が決まっています。

「そうそう、来月に日本に行きますから、よろしく!」

と言って別れた彼と、本当にすぐに東京で再会できましたが、その時はロゼをしっかりと味わわせていただきました。


東京で再会した時のアントワーヌさん


実は、ロゼシャンパーニュこそがビルカール・サルモンのオリジンともいえるもので、NVのコレクションシリーズの中でも、唯一ロゼだけが特別なボトルに入れられています。

ロゼシャンパーニュのつくり方には、7代に渡る秘訣があるとのこと。シャルドネとピノ・ムニエとピノ・ノワールの3種からつくられますが、ピノ・ノワールからつくられた赤ワインを少量加えてロゼ色にします。

そして、ロゼのプレスティージュ“キュヴェ・エリザベス・サルモン”は、口に含むと、複雑で落ち着いた旨味がジワ~っとしみ込みます。しっかりと飲みごたえのあるボディで、どこか妖艶な雰囲気も漂うほど。
大切な夜に飲みたい、そんな印象を改めて感じました。

ビルカール・サルモンのコンセプトは “フィネス”、“バランス”、“エレガンス”



2年ほど前に新しくつくられた、「BとS」をデザインしたロゴマークもこのコンセプトをよく表していて、これを用いたパッケージ(右の写真参照)はとてもスタイリッシュでファッショナブル!

また、2006年の7月には、英国の『デカンター』誌によるNVシャンパン118本のブラインドテイスティングでBrut Reserveが1位の座に輝くという快挙を成し遂げ、このところのビルカール・サルモンの躍進ぶりには素晴らしいものがあります。

これはアントワーヌさんの力によるものが大きいと思われます。その彼がこれからのビルカール・サルモンを統率していくのですから、これはもう目が離せそうもありません。



取材協力:三国ワイン株式会社


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