ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第18回 Brokenwood@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:20:59 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年1月11日)

第18回  Iain Riggs  <Brokenwood>

オーストラリアのワイン生産地、南オーストラリア州(SA)のハンター・ヴァレーにあるワイナリー『ブロークンウッド』
今回のゲストのイアン・リッグスさんは、ブロークンウッドのオーナーの一人で、かつチーフ・ワインメーカーも務めています。



<Iain Riggs>
1955年、南オーストラリア州のBurra出まれ。 ローズワーシー大学卒業。
マクラレーン・ヴェールのBleasdaleワイナリー、Hazelmereワイナリーを経て、1982年にブロークンウッドに着任。
現在、ブロークンウッドのマネージング・ディレクター兼チーフ・ワインメーカーで、オーナーの一人 。
また、ハンター・ヴァレー・ワインショーの議長やその他のアワードの審査員なども務めている。


白ワインのスペシャリストからシラーズのスペシャリストへ

イアンさんが入る前まで、ブロークンウッドは、オーナーが趣味で片手間にやっているような、ちっぽけなワイナリーで、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズの赤ワインのみを生産していました。

ところが、「白ワインもつくってみたい」というオーナーの願いから、白ワインづくりで名を馳せていたイアンさんに白羽の矢が当たり、1982年、イアンさんはブロークンウッドのチーフ・ワインメーカーとして着任。
そしてこの年、ちょうど新しいワイナリーも完成し、イアンさんを中心とする"新ブロークンウッド"がスタートすることに。

イアンさんの活躍の成果はすぐに現れ、翌1983年の生産は、赤ワインが30%、白ワインが70%と、いきなり白ワイン優勢のワイナリーへと転換しました。
現在も白ワインは、セミヨン、シャルドネ、ピノ・グリ、ヴィオニエ、リースリングと、幅広く生産しています。

ですが、現在のブロークンウッドを有名にしているのは、実は赤ワインのシラーズ
イアンさんはシラーズのスペシャリストでもあるのです。





Q.セミヨンは、ボルドーではソーヴィニヨン・ブランとブレンドした辛口に、また、ソーテルヌでは甘口ワインに使われていますが、ブロークンウッドのセミヨンのスタイルは?
A.我々のセミヨンは辛口スタイルで、ボディはあくまでもライトに仕上げています。フレッシュなシトラスと花の香りがあり、酸が生き生きとし、味わいもフレッシュで、アルコール度数も低めです(10.5%)。

ハンター・ヴァレーは高温多湿の地として知られています。つまり、ブドウにとってはあまり良い条件ではないんです。そこで、なるべく早めに収穫をするようにして、フレッシュさが損なわれないようにしています。

Q.ブロークンウッドのリースリングのスタイルは?
A.オーストラリアで辛口のリースリングを生産しているワイナリーは、非常に多くありますが、当社では、リースリングは甘口タイプのみを生産しています。
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードという単一畑のもので、収穫は6月に行ないます。2004年は貴腐菌が少し付き、大変良いものができました。

Q.イアンさんはシラーズのスペシャリストということですが、ブロークンウッドのシラーズには、どのようなものがありますか?
A.当社を代表する、つまりフラグシップとなるワインは、"Graveyard Vinyard"(グレーヴヤード・ヴィンヤード)です。
畑はニューサウスウェールズ(NSW)のハンター・ヴァレーにあります。グレーヴヤードの樹齢の若いブドウ"Baby Graveyard"からのワインも少しつくっています。

ハンター・ヴァレーでは他に、単一畑"Mistress Block"と、"Hunter Valley Shiraz"があり、SAのマクラレーン・ヴェールでは、単一畑"Rayner "Graveyard Vinyard""Wade Vinyard Block2 Vinyard"があります。

他に、マクラレーン・ヴェールとパサウェイのブドウをブレンドした"Brokenwood Shiraz(McLaren Vale/Padthaway)"があり、広い範囲の土地でシラーズをつくっています。

Q.フラグシップワインについて詳しく教えて下さい。
A.先ほどお話した"Graveyard Vineyard Shiraz"が、当社のフラグシップワインです。
ブロークンウッドが設立された1970年、ハンター・ヴァレーのグレーヴヤード・ヴィンヤードにシラーズを植えました。
重たい粘土質土壌のため、自然と収穫量も低く抑えられてしまう畑ですが、そのおかげで、凝縮感のあるブドウが得られます。
現在は、グレーヴヤードにはシラーズの他にシャルドネも植え、単一畑の"Graveyard Vineyard Chardonnay"としてリリースしています。

Q.マクラレーン・ヴェール(SA)とハンター・ヴァレー(NSW)のシラーズの違いは?
A.マクラレーン・ヴェールのシラーズの特徴は、果実味の甘さにあります。そのため、樽はアメリカンオークを使い、果実味を生かすようにしています。
ハンター・ヴァレーの方は、マクラレーン・ヴェールよりも果実味が抑えられたキャラクターですので、熟成樽はアメリカンオークとフレンチオークの両方を使っています。

Q.ブロークンウッドのワインには全てスクリューキャップが採用されているようですが?
A.はい、高級レンジのワインも含め、全てスクリューキャップを採用しています。というのも、ワインをベストな状態で飲んでいただくには、スクリューキャップこそ最適な栓である、ということを確信しているからです。コルクによるダメージを受けることはありませんし、新鮮さを保てますから。




<テイスティングしたワイン>

Brokenwood Semillon 2005
グリーンがかった透明ボトルに入れられ、見るからに爽やか!口にすると、とてもフレッシュ。最初は刺激的だった酸が、飲んでいるうちに落ち着き、骨格のある酸に変化します。
「2005年はとても強い年で、フルーツのニュアンスがよく出ています。料理を合わせるのなら、オイスター(牡蠣)がピッタリ。ワインがフレッシュなので、フレッシュな味わいの料理や食材に最適ですよ」とイアンさん。アルコール度数10.5%。

Brokenwood Shiraz (McLaren Vale / Padthaway) 2001
香りはおとなしめで、味わいもピュアできれいなタイプのシラーズ。ソフトで甘い口当たりですが、よく凝縮されています。
「2001年はとても良い果実ができました。収穫も多かった年でしたが、10年は持つワインに仕上がっています」(イアンさん)。アルコール度数は13.5%。

Brokenwood Hunter Valley Shiraz 2003
樹齢10年。涼しげな香りで、まだ少々タンニンが若く、暴れている感じがありますが、もう少し落ち着くと、ちょうどいい飲み頃になるでしょう。アルコール度数は13.0%。
「2003年はとても暑い年でした。このワインは、フレンチとアメリカンオークを50%ずつ使って熟成させています。ラム肉やロブスター料理に合わせてみてください」(イアンさん)。

Brokenwood Wade Block 2 Vineyard Shiraz 2003
とても深い色合いで、甘さと凝縮感があります。アルコール度数は14.5%と高め。
「よりリッチで、ダークチョコやチェリーリキュールのニュアンスが感じられます。アルコール度数が高いのに、アメリカンオークを使っているため(19ヶ月)にそれが和らげられ、あまりアルコールを感じないと思います。料理はオーソ・ブッコ(牛スネ肉の煮込み)などがオススメ」(イアンさん)。

Brokenwood Graveyard Vineyard Shiraz 2003
ブロークンウッドのフラグシップワイン。スパイシーで、レッドチェリーのニュアンスがあり、酸も非常に豊かで、優美さも漂います。アルコール度数は13.5%。「このグレーヴヤードのシラーズは、デカンター誌で金賞を受賞するなど、国際的に非常に高い評価をいただいています。嬉しいですね」(イアンさん)。

Brokenwood Jelka Riesling (botrytis affected) 2004
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードから生まれた、甘口のリースリング。深いハチミツ色で、アプリコットのような甘い香りがあります。口当たりはなめらかで、ふっくらとした甘さもたっぷりなのに、酸のボリュームあるので、バランスもグッド。食事の最後にこういうワインを口にすると、ほっとします。アルコール度数は10.5%。
「この年は少し貴腐が付きました。チーズなどをつまみながら飲んでください。デザートのタルトタタン(リンゴの焼き菓子)にも合いますよ」(イアンさん)。



スクリューキャップ

今回テイスティングしたワインは、全てスクリューキャップが採用されていました。このところ、オーストラリアやニュージーランドなどを中心に、スクリューキャップを選択する生産者が多くなってきました。
中には、"流行"だからと、ただ真似ているだけのところもあるかもしれませんが、ブロークンウッドでは、きちんとした理念のもと、高級レンジを含めた全てのワインにスクリューキャップを採用しています。
ブロークンウッドのワインに共通して感じるエレガントできれいなスタイルは、スクリューキャップだからこそ、よりそれが具現されているのかもしれません。

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インタビューを終えて

白ワインのスペシャリストとしてブロークンウッドに着任したはずなのに、いつのまにか、シラーズでも大々的な評判を得てしまったイアンさん。

たしかに、オーストラリアではシラーズの存在を無視することはできません。
ですが、単なる"オーストラリアのシラーズ"ではなく、それぞれの土地の個性を生かし、単体で、また、いくつかの土地を組み合わせたシラーズを生み出している点が、ブロークンウッドの特徴です。

しかも、「これでもか!」という強烈なスパイシーさや力強さを前面に出しているワインとは一線を画し、洗練されたエレガントさが備わっています
だから、いつまで飲んでいても飲み疲れないし、料理とのマリアージュの可能性も広げてくれるのでしょう。

ブロークンウッドのワインは、今までは日本ではほとんどお目にかかれませんでしたが、いよいよ日本に上陸することが決まりました



フラグシップのグレーヴヤードのワインは少々お値段が張りますが、オーストラリアでも指折りの品質を誇るワインを、ぜひ一度、試してみてはいかが?

*ブロークンウッドのホームページ  http://www.brokenwood.com.au/              

(取材協力: ミナト・ワイン・インポート)


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