MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

1,000小節は天国? 地獄?

2012-06-14 00:00:00 | その他の音楽記事

06/14   1,000小節は天国? 地獄?




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 一つの楽章だけで小節数が643もある、そんな弦楽
四重奏曲があります。

 「まさか…」とお考えかもしれませんね。

 しかも、演奏は7分そこそこで終わってしまう。 これ、
本当なんですよ?



 「あ、知ってるよ。 あれじゃないかな?」 曲をご存じで、
さっそく譜面を取り出した方はいますか?

 "正解" の発表は後ほど。 しばらくご一緒にお付き合い
ください。




 200年近く前に、交響曲の怪物が登場しました。

 例の "Beethoven の第九" で、当時の常識では、"交響曲
の形式の破壊" と言ってもいいほど。 ヴィーンの音楽界を
大混乱に陥れました。

 その原因は、もちろん第Ⅳ楽章ですね。 小節数にして940
もあります。



 演奏時間は、あるサイトの数字によれば22~26分。

 最も長いのは、バーンステインの "26分23秒"、次いでフルト
ヴェングラーの "25分10秒"。 オケは共にヴィーン フィルです。

 短い方では、22分を切る演奏もありました。 しかしそれでも
及ばないのが、先ほどの "643小節、7分" というハイ ペース。



 「何を言ってるんだ。 単純に小節数だけ見たって、意味が
無いだろう。 まず問題なのは、曲の拍子だよ?」

 そのとおりですね。 あの "歓喜のテーマ" の部分は 4/4
拍子で、テンポは "2分音符=80" と書かれています。

 もしこのとおりに演奏すれば、"1分間に40小節" という計算
になりますね。 今日聞き慣れたテンポよりは、かなり速く、私
には違和感があります。




 ところがこの前後には、"けたたましい 3/4拍子のプレスト"
が置かれています。

 指定されたテンポは、"66小節を1分間で"! 1秒以内に
3つの拍子が収まってしまうという、驚異的な速さです。

 オーボエやファゴットはお手上げ。 しかし、そんなことには
無頓着なのが Beethoven です。 喧騒の表現に打ってつけ
なのが、この狂乱ペースなのでしょう。



 この終楽章は、ほかにも幾多の部分から成っています。
構造は異様で、分析者の頭痛の種。 単純に小節数だけ
を見ても、確かに意味がありません。




 その点では、この曲の第Ⅱ楽章のほうが、まだ単純です。

 スケルツォとトリオの交代で、拍子は異なりますが、実質的
には、速い音楽のまま。

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 小節数は954もありますが、いくら遅いテンポでも15分以内に
収まります。

 逆に、カラヤン、ベルリン フィルの演奏では、"10分26秒" と
いう数字もあります。 ただし、「繰り返しをしているかどうか」
…を確認しないと、厳密な比較は出来ませんが。



 ちなみにスケルツォ部分は 3/4拍子ですが、指定されたテンポ
だと、"1分間に116小節"! これは "2小節をほぼ1秒で演奏
しろ"…ということになるので、先ほど以上に演奏不可能です。



  参考サイト [ベートーベン交響曲第9番の概要と演奏]




 「曲の長さは天国的だ。」 有名な Schumann の言葉ですね。

 彼はまた、「これは Beethoven 以来の最高の器楽作品だ。」
…と語ったとも言われます。



 これ、"Schubert の 大きなハ長調 交響曲" のこと。 今日
では "第8番" と呼ばれています。 演奏時間は50分、場合
によっては60分もかかる曲。

 長いのは演奏時間だけでなく、息の長さ! 「一つの部分
に明確な終りがあってから、先へ進む」…ような、区切りは
感じにくい曲なのです。 特に、最初の二つの楽章は。

 いや、第Ⅲ楽章トリオの木管、楽器間の "掛け合い" で
進んで行く第Ⅳ楽章も、やはり似たようなもの。 結局、曲
の全部がそうです。

 これが、曲の印象をさらに長くしています。 鑑賞者だけ
でなく、演奏者にとっても。



 「おい、お前、どう思う? メロディーの一つぐらいは、今までに
出て来たかな…?」

 リハーサル中に、楽員同士が交わした会話の内容だそうです。
楽章は第Ⅰ楽章。 単なる伝説でしょうが、笑い話だとしても、
うまく核心を突いていると思います。




 さて、この交響曲のフィナーレ、第Ⅳ楽章は、実に1155小節
もあります。 2/4拍子、Allegro vivace と書かれていますが。

 参考サイトによれば、演奏時間は11~16分。 しかし演奏側
としては、「行けども行けども先が見えない」…というのが実感
です。



    [シューベルト交響曲第8番の概要と演奏]



 そして、この楽章には、繰り返し部分が385小節あります。
…足すと、1,540小節…。




 「そんなに長いのが嫌なら、速いテンポで、さっさと終わら
せればいいじゃないか…!」

 そんな、簡単に言わないでくださいよ…。 細かい音符や、
難しいリズムだらけなんだから、それでは自分の首を絞める
ようなもの。 テンポの主導権は指揮者にありますし。

 二拍子とは言っても、通常は "一つ振り" の快速テンポ。
指揮者はいくらでも速く振れますが、演奏者はその間に
"三連符の8分音符6個"、"16分音符を8個" を、正確に
入れ続けなくてはなりません。 



 かと言って、テンポがゆっくりだと、苦しみは長引くばかり…。

 天国的な長さ、それに、地獄の責め苦が続きます。




 さて、肝心の弦楽四重奏曲の話が、まったく手付かずですね。

 小節数が643あり、7分で終ってしまう、一楽章の曲。

 えーと、それ、何だったかな…? 忘れちゃった……。



 Schubert の "息の長さ" どころか、物事を放置して未完成
のままにしてしまいました。 相変わらずの悪いクセです。




      [Schubert の 交響曲 ハ長調 D944]

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