あまりに印象的だったのでしょう。お客様のなかには「ミスティバレー」という名前を未だに憶えてくださっている方が多いのです。しかし近年、エチオピアは輸出システムの変更などがあり欲しい生産者の豆が買えない状態でした。気がつけばあれから4年。「あれは幻だったかもしれませんね~」そんな事を何度か店頭でお客様に言った記憶があります。
しかし、今年は久々に入荷しました。ミスティバレーとは違う生産者ですが、イルガチェフェから届いたグレード1(G-1)規格のナチュラル(精製)の豆です。
通常、摘み取ったチェリーを天日に干し、乾燥後、脱穀という工程のナチュラ精製は、余程厳格な選別をしない限りグレード4、5(G-4、G-5)となります。このグレードは、エチオピアの輸出等級のことで、生豆300g中の欠点数で分けられます。このG-4、G-5が日本ではモカとしてブレンドとして活躍しています。正直、見た目も、味も欠点豆の支配を免れません。それでも価格の安さと独特の発酵臭が支持されてきたのかもしれません。
一方、水洗式(ウォッシュト)の場合、簡単に云えば水洗いします。その幾つかの過程で欠点を除去していくことが可能となりグレードも2(G-2)。見た目も味わいも格段にクリーンです。
さて、今年はナチュラル、ウォッシュト2つのG-1規格の豆が揃いました。これは、かなり厳格な選別をしない限り、作れません。チェリーの収穫から始まり、さらに選別、生豆になっても最後は手間暇惜しまぬ、人の手による選別です。生産者に感謝ですね。とはいえ、最後はカップの善し悪しです。G-2以上であれば良いと思っています。見た目はきれいだけど味がしないG-1より味の良いG-2のほうが良いということです。
ウンチクはこの辺にしてぜひ2つのエチオピア・イルガチェフェ飲み比べてみてください。
ナチュラルの場合、あのミスティバレーとはコクとか味の厚みに違いがあるかもしれませんが、今回入港したものも、とてもクリーンで明るい、素晴らしい香味です。赤ワイン、完熟フルーツ、スパイス、勝手に私のなかではアンズのボンボンショコラといった解釈です。「やっぱりナチュラルはエチオピアだね」そう思わせてくれる個性です。
残り少なくなったイエメンとの飲み比べもいいですね。