映画のせかい

私が最近見た映画 ※ネタバレあり

世界大戦争 #281

2005-04-03 | さ行の映画
1961年 日本 110分 東宝SF特集


大戦争シリーズの特撮SFバンバン!ってやつを期待してたんだけど・・・。東西の国の対立でついに第三次世界大戦が起き、平和だった一般家庭が・・・、というストーリー。これをSFシリーズに位置づけるべきではなく、社会派作品と捉えるべきだろう。

製作時は戦後16年、その後この映画が作られてから44年、当然戦争に対する感じ方は今よりもシビアであっただろう。主人公は普通のタクシー運転手・ 田村茂吉(フランキー堺)。戦後何一つ曲がったことはせずコツコツと真面目に生きてきて一軒家を建て家族と質素に暮らすことが幸せだった田村は、戦争が起こるとは夢にも思ってはいない。もちろんその思いのほとんどは願望からきているわけだが、そんな田村の思いも、田村の娘と結婚する宝田明の被爆国である日本は戦争を反対すべきだという思いも、すべて吹っ飛んでしまうことになる。

中盤で一旦沈静化した世界情勢が同盟国と連邦国という二分する国々によって戦争が再開される。道は逃げ惑う人々で溢れ、パニックとなる。最後まで希望を失わず・・というラジオから流れるアナウンサーの声も虚しく、ミサイル攻撃が始まってしまう。田村家はどこにも逃げずに家族でご馳走を食べながら最後の日を過ごす。母子家庭の母親が保育園に娘を迎えに行く途中で爆発に逢い死んでしまう。また母を待っていた保育園には同じように親がお迎えに来れない子どもが何人もいる。

世界各国の建築物の破壊(ウェハースで作ったらしい凱旋門も見事にぶっ飛ぶ)やマグマに流れていってしまうシーンときのこ状の雲、それでも打ち上げられるミサイル。ショッキングだった。そして焼け野原となった東京へ帰ろうとする船に流れるお正月の歌。もうお正月を一緒に迎える人たちはいない。そして土砂に埋もれてしまった日本の某建築物で映画は終わる・・・。

印象的だったのは田村家の最期だ。我先にと東京を脱出しようと急ぐ人々を横目に、いつも通りの食卓に、一番のご馳走を並べ家族で過ごそうとする。もしも明日死ぬとわかっていたら、あなたは最期の1日をどう過ごすだろうか?どうせ死ぬんだからと欲望の限りを尽くして犯罪に走ったり、なんて昔はよく考えていたものだが、最後の日もいつもと変わらず家族と過ごす、こっちの方が幸せなんだろうな。

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