読書ダイアリー☆時々、東京散歩

読書感想と東京のお出掛けを徒然なるままに。

蒼氓(そうぼう)

2017-06-26 08:00:00 | 読書
蒼氓 石川達三



芥川賞作品を読み漁ってきた私が、やっとであった第一回芥川賞受賞作品だったのです。

この本は、ブラジル移民のお話です。尊敬する上司が、中南米で働く人のバイブルのようなものだと言って教えてくれました。

移民とは、自らその道を望んだのか。それとも、本国が望んだのか。はたまた、受け入れ国から望まれたのか・・・・

私は、なぜそのような事業が始まったのか全く知りませんでした。

戦後の生活に行き詰った国民、少しでもその国民に新天地で豊かな生活を築いてほしい。
異国民を受け入れて、閉ざされて大地で新しい作物を作ること、または国産のコーヒー豆農園の力となること。
三者の思いが叶う事業であったはずが、現実は本当に厳しいものだったということ。
その厳しい厳しい現実の上に、努力と忍耐によって、現代の日系2世3世の明るい存在があり得るのだろうと。

まず、80年前の出発は私の出身地である神戸だったことに驚きました。
ずっと横浜だと思っていたのです。
本書の書き出しに出てくる神戸は、まだまだ何もない、景色も違ったのでしょうが地形が同じだということで、私には想像しやすい情景でした。

読み進めても読み進めても、辛く苦しい情景ばかりなのですが、ずっと現状を嘆いてばかりのおばあちゃんが最後の最後に、ブラジルで迎える最初の朝に腹をくくって「朝ごはんをこしらえよう」というところで、私は涙が止まらなくなりました。
どんな状況にも、腹をくくるということが何よりも強いものなのです。
そんな人間の強さをしみじみと感じる作品でした。
その強さが、命をつないできたのだと思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。