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文字起し  クリス・バズビー博士

2011年08月04日 | 情報

きのうの、クリストファー・バズビー博士のインタビューを文字起ししました。

ゲスト:クリス・バズビー博士(ECRR(欧州放射性リスク委員会) C
インタビュアー:松元千枝さん(ジャーナリスト) M

ナレーション***

欧州放射線リスク委員会(EERP)のクリストファー・バズビー博士は、長年、内部被ばくや、低線量被ばくの研究を重ねてきました。今回は、福島の子どもたち14人が放射能の低い地域での教育を求めて起したいわゆる「福島集団疎開裁判」を支援するために来日。福島県内を含め、4ヶ所で講演を行なうと共に、放射性物質の調査を行ないました。

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M

今回の来日の背景には、子どもたちの健康と安全がないがしろにされていて、福島の子どもたちの疎開を求める声があります。しかし、日本政府は、被ばくレベルを引き上げ。外で遊んでも安全だと言ってます。避難について全く検討していませんが、福島の現状をどうお考えですか?

 

C

日本政府は、犯罪的に誤っていると思います。子どもたちですら。汚染の高い地域から避難させていないのですから。

政府は個人が集まった組織です。そして、組織の個々人が決定をします。誤った決定なのに、それに従って行動するようなことが過去には戦争犯罪で同じようなことがありました。

第二次世界大戦では、ヒトラーが政府として多くのユダヤ人を強制収容所のガス室に送りました。政府として行なったことですが、最終的には個人個人に責任があります。これらは戦争犯罪です。今は平時ですが、戦争犯罪と同じと考えられます。これらの人々は、個人として責任があり名前も指摘できるわけです。彼らは最終的に何らかの裁判にかけられ、刑務所に入ることになると思います。

 

M

日本政府は、ICRPモデルを採用していますが、ICRPの勧告に対しても違反している部分があります。博士は、ICRPモデルを批判していますが、日本政府に対してお考えですか?

 

C

日本政府がICRPの基準にこだわるのは、ICRPが緊急時には20ミリシーベルトの被ばくを許容しているからだとおもわれます。今は、明らかに緊急時です。通常の許容上限は1ミリシーベルトです。ですが、アメリカやヨーロッパでは、一つの放射線源からの被ばくは、0.1ミリシーベルトに抑えられるよう解釈されています。しかし、日本政府は、国民に1ミルイシーベルトより高いレベルの被ばくを許容しているのです。

わたしの考えですが、エアフィルターの調査から、とても多くの人が20ミリシーベルト以上の内部被曝をしていると思います。日本政府は、意思決定において、完全に機能不全に陥っています。ECRRモデルの情報や、私たちが行なった計測結果があってもなお、日本政府が行動を改めないならば、最終的には裁かれることになると思います。

 

M

ICRPとECRRの基準に違いがあるのはなぜですか?

C

まず最初に知ってほしいのは、ICRPの基準が役に立たないということです。内部被曝によるガン発症数について、誤った予測を出すでしょう。

ICRPのモデルは1952年に作られました。DNAが発見されたのは、翌1953年です。ICRPは原子爆弾による健康への影響を調べるために設立されました。第二次世界大戦後、大量の核兵器が作られ、プルトニウムやウランなど、自然界にはないものを世界中にまきちらしました。このため、ICRPは、すぐ対策を考えなければなりませんでした。

そこで、彼らは物理学に基づいたアプローチをとりました。物理学者は、数学的方程式を使って、シンプルな形にまとめるのが得意です。しかし、人間について、方程式で解くのは複雑すぎます。そこで、彼らは人間を水の袋と仮定し、被曝は、水の袋に伝わったエネルギーの総量によると主張したのです。

これは、とても単純な方法です。人の形をした水袋に温度計を入れ、放射線をあて、温度が上がったら、それが吸収された放射線量というわけです。

 

M

ICRPは原子力エネルギーを推進していると言われていますが、、

 

C

かれらは、何かを推進しているなんて言いません。独立した組織で、科学者たちが放射線のリスクを研究していると言います。決して原子力を推進しているとは言いません。ただ、結果的にそうなっています。

このようなことは、水面下でいつも起こります。私たちの多くは、ICRPはもともと核開発を推進するために設立されたと思っています。推進しないまでも、人々が核開発を阻止しないように設立されたと思います。

人々が「牛乳にストロンチウムが入ってたから、ジミーが白血病になっちゃったわ」と言うと、「いえ、核兵器のせいじゃないですよ。放射線量が少なすぎて影響しませんから」そういうために、ICRPは設立されたのだと思っています。

そして、医者たちが騒ぎ出したとき、彼らが何をしたかというと、医者たちを牽制するため、1959年にWHOにIAEAと協定を結ばせたのです。それは、IAEAが、放射線と健康に対して、責任を持つという協定でした。「IAEA=国際原子力機関」が「健康」について責任を持ち、「WHO=国際健康機関」が、放射線のリスクについて、考えてはいけないことになったのです。彼らは、蚊だのエイズだけを扱うことになりました。そこは、はっきり区別されています。これが、ICRPが放射線リスクに対する理解をコントロールしている証拠です。

M

それが、ICRPが内部被曝を考慮していない理由でしょうか?

C

そうです。でも、彼らは絶対それを認めないでしょう。

M

博士は世界中で今まで40回以上、裁判で証言されてきたとのことですが、そのことについてお聞かせください。

C

ECRRモデルを使い、今までたくさんの裁判をしてきました。人々の内部被曝の被害を専門家として証言してきました。米国では、放射性物質を扱う仕事をした人々や、原子力発電所のそばに住む人々や、ロサンゼルスの各施設のそばに住む人々などです。英国では、核実験の退役軍人たちの裁判で専門家として法廷で証言してきました。これらの人々に共通しているのは、ガンや白血病を発症し苦しんでいることです。これらの原因は、今日本で話題になっている放射性物質による内部被曝です。

そして、どの裁判でも勝ってきました。ECRRとICRPで、ボクシングの試合やコンテストをしたようなものです。法廷では、陪審員も、偏見のない裁判官も、3人の裁判官も、みんなECRRの解釈を好み、ICRPを好むひとはいませんでした。これら全ての裁判において、ICRPのモデルを正しいと証言する専門家を連れてくることが一回もできませんでした。ICRPの挙げる証拠は間違いばかりなので、証言するのは難しいのです。裁判では証拠が必要です。「ほら、こちらが皆が信じているICRPで、彼がICRPの委員長で重要人物なんですよ」などということに意味はないのです。

M

郡山での裁判に呼ばれたとしたら、何を証言しますか?

C

専門家の証人として、証言をしたり報告書を書くのは喜んでしますが、来日はせず、ビデオで証言します。なぜなら、放射線量が高すぎて、私自身怖いからです。100キロ圏内には行きたくありませんし、100キロ圏外でも心配です。私は、会津若松に行きましたが、土壌が非常に汚染されていました。持参した機器で計測した値は想像以上で衝撃でした。

東京のホテルで街を見ていると、ビジネスマンが傘をさして通ったり、女性も男性も皆、全くいつもと変わらないのです。会津若松でも街もいつもと変わらないし、原発から5キロのところにでも景色はなにも変わらないでしょう。でも、そこにある放射性物質はひとを殺すでしょう。放射性物質は見えないのです。ガイガーカウンターがあれば、計測することができますが、ガイガーカウンターに勘違いさせられる可能性もあります。実際には、マイクロシーベルトという放射線率には関係なく、放射線を出す物質が空気中に舞っていて、体に入ることが問題なのです。それを知っていると近くには行きたくなくなります。チェルノブイリに行ったために多くの同僚が死にました。

::::::::ナレーション

バズビー博士は現在、福島圏内や関東を走行する車のエアーフィルターに付着したチリを採取し、放射性核種の分析を進めています。

++

M

車のエアーフィルターに付着した放射性物質を分析した結果を教えてください。

C

わたしたちは、5台の車のエアーフィルターを調べました。一つは千葉県内、四つは福島原発から100キロほどの場所のもので、そのうちひとつは、原発から30キロ圏内を走行したものでした。福島のものは全て千葉県のものより高い放射線量が計測されました。とはいえ、千葉のものも、かり汚染されていました。全て、原発から出たガンマー線核種で汚染されていましたし、ウランが含まれている兆候もありました。ただ、それは見せるにはちょっと難しいのですが、また、そのうち一つからはアルファー線の核種も検出されました。少なくとも、アルファー線を出す核種が一つは含まれていることになります。直径0,5ミリほどのものです。今、より精密な機械を使ってプルトニウムがあるかを分析しています。あと2週間ほどかかります。

この結果が何を意味しているかというと、空気中のセシウム137の濃度は、核実験のピークだった1963年の1000倍でした。これはかなり深刻です。なぜなら、1963年の核実験で乳児死亡率が上がり、20年後には世界中でガンが増えたことをわたしたちは知っているからです。でも、そのときより、1000倍も高いのです。千葉のものは300倍でした。そのことから、さらに遠い東京南部もかなり汚染されていると推測しています。

放射性物質の汚染は均一に広がっているわけではありません。既にごぞんじとは思いますが、ある場所ではかなり高いけど、ある場所ではそれほどでもない。それはチェルノブイリと全く同じです。チェルノブイリの汚染地図は葉の形のようです。川の流域に沿うことが多いです。そういうことをわたしたちは発見しました。

やるべきことは多々ありますが、一つ目としては、放射線量の高い地域に住む人は避難する必要があると思います。特に子どもは避難しなければなりません。なぜなら、子どもは最大で10倍、放射線への感受性が高いからです。今、突然亡くなることはありませんが、将来そういうことが起こるのです。すでに、そこに居る人々の体は法的な意味で傷つけられています。しかし、今避難すれば、今以上に悪くならないのです。それが第一にやることです。

第二に、政府はすぐに航空機を使い、汚染地図を作らなければなりません。これは昔からある技術なので問題はないはずです。なぜなら、人々は情報を得る必要があるからです。情報はただあるだけではなく、誰もが知りたい情報を、インターネットで見たり、印刷できたりする必要があります。どこに行ったらいいか、どこに行ったらいけないか、どこに放射性物質があるのか、ないのか、判断できるからです。

そして、わたしの意見ですが、チェルノブイリの避難区域と同じレベルの汚染がある地域は立ち入り禁止にすべきです。30キロという範囲ではありません。物質によっては120キロも飛んでいます。もしこれが毒ガスで明日にでも死ぬとなったら、みんな逃げるでしょう。ただ、明日にでも死ぬものではなく、何年かたってから死ぬというだけのことです。

三つ目にすべきことは、比較的汚染の低い地域にとどまらなければならないひとたちに補償をすることです。丸太で頭を叩かれるのと同じで、致死にいたる物質で体を汚染されるのですから、法治国家において、それは違法です。汚染した原子力業界に補償を求めることです。また、日本だけでなく、世界中の原子力業界に補償を求めてもいいでしょう。これは、国際的な問題ですから。

次に、とにかく、お金をかけて、原子炉を囲む必要があります。原子炉の下を掘って、コンクリートを流し込み、上部を囲むには、一兆ドルもかかりますが、やらなければなりません。でなければ、放射性物質はずっと垂れ流され、だんだんと北日本は放射能で使い物にならない土地となっていくでしょう。それだけでなく、世界中にも広がります。英国、ハワイ、グアム、米国の西部でプルトニウムが検出されましたし、ですから、これは、世界的な問題であり、世界的な解決が必要です。「日本は不運だったわね」ではなく、すぐになんとかしないといけません。なぜなら、非常に大量の放射性物質が刻々と垂れ流されているからです。

ほかにやるべきことは、空気中の放射性物質のモニタリングです。現在、日本政府は、全ての核種の放射線濃度を公開していません。これは深刻なことです。政府はただセシウムだけを計測しています。ストロンチウム90、トリチウム、プルトニウム、ウラン、、、特にウランは、遺伝子に深刻な影響を与える核種です。ファルージャでの調査では、髪の毛からウランが検出された両親の子どもに非常に高い割合で先天性の奇形がみつかり、ガンも非常に多いことがわかっています。ウランで被曝した影響です。まさに悪夢です。

M

今回の来日で行なったいくつかの講演の中で、福島原発の事故は世界の原子力産業を大きく変えるきっかけになるとおっしゃっていました。なぜそのようにお考えですか?

C

世界は原子力の脅威を知りながら、すっかり無関心になっていました。福島原発の事故は青天の霹靂です。想像を絶する状況が今も続いています。この事故がきっかけとなり、人々は科学者に対し、疑問を持ち始めるでしょう。専門家である科学者たちの言う「真実」を疑うようになるのです。私からすると、とても科学者とは思えない、とんでもない専門家たちです。現代の科学者は、企業の手先のようなものです。彼らがわたしたちに伝えるのは、市場主義を追求する企業や政府がお金を儲けるための情報です。

原子力は非常に象徴的です。人間にとって重要なことを問題提起しています。私たちは混沌とした状況にいますが、福島原発事故がみなさんの視点を変えるきっかけとなるよう望んでいます。科学者に対する見方を問い直してほしいのです。それは新しいことではありません。科学者からの情報を素直に受け入れていたのも、ここにきて限界に達し始め、爆発寸前です。この大惨事によって人々の立ち向かう姿勢が強まるよう願っています。原子力だけに限ったことではありません。原子力は私たちの抱えている問題を浮き彫りにしましたが、人類が抱えている問題はそれだけではありません。携帯電話、遺伝子組み換え食品の安全性や地球温暖化など、あらゆる面で政府は科学者に頼っています。

私が伝えたいのは、科学者はウソをつくということです。理由がどうであれ、真実を伝えない科学者は存在します。科学的な知識を持つことが必要です。不可能ではないのですから。

 

M

ひとりひとりが、科学者からの情報を注意深く選別することが必要なのですね。

C

私たちは沈み行くタイタニック号に乗っていて、舵をとる船長の手元にはお金のために操作された誤った情報しかない、そんな状況です。

 

 

 

 


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