3月20日(木)、この日も快晴。 ただ、前日たくさん動き回ったので、この日は朝からのんびり。 遅めの朝ごはんを済ませて、うちを出る。 近くのバス停からトロリーバスに乗る。 最初に行ったのは、テオドル・ティロン修道院。
以前このブログで写真を紹介したことはあったが、そのときは名前がわからず。 初めてキシナウに来たとき、この青空のような色の修道院が一番目を惹いた。 この日もうっすらと雲がかかった空に負けないぐらいの色鮮やかさでそこに立っていた。
外観とは異なり、中では静かに時が流れる。 えみちゃんの話では、スペインの教会の中とはかなり様相が異なるらしい。 私は仏教徒でもなければ、キリスト教徒でもないが、教会の静かな雰囲気がとても好きだ。 外とは空気の流れが違う感じがする。 ヨーロッパを旅行しているときは、教会を見つけると、何となく入りたくなる。
この後、博物館へ… 実は1年半ここに住んでいるのだが、博物館へは一度も行ったことがない… 学生にお薦めの博物館を聞いて、地図上で場所も確認しておいたのだが、どうやら学生も少し勘違いしていたらしく、途中で何人かの人に聞きながら、歩く… 歩く… そして、歩く。 なんと財団のある大学を越えて、さらに歩く! それだったら、バスで行ったのに…とは思ったが、気持ちのいい晴天の下歩くのも悪くなかった。 そして、やっとのことでたどり着いた自然民族博物館。
チケットを切ってくれるおばあちゃんに声をかけられ、ルーマニア語で応対し、すごく喜ばれる。
「どこから来たの?」
「日本です。」
「ああ、日本!」
「はい、ここで日本語教師をしています。」
「ああ、そうなの! どのくらいここにいるの?」
「1年半ぐらいです。」
「へえ、そうなの。 このかわいい女の子は? ここで見つけたの?」
「彼女はスペインで学生をやっています。」
と、こんな感じで楽しい会話のやりとり。 最後の質問にはかなり笑ってしまったが… ちなみに、日本人の女の子の友達が来ると聞いて、財団の人たちもみんな”彼女”だと思っていた。(笑) というのも、ルーマニア語で"prieten"というのが「友達」という意味の単語なのだが、女性の場合は"prietena"というように語尾に"a"をつける。 これはまさに「彼女」という意味。 英語なら、"girlfriend"と言わず、"friend"と言えば済むのだが… 学生に聞いてみたら、やはり「女の子の友達」と「彼女」を区別できる単語はないとのこと… "prietena doar prietena"(女の子の”ただの”友達)と言えば大丈夫だと聞き、それからはこれを使っていた。 日本語を教えていても、3人称の女性「彼女」とガールフレンドを意味する言葉「彼女」が同じでおもしろいと言われるのだが、3人称の「彼女」は日本語ではあまり使わないので、そこまで混乱を招くことはない。 他のラテン系の言語でも同じ現象が起きているのか、少し気になるところだ。
学生が薦めてくれただけあって、なかなかの博物館だった。 モルドバに現在生息する動植物の紹介から古代の動植物の紹介まで、生息する場所、時代で分けられ展示してあった。 順路がちょっとわかりにくく、本当にここから地下に下りて行っても大丈夫なのか?と思うところもあったが… 平日ということもあって、中は閑散としており、自分たちが行くところを博物館の人が先回りし、電気をつけ、そこを見終わると、電気を消していく。 化石や昔の動物の展示が終わると、次は民族博物館のほうに進む。 ワイン造りに使っていた昔の道具や民族衣装などいろいろなものが展示されており、これもまたおもしろかった。 マルチショール(3月に胸元につける春を祝う飾り:この後に学生たちと撮った写真の私の胸元についているのもマルチショール)の期間展示もあり見たかったのだが、授業の時間も迫っていたので、えみちゃんをおいて一人財団に戻る。
授業後はえみちゃん、学生たちとともにキシナウで最もよく行く場所である「イエローカフェ」へ。 今年度は木曜の授業後はほぼ毎週ここへ来ているような… 今までの最高記録は1週間に4回!(笑) モルドバへ来た当初はここで注文するのに相当苦労していたが、今となっては何の苦労もない。 ときどき、お店の人にも驚かれているぐらい。
火曜日に突然教室にいたときは、みんなどことなくおどおどしている感じだったが、さすがに今回はみんないつもどおりの感じだった。 「イエローカフェ」はこの学生たちにとっては「日本語サロン」のような役割を果たしている。 習った単語や表現を使って、できるだけ日本語で話し、教科書には出てこないような表現で言いたいことがあれば聞く。 1週間に90分の授業が2回、さらに年間の授業時間も100時間程度、財団以外で日本語を使う機会はほぼゼロというこの場所では、ここの果たす役割は大きい。 実際、ここにいつも一緒に来る学生たちは本当に話すのが上手になったと思う。 ただ、日本語教師であるがゆえに、語彙コントロール、文型のコントロール、スピードのコントロールを無意識でしてしまっているので、日本語教師ではない日本人と話すことは彼らにとって本当にいい練習になると思う。 えみちゃんにも自分たちの知っている日本語を使っていろいろと質問をしていた。
日本人女性を横にうれしそうなローマさん。
最後にみんなで写真を撮ってもらう。 えみちゃんの前にある残りのビールを引き取らされたのだが、1ヶ月たった今でもうちの台所に放置されている。