💥■【千手観音像の功徳】文部科学省･学会の虚偽の壁？ ⇒ 【衆徳山総持寺】の【国指定重要文化財木造千手観音座像】は鎌倉時代の作だ ! !

※【衆徳山総持寺国指定重要文化財木造千手観音座像】永田龍祥師撮影












🔴【衆徳山総持寺】の【国指定重要文化財木造千手観音座像】は昭和12年に「国宝」に指定され、その国が発行した「国宝該説」では、(「南朝の後醍醐天皇」の庄園で在った)富山県赤丸村の「総持寺」に大阪の河内金剛寺から伝えられたとされた。その時には、この仏像の胎内に南朝の「後村上天皇」の護寺僧の河内金剛寺の【禅恵】の署名が在った事から、【文部省】･【学会】は、≪この仏像は南北朝時代に造られ、南北朝時代の正平八年に赤丸村の総持寺へ伝来した≫と言う事が【定説】とされて来た。
しかし、その時には、①≪「赤丸村」が「後白河上皇」から南朝の「後醍醐天皇」】の時まで皇室庄園の【越中吉岡庄】で在った≫という前提も確定せず、②この像の胎内に≪「正平八年御入り」≫と記載されている事から、この仏像は「南北朝時代の正平八年の製作」か、「正平八年に総持寺へ伝来した」とされて、【この仏像は南北朝時代の製作だ】と結論され、その【定説】が「文部科学省」や「富山県」、「歴史学会」、「仏像史学会」等でゆるぎない【定説】となり、この胎内にビッシリ書き込まれた【胎内名】の具体的な内容も調査されていない。③又、この仏像が昭和12年に「国宝」に指定された時には、専門家の「仏像史」、「美術史」、「歴史学者」等に拠る個別の胎内名調査もされなかったと言われる。
④昭和初期に高岡市を選挙区として、富山県議は会議員として高岡市内の史跡調査をしていた「飛見丈繁」は、「国宝該説」に【(西砺波郡)赤丸村に在った総持寺】と記載された部分を、自らの選挙区の【高岡市石堤村に在った】と改竄して、数々の著作や報道で、「虚偽事項」を流布した。
▼「高岡市史」を独断で編纂した個人には、これらの偽文書が提供されて、「高岡市史」には「この創作された歴史がその真偽の確認もせずに」採用された。これらの偽文章では、御丁寧にも押印すら無い署名等も偽造されており、これらの文章は「指の無い人達が書いたものか?」と「ある贋作物語」は指摘している。
(※｢ある贋作物語｣、「総持寺千手観音」高岡市中央図書館)
この為に、現在も、この【国指定重要文化財木造千手観音座像】の真実の歴史は調査もされず、相変わらず、【文部科学省の官僚、学者】や【高岡市教育委員会】は、この指定の時に動いた郷土史学者達や、教育委員会の一部の「前田教」とも言える「加賀藩絶対」の狂信者達の伝承を、再調査を拒否して、「偽の歴史」を伝え続けている。しかも、「高岡市」が罪深いのは、「この偽の高岡市史」を根拠にして、【世界遺産】の指定を受け、【歴史創造都市】を高岡市のスローガンに掲げている事だ。「高岡市史」には、この他にも数々の「偽造」や「誤解」が在り、どこの「郷土史」にもある「高岡市」の「資料編」すら一切無いのだから、「高岡市史」とは名ばかりの「私小説」と言えるだろう。この詐欺的な市民全員での観光振興を止めて、早急に、この「後鳥羽上皇」の祈願仏の千手観音像を再調査して、正しい「日本史」を伝える事が必要だ。

🔽【その背景と歴史】
加賀藩時代に、加賀藩の「前田利長」を祭った「吉田神道高岡関野神社」とその手先で在った「石堤浅井神社」の神官「清水神官」、「石堤村の有力者達」は、数々の手書きの資料、絵図等を捏造して、【「赤丸浅井神社の末社の石堤浅井神社の方が正式の延喜式内社、郷社」である】と主張した為に加賀藩寺社奉行の裁定を受ける事態になり、「赤丸浅井神社の別当で皇室ゆかりの門跡寺院聖護院派川人山鞍馬寺」との争いになった。こんな理不尽な横車が通る訳は無く、しかも、「前田利家」は「豊臣秀吉が創建した京都の方広寺建設に際して人足一万人を派遣した」とされる「豊臣恩顧の大名」で在り、、この京都の「方広寺」は「京都聖護院」の「隠居寺」で在ったと言う。しかも、「聖護院」は天皇が発する「勅書」を伝える「勅使」でも在り、朝廷行事では「筆頭に座する格式」で、「豊臣秀吉」、「豊臣秀頼」は、二度に亘り、「京都の方広寺」に巨大な黄金仏像を製作した。「加賀藩前田利家」は【豊臣恩顧の大名】で在り、「吉田神道」は表向きは加賀藩に仕えていたが、実際は徳川幕府の回し者で在り、徳川幕府に「神社根宜諸法度」を作らせ、自らはその法度に基づいて全国の神社を統括する「神祇官領長上」という紛らわしい役名を唱えて、皇室の「伊勢神道」の「神祇官」に対抗した。「吉田神道」は徳川幕府の手先として「神道」を通じて「天皇」、「朝廷」の権威を牽制した。
(※吉田神道は「鹿島神道」、「春日大社」の流れを汲む「京都吉田神社」を本社として、天皇が祭祀を行った「伊勢神道」に対抗した。)⇒この事件では、「加賀藩」は【門跡寺院聖護院】の勝訴として、「高岡関野神社」、「石堤浅井神社」に敗訴を通告した。(※｢石堤村氏神訴訟一件｣　加賀藩寺社奉行の記録)


▼【廃仏毀釈令の交付】
「明治5年(1872)9月15日 太政官第273号」に因って、皇室庄園「吉岡庄」・「五位庄」に伝わった「修験道川人山鞍馬寺、赤丸浅井神社、石堤浅井神社、舞谷八幡宮の三社権現」は廃止されて、「天台宗」か「真言宗」への改宗を命ぜられた。


明治維新に際して加賀藩の力が弱くなると、「吉田神道高岡関野神社」の関神官は、直接、薩長の新政府に食い込み、神道を新政府の中心に据える為に「両部神道廃止令」を新政府から出させて、越中西部では「関野神社」が主導して、県内の由緒ある真言宗、天台宗、三井寺系聖護院、醍醐寺系等の両部神道を廃止させ、改めて天台宗、真言宗に統一帰属させた。しかし、この時に、元々、天皇家の「皇室八神」の一柱の「高皇産霊神」を祭る「五位庄53村総社延喜式内社赤丸浅井神社」の別当の西宝院は、この改廃に際して、「神道」に改宗して「川人他治馬」と名乗り、武士としての名字帯刀を許されて加賀藩の士分になった。
この時に書かれた「赤丸浅井神社」の絵図が加賀藩の「森田柿園文庫」に遺されている。










■「後醍醐天皇庄園　越中吉岡庄」












🔽「聖護院派川人山鞍馬寺」の後継の「赤丸浅井神社」には「聖護院奉納札」が遺されている。






「延喜式内社赤丸浅井神社」の掲額は「加賀藩第十三代前田斎泰」の揮毫に依る。


■「後醍醐天皇」は、空海所縁の仏舎利を施入したと推定される「千手観音像」を「後醍醐天皇」の庄園「越中吉岡庄」赤丸村へ動かされた。（総持寺千手観音像の胎内記名→「奉納仏舎利」と二ヵ所に記載される。）



■【高野山真言宗　衆徳山総持寺】(富山県高岡市関町)
高岡市福岡町赤丸で創建され(※南北朝時代迄は「後醍醐天皇」の庄園で在った赤丸村を含む「越中吉岡庄」は足利義満が南北朝を統一すると「五位庄」に改名された。)、「五位庄」が室町幕府御粮所となり、「足利義満」がこの庄園を「臨済宗相国寺」へ寄進した為、小矢部川河口の六渡寺村に移り、後に高岡市関町に動いた事が判明している。高岡市に移る前は「高岡山総持寺」と号していたが加賀藩から山号を瑞龍寺の為に取上げられ、後に、「衆徳山総持寺」と号した。
(※｢相国考記｣･｢万山編年精要｣･｢蔭涼軒日録｣、「富山県大辞典」富山新聞社刊」)

🔻大阪の「河内金剛寺」から伝来して「総持寺」に永く伝わる「黄金の千手観音像」は、昭和12年に「国宝」に指定され、毎年、12月15日に御開帳されている。(※｢国宝概説｣･｢畠山文書※羽曳野市｣･｢名古屋大須観音文書｣)











【※この頃に、「嘉暦三年(1328) 後醍醐天皇、妙意滋雲の住持せる越中東松寺を国泰寺と改称せしめ、位を南禅寺に等しからしむ。」と云う。（長野県立図書館信濃資料）
⇒後醍醐天皇はこの頃に高岡市の古刹の「国泰寺」も南禅寺と同格と認定されている。】

■《衆徳山総持寺 国指定重要文化財木造千手観音座像 胎内名》






(※デマを吹聴する「高岡の文化財」高岡市教育員会発行 参照)



(※「文化誌日本 富山県」講談社 、「総持寺千手観音像解体修理報告書」富山県教育委員会 参照)



■赤丸村を中心とした「越中吉岡庄」は「後白河上皇」の「後院領」になると、上皇が創建された「蓮華王院（三十三間堂）」に寄進された。赤丸村には古くから千手観音や熊野信仰が根付いていたのだ。




■富山県内の千手観音座像で国宝、国指定重要文化財に指定されているのは唯一高岡市の総持寺の観音像しか無い。この観音像は南北朝時代に河内国の「女人高野金剛寺」から南朝の牙城・後醍醐天皇の庄園『越中吉岡庄(後の五位庄赤丸村）』に在った総持寺(観音寺)に伝わった(✳「国宝概説」)とされて、昭和12年「国宝」に指定されたが、その後、法律改正で「国指定重要文化財」になった。「河内金剛寺」は南北朝の時に南朝、北朝の天皇の御所にもなった名刹でに、南朝の後村上、長慶天皇が南朝の行在所とされた。この千手観音像は総持寺が真言密教(高野山真言宗)で有り、近年迄「秘仏」とされていた為、東京では円朝落語の「札所の霊験」の舞台となるなど著名な寺院であったものの、富山県高岡市においては拝観する機会もなく、地元でも知る人が少なかった。しかし、近年は毎年11月15日11時から夕方迄の1日だけこの貴重な「秘仏千手観音像」が御開帳(無料)されているので機会があればお参りして見られるのも良いだろう。（※御開帳日程の変更は確認下さい。）
この他にも本堂には「慶派仏師松本明慶作の不動明王像」や年代の古い「薬師如来像」等の諸仏が祀られ、寺院の周辺外部にはズラリと古い石仏が取り囲んで荘厳な雰囲気のお寺で、本堂奥には「大正天皇所縁の品々」が展示されているコーナーも在る。どれも第一級のものばかりで、「高岡市の隠れたお宝」を拝観される良い機会だろう。尚、御開帳に合わせて卒塔婆や護摩木での先祖供養や各種の御祈願も行われている。

■「赤丸の御旗」⇒後醍醐天皇は吉野へ至る途中、堀家住宅（賀名生行宮跡; 奈良県五條市[旧吉野郡西吉野村] ）に留まり、白地の布に『赤丸』、金地に『赤丸』を描いた『赤丸の御旗』を作られた。この旗はその後、後醍醐天皇の皇子が軍を指揮された時に使用されており、「錦の御旗」（※赤布に金の丸印）の代わりに使用されていた様だ。⇒南朝の里『赤丸村』



■【千手観音像の功徳】
千手観音像は顔が27、手は42臂を数え、1手が25有界の衆生を救うとされる。中央の2本を除き40手に25の有界を乗じると千手となり、1手毎に1眼を有しているために千眼と言い、正式には「千手千眼観世音菩薩」と呼ぶ。 密教の「千光眼秘法密教」にこの像について「この観自在菩薩は衆生のため千臂を具足し、又、眼も同様である。今40手の法を説くとする。40手を五つに分けると一に如来部。二には金剛部。三には摩尼部。四には蓮花部。五には事業部で、この一部ごとに八手を配する。五部の中には五法がある。一に息災法で如来部に属し、これには化仏手、羂索手、施無畏手、白払手、榜排手、鉞斧手、戟梢手、楊柳手、これを八法という。二の調伏法は金剛部に属し、跋折羅手、金剛杵手、宝剣手、金輪手、官殿手、宝鉢手、曰摩尼手の八法である。三の増益法は摩尼部に属し如意宝珠手、宝弓手、宝経手、白蓮手、青蓮手、紫蓮手、蒲桃手、の八法である。四は敬愛法で蓮花部に属する。即ち、蓮花合掌手、宝鏡手、玉印手、宝環手、胡瓶手、軍持手、紅蓮手これを八法とする。五は鉤召法で羯摩部に属する。故に鉄鈎手、頂上化仏手、数珠手、宝螺手、宝箭手、宝篋手、五色雲手以上を八法とする。さればその欲するところに随って成弁せざるはない。」と40臂の持物と功徳について説いてある。又、千手観音は一切衆生のため地獄道の苦悩を救済し、諸願成就、産生平穏を司るとされている。 (✳「仏像をたずねて」昭和仏典刊行振興会 参照)

■千手観音は如来の部分、利益を祈る部分、往生を祈る部分等の他に金剛部には「調伏法」が含まれており、京都の「蓮華王院三十三間堂」に「後白河上皇」が1001体の千手観音像を安置されたのは「後白河上皇」の御脳の平癒を祈る為であったとされているが、実は横暴な平家を調伏する意図や「保元の乱」で讃岐に流された「崇徳上皇」の怨念を鎮撫する目的等もあったと見られる。又、その次の「後鳥羽上皇」も「崇徳院」の怨霊に怯えて、度々、崇徳院が祭られる四国の讃岐金比羅宮に勅使を遣わされたと言う。
⇒「総持寺」は元の山号の「高岡山」を、前田家の菩提寺の瑞龍寺に取り上げられた為に、現在は「衆徳山総持寺」（※「崇徳山 ｽﾄｸｻﾝ」か？）となっている。

■「赤丸浅井城」を中心とした「越中吉岡庄」は「保元の乱」の時に藤原氏の長者「藤原頼長」から没収した「後白河上皇」の庄園で「後院領」と呼ばれ、「蓮花王院三十三間堂」の糧所として寄進された後、後醍醐天皇迄皇室庄園として続いた。
(※「後院領」;天皇が退位された後の費用を賄う為の庄園で、これが「御院の庄」から南北朝時代末期には「おいの庄」となり、室町時代になると「五位庄」と変化している。この経過は京都の「東寺百合文書」の多くの古文書から判明している。)

■その庄園に『鎌倉時代作』と思われる千手観音が、その昔は「観音寺」と呼ばれたこの「総持寺」に伝わったのも後白河上皇以来の観音信仰の文化があったからと思われる。この千手観音の胎内には「金剛位理」という「後鳥羽上皇の法名」が書かれており、後鳥羽上皇は「承久の乱」の後に北条氏によって隠岐に流される時にこの法名を受けている事から、隠岐に流された後に「大檀那 藤原浄円」が資金を出して造られたものと見られる。（※「藤原浄円」の息子の「藤原清時」は後に鎌倉幕府「引き付け衆」になっており、後鳥羽上皇の中宮の九条家から出た鎌倉幕府の「九条頼経将軍」の側近になっていた様だ。）
この千手観音像も表向きは先王の成仏を願う為に造られた様にも見られるが、実は横暴な鎌倉幕府に対する「調伏」「怨念」の意図もあったものと見られる。胎内那には「 金剛位理海 本願聖人 、金剛位理卿」と記載されており、この「本願聖人」は早期の帰朝と北条氏の滅亡、承久の乱で亡くなった藤原秀康等の藤原一族等の成仏、後鳥羽上皇の流罪後の厳しい流罪生活の安穏を「本願」とされたものと推定される。千手観音像程「衆生救済」を祈る様に見せかけて実は敵対者に対する「調伏」等の多様な祈願を込めた仏も無いだろう。その為に金剛寺住持の持仏とされ、密かに金剛寺摩尼院に祀られていたものと見られる。
しかし、この考えは現在迄全く受け入れられず、学会の諸先生にも現在迄考えられて来た『南北朝時代製作』を『実は鎌倉時代製作』と指摘する事すらおかしいと先ずは門前払いである。 従来は、歴史家や仏像専門家が全て、この仏像は「南北朝時代の典型的な仏像」としており、国の文化財を所管する文化庁の担当者も「胎内名の追記もなく、胎内に『正平八年御入り』と記載されており、仏像の様子からも南北朝の仏像である」と回答し、高岡市教育委員会文化財課も「疑いを持って調べた結果があるなら特に調べる必要も無い。学会で問題化すれば考える。」と回答して再調査の要請を拒否する回答をしている。 しかし、この仏像が指定された背景は「南朝支援の赤丸村の歴史」と胎内名の「禅恵」が南朝の護持僧で、南朝の行宮であった「河内金剛寺の高僧」であったとして、「この仏像は南北朝時代の製作」と始めからレッテルを貼られてしまった。
（※高岡市はこの「総持寺」が「元々赤丸村に在った」事を否定して、意図的に作成されたニセの図面に基づいて、「高岡市石堤から動いた」と「高岡市史」で主張している為に、「総持寺」でも「加賀藩のお陰で高岡市に動いた」としておきたいらしい。歴史も知らず、何も調べる気もない全くレベルの低い高岡市教育委員会ので見解だ。お陰で、全国の歴史家もこの高岡市の「威光」を受けて、ニセ歴史書の「高岡市史」を補強する意見だけを堂々と展開している。挙げ句の果てには、文化庁迄が「胎内名の追記は見られず、胎内に記載の年に制作された仏像だ」と回答しているが、真剣に胎内名を調べた気配はない。→富山県教育委員会には「胎内名調査」の詳細報告書があるにも関わらず❗❗❗
⇒ ※この写本は富山県立図書館にも保管されている❗❗
県立図書館には、併せて、「赤丸村」の史跡について詳細を研究されていた「三輪国治氏」の膨大な研究史料が「三輪国治文庫」として県立図書館に保管されている❗❗）

■ 南朝の「桃井直常」は、「観応の擾乱」が京都で一端和議が成立して、観応二年七月に越中に帰還したものの再び争いが起こり、「正平八年」には地元の武将だけでは無く、当時力をもっていた芦峅寺の衆徒にも協力を要請して戦っている。正平十年には直常の軍勢は再び京都に入っているが、総持寺の千手観音像が越中吉岡庄赤丸村の総持寺へ「御入り」になったのは、正に桃井直常が越中を支配していた時期（正平八年）と合致する。この時に、京都や河内では再び争いが起こっており、強力な南朝の武将桃井直常が支配する越中に貴重な千手観音像を緊急避難させた背景がここにある。この時に、赤丸浅井城には南朝方の強力な石黒氏が入っており、近くの加茂城には斯波方の二宮円阿が攻めかかろうとしていた時期になる。この様な緊迫した状況下で、この様な緻密な仏像制作が出来る筈もなく、単に河内金剛寺から越中へ緊急避難させたとしか考えられないのだ。「禅惠が70才の高齢だから、越中へ運べる筈がない」という学者は、河内も越中も一触即発の危機の状況だった事が理解できていない。越中には強力な南朝支援の軍勢がいた事を忘れている。軍勢に運ばせれば、雑作も無い事だ。



■この前提で、時間をかけて調査すると、これ等の疑問については次の様な立証ができる。
１）、胎内名の「金剛位理」は、歴代の天皇の法名の中で、承久の乱で隠岐に流された後鳥羽上皇が「金剛位理 良然」、南朝の長慶天皇が「金剛位理 覚理」と二名が該当する。

◆昭和十一年の高岡新聞には、既にこの「千手観音像」が【天皇ゆかりの仏像である】と記載される。しかし、この時の大きな誤りは、その天皇は「南朝三代目長慶天皇」の事と思い込んでおり、この時同時に「千手観音像」の他の胎内名を調査、検討しなかった為に、短絡的に当時、「南朝行在所」で在った「河内金剛寺」の高僧「禅恵」の名前が胎内に記載されるからこの天皇は「長慶天皇」だと思い込んでしまったと見られる。他の胎内名に記載される【藤原浄円　大檀那】は【鎌倉幕府評定衆斎藤長定　入道して藤原浄円】の事で在り、【仏所　幸賀　大仏師】は、鎌倉時代に、平家に焼かれた東大寺や興福寺の仏像を修復する為に慶派仏師が集まっていた京都七条(現在の京都駅前)に在った【七条仏所】所属の「木仏師」で在った事が分かる。
[※これに対して「彩色」を担当した《絵仏師》達が集まっていたのは【南都絵所】と呼ばれた。]
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🔻【藤原浄円】（斎藤長定)等が制定文を作成した【貞永式目】の起草者達の氏名!!
【貞永式目作成年《貞永元年七月十日》】
《起草者》
🔽斉藤兵衛(長定)　　　　沙弥　　　(藤原)浄円　　➡≪高岡市関町｢総持寺｣の「千手観音像」の胎内名≫
佐藤　　　　　　　　　　相模大掾　　藤原業時
太田町野康俊弟之　　　　玄蕃允　　　三善康連　　　　《越中射水氏が養子に入った「三善氏」の子孫》
後藤大夫判官　　　　　　左衛門少尉　藤原朝臣基綱
二階堂信濃民部大夫入道　沙弥　　　　行然
矢野外記大夫　　　　　　散位　　　　三善朝臣倫重
町野民部大夫　　　　　　加賀守　　　三善朝臣康俊　　《越中射水氏が養子に入った「三善氏」の子孫》
二階堂隠岐入道　　　　　沙弥　　　　行西
中条　　　　　　　　　　前出羽守　　藤原朝臣家長
三浦　　　　　　　　　　前駿河守　　平朝臣義村
大外記　　　　　　　　　摂津守　　　中原朝臣師貞せ
北条　　　　　　　　　　武蔵守　　　平朝臣泰時
北条　　　　　　　　　　相模守　　　平朝臣時房
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２）、胎内名には二ヶ所に「本願聖人」として「金剛位理乗又は理海(水の下に毎を書く)」と読めるものと、「金剛位理卿」と記載されるものがある。「金剛位理乗」の場合は真言宗信徒を「金剛乗衆」と呼んだから、又、「金剛位理海」とした場合は仏教辞典に拠れば「海とは多くの川の流れを最終的に受け入れる海=衆生を受け入れる真言宗の僧の事」となっている。後鳥羽上皇は隠岐に流される時に皇子の「道助入道親王」（長仁親王、1196-1249年 - 仁和寺御室、後に高野山僧)の手で出家した真言宗徒である。「金剛位理卿」の「卿」は三位以上の公卿若しくは中国では皇帝を意味したと云う。従って、この「金剛位理」は他の胎内名と併せて考えると「後鳥羽上皇」となる。更に、「金剛位理卿」と並んで記載されるものは「遍昭位襄顕」とも読み取れるが、この「襄」は「上皇」を指し、「顕」は「隠岐院」の後につけられた諡の「顕徳院」の「顕」と考えられる。後鳥羽上皇以外に歴代の天皇で諡に「顕」を用いている天皇はいない。→この後、最終的には「鳥羽院」と諡されている。「徳」は「崇徳」「順徳天皇」「安徳天皇」と不幸な天皇が続いた為、その怨霊を怖れたのだと言われている。

３）、同時に隣に記載されている「大壇那 藤原浄円」は、鎌倉幕府(北条氏)の評定衆の「斎藤長定入道藤原浄円( 1225-1239年 )」の事で有り、「御成敗式目」の草稿を作成した人物で、「吾妻鏡」では後鳥羽上皇が隠岐で崩御された年の（1239年）10月に亡くなっている。この時に、将軍は第四代藤原（九条）頼経であったが、斎藤長定の子の斉藤清時はこの時期にこの頼経将軍に従っている。 『※「斎藤左衛門尉 清時 (？-1266年) ;鎌倉時代の武士。斎藤長定の子。寛元4年幕府から追放され京都に送還される4代将軍九条頼経に従う。弘長3年(1263年)より引付衆。文永3年2月9日（1266年）45才死去。」→「主題書誌データベース」国立国会図書館参照』
【※「吾妻鏡」寛元四年(1246年)七月大十一日丁夘。天。入道大納言家御歸洛。今曉令進發給。晩頭着御酒匂驛云云。供奉人 斎藤左衛門尉 清時】



4）、「宝治合戦」;寛元４年（1246年）6月１３日、名越越後守光時入道蓮智は伊豆国に流された。また、上総権介秀胤も鎌倉を追放されて上総国へと帰国した。6月27日、藤原（九条）頼経入道は鎌倉から京都へ送還されるに及び、佐介の北条越後守時盛邸に入り、門出の儀が執り行われた。7月1日、ようやく時頼は頼経入道の宿所に酒肴を届けさせているが、やはり両者が対面した様子はない。その後も対面はされることなく、7月11日明け方、頼経入道は上洛の途についた。事実上の鎌倉追放である。その供奉には、頼経と親密な関係を持っていた元評定衆でもある後藤基綱、狩野為佐や、親交のあった三浦光村らも選ばれている。 ［1247年］名越光時と親密な関係にあった評定衆の三浦泰村と北条時頼との仲は、北条時頼の外戚に相当する安達景盛の陰謀により険悪なものとなり、ついに「宝治合戦」が勃発した。三浦秀胤（三浦泰村の娘婿）とその弟である三浦時常は、戦死。北条時頼はこの後に出家して最明寺入道と名乗って諸国を貧僧姿で巡回した。

⇒高岡市福岡町西明寺には「西明寺入道廻国伝承」が在り、その塚も在る。その近接の小矢部市「宮島郷」は「藤原頼経の父の藤原道家の庄園で在った」が、後に国庫に寄進されており、西明寺入道伝承との絡みも考えられる。又、西明寺の地は「越中吉岡庄」に含まれ、「承久の乱」以前には「後鳥羽上皇の庄園」で在り、この小矢部市から氷見市にかけては「鎌倉幕府将軍藤原頼経」の祖父「関白九条兼実」が創建した「東福寺」の庄園で在った。
北条氏は「承久の乱」で隠岐島に流罪に成った「後鳥羽上皇」を終生帰国させず、死しても尚、その遺骨は都から遠くに埋葬された。（※「鎌倉遺文」）



【※承久3年（1221年）後鳥羽上皇は7月13日～8月5日に隠岐へ配流された。 】
【※［吾妻鏡］；延應元年(1239)三月小 京都で太陽の変 後鳥羽上皇隠岐島にて崩御⇒同じ年の年末には、「斎藤長定　入道して藤原浄円」も死去している 。】

５）、【摂家将軍藤原(九条)頼経】［1218年(建保6年) ～1256年(康元1年)］；鎌倉幕府第4代将軍(在職1226年～1244年)で第1代摂家将軍。九条道家の子。
◎ 九条頼経の父の九条道家は小矢部市の「宮島保」を庄園として保有しており、越中との繋がりも在った様だ。赤丸村を中心とした「越中吉岡庄」は、元々、「藤原氏長者」の「左大臣藤原頼長」の庄園で在り、「赤丸浅井神社」が「小矢部市宮島の神社」も歴史的に統括していた事から「宮島保」は「吉岡庄」に含まれていた様だ。
(※富山県立公文書館の「赤丸浅井神社由緒」には、国吉郷、赤丸郷、宮島郷二ヶ村が赤丸浅井神社の神域と記載されている。)

（※「吾妻鏡」記載→このページの最終に引用してある。）

▼「源頼経」は源頼朝の遠縁に当たるため将軍に迎えられたが、北条氏独裁下の形式上の将軍で、子の頼嗣に将軍職を譲った後に出家し不遇の内に没した。母は太政大臣西園寺公経の娘綸子。公経の妻全子(頼経の外祖母)は源頼朝の姪。幼名は三寅と云う。1219年(承久1年)3代将軍源実朝が殺されて源氏の正統が絶えた為，頼朝の遠縁にあたる頼経が鎌倉に迎えられた。1225年(嘉禄1年)元服，翌年征夷大将軍に任ぜられ，1230年(寛喜2年)源頼家の娘竹御所を妻とした。頼経が長く鎌倉に止まって御家人と親密になり，執権勢力に対抗すると執権北条経時は，1244年(寛元2年)頼経に迫って将軍職を子の九条頼嗣に譲らせた。

■【鎌倉北条氏時代の主な出来事】 〈承久3年(1221年)〉後鳥羽上皇は7月13日～8月5日に隠岐へ配流 〈1225年〉鎌倉幕府連署設置、〈1225年〉評定衆設置、 〈1226年〉摂家将軍九条頼経就任、〈1228年12月〉九条道家（頼経父）関白就任、 ★《藤原浄円が評定衆を勤める( 1225-1239年 ) 》、〈1232年〉御成敗式目制定、〈1235年〉3/18 前関白藤原道家・摂政教実・藤原道家家司藤原定家等が後鳥羽院と順徳院の環京を鎌倉に提案する。 〈1235年5月〉幕府（北条泰時）が後鳥羽、順徳の帰京拒否を朝廷（関白九条道家）に回答。藤原道家と幕府は反目 〈1239年〉後鳥羽院崩御、藤原浄円死去、 同年5月「顕徳院」と諡号が贈られた。〈1243年8月〉九条道家が東福寺を創建、〈1244年〉九条頼経、将軍を辞し、その子の頼嗣将軍就任、〈1246年（寛元４年）〉４月24日　名越光時が前将軍頼経を擁して執権時頼を除こうとする（吾妻鏡）、７月　幕府は前将軍頼経を京都へ送り帰し，ついで，翌月，九条道家の関東申次を更迭する。（吾妻鏡・葉黄記）、〈1247年〉宝治合戦 、〈1249年〉引付衆設置、〈1252年〉後嵯峨天皇の第1皇子の皇族将軍宗尊親王が建長四年4月1日、鎌倉幕府の第6代将軍に就任。
⇒ 「藤原浄円」が「御成敗式目制定」を担当していた時に、鎌倉将軍は頼朝の血筋と藤原(九条)の血筋を併せ持つ「九条頼経」で有り、その時に「藤原浄円の子」の「藤原(九条)清時」が摂家将軍の近臣として仕えており、更にその後の「皇族将軍宗尊親王」の時には、「幕府引付衆」に就任している。
「後白河上皇」⇒「後鳥羽上皇」⇒「九条兼実・中宮任子」⇒「九条道家」⇒「九条頼経」⇒「藤原浄円・藤原清時」と連なる人脈が有り、後鳥羽院が隠岐に流された時に同行した者は京都から妻妾、医師、北面の武士、さらに僧迄が同行したと伝わる。妻妾は、坊門信清の娘の坊門局と元白拍子の伊賀局（亀菊）の二人で、彼女たちは後鳥羽上皇が亡くなるまでの19年間隠岐中ノ島で共に過ごし、その後京都に戻ったと伝わっている事から、後鳥羽から中宮任子や関係者には何等かの連絡が取られたものと思われる。

■この観音像が制作されたのは関白九条道家、将軍九条頼経、評定衆藤原浄円、頼経近習藤原清時の時代の〈1226年〉摂家将軍九条頼経就任～〈1239年〉後鳥羽院崩御、藤原浄円死去 の間の時期と思われる。
キッカケとしては【〈1235年5月〉幕府が後鳥羽、順徳の帰京拒否を朝廷に回答】の事件を契機に制作が開始され、1239年同年5月に「顕徳院」と諡号が贈られた時に改めて（金剛位理卿、遍昭位襄顕）と（大壇那 藤原浄円）の記載が追記されて、1243年に道家によって東福寺が完成するとその寺に祀られたものと見られる。東福寺が建設されたこの地には延長2年（924年）に藤原忠平によって建てられた藤原氏の氏寺法性寺の巨大な伽藍が在ったが、嘉禎2年（1236年）に摂政九条道家は、この地に高さ5丈（約15メートル）の釈迦像を安置する大寺院を建立することを発願、寺名は奈良の東大寺、興福寺の二大寺から1字ずつ取って「東福寺」とした。この仏殿の建設工事は後鳥羽院が崩御された延応元年（1239年）から建長7年（1255年）迄かかっているが、この発願が後鳥羽院の帰京が拒否された翌年で有り、1251年2月20日に孫の将軍頼嗣が廃されると、その翌日には道家が死去し、4月3日には頼嗣が鎌倉から京へ送られている。法性寺は、JR、京阪東福寺駅近くに小寺院として存続しているが、後鳥羽院の帰京が叶わなくなった年に合わせて、道家が突然、巨大な藤原氏氏寺法性寺の大半を取り壊して東福寺を建て始めたのは、後鳥羽天皇の中宮任子が 父良経の異母妹で有り、良経自身も後鳥羽上皇の中宮九条任子の中宮大夫を兼任しており、祖父の兼実（良経、任子の父）も後鳥羽天皇の摂政を勤めていたという関係で有り、遂には後鳥羽と不和になったとは言え、任子には後鳥羽の娘も生まれていた事から、正に「親族」で在った事に違いは無い。

■【後鳥羽院は隠岐に流される直前に出家して法皇となった。『明月記』によると、文暦2年（1235年）の春頃、摂政九条道家が後鳥羽院と順徳院の還京を提案したが、北条泰時は受け入れなかったと云う。⇒ ※ 1229年 九条道家は香東郡多肥村を家司の藤原定家（名月記著）へ与えている。】

■この千手観音像制作の大壇那となった「藤原浄円」は息子の「藤原清時」が「九条（藤原）摂関家将軍九条頼経」の近習で有り、「藤原浄円」自体が「北条泰時」政権の評定衆と云う立場であった事から、「後鳥羽院」の怨霊騒ぎを沈める為にもこの千手観音像を制作する必要が在ったものと思われる。
承久元年（1219年）「承久の乱」が勃発した後、直ちに幕府は後鳥羽院、順徳天皇を流罪にしたがその後、1225年北条政子死亡、1230年北条時氏死亡、1231年には寛貴の大飢饉、1234年九条頼経将軍の若き妻竹御所死亡、同年後堀河上皇崩御、と不幸が続き、その他の争乱や疫病も起こり不幸な事が続く。民衆はこれが後鳥羽院の怨霊が烏天狗になって祟っている為だと噂をする。1242年には四条天皇、北条泰時が死去し、順徳上皇が佐渡島で死去する。1244年西園寺公経死去。1245年北条朝時死去。1246年北条経時死去。
⇒幕府は後鳥羽院の怨霊を怖れて、当初、顕徳院と諡したが、崇徳、安徳、順徳と「徳」の字は呪われているとして、 1241年「顕徳院」を改めて「後鳥羽院」と諡して、1247年幕府執権北条時頼は鶴岡八幡宮西北に新宮を創始して後鳥羽上皇を祀っている。

◆【承久の乱】は、鎌倉時代の承久3年（1221年）に、後鳥羽上皇が鎌倉幕府執権の「北条義時」に対して討伐の兵を挙げて敗れた兵乱。【承久の変、承久合戦】ともいう。

🔻元々、「吉岡庄(赤丸村)」に在った【総持寺】(富山県高岡市関町)の「国指定重要文化財木造千手観音座像」は【後鳥羽上皇の祈願仏】。
⇒当時「越中吉岡庄」は、京都の【蓮華王院三十三間堂庄園】で在った【越中吉岡庄（赤丸村周辺）】の鎌倉時代の記録!!
(※【沙弥迎蓮(相良頼俊)書状】≫「東大寺文書」）





■「総持寺の千手観音像」の胎内に「藤原浄円　大檀那」と記載される人物は、「鎌倉幕府評定衆　藤原浄円入道　(斎藤長定)」で、その息子の「鎌倉幕府引付衆　斎藤清時」は【鎌倉幕府摂家将軍藤原頼経】の側近で在った。





■「鎌倉幕府将軍藤原頼経」は、「源頼朝」の妹「坊門姫」と「藤原摂関家九条家」の血筋を継ぐ。【後鳥羽上皇】の中宮は「九条家摂関家九条兼実」から嫁いでいる。「総持寺」の千手観音像を造るに当たり、「斎藤清時」の父の「斎藤長定」が「大檀那」(資金提供者)となり、この千手観音像は造られている。
【越中吉岡庄】は、「後白河上皇」以来「後院領」となり、「後鳥羽上皇」が「承久の乱」を起こされた時には【後鳥羽上皇の庄園】で有り、越中でも「赤丸浅井城城主石黒氏」等が上皇軍として京都へ攻め登ったと伝わる。



「延喜式内社赤丸浅井神社由緒」


■この頃の「越中吉岡庄」は、京都の「蓮華王院三十三間堂」の庄園で在った事が、「東大寺庄園美濃茜部庄」の地頭で「越中吉岡庄の地頭」でも在った「相良頼俊((沙弥迎蓮)」が東大寺へ送った文書で判明する。







６）、総持寺千手観音像の胎内に仏師の名前が二名記載されている。一名は「仏所 幸賀 大仏師」で有り、この「仏所」からこの仏師は現在の京都駅近くに工房「七条仏所」を構えた「慶派仏師」と見られる。「幸賀」については、平家が焼き討ちした興福寺、東大寺等を頼朝が勧進して復興修復した時の仏師に「幸賀」が見られる。貞永元年(1239年)修復記録には、興福寺十大弟子十駆八部衆八駆の修復仏師の中に、幸賢、幸賀、幸林、慶村、大仏師重賢、慶千、永賀、幸全、定照、大仏師幸千、栄千、勝慶、圓慶、重命、薄師権守安長、散位釆女」と記載される。この中で見られる「絵所大仏師」は当時、修復が多かった為に「南都絵所」と云う絵仏師の工房が立ち上がっていた。総持寺観音像胎内にあるもう一人の仏師で「仝 頼真 小仏師」と有るのは、東大寺太絵仏師として名前の有る「頼真」と見られる。
(※「筑波大学シソーラスデータベース」)
興福寺の大量の仏像修復を担当したメンバーにも、木仏師、絵仏師、金薄仏師が加わっており、仏像制作に木仏師と装飾、切金を担当する絵仏師が一体になって制作するのは当然の事だ。しかし、従来、興福寺修復仏師は、焼けた仏像の修復をしたのだから、担当していたのは全て「絵仏師」だったと決めつけて、「幸賀は絵仏師である」との主張をする人達がいる。現代の慶派仏師「松本明慶工房」でも目を入れたり、唇を描いたりは勿論、彩色、切金による「金薄押し」も木仏師では無く、絵仏師が担当して協同作業をしている。
(※「日本彫刻史研究」小林剛奈良文化財研究所所長)



７）、更に、この千手観音像の「胎内仏」と伝わる体長15センチ位の「僧形の仏像」がこの総持寺の門徒総代を長く務めた高岡市内の在家の仏壇に祀られている。この小仏はこの檀家が千手観音像周辺を掃除した時に出たもので、当時の住職はこれがどういうものか分かって居なかったのか、この在家の信徒に下げ渡したと云う。この僧形の仏像の台座には1センチ近くの穴が有り、何かを納めて木蓋をしていたものらしい。経過から推定すると、この仏像は「本願聖人」の後鳥羽上皇の出家姿かも知れない。因みに、この仏像は持ち主が専門家に鑑定してもらった所、鎌倉時代の仏像だと鑑定されたと云う。

８）、以上の事を総合すると、この千手観音像の制作は、鎌倉時代で有り、後鳥羽院が隠岐に流された後に九条家の中宮任子かその一族の将軍藤原(九条)頼経が、近習の斎藤清時に相談し、清時が当時、幕府評定衆をしていた父親の藤原浄円に相談して、浄円の出資により制作したものと推定できる。
この千手観音の胎内仏も、この由緒を知っていた当時の住職が「後鳥羽上皇の怨念を怖れて意図的に信徒の池田家に下げ渡したものかも555555知れない」とも思われる。と云うのは、この檀家池田家に伝わる「総持寺由緒」を記載した古文書を当主市右衛門が当時の住職に確かに渡したのだが、相続の時に隠したか無くしたかは分からないが何処かへ消えてしまったと云う。ここで総持寺の歴史が消えたと云う。従って、加賀藩への報告も「由緒は分からない」として届け出たものだろう。
そう推定するには別の事情があるのだ。と云うのは、「富山百科辞典」(※富山新聞社刊)によると、この寺の名前は元々「高岡山コーコーサン総持寺」と言っていたが、前田利常が総持寺の隣地に利長の菩提寺「瑞龍寺」を建てた時にこの「高岡山」が取り上げられて瑞龍寺が「高岡山瑞龍寺」になり、総持寺は新たに「衆徳山総持寺」と名付けられたと云う。この命名のいきさつから、この「衆徳山」は音読みにすると「ストクサン」と読む事ができ、［崇徳山?]から命名されたのではないかと思われる。一方、この「高岡」は詩経の「鳳凰鳴けり高き岡に」から来ていると云う事から、この意味は「法王泣けり高き岡に」とも読み解く事ができる。何故なら、この総持寺の旧地とされる赤丸村の敷地は小矢部川や砺波平野を見渡せる西山の一角の高台で在り、不遇の法王を祀った寺院としてこの「崇徳山」を当てると正にぴったりの条件になるのだ。この時の住職は全てのいきさつを知っていて、この寺の山号を「衆徳山」と名付けたものと見られるのだ。胎内名の「金剛位理」が後鳥羽上皇と知っていたなら、この千手観音像は、父の高倉天皇の時にも怨霊騒ぎで怖れられた崇徳上皇の怨霊を鎮撫する為に造られた仏像だと分かっていた筈だ。後鳥羽上皇自体も怨霊に怯えて四国金比羅山に祀られている崇徳上皇の慰霊に何回か勅使を派遣している。しかも、この時、後白河上皇から伝わり、当時は自分の庄園としていた「越中吉岡庄」は、後白河上皇が崇徳上皇と共に「保元の乱」で殺した「藤原摂関家長者藤原頼長━生誕 保安元年（1120年）5月ー死没 保元元年7月14日『兵範記』（1156年8月1日）」の庄園で有った。しかも、後鳥羽上皇としては、「承久の乱」では上皇側で戦った忠臣の元能登守藤原秀康や越中の石黒氏他の武将達を自分の保身の為に「逆賊として門外に追放して、遂には打ち首になった」事に対する後悔の念があったものと思われる。
後鳥羽上皇は自らが北条義時追討の院宣を出しておきながら、不利と見るや別の院宣を出して味方を逆賊として自分だけが助かろうとした。上皇が仕掛けた「承久の乱」では多くの忠臣が上皇の裏切りで斬殺された。亡くなった家臣は怨みを残して亡霊となり、隠岐島の後鳥羽院の下に押し寄せた事だろう。又、側近として隠岐に随行した愛妾亀菊は自分の愚かさで院を罪人にした事に後悔した事だろう。この「承久の乱」のキッカケは、亀菊から頼まれてその庄園から地頭を追放せよと幕府に命令を下した事から鎌倉幕府が反発した事が原因だった。正にこの亀菊は傾城の美女で有り、後鳥羽院はこの女のおねだりで上皇の立場を追われ、「我こそは新島守よ 隠岐の海の荒き波風心して吹け」と悲痛な歌を歌わせる結果になった。

■藤原浄円の息子の清時は時の鎌倉将軍藤原頼経に仕えていた。この将軍は頼朝の血筋で有り、藤原摂関家の系統の九条家である。云わば九条家は藤原氏の棟梁である。恐らく、後鳥羽院の中宮(九条)任子としても院の後悔、苦しみを思えば打ち捨てて置けなかったのだろう。そこで、 時の幕府中枢にいた藤原浄円にその子の清時を通じて寄進を依頼し、後鳥羽院の僧形の姿を彫った胎内仏を観音像の顔の内部に納め、「本願聖人 金剛位理卿」と記載したこの千手観音像を制作したものと見られる。 金剛寺の南朝の護持僧とされる僧禅恵の胎内名がこの千手観音像の胎内に記載されており、又、この仏の顔の内側の胎内には「奉納仏舎利」と二ヶ所に記載されている。 河内金剛寺には、東寺長者文観と後醍醐天皇の「仏舎利施入状」と後醍醐天皇の「勅書」が残るが、該当する仏は現在、金剛寺には無いと云う。従って、これ等の状況から推定すると、『この仏像は長く南朝の行宮で在った金剛寺の魔尼院(住職の寺坊)に祀られており、この住職の持仏に禅恵の師匠の東寺長者文観が空海所縁の仏舎利３粒を、更に後醍醐天皇が２粒ー併せて五粒を施入し、禅恵に命じて後醍醐天皇の庄園(※藤原頼長、後白河上皇、後鳥羽上皇～後醍醐天皇と続いた庄園)「越中吉岡庄」の「総持寺」に南北朝の戦乱を避けて移させた』ものと推定される。 何故なら、後醍醐天皇も後鳥羽院と同じく隠岐島に配流された経過が有り、後鳥羽院の苦しみや悲しみを身を以て感じていたからに他ならない。如何に隠岐島の生活が権力の頂点に居た者に取って悲惨なものかは推して余りある。 「正平八年」は南朝の行宮「河内金剛寺」に北朝勢力が攻撃を予定していた一触即発の年であった。遠く越中の吉岡庄では南朝の忠臣の石黒氏が地頭をしており、当時は後醍醐天皇の庄園で在った事から､正に避難先としてはぴったりだったのだろう。しかも、この石黒氏は後鳥羽院が起こした「承久の乱」でも上皇の支援をして戦い、多くの被害者を出している。
(記録ではこの頃に石黒氏が赤丸浅井城を再建したとの記載がある。)






■『補助資料』【藤原(九条)頼経】の系譜




【■九条兼実(生没年：1149-1207)父：摂政関白太政大臣 藤原忠通1186-1191 
⇒摂政 1186 藤原氏長者 1189-1190 太政大臣 1191-1196 関白

・妻：藤原兼子（父：従三位 藤原季行？） 1170-1206 
・子；良経 1173-1238 
・子；従三位 宜秋門院 任子（後鳥羽天皇中宮） 女：1192-1268 
・子；東大寺別当法務僧正 良恵 玉目姫（親鸞室）
・子；正東大寺別当 道宝 】
・[九条良平；(生没年：1185-1240 )父：太政大臣関白 九条兼実 1208-1210 
⇒皇后宮権大夫 1238-1239 太政大臣 1239 出家
妻：藤原兼子（父：権中納言 藤原範光）

■九条良経；(生没年：1170-1206) 父：太政大臣関白 九条兼実 1202-1206 
⇒摂政 1205 藤原氏長者
妻：（父：一条能保）1192-1247 
従三位 東一条院 立子（順徳天皇中宮) 1193-1252 
 
■九条道家 ；（生没年：1193-1252）東福寺開基 父：摂政太政大臣 九条良経 ⇒1221 藤原氏長者
1221 摂政  1228-1231 関白   1235-1237 摂政   
・北政所：従一位准三后 西園寺倫子（父：太政大臣 西園寺公経）1209-1233 
藻璧門院 竴子（後堀河天皇中宮） 1218-1256 
・子；頼経 、1222-1284 
・子；一条実経（一条家へ） 1235-1287 
・子；法務大僧正東大寺別当 勝信 1238-1300 
・子；法務大僧正天台座主 慈実

■九条頼経；(生没年：1218-1256) 父：摂政関白 九条道家 1218-1225
⇒三寅 1225 元服 頼経 1226-1244 征夷大将軍 1238 検非違使別当 1238 権大納言
妻：竹御所 鞠子（父：征夷大将軍 源頼家）
妻：大宮局（父：権中納言 藤原親能） 1239-1256
 
■頼嗣 九条頼嗣；（生没年：1239-1256）父：征夷大将軍 九条頼経 1245-1252 
⇒征夷大将軍 妻：檜皮姫公（父：六波羅探題北方 北条時氏）




■【北条氏の一族】 北条時政（源頼朝の舅。初代執権）。  北条宗時（時政の長男）。 北条政子（時政の長女、頼朝の妻）。  北条義時（時政の次男。2代執権）。  北条時房（時政の3男。大仏氏・佐介氏の祖）。  北条政範（時政の4男）。  北条泰時（義時の長男。3代執権）。  北条朝時（義時の次男。名越氏の祖）。  北条重時（義時の3男。極楽寺氏の祖）。  北条政村（義時の4男。7代執権）。  北条実泰（義時の5男。金沢氏祖）。  北条時氏（泰時の長男）。  北条経時（時氏の長男。4代執権）   北条時頼（時氏の次男。5代執権）   北条長時（重時の長男。6代執権。赤橋氏の祖）。

■【総持寺の千手観音像の胎内名】 「金剛位理海」の「海」は仏教用語で「多くの川の末端、流れの全てを受け入れる」と云う意味で「僧職」にある者を指し、「金剛位理卿」の「卿」は「三位以上の公卿」を指す事から、この胎内名は出家された「後鳥羽上皇」を指すと見られる。







■「摂家将軍藤原頼経」の父の「九条道家」の越中庄園「越中宮島保」についての「吾妻鏡」の記載が在る。

■［越中の東福寺庄園の事］→東福寺庄園は門徒の氷見の八代氏が地頭となり管理した。氷見阿尾城の菊池氏も八代氏の同族らしく、東福寺の檀家であった。
（※「戦国・氷見」氷見市）



■【吾妻鏡】延應元年(1239)七月大廿五日壬辰。越中國東條。河口。曾祢。八代等保事。爲請所。以京定米百斛。可備進之旨。地頭等去年十一月献連署状於禪定殿下〔道家〕。仍可停止國使入部并勅院事以下國役之由。同十二月國司加廳宣。就之。去正月任國司廳宣。地頭等寄進状。爲東福寺領。停止并勅院事國役等。爲地頭請所。可令備進年貢百石。兼又當國宮嶋保雖爲當家領。被糺返國領之由。被下禪定殿下政所御下文。是爲寄附彼寺。所被相傳也。仍被申其趣於將軍家之間。可存其旨之由。今日被奉御返事云々。

⇒【解説】（ 越中國の東條保。河口保。曾祢保。八代等保 を地頭が寄進し東福寺領とし、小矢部市の宮嶋保は藤原道家領を国庫に返して、院の事（後院領吉岡庄）は地頭請所とする。……と地頭が連名で摂政の藤原道家に請状を提出した。）

《現在迄、約３年かけて１つづつ疑問を解決してきたが、一番の疑問は「何故鎌倉幕府の重臣の藤原浄円が、幕府に対抗して隠岐に流された後鳥羽上皇の為に大壇那として資金を出してこの千手観音像を造仏したのか」という事だった。色々な図書館や図書を漁り、ネット図書館を調べ廻ったが、その理由に辿り着かなかった。官庁もいつも門前払いで、何を好き好んでいつまで調べるているのかと冷ややかだった。そもそもは、この総持寺の持宮の熊野社の旧地の一部が当家の山林に隣接している事から、長年、総持寺の由緒や観音像の由来に疑問を持っていたからだ。たまたま越中の東大寺庄園「石粟庄図」に「赤丸浅井神社神田一段」の記載がある事から、古代庄園に就いて調べた所、赤丸浅井神社を中心とした「越中吉岡庄」の比定地すら学会では確定していないと云う事が解った。その為に、先ず国立歴史民俗博物館の「庄園データーベースでの確定」を目指して、現地の諸資料の提供を行い、先ず「越中吉岡庄」を確定して頂いた。そうしている内に、この「越中吉岡庄」は長く皇室や藤原摂関家、或いは京都の著名な寺社の庄園で在った事が「吾妻鏡」や「富山県史」「国立国会図書館のデータベース」等の著名な書籍で分かってきた。この「越中吉岡庄」の理解が無ければ、地域の埋もれた歴史を発掘する糸口もなかったと思われる。しかし、歴史とは、一つの事実で根本から覆る事も事実だ。これで終わりではないかも知れないとも感じている。国立歴史民俗博物館の学芸員の方や奈良文化財研究所の方々、暖かく御指導して頂いた帝京大学の杉崎準教授や富山史檀会、砺波散村地域研究所の方々等の様々な方々の御教示に感謝したい。そして、都から遠く離れた越中赤丸村に、後鳥羽上皇の思いが詰まった千手観音像が、長くその由緒も解らずに放置され、後鳥羽院の魂もさぞかし浮かばれなかったであろう。今日は早速この千手観音像にお参りして、後鳥羽院の思いがうっすらと解った事を報告してきた。》