my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

おなじ、ひとつの、とびら

2008-11-02 22:06:46 | 想うこと
気持ちよい日曜日の午後、ずっと前から楽しみにしていた
ヴィルヘルム・ハンマースホイ展に、家族で出かけました。



今日の展覧会で、観たもの、感じたことを書くより前に、
書いておきたいのは、私に、ハンマースホイという画家を
教えてくれた友のこと。

そして、その画家の絵を、自分の目で観る前に、
読んでおきたかったのは、この本です。

北欧の和み
    デンマークの扉をあけて

稲垣早苗さんの、2冊目のエッセイです。



それは、2005年の春のことでした。

ギャラリーが神社の杜に移って、
初めてのアーリーサマー。
バラやハーブが爽やかにに揺れる季節に、
Crafts & Cafe を。

そう始まる、美しいインビテーションカードが、
gallerlyらふとから届きました。

表紙には、デンマークの国旗を、玄関ドアの手前の茂みに
飾っている家の写真。

彼女がデンマークに惹かれ、デンマークにもう何度も足を
運んでいることは、折々の便りで知っていました。
04年にいただいたはがきにも、少しづつデンマークを
紹介する仕事が増えてきて嬉しい、と添えられてあったし。

自分の好きなことを仕事にできる、
今こんなことをしています、と、胸を張って言える人を
自分より、少し「高いところに居る人」と思っていた頃でした。

その5月に、娘を連れて、らふとを訪れてみよう、
久しぶりに、友だちの、笑顔をみてみたいと、思うことができたのは、
私に、なんらかの自信がついていたからではなく、たぶん、
ひとり娘のrと、二人だけで電車に乗って行っても、もう
帰り道におんぶをしたりしなくていい、年齢だということと、
すくすくと9年近く育った娘が、自分の、それまで過ごしてきた
時間の(やはり)拠り所だったからだと、思います。

そしてそれ以上に私の中で、勝っていたのは、好奇心
だったかもしれません。
友を、そこまで、惹きつけたデンマークという国と、
新しい、魅力的な香りがする、ギャラリーらふとを見てみたい、
という好奇心‥何か、心たのしいものを感じとっていたのでしょう。

‥‥‥

今では、すっかり慣れたらふとのお庭。
rと手を繋いで、小屋ギャラリーを目指して歩き‥
友の姿が見えたとき私からこぼれた笑顔は、きっと友のそれと
同じくらい晴れやかだったと思います。
つい、昨日、バイバイと手を振って別れたばかりのような
気持ちで、言葉を交わしたことを覚えています。

彼女を通して知った、「彼女のデンマーク」。
彼女の確かな目で選んだ、ものの作り手と、その作品。
そのどちらの扉も、開き始めたのは、5月の、その初めての
「らふと」でだったなあと、思っています。

もしも、あの初夏の日に、らふとを訪れることを躊躇っていたのなら
そのどちらの扉も、私ひとりの力では、開けることはできなかったはず。


「北欧の和み」を読みながら、そんな3年前の再会に、思いを馳せると
同時に、私にとって特別な場所だったNYマンハッタンの
グリニッジビレッジのことを思い出し、ぱたんとドアを閉めてから
子どもが生まれ、子どもとともに生活し、ドアは閉じられたままと
思ってきたけれど、実はそうでもなかったのでは、と自問してました。

うまくまとまらないけど、NYを好きでいる気持ちも、早苗さんが
大好きなデンマークを知ることも、気持ちをこめた作品に出会う
ことの喜びも、同じひとつのドアを開けておくことには、
なんら変わりはないのでは、と感じています。

大切なのは、扉の前へ行ってみること。 扉に手をかけてみること。

(少しの勇気を持って、あの日らふとを訪れたことで、
blogへの扉も開いたのでした。当時、早苗さんが記していた
blogを教えてもらい、読み始め、そして、1か月半後の6月末に
このmy favorite thingsを開設したのです)



‥‥‥



「北欧の和み」の中で、私がとても好きな箇所‥

ものにも行く末というものがあるのだろう。いつの日か
わたしが使っていたものも、こうして誰かに選ばれることが
あるだろうか。たとえどんなに安価であっても、喜んで選ばれる
ものには、それにふさわしい姿があるはずだ。誰かにとって
不要になっても、誰かが愛しく思って使い継ぐ。


ものを選ぶということは、こういうことだと強く思う。
壊れたら捨てればいいのではなく、壊れたら直して使えるようなもの。
破れたりほつれたら、繕って、また着られるようになるもの。
いつか、それが似合う年齢になったら、私にもそれを貸してねと
娘から言われるようなもの。
いつか娘がお嫁にいくときに、長く使ってもらえるように、
暮らしが楽しくなるように、ぜひ持たせたいもの。









コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 深まる秋(来年への準備) | トップ | とびらをあけて »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とびら (琴子)
2008-11-03 17:07:16
rucaさんが3年前、とびらを開いてくれたことが、
いろんな方向に広がって、つながって・・わたしも早苗さんを
知ることができて、うれしい。
この本は、日本橋で求めたくて、今週のお楽しみです・・・

でも!!あろうことか、明日からお休みということを
すっかり忘れていましたよー(涙)
連休は行けないから、明日!と意気込んでいたのです。
ショック。

ハンマースホイ展、先月の早い時期にわたしも見に行って
きました。
よく見ると不思議で、観ながらとても落ち着く、そんな感じを
受けながらまわってきました。


返信する
琴子さんへ (ruca)
2008-11-03 17:55:24
こんばんは。

書いているうちに、どんどん深みにはまっていって
結局なにを書きたかったのか、わからなくなりそうでした。

要は、あの日、再会したおかげで、今の私があるってことなんですが。
こうして、琴子さんたちと繋がって、友達になれたことも、
ブログがあったからですものねー
よかった、よかった。

ところで。
上野から、人形町に昨日まわって行ったのです。
母からおつかいを頼まれて‥

綾さんの作品、初日に、半分くらいはなくなってしまったと
聞いていたのですが‥本当でした。
朝子さんの持ち手のバッグは、私たちがお邪魔した
夕方には、2点だけで、お客様も次々にいらして‥

でも、綾さん、お店のお休み中にまた作品を作ると
ブログに書いてらしたので、かえって、休みあけの週日のほうが
お店に行くのならよいのでは、とちょっと思いました。

私的には、おつかいもちゃんと果たし、綾さんとも
お話することができたので、めでたしめでたしでした。
返信する
ちょうど、、 (nao)
2008-11-03 19:06:19
 こんばんは。行かれたのですね!そう、稲垣さんの以前のブログを知ったのは、ちょうどカフェを開きたいと願い、進みつつある人たちとの出会いがあったとき。その中の一人の方から「らふと」を教えてもらいました。
 その人たちはみな、カフェを開いて夢を実現したのです。
 私もカフェを開きたいと言っていましたが、怪我などをきっかけにクッキーやさんに。そのお陰で稲垣さんをはじめ、ことり文庫さんやrucaさん、そしてことりに集うみなさんに知り合えて、、、。本当にうれしいです。
 人生はどこに宝物が転がっているか、わからないですね。おかげで私は大切な宝物をたくさんたくさん見つけたのですから。。。
 私が作っているものは口に入れたら、なくなってしまうけど、、、心に残る、そんなものを作っていけたらなぁって思いました。
 あ、なんだか支離滅裂な文章になりました~(笑)
返信する
naoさんへ (ruca)
2008-11-04 17:47:15
こんばんはー。

>人生はどこに宝物が転がっているか、わからないですね

ほんとうにそうですよね。
そして。
転がっているものが、ただの石に見えるか、宝石になるかも、その人しだい‥です。

naoさんの心の底にふだん眠っているようなものが
こっそり引き出せて、読ませてもらえたみたいで
こそっと、嬉しい気持ちです。

どうもありがとう♪
返信する
Unknown (こもも)
2008-11-05 14:56:51
図々しいかもしれないけれど、
躊躇したrucaさんの気持ち、なんだかわかる気がします。
私も、そうやって胸の奥にしまったままのもの、
時々、取り出してみたいような、怖いような、
そんな気になりますから。
今までの人生、岐路では、いつだって自分自身で
きっぱりと行く道を判断してきたつもりですが、
時々、もう一つの人生があったんじゃないか?という
気持ちになるときがあるんですよ。

だから、rちゃんが時間のより所という文章を読んで
なんだか、とても、胸が熱くなりました。
rちゃんは、本当に、素敵な女の子ですものね。
rちゃんの笑顔を思い出し、そこでまた、嬉しくなってしまう・こももでした。
そして、また違う選択をしながら、素晴らしい夢を実現された女性のお店を、いつか訪れてみたい、その思いを新たにしました♪
返信する
こももさんへ (ruca)
2008-11-06 10:28:30
おはようございます。

今日は朝から晴れて、気持ちがいいですね~
秋のお散歩日和です。

>躊躇したrucaさんの気持ち、なんだかわかる気がします

こももさんに、そう言ってもらえて、気持ちがふっと軽くなりました。
(全然図々しくなんかないです)

いつだって、躊躇の連続で‥躊躇するおおもとが、自分の中の
どこから来るのかもわかっているから、なんだかそれも腹立たしくって。

けど、いつの頃からか、そういうおおもとの所の自分から
すべてひっくるめて自分なのだから、否定しないで、
受け入れなくては、自分自身がかわいそうと
思うようになりました。

rは「私のすべて」では決してないけど、自分を受け入れようと
思うことができたのは、彼女と過ごした時間のせいかも
しれないなとは思います。

こんなに私を好きでいてくれる人がいるのに、その私が、
しっかりしなくてどうする、みたいな気持ちかな・笑。
返信する
愛の市 (hinata)
2008-11-07 07:47:22
rucaさん、ありがとう。

愛の市、の一節を気に入ってくださって、なんだか嬉しいです。
ちょっと地味なお話なのですが、編集者さんが、これは著者の仕事観が現れた文章だから、ぜひ入れましょう、と言ってくれたものだったのです。

ご存知のように、私は順風満帆に進んできたわけではないから、折々ふーふーしてばかり。
rちゃんのような宝物を育むひとこそ、眩しく思っています。

らふとで再会できたとき、わたしも少しふーふーが納まって、私たちの第三章が(直接会えなかった時を2章として)始まったのかもしれませんね。
では、今日はハルコの育んだ、さまざまなものに出合いにご一緒いたしょましょう。

↑みなさま、いろいろ触れていただき、ありがとうございます!!
返信する
hinataさんへ (ruca)
2008-11-07 14:49:51
こんにちは。

朝の雨模様が嘘のように、素晴らしい青空が広がっています。

愛の市

そうでしたね。あの章にはそういう名前がついていました。

今ここで告白しちゃいますが、そのむかし、私も
フリーマーケットのことは、自由に参加できる、自由な雰囲気の市と
思っていました。

それと同時によく思い出すのが‥

1987年に初めてNYへ行って、そのとき初めてホームレスと
呼ばれる人たちと、その呼び名を聞いたとき、
homelessではなくって、hopeless、望みなき人だと思ったのです。

その日のうちに、それが家のない人だと知ったのですが、
密かに、ホープレスの方が、洒落ていないかい?と
思っています。

聞きまつがいですねー

返信する

コメントを投稿

想うこと」カテゴリの最新記事