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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

二度おいしい

2006-05-08 17:45:03 | 好きな絵本

 春になったら、柳の若葉が出たら・・書きたいな、紹介したいなと思いながら、
あとすこし、もうすこしと「待って」いました。何を「待って」いたのかというと、うちの庭の
こでまりが満開になるのを、です。
 この本を開いたことがある方なら、ああ、
あのページのことね、と思い出して
くれているかもしれません。やなぎむらのむしたちが、こでまりの花ふぶきに埋ってしまった、
とても美しい場面があるんです。

サラダとまほうのおみせ
『サラダとまほうのおみせ』

 カズコ・G・ストーン 作




 やなぎむらのおはなしを、このブログで紹介するのは、この本で4冊目になりますが、
ほんとうは、この『サラダとまほうのおみせ』がやなぎむらシリーズの第1作目で、
春のおはなしです。(私は夏のおはなしの『ほたるホテル』から紹介し始めました)
 
 おおきな おおきな やなぎの きの したに、ちいさな ちいさな むらがありました。
その むらは やなぎむら といいました。

 あるひ、このやなぎむらに いもむしの モナックさんがひっこしてきました。
そして、『サラダとまほうのおみせ』をひらきました。

 
表紙の真ん中あたりに描かれているのが、モナックさんとそのお店です。
おいしいサラダを食べさせてくれるだけでなく、それプラス「まほうのおみせ」です。
毎日サラダを食べに行きながら、やなぎむらの仲間たちも何が「まほう」なのだろう?と
興味しんしんですが、モナックさんは 「それは ひ・み・つ。でも、もうすぐ わかるよ」 
としか言ってくれません。そしてその後、お店の扉をぴったり閉めてしまいました。
何日ものお休み続きに、みんなは心配になり様子を見に行きます。声をかけると、
中からモナックさんの声。

 「ありがとう。ちょうど いいところへきてくれました。どうぞ なかへ おはいりください」
中へ入ると、声はしたのにモナックさんはそこにはいなくて、代わりに
へんなものがぶらさがっていました。「まほうの はじまり はじまり・・・・あぶら かだぶら~」
 
ついに「まほう」が始まったのでした。

 「えーっ、あなたは ほんとに あのいもむしの モナックさん?」
 「ヒャーッ、これは すごい まほうだ!」
 やなぎむらの面々がのけぞって驚くのも無理はない、モナックさん一世一代の、素晴らしいショウなのでした。

 モナックさんが去ってから1週間後、とんぼのピューさんが、モナックさんからの手紙を届けてくれました。
中味は結婚式のパーティへの招待状と地図。モナックさんは結婚したんですね。
場所は「たちあおいむら」ですって。
 ずいぶん とおい ところのようなので、みんなで ちずを みながら、
どの みちを とおっていくか、よくそうだんしました。

 
クローバーのはら(ここで、セッセかぞくのぼうやが、よつばのクローバーを見つけます)
 こでまりトンネル(花ふぶきでみんなが埋ってしまう場面がここです。トビハネさんが
みんなを助けます)
 きのねトンネル(青く光るきのこを探しながら行けば、迷わず出られるそうです)
 さらさらおがわにかかるはし を渡ればもうそこが「たちあおいむら」ですが、橋が壊れていたため
すぐには渡ることができません。知恵と力を出し合って協力し、この問題を解決します。

 出迎えてくれたモナックさんとモナックおくさん。タチアオイの花の下で楽しいパーティが始まりました。
それぞれが用意したプレゼントをあげたあとは、くさむらでかくれんぼ。
おひさまが オレンジいろになって にしに かたむいたころ、

ようやく、さよならを言って帰ります。

 しかし、ここで思わぬアクシデント。先頭きって歩いていたトビハネさんが、大事な地図を
川に落としてしまったのです。地図がなくては帰れないと泣いているみんなを、
今度はかたつむりのキララさんがなぐさめます。
 「しんぱいしなくても だいじょうぶ。かえりみちなら わたしに まかせて!」


 
やなぎむらシリーズのとっても素敵なところは、それぞれがみな、自分の特性をさりげなく
活かして、協力しあっていくところです。モナックさんの「まほう」は、いもむしならではのものだし、
キララさんが帰り道を知っているのも、かたつむりであるがゆえのこと。
お話を楽しんでいるだけで、そんな虫の特性も知ることができるのは、「二度おいしい」と
言うことができるかもしれません。
 それと、「モナックさんの魔法」と、「たちあおいむらへの旅」で2つのお話を、
1冊の本で楽しむことができた、という意味もこめられています。
 でも、【二度】どころじゃないですね。みんながモナック夫妻にあげたプレゼントは、
なぞなぞ形式になってるし、かくれんぼの場面では、どこに誰が隠れているのか、
そこだけでも遊べるし。ひとつひとつの場面がほんとうにきれいなので、じっくり見ている
だけでも楽しいし・・・最後のページには、ちゃんと「オチ」までついてます。

 私にとってこの『サラダとまほうのおみせ』は、噛めば噛むほどの・・スルメ本かもしれません。

※ところで、みなさんは「モナック」さんの名前の由来をご存知でしたか?
私は先日、こどものとも50周年記念ブログで、作者のカズコ・G・ストーンさんのエッセイを
読むまでは、気にとめて考えてみることさえしませんでした。モナック蝶は、ストーンさんの
お住まいのあたりでは(NY近郊のことでしょうか)、日本のモンシロチョウのように、ポピュラーな蝶だそうです。
 




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