my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

〇〇屋の★★さん

2010-03-31 16:24:50 | 好きな本
なんでもない人になりたい、と思っていたことがありました。
かれこれ25年くらいも前のことですが。

なんとか会社のなんとか課所属とか、なんとか屋さんとか、決められてしまうこと
(決まってしまうこと)が怖かったのだと思います。

「なんでもない人になりたい」の底には、よく言えば、固まらない自分で居たい
という思いや、なんにでもなれる自分を残しておきたい、という気持ちもあったでしょう。


「〇〇屋さん」がたくさん出てくるこの本を読みながら、そんなことを
思い出していました。

雪屋のロッスさん


雑誌『ダ・ヴィンチ』に、2002年11月号~2005年4月号まで連載していたものを
まとめた本で、短いのは、見開き 2ページ、長くても7ページくらいの話が
30話入っています。

出てくる人たちは、ほとんど皆専門職。
タイトルになっているロッスさんは、注文に応じて雪をつくる「雪屋さん」で、
ふだんは、トラクターに似た造雪機に乗っています。
スミッツ氏は、「棺桶のセールスマン」だし、島田夫妻は、「お風呂屋さん」です。
図書館司書をやっているのは、ゆう子さん、調律師の名前は、るみ子さん、
果物屋さんは、たつ子さん。

職業=その人と いうか、そのもの?というのもあって‥
ポリバケツの青木青兵は、青いポリバケツだし、旧街道のトマーさんは、
旧街道、すなわち古い道路なん です。

どの話も味わい深く、とてもおもしろく読みました。
特に、旧街道のトマーさんの心意気には、感動!でした。

道を道たらしめているのは、道自身の視線であり、路上に立ちのぼる
その場の気配です。道が自分から目をそらしたなら、もうそこは道ではない。
ただの細長い空間でしかなくなります。人通りの多寡は、トマーにはあまり
問題ではありませんでした。道路でありつづけることこそが、今も昔も、
道路にとっていちばんの仕事なのです。



  *  *  *  *  *



いしいしんじさんの本を読み始めたのは、たしか一昨年前あたりからです。
きっと、読み始めたら好きになるのだろうなーと思っていて、予想通り、
1冊読んだら次も読みたくなり、2冊、3冊、4冊ぐらいは読んだでしょうか。



あと、アムステルダムの犬も読んでいるので
全部で(今のところ)7冊読んでました‥。

この話は、ここへ出てくる人たちは、いったいどこまでいってしまうんだろ?
何を求めているんだろう?と、どの話を読んだときも思っていたような気がします。
ここで終わってしまってもOKなのでは、というとこをどんどん通り過ぎて、
過剰と思われる領域までずんずん踏み込んでいっている気がします。
そして、そういうところ、嫌いじゃないです。いしいワールド。




最初の話に戻りますが。
なんでもない人になりたいと思っていた私も、会社員になり、会社員をやめ、
また今は会社員になっています。
でも、そのほかにも、家ではお母さんになるし、妻という役割もあるし‥
Tシャツ屋のひよりさん」にもなりました・笑。






コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シンポジウム@ヒルサイドプラザ | トップ | 1年前の今日 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (jester)
2010-03-31 19:13:48
おじゃまします♪

いしいしんじさんの本は読んだことがありませんでした。
でも今度読んでみたいなと思いました。

注文に応じて雪をつくる「雪屋さん」、っておもしろいですね!

返信する
なんでもないひと・・・ (jasumin)
2010-04-01 12:36:08
「なんでもないひと」かぁ・・・・
私は若い頃「なにか」になりたくて、あがいてあがいてあがいていたような
気がします。そして結局「なに」にもなっていないなー。

いしいしんじさんは、つい先日デビューしたばかりで
ただいま一冊目を読んでいますよー。
この本、装丁もきれいですね。読んでみたい。
rucaさん「実はわたくしこういうものです」って本、ご存知ですか?
いろんな職業(と言っていいのか・・・)の人が登場するので
rucaさんの記事で思い出しました。
他の方のブログで教えていただいて、図書館で借りて読んで
そして自分のものを購入しました。これがまた装丁もいいのです。
もしご存知なかったら、お時間あるときに手にしてみてもらいたいなぁと思いました。
返信する
jesterさんへ (ruca)
2010-04-01 19:48:22
こんばんは~
コメント残してくださって、ありがとうございます。
嬉しいです♪

>でも今度読んでみたいなと思いました。

ぜひ、ぜひ。
そしてどんなふうに思ったか、教えてくださいませ。
私は、これでもかって感じのところに、
ジョン・アーヴィングを思い出すことがあるのです‥
返信する
jasuminさんへ (ruca)
2010-04-01 19:52:13
こんばんはー。
「なんでもないひと」の裏返しは、自分の思ったような
自分になりたいってことだったと思うのです。

>この本、装丁もきれいですね。読んでみたい。

おもしろかったです、とっても。
ただひとつ気になることがあって。
文末を(わざとだと思うのですが)揃えていないのです。
○○しました。だったり、○○だった。だったり。
ちょっと読みにくいなあと思ったのです。

>じつはわたくしこういうものです

図書館へ行こうと思っていたところだったので、検索してみたら
ちょうどティーンズのコーナーにあり、借りてきました。
読んでみますね♪
返信する
Unknown (こもも)
2010-04-03 01:01:32
ロッスさんは、私の中では、他の作品と一線ひかれている作品でした。
(長編が好きなので、物足りなく感じるのかもしれませんが)
でも、rucaさんの丁寧な文章を読んでいたら、
なんだか、無償に読んでみたくなりました。
今なら、違う読み方ができるかな?

それにしても、いしいさんって、本当に不思議ですよね。
たしか、ぶらんこ乗りを読んだとき、「なんじゃ、この汚い日本語は!」と、思ったことを覚えています(笑)
でも、読めば読むほど、その汚さが、はちゃめちゃさが、
計算されてるとしか思えないんですよね。
本当のところは、どうなんでしょうね?

>ここで終わってしまってもOKなのでは、とい>うとこをどんどん通り過ぎて、
>過剰と思われる領域までずんずん踏み込んでい>っている気がします。

どうぞ、「ポーの話」と「みずうみ」を読んで下さい!
もう、いしいさんは、危険なところまでいっている気がするんです。
rucaさんが、冷静に感想を書けるかどうか、ちょっと楽しみだったりして…(ごめんなさい!)
返信する
こももさんへ (ruca)
2010-04-04 18:45:40
こんばんは。

私はこの本のこと全然知らなくて、図書館へ行ってから
そうだ、「みずうみ」があったら借りてみようと思い立ち
みずうみもその他未読の本もなかったので、
ロッスさんを選んだのでした。

>rucaさんが、冷静に感想を書けるかどうか

7冊もいしい本を読んでいたのに、1冊もその感想を
ブログに載せていないことに、こももさん
気づいたでしょうか?
すでに「冷静に」感想は書けない状態なんだと思います・笑。
返信する

コメントを投稿

好きな本」カテゴリの最新記事