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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

愛おしき小さな人ともの

2010-10-12 18:36:58 | 好きな本
うわさ通り、期待とおりの、本でした。

引き出しの中の家
     朽木 祥  作    金子 恵 画


引き出しの中のお部屋を思いついたのは、七重ちゃん。
大好きなうさぎの人形、ピョンちゃんのために、女の子なら誰でもうっとり
せずにはいられない、ベッドや、椅子や、バスタブや、キルトを、お母さんにも
手伝ってもらいながら作りましたが、大好きだったお母さんは病気で亡くなり、
新しいお継母さんは、ピョンちゃんを捨ててしまいます。
「引き出しの家」とともに、お母さんの実家に移ってきた七重‥


ふさわしい大きさのものを仕立てれば、きっとやってくる

この言葉通り、あるとき、七重の作った「引き出しの中の家」に、独楽子と名乗る
「ちいさい人」がやってきます。
独楽子は、身長が10cmにも満たないくらいの小さな小さな人‥花明りと
呼ばれています。
見た目は人間そっくりで、でも心もち、手と足が大きいのです。


七重と独楽子のことが語られる第一部は、あっけない幕切れで、早々に終わってしまいます。
気落ちしながらめくった第二部に現われたのは、なんとも元気な薫という少女。
薫のおばあちゃんのお姉さんが、七重の、早くに亡くなってしまった
お母さんにあたるのです。

七重と薫を結びつけてくれたのは、今はおばあちゃんがひとりで住んでいる
ライト様式の古い家。ここのお庭の木に花明りは住んでいるのです。



・・・・読んでいて、二度ほど、涙がぽろぽろとこぼれてきました。

最初は、約束していた時間に、独楽子が間に合わず、それでも一生懸命
辿り着くと、七重の部屋の窓はぴったりと閉ざされていて、どこにも独楽子が
入る隙がなく、別れの理由を知らぬまま、独楽子が悶々と時を過ごしていくところです。

二度目の涙は、最後の場面。
独楽子が過ごした40年という時間を想い、そこに、薫や桜子のけなげさと愛らしさ、
また、薫のおばあちゃんの、桜に対する気持ちや、老いるということなどなど‥
いろんな気持ちと自分の思い出までもが重なりました。



よーく目を凝らしていると、見えなかったものが見えてきて、瑠璃のような
小さな青い鳥までも、いつしか認識できるようになるのかなあと思ったり。
目を凝らすということは、気持ちを穏やかにして、心の中を覗き込む
ようなことだよね、と思ったり。

小さな愛らしいものたちを、丹念にこしらえようとする気持ちのゆとりと
穏やかでピュアな目を、持ち続けている人には、ほんとうに花明りは見えて
いるのかもしれないです。





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2 コメント

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Unknown (jasumin)
2010-10-14 09:14:38
いいお話でしたよね~。
とても優しくて、可愛らしくて。
本そのものも、とても綺麗な色で、好きでした。
人が成長したり、そして老いたりする時間経過を同じ本の中で体感すると
自分の過ごしてきた日々や、これからの時間を様々に考えてしまいます。
見えないものを感じるって憧れても無理かもしれないけれど
当たり前に見えるはずの美しさは、見逃さないように見えていたいなぁと思います。
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jasuminさんへ (ruca)
2010-10-18 14:17:00
こんなよい本を読んで、しみじみ涙を流していた自分が
もうちっとも思い浮かばないくらい、この後の日々は
バタバタでしたー(バザー関連で、です)

水・木・金とそんな日を過ごして、土曜日に
工房からの風にいって、琴子さんたちと会ったり、
青い空を見上げてたりしたら、なんか気持ちが洗われて
こうめさんじゃないけど、せつなモードに入っていって
涙が出そうになりましたよ。

どっちの自分も自分だけど、学校にいるときの自分だけだったら
もう私、とっくに「おわってる」だろうなあと思います・笑。
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