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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

耳のそばで風がなる

2006-06-14 15:30:55 | 好きな絵本

 先週3日間、娘が学校を休んでいたので、おふとんの中でも見られるようにと、
絵本をたくさん図書館から借りてきました。

 おもに「こどものとも」のバックナンバーのカゴから選んだのですが、絵本の棚からは、
この本を見つけました。書店ではよく目にしていましたが、実際に手に取り、読んだのは
今回が初めてです。
 

チリとチリリ
『チリとチリリ』

 どい かや 作




 すこし小ぶりのサイズで、パステルタッチの絵。かわいいなあとは思っていました。
でも、かわいらしさがストレートに伝わり過ぎて(?)、自分の中では、あとまわしに
なっていたのかもしれません。

 娘はすぐに開いて、読み始めていました。続編にあたる『チリとチリリ うみのおはなし』
『チリとチリリ まちのおはなし』
も借りたので、どっちが先かな、どの順番で
読めばいいのかなと目を輝かせていました。


 おかっぱ頭に白い服、そろいの自転車。
 そっくりな二人ですが、よく見ると、洋服の形が微妙に違っているんです。赤いボタンで
Aラインの服に黒い「パンツ」のほうが、チリで、青いボタンのワンピースに、黒い「タイツ」の
ほうがチリリです。
 表紙、白い見返し、その次の「扉」にあたるページには、「いいてんきね チリ」 
「そうだね チリリ」
と吹き出しがあり、どららが、どちらなのか、それでわかります。
その下に、文章が2行。

  チリとチリリが とても はやおきをした あるひ
  ふたりは じてんしゃで でかけることにしました


 ページをめくると‥。まだお話は始まらず、両開きの「扉」の左側に、自転車の乗る
二人の姿、右側に題名が描かれています。
 ここまでわずか3ページ、お話はまだなのに、もうすでにこの二人が好きになり、これから
先のストーリーにわくわく
し始めている自分に気がつきました。「あとまわし」にしていたことを、
軽く後悔もしたりして‥。

 なぜでしょう‥なんでこの先のお話が、おもしろいにちがいないと期待が膨らんだのでしょう‥。

 それは、ふたりのおかっぱの髪が、風を受けてなびいていることがわかったからなんです。
気持ちよく自転車をこぎだしていくその「気持ちよさ」が、私にも手に取れるほどの近さで
伝わってきたのです。

 チリとチリリは、いい香りに誘われて、森の喫茶店へ入ります。そこでひとやすみしたあとに、

  チリチリリ チリチリリ
  ふたりは また じてんしゃを はしらせました

  はしを わたり でこぼこみちを いき
  さかを のぼって くだりました

 
坂道を下る時には、みんなペダルから両足を放し、そのスピードをからだ全部で感じます。
 前を行くチリは、もう平らな道に戻ったけれど、後ろから行くチリリは、まさにその下りの最中。
前髪は風にあおられ、チリリの耳元では、髪にからんだ風が心地よい音をたてているはずです。


 私、大人になってからのおかっぱ頭歴が長いので(一般的にはボブカットと言われている
やつです)、耳のすぐ下で切りそろえた髪の横を、風が通り過ぎていく時の気持ちのよさを、
よく知っています。

 ある時、それは大学4年で、卒業後の行き先にとても不安を感じてる頃でもありました。
行きつけの店の、いつもの美容師さんにカットしてもらい、家までの道を歩いている時に、
ヒュッーと、一陣の風が通り抜け、切り立ての私の髪は、その風の音をとてもクリアに
感じ取ったのです。ただ吹き抜けたのではなく、指に綿毛がそっととまる偶然があるように、
私の耳元に風が留まったようなそんな感じでした。一瞬のできごとだったけれど、
うつむきぎみだった頭が上がり、遠くの空を見つめて歩いて行かれるような気持ちに
なったことを、覚えています。

 耳元を、風が通り過ぎていったことが、なんの励ましとなったのか、理屈での説明は
到底つきません。ただ、下を向いて歩いているよりは、上を向いていたほうが、周囲の音や
匂いやその他いろいろに、心を閉じているよりは、開いて受け入れていくほうが、ずっと
気持ちがいいのだということを、その時の風の音が教えてくれたような気がしているのです。

 自転車に乗るのも、大好きなので、今でも風が耳のすぐ横で鳴っているのを聞くことができます。


 『チリとチリリ』に戻りますが。

 このお話のキーワードは、ふたりに ちょうどいい ですね。
 欲張って、大きいものを選ぶのでも、無理して小さくかわいいものを選ぶのでもなく、
その時のふたりにぴったりなもの、ふたりの気持ちにも、ぴったりあてはまるものが
大切だということでしょう。


 
 『チリとチリリ うみのおはなし』

チリとチリリうみのおはなし

 






 「うみのおはなし」の二人の服は夏ヴァージョンで半袖です。今度は色違いのポケットが
ついています。
 あわパフェの中の なないろに ひかる まきがい と、しんじゅクリームの中の 
ほんものの しんじゅ を入れておくために、どうしてもポケットが必要だったのですね。


 『チリとチリリ まちのおはなし』

チリとチリリ まちのおはなし









 町へ行くなら、お買い物。お買い物ならおさいふを入れていくバッグがないとね。
「まちのおはなし」の中のいとやさんで、チリは つばきの いとと ポピーの いと。
チリリは マリーゴールドの いとと すみれの いとをかいました


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6 コメント

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どいかやさんはキャラコもおすすめ! (miyaco)
2006-06-14 19:47:10
こんにちは!行ってきましたよ、錦糸町!

そのレポートはあとで書くとして、

どいかやさんの絵の可愛さはスゴいですよね。

確かに一瞬ひきます(笑)



でも、読んでみると、

その丁寧さにホント心打たれます。

2冊目3冊目は未読なので今度読んでみよう!

とっても丁寧に書かれていてすごく読みたくなっちゃいました♪ タイトルにも書きましたが『みけねこキャラコ』と『こねこのポカリナ』もおススメです☆
返信する
もう一回娘に聞いてみたい! (まみいご)
2006-06-15 14:23:20
rucaさん TBどうもありがとうございます!!

さすがrucaさんです!記事を読んで うんうん そうなんです~~~!と妙にパソコンの前でうなづいちゃいました 

ボキャブラリーが少なくて 自分が 書けなかった

思いが すべて記事になってるような rucaさんの本の紹介に とってもうれしくなっちゃいました 

娘に もう一回 チリとチリリ どっちになりたい??って 聞いてみたいです
返信する
miyacoさんへ (ruca)
2006-06-15 17:11:27
こんにちは。雨が降ってきちゃいましたね。



「一瞬ひくかわいさ」を感じ取ってくれて

ありがとうございます(笑)。

前にチップとチョコの話は立ち読みしたことが

あったのですが、チリ&チリリのほうは、本当に

初めて手にしました。

ステンシル?と思わせるような丁寧な色に仕上げに

驚きました。ただかわいいだけじゃなくって、

自転車こぐときの足の感じとか、とってもリアルに

再現してあり、そんなところも多いに気に入りました。

早速、miyacoさんお薦めの本も、探してみたいと

思います。ありがとう。
返信する
まみいごさんへ (ruca)
2006-06-15 17:19:05
こんにちは。コメントありがとうございます。

久しぶりにまみいごさんとお話できて、嬉しいです。



時折目にはしていたものの、なんか今まで機会が

なくって‥まみいごさんのところで、表紙を見た時も

なんかちょっと気にはなっていたのですが。

でも、ちゃんと読んで、記事にもできてよかったです。



どいかやさんの絵本。ほかのも読んでみたく

なっちゃいました‥
返信する
どいかやさん (フラニー)
2006-06-16 22:57:01
ご本人に会う機会があって以来、ますますどいかやさんの絵本が好きになりました。

うちの上の子、幼稚園時代ずっと、miyacoさんの書かれているポカリナがだーい好きで、あの絵本見てるとぽかぽかすると、大事に大事にしていたんですよ。

チリリシリーズも親子で気に入っています!

あの透明感あるおいしそうなものたち、細かい小物の演出・・・たまりませんよね。

どいかやさん、どうしてもフルネームで読んでしまうところが、オカシイ・・・。

返信する
フラニーさんへ (ruca)
2006-06-20 16:10:38
こんにちは。お返事遅くなりました。



うわさの本は『こねこのポカリナ』ですね?

見ているだけでぽかぽかしてくる絵本、ぜひ手にとってみたいです。



>細かい小物の演出



ほんとにたまりませんよね。だからポケットが必要だったんだあ。だからバッグを持ってきたのね、といちいち自分ひとりで合点ばかりしてました(笑)。



どいかやさんは、ご本名なのかしら?

か・や って素敵なお名前です。ボブ・マーリィーのアルバムのタイトルに「KAYA」って言うのがたしかあって、いつかどこかの美術館で熊谷守一さんの作品を見ていたら、お嬢様のお名前が「かや」ってなっていて驚いたことを、また思い出してしまいました。
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