my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

正しい答≦うまい答

2007-12-06 12:31:40 | 好きな本

今日も冬晴れの、真っ青な空が広がっています。
風もないので、枝に残っている色づいた葉に、光が透けてとてもきれい。

各所で、落ち葉染めの記事を目にして以来、サクラの紅葉が
気になって、気になってしかたありません(笑)。
拾ってくる→染めてみる の作業は来年の楽しみにしましたが
気になったおかげで、長く長く、今年は秋を堪能している気がしています。



長く長く、といえば、こちらの本『谷川俊太郎質問箱』も、購入以来
なるべく少しづつ読んで、「長持ち」させていましたが
ついに読み終わってしまいました。

詩人の谷川俊太郎さんが、ほぼ日の企画で、公募されたメールの
質問に答えていったものを、さらにパワーアップして1冊にまとめた本です。
(ほぼ日のサイトから購入すると、しろくま君のビーチボールがおまけで
ついてきます。嬉しい。)

谷川俊太郎質問箱

問われたことに、正しい答えを出すのは、「正しい問答」のあり方ですが
誰かに、何かを、きいてみるときに、必ずしも正しい答えが返ってくることを
期待しているとは限りません(よね?)

もしかして違っているかもしれないけど、
明らかにそれは違っているんじゃないの、と思っても
問わずにはいられなかった張りつめた気持ちを、ふっとほぐしてくれるような
うまい答えのほうが、どれくらい嬉しいかわかりません。


こんな質問がありました。6歳の娘さんに目をうるませながら問われ
答えに困ったお母さんからのお便りです。

  
  どうして、にんげんは死ぬの?
  さえちゃんは、死ぬのはいやだよ。
 (こやまさえ 6歳)


谷川さんの答え


  ぼくがさえちゃんのお母さんだったら、
  「お母さんだって死ぬのいやだよー」
  と言いながら
  さえちゃんをぎゅーっと抱きしめて
  一緒に泣きます。
  そのあとで一緒にお茶します。
  あのね、お母さん、
  言葉で問われた質問に、
  いつも言葉で答える必要はないの。
  こういう深い問いかけにはアタマだけじゃなく、
  ココロもカラダも使って答えなくちゃね。



さすが、谷川さん!です。

(
この問答は要約されて、2008年版のほぼ日手帳の今日のひとことに
載っていました。その日は…お友だちの誕生日でした。なんだかウレシイ)





これは、うまい答というよりも、誠実な答だなあと思うのですが。
『そうだ、村上さんに聞いてみよう』の中に、こんなのがありました。


「不倫についてどう思いますか?」

村上さんの答

  ただひとつ僕に言えることは、純愛だろうが、浮気だろうが、
  不倫だろうが、
正解だろうが間違いだろうが、結果が良かろうが
  悪かろうが、「人を好きに
なれるのなら、好きになれるうちに
  好きになっておいたほうがいい」と
いうことです。
  誰かを好きになった記憶というのは、長い歳月にわたって 
  人の心をじわじわと温めてくれます。

 


「主夫として家事をする秘訣は?
(夫が会社員がいやだから辞めて趣味の絵が描きたいと言いだしたので)」

村上さんの答

   僕は思うんだけど、芸術というのは日常からぱかっと離れたところに
   あるのではなくて、
日常のちょうど裏側にぴたっとくっついてある
   ものなのです。卑小な日常的現実を馬鹿にしたところに、
   本当に人の心を打つ芸術というのは存在しないのではないでしょうか。





どちらの答も、いつ読んでも私の心の緊張を解きほぐし、
じわじわと温めてくれます。




コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月 | トップ | 親子で作るクリスマス@アトリア »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
感激。 (マーガレット)
2007-12-06 22:26:27
谷川さんの答えに めちゃめちゃ感激しました。
言葉ではなく 心で 体で答える、なあんて すてきなんでしょ。
とても心に響く言葉を教えてくださってありがとう。
(Tシャツも)
返信する
マーガレットさんへ (ruca)
2007-12-07 21:42:06
こんばんは。

谷川俊太郎さんのこのこたえ、ほんとうに感激
ですよね~

ついつい、頭の中で、ない知恵をしぼりつくそうと
しているからうまい答がでないんだと反省しました。
頭だけでなく、心と体もつかえば、すこしは
うまい答が、わたしにも出せるかもしれません。

心に響くTシャツ

なんか来年のB&Sのキーワードになりそうです。
どうもありがとうございます。
返信する
Unknown (ペンギンブルー)
2007-12-07 22:53:16
rucaさん、こんばんわ。素敵な本ですねぇ。
なんだか、まったく自分の悩みとかとは違う質問を読んでいたとしても、
その答えの大きさに感動して、自分の悩みも解決したような気になってしまいそうです。
さすが、谷川さん。ますます好きになってしまいそうです。
「ココロもカラダも使って答え」られるような人に、私もなりたいな。
rucaさんのおっしゃる”誠実な答え”っていう表現、とても共感です。
「正しい答え」よりも真実に近いですね。

『そうだ、村上さんに聞いてみよう』の村上さんの答えもすきだな。
人により、感じ方、考え方も様々だし、質問の答えって沢山ある中で、自分に近いもの、または好みなものを選ぶようなものなのかな?とも感じました。
返信する
ペンギンブルーさんへ (ruca)
2007-12-09 09:55:38
おはようございます。

コメント残してくれてありがとうございます。
谷川俊太郎質問箱は、ほぼ日連載中に全部読んで
いたのですが、本になる際、その倍くらいに質問が
増えているとのことだったので、読んでみたくて
たまりませんでした。でも、いざ、本を開くと
今度は読み終わってしまうのがもったいなくて、
途中、別の本を何冊もはさんで、わざと読まないよう
にしたりして(笑)

この本、章の分け方もとても気がきいているんですよ。たとえば a platform at dawn とか、
a deep noisy forest とかのタイトルが章ごとに
ついてるんです。

村上さんに聞いてみようも、はじめはwebでの質問が
本になったものですよね。私は元々春樹ファンなの
ですが、誠実な答えの数々でファン度が増したのでした。
返信する
誠実なこと (くっちゃ寝)
2007-12-11 16:01:17
rucaさん、こんにちは。
こちらはすっかり冬景色。
どんより雲って、雨が降って、青空が恋しいです。

子どもが小さいとき、やたら質問されて困ったことを思い出しました。
きちんとした答えでなくても、なんとか答えを搾り出していましたっけ。
(そして、子どもは意外にこういうことを覚えているんです。言った本人が忘れていても)
さすがに両氏とも、素敵な答えですね。
誠実であればあるほど、その答えに、その人の人生や生き方みたいなものが透けて見えるようです。

先日、村上春樹氏の『走ることについて語るときに僕の語ること』を読みました。
彼の律儀さ、誠実さを改めて感じ、この↑答えを読んでなるほど~と納得しました。

返信する
くっちゃ寝さんへ (ruca)
2007-12-12 13:57:33
こんにちは。

こちらは今日も冬晴れで、落ち葉が道のそこここで
舞っています。

『走ることについて~』 もうお読みになったの
ですね。本が出ることは知っていたのですが、
この1ヶ月くらいは<油断>しきっていて、もう発売
されているとは思ってませんでした。

律儀さ、誠実さがひしひしと伝わってくるような
エッセイなのですね。すごく読みたいという気持ちと
読んでいるうちに(自分が)苦しくなるのでは、という
心配が同時に起こっています。でも、きっと
読むと思いますが。

ノーベル文学賞候補になるような方が、どんな質問にも
とても丁寧に、ひどく正直に答えている‥その事実
だけで、20年余りの時間、作品を読んできてよかったと
心から思えます。

返信する

コメントを投稿

好きな本」カテゴリの最新記事