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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

クリスマスの絵本・その1(誇りと勇気)

2005-12-06 16:14:10 | 好きな絵本

 クリスマスの絵本として、最初に載せたかったのは、バーバラ・クーニーが絵を描いている
この本、『おもいでのクリスマスツリー』 です。


 お話の舞台になっているのは、北アメリカのアパラチア山脈(ノースカロライナ)の
おくにある
小さな村、第1次世界大戦が行われていた頃の話です。

 クリスマスのお祝いは国や地方、また時代によっても様々ですが、
主人公の女の子、
ルーシーが住むこの村〈松ガ森〉の習慣は、毎年教会に立てるクリスマスツリーを、
村に住む人が順番で、選んでくるというものでした。ある人は、丸くて太いゲッケイジュ選び、
またある人はよい香りのヒマラヤスギ、という具合に。そして、ツリーを持ってきた家の子供が、
教会で行われるクリスマスの劇の中で、天使の役をすることも決っていました。
 
 当番になったルーシーのパパは、ごつごつの岩にそだ
つけれど、天にとどくほど高くのびて、
クリスマスツリーにはぴったりの木
としてバルサミモミを立てようと考えます。
そして、ルーシーと二人で、もうしぶんのない木を見つけ、ルーシーの髪に結んであった
赤いリボンをとって、しるしとして木に結び付けておくことにしました。
(表紙に描かれている赤いリボンをつけた木がそれです)
 
 夏になり、ルーシーのパパが兵士となって戦場へ行ってしまってからが、このお話の
「本当の物語」の始まりと言えるかもしれません。男手がなくなり経済的にも厳しくなった
生活をルーシーのママは、知恵と手先を上手に使ってやりくりしていきます。
(コーヒーのかわりにハッカ茶にはちみつを入れて飲んだり、新しい服が作れないので
つぎ目をきれいな花のししゅうでかくしたり)
 秋が来てもパパは帰らず、とうとう教会にツリーを立てる日がやってきます。
心配した牧師さんが、来年のために用意してあるヒマラヤスギを、今年切ってもいいと、
来年の当番が言ってくれた話をしにきます。明日にはどうしても、教会にツリーが
なくてはならないのです。

 ルーシーのママはどうしたでしょう? 悲しい顔で牧師さんに詫びるわけでも、
妥協案に応じるわけでもなく、こういうのです。

 「トムはやくそくをきちんとまもる人です。今年は、
  うちでツリーをたてさせていただきます。」
  ママはゆずりませんでした。


 毅然としてそう牧師さんに告げたママこそ、このお話の本当の主人公ということが
できるかもしれません。このあとの、夜更けから朝陽が昇るまでの、5ページにわたって
描かれている風景の美しさと、ママの誇りに満ちた表情、ルーシーの満ち足りた顔は数ある
クーニーの描く「素晴らしい場面」の中の1か2に位置するものだと、私は思います。
ほんとうに美しく、ほんとうに素敵です。
 
 ルーシーがようやくベッドに入った頃、牧師さんがやってきて、高い岩山にはえていた
バルサミモミが、教会の鐘楼のところにあったと言いにきます。ルーシーのママは、
だから言ったでしょ、トムはやくそくをまもる人だって。なんてことは言いません。

 「まさか! ほんとうですか! なんてふしぎな。」

 
 
ツリーはきれいに飾られ、クリスマスの劇も無事終わります。望みとおりのプレゼントを
手に教会を出ようとするルーシーに、もうひとつとてもよいことが待っています。


 「おもいでのクリスマスツリー」という題名を決してわるいとは思いませんが、
英語のタイトル『THE YEAR OF THE PERFECT CHRISTMAS TREE』を意識して読み返すと、
物語の力強さが違ってくるような気がして、あらためて、題名の大切さを知らされたようでした。
このクリスマスツリーは、ルーシーという女の子の思い出の木であると同時に、
〈松ガ森〉全体の特別な年の、思い出でもあるのです。

 裏表紙を見ると、すっかりきれいに飾られたツリーのてっぺんに、金色の星ではなく、
天使の衣装を着たルーシーそっくりの人形がのっています。これも、この年以来の
〈松ガ森〉の慣わしとなったそうです。今でも、変わらず続いているのでしょうか・・・


 


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10 コメント

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同じ母親として・・・ (くっちゃ寝)
2005-12-07 09:42:07
私もこの絵本を読んで、お母さんの毅然とした態度に胸を打たれました。



もちろん、絵本だから子どもの目から見た「しっかりとしたお母さん」というふうに描かれていますが、同じ母親として、お父さんがいなくてつらかっただろうなとか、ひとりでいろいろ悩んだりしたんだろうなあなんて想像すると、よけいにじーんときちゃって・・・。

お父さんが帰ってきて、本当に本当によかっ

たね、と思いました。



昔は日本でもアメリカでも、こういう毅然としたお母さんがいたんですね。

いやなことはすぐ顔に出たり、子どもと同じように、いや子ども以上に文句ばかり言ってる自分が情けない・・・
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ちょうど (newsongs)
2005-12-07 11:16:29
さっき図書館行って、借りてきた本です^^

今晩子供たちと読みます♪素晴らしいお話みたいですね。

クーニーの絵をまた堪能できると思うと嬉しいです~。



そういえば先日『エマおばあちゃん』読みました^^

子供たちにも予想以上に大人気だったので驚きました。でも本当に素敵な絵本でした。

ありがとうございます。そのうちUPします^^
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こんな女の人に私もなりたい (ruca)
2005-12-07 16:31:09
くっちゃ寝さん、こんにちは。

やはりこの絵本のこと御存知だったのですね! コメントも頂けて、嬉しいです。



私も、この本は子供と一緒に楽しむというより、女として、妻としての、ルーシーのママに、自分を引き寄せてしまいます。戦地へ行った夫の留守を預かることとか、娘との二人暮らしとか。ツリーを心配して牧師さんが訪ねて来た時、もしも私がこのママだったとしても、きっと夜中に娘と斧を持って出かけるにちがいない、とおもいました。けれど、翌日また牧師さんが来た時に、「不思議なはなしですね」とは言えないないと思うのです。「私がね、ゆうべ娘と一緒に行ったんです」って言ってしまいそう、いや言ってしまうにちがいない‥。



クーニーが描く女の人の中で、ベスト3に入ります、ルーシーのママは。
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楽しみにしています (ruca)
2005-12-07 16:36:19
newsongsさん、こんにちは。

図書館へ行かれていた時間帯に、私はそちらにお邪魔して、「ぐりとぐらのおきゃくさま」の記事を読んでました。クリスマスの絵本といえば、やっぱり「おきゃくさま」抜きには語れませんよね。実は私も、このクーニーの絵本と「おきゃくさま」のどちらを先に載せようか迷っていたのです。



newsongsさんのクーニーに記事、楽しみに待っています。私のぐり・ぐらクリスマス、UPしたらTBさせて下さいね。
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素敵な絵本ですね! (ka-3)
2005-12-07 18:11:38
はじめまして。Ka-3です。

『キツネ』の記事にコメントありがとうございました。とっても素敵なブログですね。以前何度かお邪魔したことがありましたが、このクリスマスの絵本は本当にうっとりするようで、rucaさんの記事を読んでいて、あの5ページにわたって描かれている絵が目に浮かぶようです。

クーニーの描く絵は私も大好きですが、この絵本はまだ手に取ったことがなくて、是非是非読んでみたくなりました。

題名に関しても、本当に英語名の素晴らしさに対して、邦訳になってちょっとその良さが消えて残念ですね。

私も絵本を小さい頃そんなにたくさん読んだというわけではなく、大人になって子どもと一緒に読むようになってその虜になってしまったひとりです。そして、この絵本のように、大人へのメッセージが描かれた素敵な絵本ってたくさんありますよね。

また、素敵な絵本を教えてくださいね。

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ようこそ。 (ruca)
2005-12-10 01:02:33
Ka-3さん、こんばんは。

早速きていただいて、とても嬉しいです。

私も、えほんうるふさんのところでの、コメントのやり取りを読ませていただいて、以前から関心を寄せていました。いつか、お話できると(コメントのやりとりで)いいなあと思っていたところ、あの『キツネ』の御紹介‥。すぐにでも何か言いたい(投稿したい)気持ちになりましたが、まずは実際にその本を手にとってみなくては、ということで、時間がかかってしましました。



クーニーのこの絵本。読んでみての感想など、また教えていただけたら、さらに嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
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こんばんは♪ (春生)
2005-12-16 20:12:53
rucaさん、前日は、コメントとトラックバックありがとうございました。

私のほうでもトラックバックさせていただきました(^^)

クーニーさんの描く女性は、凛として素敵ですね♪ルーシーママは、rucaさんのベスト3とのこと。

はじめてお邪魔して、あつかましく質問してしまいますが、ベスト1はどなたでしょう?興味津々(^^)

私も考えてみました。私のベスト1は、「わたしは生きているさくらんぼ ちいさい女の子のうた」の女の子です。お話は、『エミリー』が一番好き♪

きっとこれからもrucaさんと「好き」が重なる絵本がみつかりそう。どうぞ、よろしくお願いします。

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Unknown (ruca)
2005-12-17 16:50:37
春生さん、こんにちは。来てくれてどうもありがとうございます。とっても嬉しいです。



質問は大歓迎なんですが、難しい質問ですねえ。

うーん。誰だろう?ベスト1は‥。ルーシーのママが3番目というわけでもなく、3本の指に入ると考えて頂いて、あとの2人は、ルピナスさんと、エミリーに球根を贈った少女と、「おおきななみ」の主人公(クーニーのお母さんがモデル)…あ、でもこれだと4人になってしまいますねえ。



『エミリー』はとても素敵な話ですよね。(よかったら以前書いた記事がありますので、感想聞かせて下さい)私も一番くらいに好き♪です。「くらい」と書いたのは、『おおきななみ』も同じく1番くらいに好きなんです。



また春生さんと、行き来できることを楽しみしています。
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ようやく (newsongs)
2005-12-22 14:54:21
記事にできました。

rucaさんの記事ほど素敵に、とはいきませんでしたが><

クリスマスも目前、沢山の人がこの絵本を読んでくれるといいですね^^

TBさせていただきます。

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TBありがとうございました (ruca)
2005-12-23 01:37:37
newsongsさん、こんばんは。



早速、ゆうがた読ませて頂きました。

とっても素敵な紹介でした。



大好きな絵本をとおして、繋がっていくのって、

ほんとに楽しいことだなあって、思います。



これからもよろしくお願いします。



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