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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

贈った絵本

2006-11-10 17:05:15 | 好きな絵本

 これまでに、何冊くらい絵本を買ったことでしょう。

 今年になって
数が増えたものの、それまではそんなに多くはなかったと思います。
そのほとんどが、娘の成長に合わせて彼女のために買ったものでした。そして時折、
どうしても欲しくなった自分のために‥。

 娘以外の誰かに贈るために買った絵本は、いつ、何の本を、誰に、とはっきり記憶しています。
それぐらい数が少ないのです。まして、おとなへ贈ったとなると、それはたったの2冊しか
ありません。

 1冊目は、コイビト時代の夫に、五味太郎さんの『絵本ことばあそび』(1982年岩崎書店発行)。
私も、もちろん夫も、絵本のエの字も口にしなかった頃。五味太郎さんがどんな方なのかも
知らずに、ただ中味の言葉遊びのおもしろさゆえに、誕生日プレゼントにしたのでした。

 そして、もう1冊は、今年の10月22日に、大学時代からの友人にこの本を。


  森の絵本(講談社)
    『森の絵本』
     長田弘 文
     荒井良二 絵


 
 大きくなって。自分で、自分の進む方向を決めなくてはいけない時期がやってきて。
さてどうしたもんだろう、と考えるー。
 それは、大きな木の茂る森の入口に立ったときと似ているかもしれません。踏み入って
行くには勇気がいる。けれど入口で立ちすくんでいるわけにもいかない‥。

 そんなとき、声が聞こえます。

 「いっしょに ゆこう」
 すがたの見えない 声が いいました。
 「いっしょに さがしにゆこう」

 「きみの だいじなものを さがしにゆこう」
 すがたの見えない 声は いいました。
 「きみの たいせつなものを さがしにゆこう」

 
声に誘われて進んでいくと、目の前が開けていき、大切なもの、忘れてはいけないものを
教えてくれます。たとえば、

 「だいじなものは あの 水のかがやき」 というふうに。

 
 誰の声なんだろう、と思いました。森の中へと誘い、導き、諭し、励まし、ともに歩んで
くれるその声の持ち主はー。森の入口に立った時、そんな人がすぐ近くに居てくれたなら、
とても心強いにちがいない‥。

 すこし前の私は、その声が誰の声であったのかわからなかったし、わかろうとして
いなかったのかあと思います。でも、今は、それが「自分の内なる声」だということに、
気がつきました。
 そう。励ましてくれたのも、思い出させてくれたのも、忘れちゃだめだと戒めてくれたのも、
自分自身にほかならないのです、きっと。

 それは、こう言いかえることもできると思います‥。
 自分の内側から響いてくる声に、しっかり耳を澄ませていないと、森が息している 
ゆたかな沈黙
 や 森が生きている ゆたかな時間 を知ることもなく、ただ森の中を
さまよい続けることになるかもしれない、と。

 
 この本を、喜んで受け取ってくれた彼女は、「内なる声」に、耳を澄ませる努力を惜しまない
人にちがいありません。だからこそ、ゆたかな森を築きつつあるのです。
 私を、20年来の友人としてくれていることへの感謝と、『森の絵本』を選んだ、今の私を
知って欲しくって。彼女の誕生日と、本が出版されたことと、ギャラリーショップオープンの、
すべてのおめでとうをこめて、贈りました。


 「ほら、この本」と その声は いいました。
 その本は 子どものきみが とてもすきだった本。
 なんべんも なんべんも くりかえして 読んでもらった本。
 「その本のなかには きみの だいじなものが ある。
 ぜったいに なくしてはいけない きみの思い出がー」


 

 こんなに大好きな本になったのに、自分のを、まだ持っていません。でも、今度の
クリスマスには買おうと決めています‥。 

 


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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
もう一度読もうかな (miyaco)
2006-11-10 19:18:19
自分の中の内なる声かぁ……。
私は今、全然違う声を想像しています(笑)
そういうヒトがいてもいいかな~なんて(^^;)

トラックバックを送りました♪
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いいですね♪ (フラニー)
2006-11-11 00:21:39
もしかして、先日の工房からの風のあの方へのプレゼントでしょうか。
いいですねー、すてき。
『森の絵本』のたくさんの緑に包まれていると、本当にリラックスしてきますね。
わたしもほしいなぁ。
荒井さんの絵本、ことりさんで頼もうかなぁと思います。
返信する
大好き♪ (こもも)
2006-11-11 15:57:33
長田氏のファンの私。
この絵本は、お気に入りの一冊となっています。
本当に、素晴らしい絵本ですよね。

メカ音痴の私は、どうしようもなくTBが苦手なのですが、息子がいない休日、ゆったりとTBに挑戦してみました。
息子のどうしようもない一言入りの記事ですが・・・
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偶然にも・・・ (はらぺーにょ)
2006-11-12 08:54:17
rucaさん、おはようございます。
つい1週間ほど前、偶然井にこの絵本を購入した私ですよぉ。
父の病院の近くの、某チェーン店のあの古本屋さんで
出会って、ラッキー!!と思いました。
本当に素晴らしい絵本ですね!
目に飛び込んで来る緑の色もなんとも言えません。
今年はクリスマスに、友人達に絵本を贈りたいなあと
思っていて、今考え中なんです。
何にしようかな…って、そんな時間も楽しいですね。
返信する
今、森の前に立ち (hinata)
2006-11-12 21:24:43
rucaさん、このエントリーを読んで、いっそう、この本が好きに、そして、たいせつに思いました。

わたしにとって、まさに、今、この本をいただく時だったのですね!

絵本の世界って、なんて奥まで豊かに広がっているのでしょう。
送ってくれた人の思いまで、その頁に映っているようです。

mさんの次にrucaさんから絵本を贈っていただいたという「喜び」も、大切にさせてくださいね。
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特別な1冊 (kayo)
2006-11-13 09:36:11
本屋さんで働いていた時、

「もし私がこの本の存在を知らなくて、誰かに今、プレゼントされたら、うれしくて倒れてしまうだろうな(笑)」

なんて・・・よく思っていました。

誰かにすすめてもらってその本を初めて知る時、その本はよりいっそう特別な1冊になるような気がします。

「今のあなたにぴったりだと思って・・・」

なんて言われて本をプレゼントされたら、その本をもう知っていても、うれしくてうれしくてきっと抱きしめると思います。



人に本をプレゼントするのって本を知れば知るほど、勇気がいることだけど・・・とても素敵なことですね♪



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miyacoさんへ (ruca)
2006-11-13 12:30:52
こんにちは。
早速のコメントとTB、ありがとうございます。

なんかプレゼントをしたいけど、何がいいかなあと
思っていたときに、miyacoさんの本屋さんに、この
『森の絵本』が並び、そうだこれがあったじゃないか
と思ったのです。

聞こえてくる声は、もちろん「誰か」の声であっても
よくって。むしろ、誰かが導いてくれたら‥と私も
思います(笑)。けれど、一度自分の耳に届いた声は
誰かのものであったとしても、届いたときには自分のもの
になってしまうから‥。
そういうのも含めての「内なる声」ですね。

明日は「県民の日」でお休みなので、早川純子さん
(ポポタムで会った方)の作品展に行って来ようと
思っています。
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フラニ-さんへ (ruca)
2006-11-13 12:37:40
こんにちは。

そうなんですよ、工房からの風のディレクターでもある
稲垣さんへ贈物です。彼女はもうバーチャル世界だけの
人ではないので、お名前を書いてもよかったのですが、
いつもいつも「友達です」って宣伝しているみたいで、
それはちょっと‥と思ったので、名前を書かずに
気取ってみました(笑)。

荒井良二さんの絵本。騒いでいるわりには、私もそんなに
持っていないです。どこでも買えるようになったけど、
だからこそ、この本は、あそこで買いたいみたいに
なってきて‥。
今後「ことり文庫」さんのお世話になることが多そう
だなあと、思っています。
(こうめさん情報によると、荒井さんのアトリエも、
羽根木公園近くにあるらしいで、まさかの出会いを期待
したりもしてるんです)
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こももさんへ (ruca)
2006-11-13 13:19:20
こんにちは。
コメント&TB、ありがとうございます。

そうですよね、長田弘さんの話は、こももさん抜きには
語れませんよね。

長田さんだけの「詩の本」として読むのもいいし、
荒井さんだけの「絵の本」だとしても、とってもみごたえが
あるし。その両方がいっぺんに味わえるのですから
やっぱり「絵本」ってすごいなあと思っています。


私も、娘が寝る前に一緒にこの絵本を読んでみました‥
わかってるんだか、わかってないんだか。
たぶん、全然わかってないんだなあと感じました。
でも、あと5、6年たって、複雑な気持ちを抱くような
年頃になったとき、そうだ、お母さんの本棚にあの絵本が
あったなって気づいてくれたら、それでいいかなあって
思っています。たぶん、お世話になると思うんですよ、
その年頃は(笑)。
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こんにちは (maminka)
2006-11-13 14:18:19
素敵なお話ですね。
この本のことは知りませんでした。

大好きな荒井さんの絵本ときいたらぜひ読んでみたいと思いました。

素敵な絵本を教えてくださいましてありがとうございます。
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