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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

6月はアーヴィング

2012-07-18 16:40:40 | 好きな本

たまたま選んで読んでいた本が、「たまたま」ではなくって、
その時期に読むべくして手元にきたように思えるとか、
自分の気持ちが、その本や(その映画)を、手繰り寄せたのでは?と
思えるくらい、ぴったりと重なっていく感じとか‥。

とてもおもしろい本や興味深い本に出会ったとき、そう感じることって
ありますよね。

6月の半ばくらいから、アーヴィングの長編『あの川のほとりで』を読んでいました。
(昨年も6月~7月にかけて読んでたみたいです  



  
前作の『また会う日まで』もおもしろかったのですが、なんかしっくりくるまで
時間がかかったので、今度はどうかな~と自問するみたいな気持で読み
はじめました。

結論から先に言うと‥すごくおもしろい話でした。『また会う日まで』よりも、
自分にとって「近い」ところにあると感じられたからかもしれません。

アーヴィングの作品を20代の頃から読んできましたが、そこで語られていたこと
作者がいろんな状況を駆使して語りたかったことを、40代が終わろうとしている
今頃になって、ようやく私わかってきたかも、と思っています。


圧倒的な暴力。闇のちから。
理不尽な事故や、想像力が決如した人たち、って置き換えてもいいかもしれません。

世の中にはそういうものが確実に存在しているのだということを、20代の私は
知りませんでしたが、今の私は、そういうものにおびえることができるように
なっています。

アーヴィングの作品では、大切な家族の誰かが必ずといっていいほど
事故で死に、抵抗することができない弱いものが、力づくでねじ伏せられるという
構造が描かれます。
でもそれを大きな物語のうねりの中で、「語って」いくので、読者である私たちは
ついていくことができるし、登場人物の魅力に引き付けられて、最後まで
読みとおした時には、生きるに値する生を懸命に生きていく、ということを
教えられて、気持ちはまっすぐに前を向いているように思います。

・・・・

本を図書館に返してしまったので、正確な地名や年代はわからないのですが、
物語がはじまったとき、ニューハンプシャーの小さな林業で成り立っている町では
樵が、山から切り出した木材を、川をつかって、川下にある製材所まで
運搬していました。

この物語の最重要人物とも言える樵のケッチャムは、その川流しの名人で、
すぐそこまでやってきている、林業の機械化をとても嫌がっていました。
ケッチャムの家には電話もなく、それがのちに、ファックスという便利なものができ
彼がそれを使いこなしていくようになり、やがて、そんな時代遅れなもの誰が使う?
という2001年まで物語は続いているのです。


アーヴィングの作品の原題はいつもいいなあと思うのですが、今回の
LAST Night in TWiSteD RiVER(大文字本表紙の通り)も
最後の最後まで読んだ後に、ああそうだよね、としみじみその「よさ」が
伝わってきました。


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