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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

【アメリカの61の風景】にさそわれて・1

2009-12-08 11:12:12 | 好きな絵本
長田弘さんの旅した『アメリカの61の風景』。
その最初は、ミシシッピ川の源流からはじまります。

そして、こんな文章。

  人生はこんがらかったものではなく、もっとずっと
  単純であっていいと思う。決まった時間の外に、
  じぶんをもってでる。
  決まった時間の外にもう一つの時間があり、その
  もうひとつの時間のなかに、忘れられた人生の
  単純さがある。旅に目的はない。ただどこかへゆく。
  どこかー時間が無でみたされていて、神々がほほえんで
  いると感じられるような、どこか。


読み返していると、またトリハダがたってくるようです。

特に、決まった時間の外に、じぶんをもってでる、というところ‥

ここを何度も噛みしめてしていたら、この絵本のことを思い出したんです。

 ラストリゾート
 パトリック・ルイス文 ロベルト・インノチェンティ絵 青山南 訳



ラスト・リゾートは、入口に「迷いびとのかた!宿帳にお名前を!」
叫ぶ鳥がいる、こころにぽっかりあながあいてしまったひとたちの
ホテルです。

主人公の男は、想像力をなくしてしまった絵描き。
彼は失った「こころの目」を求めて、愛車のルノーに乗り、出かけます。
ドコダカダレニモワカラナイトコロへ

そのホテルに泊まっている人たちは変わった人ばかりですが、とても
有名な物語に出てくる、あの男や、あの女性では、と思いながら読むと、
2倍、いや3倍くらい楽しむことができる、おとなの絵本です。



想像力を失った絵描きも、このホテルに滞在し、「決まった時間の外へ持ってでた」
自分と、「無でみたされた」時間を過ごすことで、新しい自分を見出したのではないでしょうか。



アメリカの61の風景』の、別のページには、こんな言葉もありました。

   旅は到着することとはちがう。
   旅は、旅をしているという感覚のよろこびなのだ。



そうなのですねー旅は、感覚のよろこび=感覚をよろこばせることなのですね。
もうずいぶん長い間、旅をしていない気がします。
そもそも、私は、旅をしたことがあったのでしょうか。



ここではないどこかへ。
Anywhere,but not here.

本を、読んでいる間は、いつでも〈旅〉している、と言えるのですが‥




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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
【アメリカの61の風景】にさそわれて・1 (自転車サムライ)
2009-12-08 18:32:09
はじめまして。お邪魔します。
旅について調べていて、ここにたどりつきました。
長田弘さんの旅した『アメリカの61の風景』から選抜文章、
しびれます。
すばらしい記事、ありがとうございました。
返信する
Unknown (ペンギンブルー)
2009-12-09 00:17:13
rucaさん、こんばんわ。
時間、人生、旅....いい文章ですね。
そんな風な感覚で、ここ最近、いえ何年か、
生活していなかったように思います。
なんだか、遠い所へ行きたくなりました。
身体をどこかへ、というより、心をどこかへ...。
インノチェンティの表紙絵もぞくっとそそられる『ラストリゾート』も、おもしろそう。
読書は旅、本当にそうですね。
良さそうな本を2冊もご紹介していただき、ありがとうございます!
返信する
自転車サムライさんへ (ruca)
2009-12-09 10:33:03
おはようございます。

そしてはじめまして。コメント残してくださって
どうもありがとうございます。
とても嬉しいです。

『アメリカの61の風景』は、たいせつなことが
凝縮されている本だと思います。

ぜひ読んでみてください。

>自転車サムライ
 
お名前から察するに、風を感じてのたびびとさん
なのですね、きっと。
返信する
ペンギンブルーさんへ (ruca)
2009-12-09 10:39:24
おはようございます。

>なんだか、遠い所へ行きたくなりました

そうですねー
わたしも、ずっとずっとそう思っています。

>ラストリゾート

とっても読み応えのある絵本でした。
絵もきれいだし、出てくるひとりひとりもとても
興味深く、長い時間楽しめると思います。

長田さんのエッセイからインスパイアされた絵本、
あと2冊あって、それもログにしてUPする予定です。
なんか、どんなことを思いながら、この本を読んでいたのか
残しておきたいなあと思って。
返信する
読みました! (こもも)
2010-03-08 15:06:06
ようやく、ようやく、読み終わりました!
あまりに素晴らしくて、いっぺんに読むのが
もったいなくて・・・大事に、大事に、
ゆっくりと読みました。

本当に素晴らしい本でした~
私、エッセイファンになってしまったかも!です。
積まれた図書館の本の山を読み終えたら、長田さんの
エッセイを読んでいこうと決めました!
素晴らしい本との出会いを、ありがとうございました!
返信する
こももさんへ (ruca)
2010-03-08 18:46:11
こんばんは。
こももさんのレビューを読んでいたら、もう一度
この本が読みたくなりました。
ほんとにほんとにいいエッセイでしたね。

自分が抜き出した文章読んだだけでも、
感動再びでしたよー

私は、梨木作品6作目に挑戦中ですが、さすがに
ちょっと飽きてきた感が出始めました‥
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