Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ビデオドローム

2008-09-24 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 1983年/カナダ 監督/デビッド・クローネンバーグ
「モラルを吹っ飛ばす気味悪さの面白さ」



殺人フィルム、幻覚、マインドコントロールと、飛び道具てんこ盛りのカルトムービー。ビデオばっかり見てたら、現実と幻覚が曖昧になってしまうというモチーフは、今見ても十分にリアリティがあって面白い。例えば、リングのビデオは、ビデオに貞子の怨念が焼き付いていてそれを見ることで体内にウィルスのようなものが発生して、最終的には心臓麻痺を起こさせるって言うロジックがあったけど、これはそういう理屈は全然ない。今こういう映画を作ろうとすると、現象についてもっと理論や理屈をこねくりつけるでしょうね。

でも、お腹がいきなり裂けたり、画面から唇がびよよ~んと飛び出したり。こういうグロい描写が面白くて「なんじゃ、こりゃ~」とのけぞりながらすっかりクローネンバーグのやりたい放題に乗せられてしまう。スナッフフィルムが題材だから、ほんとは楽しんじゃいけないとか、私の中の小さなモラルが叫んだりするんだけど、抗えない。手と拳銃が一体化する描写なんて、気持ち悪いことこの上ないけど、このメカ+グロの映像のオリジナリティはすごい。

生命体としての命は途絶えても、ビデオの世界で永遠の命が与えられる。ビデオをのぞき込んでいた人間がビデオに出演する側に廻り、と延々と続くビデオドロームの世界は、まるで、合わせ鏡の連続空間のよう。こちらの世界とあちらの世界がだんだん曖昧となってくる様子を見ているに、観客もビデオドロームに毒された気分になってしまう。鑑賞後このままベッドに入ったら、悪夢を見そうな余韻が残る怪作。

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