競馬に絶対は無い。
今日のこの日が近づくにつれ、この言葉が頭に浮かぶ。
圧倒的人気を背負い、圧倒的な強さを持つ馬。
そんな馬が競馬界最高峰のレースに出走する。
競馬ファンとしては、最高の瞬間である。
だが、なぜか期待よりも、不安の方が大きくなる。
最初の心配だった天気は持ってくれた。
だが、薄曇の天気と湿った風は嫌な何かが起こりそうな雰囲気を感じさせる。
東京競馬場は本当に多くの人で賑わっていた。
府中がこんなに込み合っているのを見るのは、いつ以来のことだろうか。
みんな、今日という日を楽しみにし、今日という日に期待している。
第9レース発走直前に、ターフビジョンに5番の白ゼッケンが映し出される。
いよいよ、本日の主役の登場である。
だが、いつもと違って様子がおかしい。
盛んに首を上下に振り、時折チャカチャカと小走りになる。
しまいには、なんと尻っぱねまで始めて、スタンドが大きく沸いた。
改装されたパドックは、どの階からも観られるようになっている。
今日のパドックは、まるで人の壁ができているようだった。
その異様な雰囲気を敏感に感じ取ったのかも知れない。
嫌な予感がドンドン膨らんでゆく。
だが、そんな嫌な雰囲気を晴らすかのように、本馬場入場時に薄日が差し込んでくる。
颯爽と返し馬に向う本日の主役を見て、やっぱり心配ないんだと心に言い聞かせた。
やがて、集合を告げる赤旗が振られる。
その頃には、再び太陽は薄い雲の中に隠れてしまっていた。
そして、再びチャカつき、尻っぱねをする姿が目に入る。
息の詰まるような思いで、ファンファーレを迎えた。
こんな状態でゲートへの先入れとなる、内目の奇数枠。
最悪のことが目に浮かぶ。
ゲートが開き、それが現実となる。
やはり、出遅れた。
1コーナーを回るあたりでは、最後方より少し前あたり。
だが、気になるのはポジションよりも、内に閉じ込められていることだった。
1000m通過のラップタイムが表示され、59秒後半。
馬場状態とG1レースということを加味すれば、スローといっても過言ではない。
それなのに、まだ後方の内目を進んでいる。
最悪のシナリオが頭に浮かび、もう気が気ではなくなってくる。
3~4コーナーに入ってもまだ内を進みもう終わったかと思わせ、そのまま大欅で見えなくなる。
再び姿を現したとき、この馬は外に持ち出していた。
その姿が大写しになったとき、府中のスタンドが大きく揺れた。
そこから、先行集団に一瞬で取り付く脚は、いつものこの馬の走りだった。
ここから、快進撃が始まる。
4コーナーで大外を回ったこの馬は、直線入り口でさらに外に進路を取った。
このコース取りは、11年前のあの馬と同じだ。
そう思った瞬間、いつもの飛ぶような走りで加速を始めた。
職人のような騎乗で最内に進路を取り、先頭に踊り出ていた馬がいた。
だが、残り300mで、もうその馬は関係が無くなった。
大外の馬がついに先頭に踊り出た。
ここで、スタンドの心が一つとなる。
みんな、心待ちにしていたこの光景を前に、この馬だけに声援を送る。
その声援に押されるように、この馬は飛ぶように前へ前へと突き進んで行く。
周りに、他の馬は全くいない。
そのまま、津波のような大歓声に送られながら、栄光のゴールを駆け抜けた。
レース前の不安、そしてレース中の不安。
そんなものが無かったかのような、想像以上の大楽勝。
ここで、私はようやく息をつくことができた。
と、同時に歴史的瞬間に立ち会えた喜びに、体中が震えた。
ウイニングランでは、地鳴りのような歓声に迎えられ、競馬場全体で祝福していた。
誰もが嬉しそうだった。
競馬界のお祭りが最高の形で幕を閉じた。
普通はレースが終われば、皆帰路に着くためスタンドを後にする。
だが、この日は誰も帰ろうとはしなかった。
表彰式では、普通では考えられないくらいの大歓声で勝者が迎えられた。
そして、口取りの写真の時、鞍上の男が指を2本立てて、残ったファン達を大きく沸かせた。
本当に久々に現れた、周囲の期待に応えてくれる馬。
いや、期待以上の走りを見せてくれる。
人気と実力を兼ね備えた、本当のスパースターが誕生した。
この歴史的瞬間に立ち会えたことは、私の一生の宝物となるだろう。
今日のこの日が近づくにつれ、この言葉が頭に浮かぶ。
圧倒的人気を背負い、圧倒的な強さを持つ馬。
そんな馬が競馬界最高峰のレースに出走する。
競馬ファンとしては、最高の瞬間である。
だが、なぜか期待よりも、不安の方が大きくなる。
最初の心配だった天気は持ってくれた。
だが、薄曇の天気と湿った風は嫌な何かが起こりそうな雰囲気を感じさせる。
東京競馬場は本当に多くの人で賑わっていた。
府中がこんなに込み合っているのを見るのは、いつ以来のことだろうか。
みんな、今日という日を楽しみにし、今日という日に期待している。
第9レース発走直前に、ターフビジョンに5番の白ゼッケンが映し出される。
いよいよ、本日の主役の登場である。
だが、いつもと違って様子がおかしい。
盛んに首を上下に振り、時折チャカチャカと小走りになる。
しまいには、なんと尻っぱねまで始めて、スタンドが大きく沸いた。
改装されたパドックは、どの階からも観られるようになっている。
今日のパドックは、まるで人の壁ができているようだった。
その異様な雰囲気を敏感に感じ取ったのかも知れない。
嫌な予感がドンドン膨らんでゆく。
だが、そんな嫌な雰囲気を晴らすかのように、本馬場入場時に薄日が差し込んでくる。
颯爽と返し馬に向う本日の主役を見て、やっぱり心配ないんだと心に言い聞かせた。
やがて、集合を告げる赤旗が振られる。
その頃には、再び太陽は薄い雲の中に隠れてしまっていた。
そして、再びチャカつき、尻っぱねをする姿が目に入る。
息の詰まるような思いで、ファンファーレを迎えた。
こんな状態でゲートへの先入れとなる、内目の奇数枠。
最悪のことが目に浮かぶ。
ゲートが開き、それが現実となる。
やはり、出遅れた。
1コーナーを回るあたりでは、最後方より少し前あたり。
だが、気になるのはポジションよりも、内に閉じ込められていることだった。
1000m通過のラップタイムが表示され、59秒後半。
馬場状態とG1レースということを加味すれば、スローといっても過言ではない。
それなのに、まだ後方の内目を進んでいる。
最悪のシナリオが頭に浮かび、もう気が気ではなくなってくる。
3~4コーナーに入ってもまだ内を進みもう終わったかと思わせ、そのまま大欅で見えなくなる。
再び姿を現したとき、この馬は外に持ち出していた。
その姿が大写しになったとき、府中のスタンドが大きく揺れた。
そこから、先行集団に一瞬で取り付く脚は、いつものこの馬の走りだった。
ここから、快進撃が始まる。
4コーナーで大外を回ったこの馬は、直線入り口でさらに外に進路を取った。
このコース取りは、11年前のあの馬と同じだ。
そう思った瞬間、いつもの飛ぶような走りで加速を始めた。
職人のような騎乗で最内に進路を取り、先頭に踊り出ていた馬がいた。
だが、残り300mで、もうその馬は関係が無くなった。
大外の馬がついに先頭に踊り出た。
ここで、スタンドの心が一つとなる。
みんな、心待ちにしていたこの光景を前に、この馬だけに声援を送る。
その声援に押されるように、この馬は飛ぶように前へ前へと突き進んで行く。
周りに、他の馬は全くいない。
そのまま、津波のような大歓声に送られながら、栄光のゴールを駆け抜けた。
レース前の不安、そしてレース中の不安。
そんなものが無かったかのような、想像以上の大楽勝。
ここで、私はようやく息をつくことができた。
と、同時に歴史的瞬間に立ち会えた喜びに、体中が震えた。
ウイニングランでは、地鳴りのような歓声に迎えられ、競馬場全体で祝福していた。
誰もが嬉しそうだった。
競馬界のお祭りが最高の形で幕を閉じた。
普通はレースが終われば、皆帰路に着くためスタンドを後にする。
だが、この日は誰も帰ろうとはしなかった。
表彰式では、普通では考えられないくらいの大歓声で勝者が迎えられた。
そして、口取りの写真の時、鞍上の男が指を2本立てて、残ったファン達を大きく沸かせた。
本当に久々に現れた、周囲の期待に応えてくれる馬。
いや、期待以上の走りを見せてくれる。
人気と実力を兼ね備えた、本当のスパースターが誕生した。
この歴史的瞬間に立ち会えたことは、私の一生の宝物となるだろう。