報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

プロテスター

2007年07月07日 18時38分18秒 | ■時事・評論






























「今日は雨に水を差されたが、われわれは来週また戻ってくる」

そう言い残して反軍政デモは豪雨の中、陸軍司令部前で解散した。
そして約束どおり次の日曜もデモ隊は司令部前に戻ってきた。
ただし、規模は約6000から約1000に減っていた。
最大で2万人規模のデモも行なわれたようだが。

デモを見物するバンコク市民は意外と少ない。
後日、タイ人の知人には必ずデモについて訊ねた。
「デモ参加者は、タクシンから日当をもらってるのさ」
「日当300バーツと食事飲料つきで、バスに乗って地方からやってくる」
というのが総合的な認識だ。
「地方のあるタクシー会社は、ドライバーを動員している」
という話もあった。

「タクシン前首相がタイに帰ってくるという話もあるが」
と訊くと、
「とんでもない、ごめんだね」
とみなが顔をゆがめて応えた。
タクシン前首相がポケットマネーでマンチェスター・シティ(イギリスのプロサッカーチーム)を買収することもタクシン氏への反感を増幅しているようだ。自分のお金だから何を買おうが自由ではあるが、タイミングとしては最悪と言える。

タクシン前首相に対するこうした拒絶反応は都市部と富裕層にその傾向が強い。タクシン政権の急成長・巨大プロジェクト政策はタイの国内資本にはそれほど恩恵を与えていなかったからだろう。

タクシン前首相は、汚職と腐敗にまみれていた。それによって首相の座を追われたことになっているが、それはたてまえ上の理由にすぎない。いま、タクシン氏がアメリカやヨーロッパ、中国で歓迎されているのは、彼が大金持ちだからという理由ではなく、そうした国々の利益を代表していた人物だったからだろう。イギリスのサッカーチームを所有できるのは、そのご褒美であり、この機会を逃したくなかったのかもしれない。

前タクシン政権は都市部と富裕層の支持は期待できなかった。そのため地方での支持基盤を磐石にする必要があり、地方部に対する手厚い政策を行なった。貧困層への低利貸付や30バーツ(約100円)医療を実施した。日本の真似をしたのか一村一品運動も行った。眉目を引く政策を実施することによって、地方の景況感期待感を押し上げ圧倒的支持につなげることに成功した。

しかし、タクシン政権下の地方政策は、さまざまな弊害を引き起こしていた。特に30バーツ医療によって、医療施設に人が殺到し、医療の質の低下を引き起こした。地方から医師が逃げ出しているとも聞く。結局のところ、人気取りのための場当たり的な政策だったと言える。

いまでも地方部でのタクシン氏の人気は絶大と言ってよい。
日曜の反軍政デモは、当分のあいだ恒例となるのかもしれない。



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