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タイ: 効果のないバーツ高対策

2007年08月10日 22時24分36秒 | ■時事・評論
タイのバーツ高が進んでいる。
現在、バンコクの為替取引所で1ドルが33バーツ台となっている。
4月から6月にかけては34バーツ台が続いていたのだが、ツーリスト・シーズンに入ったとたん狙いすましたようにバーツ高が進行しはじめた。

バーツ高による企業倒産や廃業も発生し、タイ経済界には不安感が充満している。暫定政権は「人望」はあるのだが、経済運営能力は疑問視されている。暫定政権のバーツ高抑制政策がまったく効果がないからだ。

短期資本の規制(のち撤回)、金利下げ、財政政策などのバーツ高対策を打ち出してきたが、7月には新たに「外貨保有規制を緩和」する政策を打ち出した。しかし、これも効果は期待できない。バーツ高の原因を探らなければ真の対策はできない。

タイの貿易黒字や海外からの投機的マネーの流入といった要素が本当にバーツの高騰を引き起こしているのだろうか。それらはバーツ高の要素ではあるが、主因とは思えない。他のアジア諸国の為替も2006年はじめから上昇しはじめているが、そのころはバーツはほぼ歩調を合わせるような動きでしかなかった。しかし、2006年9月に政変が起こり、2007年に入った途端バーツだけが急速に上昇した。

現在のタイは、欧米社会が非難するところの”クーデター”によって誕生した軍事政権下にある。それだけでなく(日本ではほとんど報道されていないが)南部の三県では頻繁に爆弾事件や襲撃事件が発生している。約3年間で2000人以上の死者が出ている。残忍な斬首事件も30件をこえている。公務員、教員、仏僧などが主に狙われている。教員には武装許可もでており、射撃訓練も行なわれている。また、道路わきに仕掛けられたIED(簡易爆弾)によってタイ軍の車両が何度も攻撃され、死者を出している。このような攻撃方法が用いられているのは、他にイラクとアフガニスタンくらいだ。タイはそれくらい異常な状況下にあるのだ。

そのような「不安定国」の通貨が高値を更新し続けているのは、とても不可解だ。海外からの投機的マネーの流入だけでこのような通貨高が起こるとは思えない。たとえ、そこに意図的な作為が働いているとしても、それだけで「不安定国」の通貨を高値に維持し続けられるだろうか。

かつて日本も円高を経験し、苦しんだ。95年には1ドルが79.85円という驚異的な円高を記録した。翌96年に「金融ビックバン」という金融の規制緩和が行なわれた。この円高、超円高は日本の金融市場を外国資本に開放させるために仕組まれたものだったと考えられている。では、あの超円高は一体どのようにして引き起こされたのだろうか。

大蔵省が大規模な市場介入を日銀に要請した95年1月を振り返ってみよう。大蔵省は少なくとも4カ月続けてドル買いに毎月200億ドルを投じるよう日銀に要請した。円相場は95年1月に1ドル=101円で始まったが、4カ月と経たないうちに過去最高の1ドル=79.75円に上昇した。史上最大の外為市場への介入は意図とは反対の結果をもたらしたのである。
(中略)
日銀は大蔵省の要請通り米国債を購入しているが、そのために必要な円を創出してこなかった。そのかわり、日銀は国内市場で日本国債など他の資産を売却しており、ドルを買うために国内経済から円を吸い上げたのである。これは不胎化と呼ばれる。円の総量は増えないため、円安にはならない。不胎化された外為市場の介入は、効果が長続きしないまま継続された。95年3月、日銀が過去最大の市場介入を過度に不胎化し、経済システムから資金量を純減させ、(中略)大蔵省の円安誘導政策を事実上妨害した。円安誘導を目指した大蔵省の必死の試みにもかかわらず、95年4月に円相場が1ドル=80円まで上昇したのはこのためである。
(中略)
大蔵省は日銀が長年にわたって為替政策を愚弄してきたことにそろそろ気付いても良い頃である。大蔵省は効果のない外為市場への介入にエネルギーを費やすのを止めて、日銀がなぜ政策を妨害することができたのか調査すべきである。日銀が円相場を1ドル=80円に押し上げた95年には旧日銀法が施行されており、その第1条で、日銀は政府の打ち出す政策を支持しなくてはならないと明記されていたのである。
週刊エコノミスト 平成11年7月13日号
リチャード・A・ヴェルナー

http://www.profitresearch.co.jp/j/articles/economist_j/a_econ_july98j.htm

日本の円高の事例を参考にすると、現在のタイでも同じことが起こっている可能性が高い。短期資本規制や金利下げ、財政政策がなんの効果もないのはこのためだろう。外貨保有を解禁しても結果は同じことだ。タイの中央銀行が国内経済からバーツを回収していると考えられる。軍事暫定政権をゆさぶるために意図的にタイ経済にダメージを与えているのだ。1997年のアジア通貨経済危機の時も、タイの中央銀行はタイ経済を破壊する仕事に協力しているようだ。

1990年代初め、韓国、タイ、インドネシアの中央銀行が80年代の日本銀行と同じ政策をとりはじめた。法律にはない銀行貸出「指導」を活用して、銀行に不動産投機への過剰な投資をおこなわせた。中央銀行が割高な為替レートを維持して、国内金利を外国より高めに設定したために、投機家には外国からの借入れへのインセンティブが与えられた。記録的な額のドルがこの地域に流れ込み、資産バブルの火に油を注いで、事態はいっそう危険をはらんだ。1997年、投資家が撤退した。同時に中央銀行は民間銀行に信用創造の制限を強制した。バブルははじけた。

迅速に変動為替相場制に移行するかわりに、中央銀行は相当額の外貨準備を無駄に費やした。中央銀行がさらに信用創造を抑制し、危機は不況へとつながった。支援を求められた国際通貨基金は、経済構造と国法の大幅な変革を要求した。その目標は、アジア経済を改革してアメリカ流の自由市場を採り入れたがっている中央銀行と同じだった。さらに彼らは法的独立の達成も望んだ。中央銀行法が改正されると、中央銀行はただちに通貨供給を増加させて、危機を終息させた。
『円の支配者』リチャード・A・ヴェルナー著

IMFは被援助国の中央銀行を法的に「独立」させ、そして国家の管理から離れた中央銀行をIMFの支配下に置く。以後、IMFが中央銀行を自在に操れるのだ。通貨政策は中央銀行が行ない、政府に対しては説明責任を持たない。つまり、当該国政府は法律を改正しない限り、以後永遠に独自の通貨政策ができなくなるのだ。

第三世界と東欧の中央銀行は、大部分がパリ・クラブ(債権国会議)とロンドン・クラブ(民間債権団)の代理者といえるIMFの統制圏に入っている。
(中略)
このような事態が示唆する点は、各国の中央銀行がこれ以上生産促進や雇用創出のような、その国の広範な利益を目標として、通貨発行を調節することができなくなった、ということである。
(中略)
ロシア連邦の場合、IMFが国営企業に対する中央銀行の与信発給を規制することを要求した措置は、一九九二年以来ロシア経済の全部門が瓦解し始めた時と直結している。
『貧困の世界化』ミシェル・チョスドフスキー著

タイの暫定政府の通貨経済政策は、財務相、副首相兼工業相、そして中央銀行総裁が協議して決定している。しかし、タイ中央銀行が暫定政府の見えないところで、バーツを減少させているとすれば、どのような政策も無意味といえる。これこそがバーツ高の主因なのではないのか。海外からの投機的マネーはダミーなのかもしれない。

いまや暫定政権の支持率は急降下し、信任を失いつつある。日本の大蔵省も日本銀行の行動をついに見破れず、バブルとその崩壊、その後の長期的不況の全ての責任を負わされて、消滅した。

タイ暫定政権は、中央銀行が繰り出す小手先の通貨政策などにごまかされず、中央銀行から通貨政策の権限を取り戻すべきだ。このままでは、暫定政権がすべての責任を負わされて、消滅するしかない。



タイ政府がバーツ高抑制策を発表、外貨保有規制の緩和など
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-27031220070724
バーツ高対策、個人のドル口座解禁か
http://www.newsclip.be/news/2007719_012521.html
タイの外国人事業法改正案、強硬論に押され撤回
http://www.newsclip.be/news/2007809_014481.html
タイ財閥系靴メーカー、バーツ高で廃業
http://www.newsclip.be/news/2007801_014304.html
タイ財務相と中銀総裁、バーツ高について協議へ
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/JAPAN-268574.html?C=S
タリサ・ワタナケート中央銀行総裁 略歴
http://www.geocities.jp/noby_thai/biographical_dictionary/tarisa_watanagase.html
効果のない日銀の為替市場介入
(記事・論文の閲覧には無料登録が必要)
http://www.profitresearch.co.jp/j/index.shtml
http://www.profitresearch.co.jp/j/articles/economist_j/a_econ_july98j.htm
『円の支配者』リチャード・A・ヴェルナー著
http://www.amazon.co.jp/
『貧困の世界化』ミシェル・チョスドフスキー著
http://www.amazon.co.jp/
ジャンル:
経済
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