第40話「ニュータイプ・シャリアブル」
ホワイトベースは補給と整備のためにソロモンに入港する。
テキサスでの出来事はセイラを疲弊させていた。シャアから贈られた金塊を前にセイラの心は晴れない。
アムロはそんなセイラのことが気になる。「僕にできることがあれば言ってください」「そうね、赤い彗星のシャアを討ち取ってほしいかな。あなたならできるわ」とセイラは素っ気ない。
ホワイトベースでは、ハヤトがリハビリに励んでいた。見守るフラウボウに対して「アムロに負けたくない気持ちでやってきた。だけど、今はもっと強くなって守るべきものを守りたい」と思いを打ち明ける。
カスバルはカイに鍛えられていた。ジオンのテキサス侵攻に対して仲間を失い、カスバル自身も重傷を負った。ジオンに恨みを晴らしたいと言うカスバルに対して、カイは「復讐なんてろくなもんじゃねえぞ」と告げる。。
ブライトはソロモンで月面攻撃艦隊を編成中のレビル将軍と謁見する。
「ニュータイプと呼ばれる人間がいることを知っているか」レビルはニュータイプ感を語る。スペースノイドとして人類が進化した新たな理想。
既にジオンでは、ニュータイプの研究が進んでいるという。「人類の理想の進化系が戦争で消費されていくことを哀しく感じます」ブライトもレビルもアムロの存在を気にかけていた。
「だが、我々のような旧人類が生き残るためにはニュータイプの力を借りねばならんのだな」レビルはホワイトベース隊に、ルナツー戦線への援護出撃を命じる。
その頃、ジオン本国にはジュピター船団の第一便が到着していた。ジュピター船団とは木星からの資源輸送を目的とした部隊である。
ギレンは第一便に搭乗していたシャリアブル大尉と謁見する。ジュピター船団にはニュータイプと目される人材が多数いるという。
「ニュータイプというものに会ってみたくてな」と興味を示すギレンではあるが、意に介していないことをシャリアブルは見抜いていた。
「キシリア殿のもとへ行けと?」「人の心を読むものではないな。この大戦では人が死にすぎた」
ギレンが抱くキシリアに対する思惑と、与えられた自分の役割に対して、シャリアブルは黙って従う。
キシリアのもとでシャリアブルはシャアと合流する。パッカデリアはかつての上司であるシャリアブルとの再会を喜んでみせるものの、ララアはパッカデリアからどす黒いものを感じる。
シャアはシャリアブルに対して「ガンタンクのパイロットはニュータイプと思われる。貴公の目でそれを確かめてみてくれ」と、ブラウブロで出撃させる。
シャリアブルの置かれた立場を感じ取っていたララアは援護出撃を申し出るが、シャアは「彼に花を持たせてやれ」とそれを却下する。シャリアブルは捨て駒であり、ギレンの本命は、ジュピター船団第2便でやってくるゴラ大尉だということをシャアは察していた。
ソロモンを発進したホワイトベースに、シャリアブルの乗るブラウブロが襲いかかる。見えないところから発射される有線式ビーム砲を前に、ガンキャノンでは全く歯が立たない。
だが、アムロにはその軌道が読めた。シャリアブルもまた、アムロの巨大な力を感じ、呼応するようにオールレンジ攻撃を仕掛ける。
五分の戦いに終止符を打ったのは「どいつもこいつもニュータイプなんて言いやがって」と苛立つパッカデリアの介入だった。お互いに武装を失ったアムロとシャリアブルはそれぞれ撤退する。なおも追撃してくるパッカデリアのガルバリディを撤退に追い込んだのは、コアブースターでガンキャノンの援護に回っていたカスバルだった。初めて出会った時と同様に、パッカデリアは頭痛を起こす。
命拾いしたシャリアブルは「ニュータイプどうしがつぶし合うことが地球人の望みなのだろうか」と独り言ちる。
第41話「ルナツー戦線異常あり」
ルナツーでは、ワッケインの援軍を得たハムスキー提督率いる連邦防衛軍と、自ら前線に立つ勇将ダルのジオン攻撃軍が一進一退の攻防を続けていた。
ギレンは月基地グラナダに陣取るキシリアにルナツーへの援軍を要請する。「木星からの第二便の到着でようやくあれが完成する。それまでは連邦の目を逸らしておく必要がある」「あれとは何ですかな?」「ビグザムに搭載した大型メガ粒子砲があっただろう。あれを応用したものだ。戦果はドズルが示してくれた」
弟さえ自分の野望に利用するギレンにキシリアは不信感を抱きながらも、シャアにルナツーへの援軍を命じる。
「シャリアブルが敗れたようだな。次こそは女を使え」キシリアはニュータイプにはニュータイプをぶつけるしかないと考えていた。そんなキシリアに対して、シャアは「エルメスの調整が間に合えば」と言葉を濁す。
パッカデリアの頭痛を検査したフラナガンは、シャアとシャリアブルにパッカデリアが木星の過酷な環境が生み出したサイコパスであることを告げる。シャリアブルは、パッカデリアが木星で生死の境をさまよう事故にあい、それ以来、異常に感覚が鋭くなったことを打ち明ける。
ニュータイプが人類の進化の途上ならば、半エスパーは道を外れた奇形児に過ぎない。そして、突出した能力は身体にひずみをもたらす。それが頭痛の正体であり、シャリアブルはパッカデリアのことを考えるならば、もう戦わせるべきではないとシャアに忠告する。
勇将ダルはホワイトベースの接近をキャッチした。ダルには弟であるランバラルの仇討ちがあった。岩礁地帯に拠点攻略用モビルスーツガッシャの部隊を忍ばせて迎え撃つ。
ダル艦隊に対して、ホワイトベースからはガンタンク、ガンキャノン、そしてセイラのガンダムが発進し、ハヤトもまたコアブースターで出撃する。遅れて到着したザンジバルからもシャアがルナツーへ向けて部隊を展開する。
岩礁から軌道を描いて砲撃してくるガッシャの山越えハンマーに翻弄されるホワイトベース隊だが、ガッシャの動きを察知したカスバルがスレッガーの残したGパーツで発進する。
「アムロさん!それよりGパーツと合体するんです。ガンタンクブルで敵を撃ち抜きましょう!」
アムロはカスバルから湧きでる波動を感じていた。
セイラのガンダムは岩礁の陰にガッシャを見出すものの、ガッシャを警護するダルの宙間戦闘用グフに返討にあう。
だが、ダルがセイラにとどめを刺そうとした瞬間、「そのお方を傷つけてはいけない」というランバラルの声を聴く。その隙にガンタンクブルがガッシャを守る岩礁を破壊し、その破片にハチの巣にされたダルは宇宙空間に放り出される。
ダルの敗北に、防戦に徹していたルナツーのモビルスーツ部隊が攻勢に転じる。
キシリアは「十分にギレン総帥への義理は果たせた。ルナツーはもうよい。グラナダへ戻れ」と、シャアを撤退させる。撤退間際にシャアは爆発から免れた勇将ダルを回収した。
戦いが終わり、アムロは怪我を負ったセイラを見舞う。「アムロが助けてくれなければ私はやられていた。あなたはエスパーかもしれない」
それはアムロがかつてマチルダから聞いた言葉だった。
一方、活躍を見せたカスバルは頭痛に襲われていた。
第42話「敗北のシャア」
舞台はグラナダ攻防戦に移る。
グラナダではレビル艦隊の接近をキャッチしていた。「兄上は月まで犠牲にする気か」とキシリアは戦力の分散化を悔やみ、シャリアブルに「貴公もニュータイプならば連邦の古い連中を駆逐してみせよ」と防衛網の要になることを命じていた。シャリアブルは拝領するとともに「この意味が分かるな」というギレンの言葉を思い出していた。
ザンジバル艦内でシャアと遭遇したダルは、キャスバルレムダイクンの影を感じる。ダルからの報告を受けたキシリアはグラナダに戻ったシャアに「私は子供の頃のキャスバル坊やと遊んであげたことがあるのだよ」とその正体を見抜く。
「私を討ちたくばガルマのように討つがいい。だが、私がいなければグラナダは連邦の手に落ちる。連邦との雌雄を決してからでも遅くはあるまい」
だが、今のシャアは既に仇討ちには拘りはなかった。ニュータイプが導く世界を見たいというシャアに、キシリアはジオンを暗殺した父デギンの罪滅ぼしにそれくらいの力は貸そうと約束をする。そして、一番の懸念であるホワイトベース打倒の先鋒として、シャアに出撃を命じる。
ホワイトベースでは、セイラがブライトを呼び出していた。そして、ブライトに自らの素性を明かし、シャアから贈られた金塊を皆に分けてくれるように頼む。セイラがジオンズムダイクンの娘であることに驚くブライトだが、兄であるシャアを鬼子と呼び、暴走を自らの手で止めたいというセイラの願いを受け入れる。それがセイラにとってつらい選択だと理解したうえで。
補給のためにソロモンに到着したホワイトベースを待っていたのは、モスクハン博士だった。モスクハンはガンタンクの可動部を電磁で包むマグネットコーティングの技術とボップミサイルの試作型を持ち込んでいた。
マグネットコーティングの技術は、サイド6で見せたガンタンクの戦いからヒントを得たテムレイが、モスクハンに託したものだった。酸素欠乏症にかかっていたテムレイはわずかに残された理性からマグネットコーティング理論を完成させたが、その後はサイド6から姿を消したという。アムロは父がこの戦いをどこかで見ているような気がした。
試作型ボップミサイルについては、モスクハンは「提供者は言えない」とし、「まだ試作型だ。生きのびて実戦データを持ち帰ってくれよ」とガンタンクに装填する。
出航したホワイトベースと待ち構えていたザンジバルが交戦状態に入る。「アムロとやらがニュータイプならば、その可能性を自ら探って見せるか」と、シャアはパッカデリアのガリバルディを従えてゲルググで出撃する。
パッカデリアの援護でアムロと一騎打ちに持ち込んだシャアだが、既にゲルググではガンタンクに退けを取るようになっていた。ゲルググのビーム長刀を交わし、ガンタンクネイルでゲルググを追い込む。
「貴様は危険すぎる。ララアとまみえさせるわけにはいかんのだよ」「ララアとは一体何だ!」シャアとアムロは機体越しに交信する。シャアはアムロには勝てないことを自覚し始めていた。
一方、パッカデリアと交戦するカスバルは互角以上の戦いを見せた。カスバルはパッカデリアが「あのパイロットも半エスパーだと言うのか」と驚くほど、勘の鋭さを見せていた。
だが、パッカデリアとカスバルが接触すると同時に二人を頭痛が襲う。カスバルはハヤトに、パッカデリアはシャアに無断で出撃したララアのエルメスに救われる。「なぜ僕を助けた?」「あなたは戦ってはいけない人だから」パッカデリアは自分の力のなさに涙を流す。
こうしてモビルスーツ部隊を蹴散らされたザンジバルは、シャアたちを回収してグラナダへと撤退する。
そして、レビル率いる連邦軍のグラナダ攻略作戦が開始される。アムロのガンタンクに迫るのは、シャリアブルのブラウブロである。
第43話「グラナダ陥落」
レビル艦隊による月面侵攻が始まった。シャリアブルはホワイトベースの進撃を阻もうとするが、アムロがブラウブロを抑え込んでいる間に、ハヤトのガンダムとカイのガンキャノンがグラナダ降下を果たす。
無数の量産型ガンタンクが降下する中、キシリアもアッザム改と量産型ガリバルディを繰り出して防戦する。「ゲルググの量産は間に合わずか」と、キシリアはジオン本国からの援軍がないことに、ソロモンで単身散ったドズルの気持ちを理解し始めていた。
アッザム改の猛威に苦戦する連邦軍だが、アッザムリーダー射出時に対空ががら空きになる弱点を突いたカスバルがコアブースターで突破口を開く。
先の戦いでゲルググを失ったシャアはアッザム部隊の指揮をとりながらも、既にグラナダの陥落を予測していた。防衛線でガンダムを相手に奮戦するパッカデリアは、ララアを出撃させないシャアを訝しむ。そのパッカデリアの逡巡の隙をついて、ガンダムとガンキャノンの連携の前にガリバルディは敗れ去り、パッカデリアは脱出する。
月軌道上ではアムロとシャリアブルの交戦が続いていた。ブラウブロはオールレンジ攻撃でガンタンクの接近を許さないが、アムロもたくみに攻撃をかわしていく。
脳波で二人の意思が交錯する。
「ニュータイプ同士が戦う必要があるのか」「人類の進化に闘争が含まれているとしたらそれもありうるのだ」
シャアの傍に仕えるララアも、シャリアブルとアムロのしのぎ合いを感じていた。ララアは二人の孤独を察する。「私もシャリア大尉のようになるのでしょうか」「何を言っている?」シャアにはララアの心が読めなかった。
ガンタンクがブラウブロの左半身を破壊するが、ブラウブロもまたガンタンクの右腕と頭部を吹き飛ばす。
アムロは最後に残された武装である試作型ボップミサイルを放つ。アムロの脳波を受信して軌道を変えたミサイルはブラウブロを粉砕する。
シャリアブルが命を散らす瞬間、アムロとララア、そしてシャアもまた「ニュータイプ同士がつぶし合うこと、それが古い地球人たちの理想なのだろう」との声を聞く。
連邦軍は、ガリバルディ部隊をせん滅してグラナダ内部にまで侵攻を始めた。敗北を悟ったキシリアはグラナダの放棄を決定し、自らはジオン本国への脱出を図る。
その前にシャアが立ちはだかる。「シャリアブル大尉、これが君の望みだったのだろう」と、シャアはキシリアをバズーカで撃ち抜く。
こうして、グラナダは陥落し、シャアはララア、パッカデリア、フラナガン、勇将ダルらを連れて脱出した。
「キシリア殿は名誉の戦死を遂げました」とジオン本国に座すギレンに通信するシャアだが、その背後には「キシリア殿を討ったのはシャアに間違いない」と察する男がいた。ジュピター船団第2便に搭乗していたゴラ大尉である。
月面が落ち、「潮時か」とデギンはギレンに対して連邦との和平を進言する。しかし、ギレンは一蹴する。ジオン最終兵器が完成しつつあったからである。
ホワイトベースは補給と整備のためにソロモンに入港する。
テキサスでの出来事はセイラを疲弊させていた。シャアから贈られた金塊を前にセイラの心は晴れない。
アムロはそんなセイラのことが気になる。「僕にできることがあれば言ってください」「そうね、赤い彗星のシャアを討ち取ってほしいかな。あなたならできるわ」とセイラは素っ気ない。
ホワイトベースでは、ハヤトがリハビリに励んでいた。見守るフラウボウに対して「アムロに負けたくない気持ちでやってきた。だけど、今はもっと強くなって守るべきものを守りたい」と思いを打ち明ける。
カスバルはカイに鍛えられていた。ジオンのテキサス侵攻に対して仲間を失い、カスバル自身も重傷を負った。ジオンに恨みを晴らしたいと言うカスバルに対して、カイは「復讐なんてろくなもんじゃねえぞ」と告げる。。
ブライトはソロモンで月面攻撃艦隊を編成中のレビル将軍と謁見する。
「ニュータイプと呼ばれる人間がいることを知っているか」レビルはニュータイプ感を語る。スペースノイドとして人類が進化した新たな理想。
既にジオンでは、ニュータイプの研究が進んでいるという。「人類の理想の進化系が戦争で消費されていくことを哀しく感じます」ブライトもレビルもアムロの存在を気にかけていた。
「だが、我々のような旧人類が生き残るためにはニュータイプの力を借りねばならんのだな」レビルはホワイトベース隊に、ルナツー戦線への援護出撃を命じる。
その頃、ジオン本国にはジュピター船団の第一便が到着していた。ジュピター船団とは木星からの資源輸送を目的とした部隊である。
ギレンは第一便に搭乗していたシャリアブル大尉と謁見する。ジュピター船団にはニュータイプと目される人材が多数いるという。
「ニュータイプというものに会ってみたくてな」と興味を示すギレンではあるが、意に介していないことをシャリアブルは見抜いていた。
「キシリア殿のもとへ行けと?」「人の心を読むものではないな。この大戦では人が死にすぎた」
ギレンが抱くキシリアに対する思惑と、与えられた自分の役割に対して、シャリアブルは黙って従う。
キシリアのもとでシャリアブルはシャアと合流する。パッカデリアはかつての上司であるシャリアブルとの再会を喜んでみせるものの、ララアはパッカデリアからどす黒いものを感じる。
シャアはシャリアブルに対して「ガンタンクのパイロットはニュータイプと思われる。貴公の目でそれを確かめてみてくれ」と、ブラウブロで出撃させる。
シャリアブルの置かれた立場を感じ取っていたララアは援護出撃を申し出るが、シャアは「彼に花を持たせてやれ」とそれを却下する。シャリアブルは捨て駒であり、ギレンの本命は、ジュピター船団第2便でやってくるゴラ大尉だということをシャアは察していた。
ソロモンを発進したホワイトベースに、シャリアブルの乗るブラウブロが襲いかかる。見えないところから発射される有線式ビーム砲を前に、ガンキャノンでは全く歯が立たない。
だが、アムロにはその軌道が読めた。シャリアブルもまた、アムロの巨大な力を感じ、呼応するようにオールレンジ攻撃を仕掛ける。
五分の戦いに終止符を打ったのは「どいつもこいつもニュータイプなんて言いやがって」と苛立つパッカデリアの介入だった。お互いに武装を失ったアムロとシャリアブルはそれぞれ撤退する。なおも追撃してくるパッカデリアのガルバリディを撤退に追い込んだのは、コアブースターでガンキャノンの援護に回っていたカスバルだった。初めて出会った時と同様に、パッカデリアは頭痛を起こす。
命拾いしたシャリアブルは「ニュータイプどうしがつぶし合うことが地球人の望みなのだろうか」と独り言ちる。
第41話「ルナツー戦線異常あり」
ルナツーでは、ワッケインの援軍を得たハムスキー提督率いる連邦防衛軍と、自ら前線に立つ勇将ダルのジオン攻撃軍が一進一退の攻防を続けていた。
ギレンは月基地グラナダに陣取るキシリアにルナツーへの援軍を要請する。「木星からの第二便の到着でようやくあれが完成する。それまでは連邦の目を逸らしておく必要がある」「あれとは何ですかな?」「ビグザムに搭載した大型メガ粒子砲があっただろう。あれを応用したものだ。戦果はドズルが示してくれた」
弟さえ自分の野望に利用するギレンにキシリアは不信感を抱きながらも、シャアにルナツーへの援軍を命じる。
「シャリアブルが敗れたようだな。次こそは女を使え」キシリアはニュータイプにはニュータイプをぶつけるしかないと考えていた。そんなキシリアに対して、シャアは「エルメスの調整が間に合えば」と言葉を濁す。
パッカデリアの頭痛を検査したフラナガンは、シャアとシャリアブルにパッカデリアが木星の過酷な環境が生み出したサイコパスであることを告げる。シャリアブルは、パッカデリアが木星で生死の境をさまよう事故にあい、それ以来、異常に感覚が鋭くなったことを打ち明ける。
ニュータイプが人類の進化の途上ならば、半エスパーは道を外れた奇形児に過ぎない。そして、突出した能力は身体にひずみをもたらす。それが頭痛の正体であり、シャリアブルはパッカデリアのことを考えるならば、もう戦わせるべきではないとシャアに忠告する。
勇将ダルはホワイトベースの接近をキャッチした。ダルには弟であるランバラルの仇討ちがあった。岩礁地帯に拠点攻略用モビルスーツガッシャの部隊を忍ばせて迎え撃つ。
ダル艦隊に対して、ホワイトベースからはガンタンク、ガンキャノン、そしてセイラのガンダムが発進し、ハヤトもまたコアブースターで出撃する。遅れて到着したザンジバルからもシャアがルナツーへ向けて部隊を展開する。
岩礁から軌道を描いて砲撃してくるガッシャの山越えハンマーに翻弄されるホワイトベース隊だが、ガッシャの動きを察知したカスバルがスレッガーの残したGパーツで発進する。
「アムロさん!それよりGパーツと合体するんです。ガンタンクブルで敵を撃ち抜きましょう!」
アムロはカスバルから湧きでる波動を感じていた。
セイラのガンダムは岩礁の陰にガッシャを見出すものの、ガッシャを警護するダルの宙間戦闘用グフに返討にあう。
だが、ダルがセイラにとどめを刺そうとした瞬間、「そのお方を傷つけてはいけない」というランバラルの声を聴く。その隙にガンタンクブルがガッシャを守る岩礁を破壊し、その破片にハチの巣にされたダルは宇宙空間に放り出される。
ダルの敗北に、防戦に徹していたルナツーのモビルスーツ部隊が攻勢に転じる。
キシリアは「十分にギレン総帥への義理は果たせた。ルナツーはもうよい。グラナダへ戻れ」と、シャアを撤退させる。撤退間際にシャアは爆発から免れた勇将ダルを回収した。
戦いが終わり、アムロは怪我を負ったセイラを見舞う。「アムロが助けてくれなければ私はやられていた。あなたはエスパーかもしれない」
それはアムロがかつてマチルダから聞いた言葉だった。
一方、活躍を見せたカスバルは頭痛に襲われていた。
第42話「敗北のシャア」
舞台はグラナダ攻防戦に移る。
グラナダではレビル艦隊の接近をキャッチしていた。「兄上は月まで犠牲にする気か」とキシリアは戦力の分散化を悔やみ、シャリアブルに「貴公もニュータイプならば連邦の古い連中を駆逐してみせよ」と防衛網の要になることを命じていた。シャリアブルは拝領するとともに「この意味が分かるな」というギレンの言葉を思い出していた。
ザンジバル艦内でシャアと遭遇したダルは、キャスバルレムダイクンの影を感じる。ダルからの報告を受けたキシリアはグラナダに戻ったシャアに「私は子供の頃のキャスバル坊やと遊んであげたことがあるのだよ」とその正体を見抜く。
「私を討ちたくばガルマのように討つがいい。だが、私がいなければグラナダは連邦の手に落ちる。連邦との雌雄を決してからでも遅くはあるまい」
だが、今のシャアは既に仇討ちには拘りはなかった。ニュータイプが導く世界を見たいというシャアに、キシリアはジオンを暗殺した父デギンの罪滅ぼしにそれくらいの力は貸そうと約束をする。そして、一番の懸念であるホワイトベース打倒の先鋒として、シャアに出撃を命じる。
ホワイトベースでは、セイラがブライトを呼び出していた。そして、ブライトに自らの素性を明かし、シャアから贈られた金塊を皆に分けてくれるように頼む。セイラがジオンズムダイクンの娘であることに驚くブライトだが、兄であるシャアを鬼子と呼び、暴走を自らの手で止めたいというセイラの願いを受け入れる。それがセイラにとってつらい選択だと理解したうえで。
補給のためにソロモンに到着したホワイトベースを待っていたのは、モスクハン博士だった。モスクハンはガンタンクの可動部を電磁で包むマグネットコーティングの技術とボップミサイルの試作型を持ち込んでいた。
マグネットコーティングの技術は、サイド6で見せたガンタンクの戦いからヒントを得たテムレイが、モスクハンに託したものだった。酸素欠乏症にかかっていたテムレイはわずかに残された理性からマグネットコーティング理論を完成させたが、その後はサイド6から姿を消したという。アムロは父がこの戦いをどこかで見ているような気がした。
試作型ボップミサイルについては、モスクハンは「提供者は言えない」とし、「まだ試作型だ。生きのびて実戦データを持ち帰ってくれよ」とガンタンクに装填する。
出航したホワイトベースと待ち構えていたザンジバルが交戦状態に入る。「アムロとやらがニュータイプならば、その可能性を自ら探って見せるか」と、シャアはパッカデリアのガリバルディを従えてゲルググで出撃する。
パッカデリアの援護でアムロと一騎打ちに持ち込んだシャアだが、既にゲルググではガンタンクに退けを取るようになっていた。ゲルググのビーム長刀を交わし、ガンタンクネイルでゲルググを追い込む。
「貴様は危険すぎる。ララアとまみえさせるわけにはいかんのだよ」「ララアとは一体何だ!」シャアとアムロは機体越しに交信する。シャアはアムロには勝てないことを自覚し始めていた。
一方、パッカデリアと交戦するカスバルは互角以上の戦いを見せた。カスバルはパッカデリアが「あのパイロットも半エスパーだと言うのか」と驚くほど、勘の鋭さを見せていた。
だが、パッカデリアとカスバルが接触すると同時に二人を頭痛が襲う。カスバルはハヤトに、パッカデリアはシャアに無断で出撃したララアのエルメスに救われる。「なぜ僕を助けた?」「あなたは戦ってはいけない人だから」パッカデリアは自分の力のなさに涙を流す。
こうしてモビルスーツ部隊を蹴散らされたザンジバルは、シャアたちを回収してグラナダへと撤退する。
そして、レビル率いる連邦軍のグラナダ攻略作戦が開始される。アムロのガンタンクに迫るのは、シャリアブルのブラウブロである。
第43話「グラナダ陥落」
レビル艦隊による月面侵攻が始まった。シャリアブルはホワイトベースの進撃を阻もうとするが、アムロがブラウブロを抑え込んでいる間に、ハヤトのガンダムとカイのガンキャノンがグラナダ降下を果たす。
無数の量産型ガンタンクが降下する中、キシリアもアッザム改と量産型ガリバルディを繰り出して防戦する。「ゲルググの量産は間に合わずか」と、キシリアはジオン本国からの援軍がないことに、ソロモンで単身散ったドズルの気持ちを理解し始めていた。
アッザム改の猛威に苦戦する連邦軍だが、アッザムリーダー射出時に対空ががら空きになる弱点を突いたカスバルがコアブースターで突破口を開く。
先の戦いでゲルググを失ったシャアはアッザム部隊の指揮をとりながらも、既にグラナダの陥落を予測していた。防衛線でガンダムを相手に奮戦するパッカデリアは、ララアを出撃させないシャアを訝しむ。そのパッカデリアの逡巡の隙をついて、ガンダムとガンキャノンの連携の前にガリバルディは敗れ去り、パッカデリアは脱出する。
月軌道上ではアムロとシャリアブルの交戦が続いていた。ブラウブロはオールレンジ攻撃でガンタンクの接近を許さないが、アムロもたくみに攻撃をかわしていく。
脳波で二人の意思が交錯する。
「ニュータイプ同士が戦う必要があるのか」「人類の進化に闘争が含まれているとしたらそれもありうるのだ」
シャアの傍に仕えるララアも、シャリアブルとアムロのしのぎ合いを感じていた。ララアは二人の孤独を察する。「私もシャリア大尉のようになるのでしょうか」「何を言っている?」シャアにはララアの心が読めなかった。
ガンタンクがブラウブロの左半身を破壊するが、ブラウブロもまたガンタンクの右腕と頭部を吹き飛ばす。
アムロは最後に残された武装である試作型ボップミサイルを放つ。アムロの脳波を受信して軌道を変えたミサイルはブラウブロを粉砕する。
シャリアブルが命を散らす瞬間、アムロとララア、そしてシャアもまた「ニュータイプ同士がつぶし合うこと、それが古い地球人たちの理想なのだろう」との声を聞く。
連邦軍は、ガリバルディ部隊をせん滅してグラナダ内部にまで侵攻を始めた。敗北を悟ったキシリアはグラナダの放棄を決定し、自らはジオン本国への脱出を図る。
その前にシャアが立ちはだかる。「シャリアブル大尉、これが君の望みだったのだろう」と、シャアはキシリアをバズーカで撃ち抜く。
こうして、グラナダは陥落し、シャアはララア、パッカデリア、フラナガン、勇将ダルらを連れて脱出した。
「キシリア殿は名誉の戦死を遂げました」とジオン本国に座すギレンに通信するシャアだが、その背後には「キシリア殿を討ったのはシャアに間違いない」と察する男がいた。ジュピター船団第2便に搭乗していたゴラ大尉である。
月面が落ち、「潮時か」とデギンはギレンに対して連邦との和平を進言する。しかし、ギレンは一蹴する。ジオン最終兵器が完成しつつあったからである。