初紀伊国屋ホール、そして初Studio Lifeであります。
Studio Life 「ロミオとジュリエット」
5月24日 ソワレ
キャスト
“Erbe”
ロミオ:岩崎 大
ジュリエット:船見 和利
ティボルト:奥田 努
マキューシオ:坂本岳大
ベンヴォーリオ:小野健太郎
パリス:寺岡 哲
バルサザー:三上 俊
エイブラハム:下井 顕太郎
サムソン/僧ジョン他:深山 洋貴
ピータ/グレゴリー:大沼亮吉
キャピュレット家の召使:富士亮太、政宗
モンタギュー家の若者:高根 研一、荒木健太郎、関戸博一、吉田隆太
ティボルトの従者:曽世海児、荒木健太郎、仲原裕之
ロザライン:吉田隆太
モンタギュー:牧島進一
モンタギュー夫人:篠田仁志
キャピュレット:船戸慎士
キャピュレット夫人:林 勇輔
乳母:石飛幸治
薬屋:下井顕太郎
エスカラス大公:甲斐政彦
僧ロレンス:河内喜一郎
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本・演出:倉田淳
スタジオ・ライフという劇団名は前から知っていました。『トーマの心臓』をはじめ、『死の泉』、『月の子~Moon Child~』、『OZ』(魔法使いでも刑務所でもなく、樹なつみ原作のハードな近未来マンガ)など癖の強い少女漫画、長編小説をレパートリーに持つということ、そして男だけの劇団ということくらいで、平たく言えば、かなり色眼鏡で見ていました。何せ「耽美」が劇団のイメージとWikiにも書いてありましたから
。
しかし、単にいい男を揃えただけならここまで劇団が維持できるはずもないだろうと思ったのと、蜷川さん以外のシェイクスピアも見てみたいな~という興味がちょうど重なって見に行ってまいりました。
チラシによると、ダブル・キャストで、Erbe(エルベ)、Sighori(シニューリ)という二つのチームに分かれている。ここでちょっと
となってしまったが、気にしても始まらない。後で公式サイトを見て判ったのだが、スタジオライフでは必ずキャストの組み合わせに名前を付けている。『白夜行』のときは「杳(よう)」と「宵(しょう)」、『真夏の世の夢』では「Yippee!」と「Wow!」となっていた。一応、演目の趣旨に合わせたチーム名を付けるみたいです。したがって今回はイタリア語のチーム名なんですな。面白い
。
私が今回見たのは「エルベ」チームでした。
会場に入ると、黒衣のさわやかなお兄さん達とスタッフがお出迎え、と言ってもホストクラブではないぞ。チケットのもぎりとクローク、プレゼント受付コーナーがあるのだが、お兄さん達(若手団員)がとても爽やかで別世界なのよ。うひょ。当てられながら奥に進むと、小さなロビー中央部に、送られてきた山盛りのお花をバック、プログラムとその他グッズ販売コーナーが設置されている。グッズはプログラムの他にブロマイド、エルベとシニョーリ(慣れた)、それぞれのロミオとジュリエットの写真をあしらったポストカード、スタジオライフのロゴ入りミニタオル、過去作品のプログラムなどなど。すげえ~。そういえば以前みた「恋の骨折り損」で王女様だった姜暢雄もここの出身ですな。ファンクラブの入会案内が折り込みに入っていた。うむむ~。開演まで、時間がなかったのでとりあえず突っ切り、突き当たりの階段を上ってホールに入る。ホールは、さすが小劇場のメッカ、ストールのみだがどこからでも舞台の声が届きやすいつくりになっている。(偉そうですみません。某成金ホールを思い出してしまったのです。)
舞台ベージュの壁で仕切られていて、正面と上手に入り口、下手には窓がある。
客席は9割女性で、年齢層も広い。場内に流れる音楽は中世イタリアを髣髴とさせる弦楽曲だ。雰囲気はどことなくゼフェレッリの映画版(オリビア・ハッセーのやつ。)に近い。
音楽が高まり、舞台が暗転すると黒衣をまとった男がよろりと登場し、前口上を告げる。そして呼応するようにホール中扉からキャピュレットの召使が登場して物語が始まる。
作品自体は基本的に大きな改訂はないが、小さな箇所、例えば結婚準備に沸くキャピュレット家の広間でのやりとりとか、ロレンス神父のシーンなど一部は省かれていた。あと、これもゼフェレッリ版と重なるが、原典ではショック死するロミオの母は最後まで生きて息子の死を見届ける。
衣装も映画版を意識していた。特にジュリエットの赤いドレスは映画版そっくりで、をい!と思ったがまあこれも良し。ただ男性陣はタイツではなくて、ピッタリしたパンツでほっとした。バレエはまあ良しとして、ストレートプレイで「あれ」はねえ~
?
結論を申しますと、中々に興味深く、素直に楽しめました。
蜷川演出のオール・メイルシリーズもそうだけれど、シェイクスピアの時代は男優しか使えなかったので、きっとロミジュリもこんな感じだったのだろうな~と思った。はっきり男だとわかるのだけれど、ジュリエット役の船見和利はちょーっときつかった。子供っぽさがよく出ていたのだけれど、声が低すぎるのか、発声がおかしいのか、最初は違和感バリバリだった。キャピュレット夫人の林勇輔が声も素敵で中年マダムそのものだったので余計に。(それに、マイ・ベスト女形は今のところ、ぶっちぎりで月川悠貴くんなんだもーん
。あの人に敵う美少女男《何だそれ?》は早々いないと思うのですよ。あ、玉三郎様という別格もいます
。)
ただ、ロミオに出会ったときや、パリスとの結婚を余儀なくされて、孤独な決断を強いられるところはとても情感があってよろしかったです。
そしてロミオ役の岩崎大がとてもよかった。登場シーンではちょっとぽっちゃりしていてう゛ーむと思ったのだが、話が進むにつれてどんどんかっこよく見えてきて最期には命散らす美少年そのものでした。いやあ、びっくり。
ベンヴォーリオ役の小野健太郎は登場から、爽やか美青年で目の保養♪それだけでなく、ロミオとマキューシオと一緒にすごくバカやっている場面がまた可愛い!というか微笑ましい!アドリブ全開で腹が痛かったです。
そしてマキューシオの坂本岳大はロミオ&ベンヴォーリオとは少し毛色の違うがっちりした体格のお兄ちゃんで、駄洒落大好きなかぶき者。彼が前半の喜劇部分を体現していたから、その死と引き換えに悲劇がくるんだ、と思い知らされました。
パリス役の寺岡哲も貴公子そのものなのだけれど、融通きかなそうな所が、「らしい」と言えば「らしい」
。ただ、墓所でロミオと揉めるシーンで、二人とも壁にかけてあった剣を取ってやり合うのだけれど、あの構え方はちょーっと時代劇っぽかったな~。これは日本人のサガなのだろうか?
そしてキャピュレット家の男性がはい。ティボルト(奥田努)はラテン系っぽいねっとりした感じで、キャピュレット氏(船戸慎士)は格好がちょっとラスプーチン入っていて、結婚を拒否するジュリエットを叱責するシーンが怖かった。明らかに暴力亭主で奥さんも乳母も萎縮しているのがよく分かった。
あと忘れてはいけないのがロレンス神父(河内喜一郎)。朗々とした語り口で深い知識と経験に裏打ちされた自信に満ち溢れていたのが、運命のいたずらで恋人達を死に至らしめてしまう。全てが終わってしまった後に黒いフードをまとい、よろよろと流浪しながら最後の口上を述べるのが切なかったです。冒頭部で口上を述べるのが(おそらく)破門か、罰として宛てのない巡礼を行うロレンスでして、彼の回想ともとれる演出でした。
ただ、ラストにいきなり現代を風刺するようにイラクでのスンニー派とシーア派のカップルについての英語のニュース放送を挿入するのはちょっと余計だったように思えます。うまい具合に世界を作り上げていたのだから、そのままで突っ走ってほしかった。社会派路線を行うなら、もっと徹底しないと!
何はともあれ、非常にきっちりした作品になっていて面白かったです。Studio Lifeの別作品も、機会があれば見に行きたいと思いました
。