パン・ヴィエノワ Pain viennois
昔、オーストリア大使館員が当時のパリの質の悪いパンにうんざりし、ハンガリーから取り寄せた粉で、祖国の上質なパンをパリの知り合いのパン屋につくらせたのが始まりだとか。
パリの人々にとっては始めて味わう白い上質なパン、たちまち評判になったそう。
長い棒状のパンに斜めの細かいクープが特徴で、このパンが現在のバゲットの元になったと言われています。
もともと素朴な生地でつくられたパン・ヴィエノワだけど、現在では、バター、砂糖、卵、牛乳が配合され、パン・オ・レ(ミルクパン)に近い味わい。
フランスパン用粉で作るから、クラストはサクッと歯切れよく、クラムはふんわり柔らかに焼き上がります。
砂糖が入っていても、それほど甘みは感じないので食事パン向き。サンドイッチ用のパンとしても利用されてます。
パン屋に行くと、そのままの『ナチュール』と、チョコチップ入りの『ヴィエノワーズ・ショコラ』の2週類にたいてい出会うと思いますよ。
私は、朝学校に行くときに近所のパン屋さんでよく買います。
美味しいだけでなく、値段も安いから嬉しい。ナチュールだったら、55ソンチームで買えます。(近所のパン屋の場合) けっこう大きめですよ。
基本的にチョコチップ入りはナチュールより小振り、1.05ユーロだったかな?
でもチョコチップが、これでもか~っというぐらい必ず入っています。(美味しいけど、毎日だと飽きる~。(苦笑))
以前、パリのパン屋で研修していたとき、パン・ヴィエノワの仕込みはいつも私の仕事。このパンはそれほど多くは仕込まないし(毎日粉5kgだから)、あと生地作りも難しくないのでね。
ということで、久しぶりに作ってみるか~と、いっても日本にいるときも時々作っていたので、それほど久しぶりでもなかったりするけど(笑)
お店で作っていたレシピではないけれど、家で作る時はいつもこんな感じです。
小麦粉T55 200g (フランスパン用粉)
砂糖 16g (あればカソナード、もしくは三温糖など)
塩 4g
全卵 30g
無塩バター 20g
生イースト 6g (ドライイーストなら3g)
牛乳 100~110g (あとの水分調整は、水でします)
塗り卵
手捏ねの場合。
牛乳・全卵は合わせてちょっとぬる目の温度に。イーストを加えて溶かします。
バター以外の材料を合わせ生地を捏ねます。10~15分を目安に。
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ここで乾燥しないように生地にボウルを被せ、5分ほど生地を休ませます。
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バターを加えて、バターが生地全体に馴染んでから、5~7分ほど捏ねます。
(捏ね上げ温度は27℃が理想だけど、私はいちいち計ってないです。)
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一次発酵:30℃ぐらいの暖かい場所で、約60分。(約2.2~2.5倍ぐらい)
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軽く、パンチ(ガス抜き)、生地をまとめ直します。
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二次発酵:再び30℃ぐらいの場所で、約30分。(約2倍強)
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分割、バゲット生地のように、なまこ型にまとめます。(この生地は弾力があるので、強くまとめすぎないようにします。)
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ベンチタイム:10分。
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成形:バゲットと同じような感じ。ガスを抜いて、奥から1/3を折って、向きを変えて1/3を折って、さらに二つに折って、長さにのばします。という感じでしょうか。
ちなみに、普通パン屋では65cmぐらいの細長い棒状に成形します。(でも、大・小と作ることが多いかな。)
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薄くバターを塗った型に生地を並べ、塗り卵を塗ります。
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クープナイフで深めに切込みを入れます。
(生地の高さの少なくとも1/3は入れる気持ちで。私は多分もっと入れてるかも。クープが浅いと、焼き上がった時にこのパンの特徴ともいえるクープがきれいにでないし、均一に膨らまないから。)
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最終発酵:33~35℃ぐらいの場所で、50~60分ほど。(生地の体積が約2.2倍)
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もう一度塗り卵を塗って、210℃で20分ほどで焼き上げます。
(焼成温度・時間はオーブンによって異なるので、あくまでも目安として。)
塗り卵でなく、バゲットと同様、蒸気焼成でもいいですが、見た目は塗り卵のほうが美味しそう。
オーブンに入れるちょっと前の状態。
家庭でパンを作る人が増え、日本でも簡単に生イーストが、しかも少量で手に入るから(値段もそんな高くないはず?)、出来れば生イーストでいつもパンを作ると、ドライイーストより、よりふんわり、香りもよく美味しく仕上がるんじゃないかな~と、個人的に思います。
私は、生イースト自体の香りが異常に好きで、いつもクンクン匂いをかいては幸せな気分に浸ってます。あの甘~い香り、何ともいえませんよ。
そして、生イーストに慣れてしまうと、ドライイーストで作ったパンの匂いが妙に鼻に付いてしまいます。もちろん好みもあると思いますが・・・。
最後に、、ちょっと余談で 《フランス語会話》 を。
フランス語には『男性形』と『女性形』の2種類の言い方があるというのを、フランス語を少しでも勉強された方ならご存知だと思いますが、(これには本当悩まされるのね~)
ここで書いた、『 Pain viennois パン・ヴィエノワ』という言葉は、男性形なのですが、
普通パン屋でこのパンを買うときは『ヴィエノワーズ』と女性形で言います。フランスでは、この呼び方が一般的なので。
「ウィーン風のパンを1個下さい。」
「 Je voudrais une viennoise, s'il vous plait. 」
ジュ・ヴドレ・ユンヌ・ヴィエノワーズ・シル・ブ・プレ
と、言います。